IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「頼まれていた品は送っておいた。明日には届くだろう」

 

二人がいなくなって一週間が経つ。私はいつも通り、定時の連絡を入れていた。

 

『ありがとうございます。隊の者も、あのマンガの続きを心待ちにしておりました』

 

私が所属するドイツ軍『黒ウサギ隊』の副隊長のクラリッサが明るい声で応答してくる。瑛斗とシャルロットがいないことには慣れたつもりでいる。だが、やはり二人部屋で一人でいるのは寂しい。

 

「そうか…」

 

意図せずに自分の声が小さくなる。

 

『隊長? 声が弱々しいですが、いかがなさいました?』

 

少しの変化でも見逃さないのはクラリッサの良いところだ。だけど、今回ばかりは見逃してほしかった。

 

「……クラリッサ…」

 

『はい』

 

「…いや、なんでもない」

 

一人が寂しい、などと情けないことを部下に言ってしまうところだった。

 

『…隊長』

 

「なんだ」

 

『無礼を承知でお聞きしますが…何かあったのではありませんか?』

 

「別に何があったというわけではない。気にするな」

 

『…わかりました。ですが隊長、無理はしないでください』

 

クラリッサは、まるでどこかで見ているかのような言葉を言ってきた。

 

「分かっている。心配をかけたなら謝ろう」

 

『いえ、そのようなことは…』

 

「これで定時連絡を終了する。切るぞ」

 

『あ、隊ちょ―――――』

 

電話を切り、そしてベッドに仰向けに倒れる。

 

「……………」

 

隣には、空のベッドがもう一つ。

 

「シャルロット…」

 

いつもなら傍にいてくれるはずのシャルロットはいない。それがこうも……

 

「……………」

 

視界が滲む。

 

 

コンコン

 

 

その時ドアをノックする音が聞こえた。

 

『ラウラ、私だ』

 

ドアの向こうから聞こえた声は箒のものだった。

 

「入るぞ」

 

こっちの返事を待たずにドアを開けてきた。私は慌てて目を拭う。

 

「箒か。どうした」

 

目の前に立つ箒は私から少し目を逸らした。

 

「い、今から訓練をしたいと思っているのだが、付き合ってくれないか?」

 

「私がか? セシリアや鈴…一夏がいるだろう」

 

わざわざ私に声をかけなくとも、もっと頼みやすい者がいたはずだ。

 

「あ…そ、それはだな、ラウラが一番ISの扱いが上手くて………」

 

目を逸らす、というか顔を逸らして言う。その動きに合わせてポニーテールも揺れた。

 

「楯無さんにでも頼めばいい。一度はコンビを組んだのだろう」

 

「あ、う…ええい!」

 

奇声を発した後、箒はどかっと私の隣に座った。

 

「ああそうだ! 別に訓練に行こうとは思っていない! お前が放っておけないんだ!」

 

「………………」

 

余りにも率直な言葉にどう返したらいいか分からなくなった。

 

「この一週間ほど、お前はずっとそうだ。授業も上の空で、放課後は部屋に籠って。心配するなと言う方が無理な話だ」

 

「別に……そんなことを頼んだ覚えはない」

 

「悪いが、私はそんな友達甲斐のないことはできない。その…しゃ、シャルロットの代わりと言うとなんだが、寂しいのなら話し相手になってやる」

 

「箒…」

 

正直、嬉しかった。しかし―――――

 

「ありがとう。だが、それには及ばない。私は…大丈夫だ」

 

この箒の言葉に甘える自分が、許せない気がした。

 

「心配をかけたなら謝ろう。しかし、私も軍人のはしくーーーーー」

 

「馬鹿者っ!!」

 

瞬間、右頬に痛みが走った。殴られたと気付いたのはその数秒後だった。

 

「な、何を―――――!」

 

「黙れっ!」

 

「…っ!」

 

その一喝に圧倒されて思わず言葉を呑んでしまう。

 

「いつまでそうやって意地を張っている! なぜそう無理をする! 瑛斗とシャルロットがいなくなって寂しいのはお前だけではない! 簪も、一夏も…私だって寂しい!」

 

箒のその目には怒りが籠っていた。

 

「大方お前は『そんな情けないことを自分が言えるわけがない』とでも思っているのだろうが、そんなこと関係ないだろう! 寂しいなら寂しいと、どうして言わない!」

 

「……………」

 

その言葉に俯いてしまう。

 

「…大丈夫なんだな? 寂しくないんだな?」 

 

『寂しい』と、そう言えたらどんなに楽か…。だが、悔しいが箒の言うことは当たっていた。私が、そんな情けないことを言うなど、私自身が許せなかった。

 

「なら私がすることはない。邪魔したな」

 

 

だから―――――

 

 

「……って、くれ…」

 

「………」

 

「行か…ないで、くれ……私を、一人に……しないでくれぇ…!」

 

気が付いたときには私は箒の服の袖を掴み、目から涙をこぼしながら泣いていた。

 

「ラウラ…」

 

「ずっと、寂しかった…シャルロットも、瑛斗もいなくて……ずっと、ずっと…!」

 

押さえていたものが一気に溢れだした。

 

「…最初からそう言えばいいんだ。まったく……」

 

箒は困ったように笑うと、私の背中に両手をまわした。そこで、限界だった。

 

 

「うっ…うえぇぇ…うっ…ひっく……!」

 

 

嗚咽を交えながら、私は泣いた。箒は私が泣き止むまで、ずっと傍にいてくれた。

 

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「……………」

 

ラウラと別れた箒が廊下を歩いていると、

 

「よ、お疲れさん」

 

曲がり角で声をかけられた。

 

「どう…だった?」

 

一夏と簪であった。箒は小さく息を吐く。

 

「ああ。もう大丈夫だろう。思いきり泣いていたからな。明日にはきっと元通りだ」

 

簪は箒に頭を下げた。

 

「ありが…とう。本当は、私が行くべき、なのに」

 

「気にすることはない。ラウラも、ちょっとやそっとでは素直にならない奴だ。自分で言うのもなんだが、私くらいでないとな…」

 

「うん。私じゃ、箒みたいには、でき…ないよ」

 

「そうそう。簪じゃラウラをビンタなんてできない。随分荒療治だったなぁ」

 

「なっ!? み、見ていたのか!」

 

慌てる箒をよそに、二人は笑った。

 

「でも、これでラウラは大丈夫だな。あとは…」

 

「……瑛斗とシャルロットか」

 

「シャルロットも、心配、だけど…瑛斗が……」

 

「上手くやっているといいのが、本当にどこへ行ったのかわからないのか?」

 

箒は一夏に問う。だが当の一夏も肩を竦めた。

 

「わからない。そもそも俺たちは瑛斗がどこに行ったのかも知らないんだ。知ってるのはセフィロトの制御法を習得しに行ったってことだけ。楯無さんも千冬姉も何も教えちゃくれない」

 

「あの二人は、教えてくれないだろうな……」

 

一夏の言葉に箒も肩を落とす。

 

「でも、きっと……大丈夫」

 

しかし簪はそう言いきった。

 

「なんでそんなのわかるんだ?」

 

一夏が聞くと、簪は胸のあたりに手をやって答えた。

 

「瑛斗を…信じてる、から……」

 

「簪…そうだな。瑛斗を信じよう。な、箒」

 

「ああ。簪の言うとおりだ。瑛斗なら大丈夫だろう」

 

三人は、遠い、しかしどこかにいる瑛斗を想うのだった。

 

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「ほれ、もっと腰をいれんか。違う。もっとじゃ。もっと深く」

 

「………」

 

なぜだ。なぜなんだ…! どうして俺は…俺は!

 

 

「なんで農作業してんだよぉぉぉぉぉぉぉーっ!!!!」

 

 

そうだ。そうなんだ。なぜか知らんけど俺はいま鍬を持って畑をざっくざっくと耕している。

 

「音を上げとる暇はないぞ、瑛斗。まだ七割程しか終わっとらん」

 

縁側でお茶を啜っているチヨリちゃんがご無体なことを言いおった。

 

「なんでだよ! なんで昨日今日とこんなほのぼのと農業しちゃってんだよ!!」

 

おかしいよね! 俺、全然違う事をしに来てるはずなのに! 

 

「なんじゃ騒々しい。おぬしが耕した畑、なかなか悪くない出来じゃぞ」

 

チヨリちゃんが指差す先では、良い感じに耕されてる畑の『うね』が。

 

「お褒めに預かり光栄だよっ! そりゃね! そりゃあんな丁寧なレクチャー受けたらこうもなるわ!」

 

「ふっふっふ。いいトレーニングになっておろう?」

 

楽しそうに笑うチヨリちゃんに俺は抗議を諦めて再び鍬で地面をざっくざっくと耕し始める。

 

「…わかったよ。この際だからもうやり通すよ。でもなんでこんなことをしなきゃならないのかっていうのは教えてくれても良いんじゃないか?」

 

「ふむ、まあそれくらいなら教えてもいいじゃろ」

 

そういうとチヨリちゃんは縁側から降りて自分も草刈りを始めた。

 

「あの部屋はの、連続で使うことはできん。三日に一回が限界じゃよ」

 

「なんで」

 

「そもそもおぬしの深層意識を呼び起こすのにはおぬしのセフィロトのサイコフレームをあの部屋と共振させる必要がある。サイコフレーム同士の共振はとてつもないエネルギーを発生させる。それを受け止めるのは可能じゃが、連続しては不可能なんじゃ」

 

「だからなんで」

 

「おぬし…自分で考えようとはしないのか? それでも技術者か」

 

む、ちょっと聞き捨てならない発言だな。

 

「ハッ! もちろん俺なりの考えくらいはあらぁ」

 

「ほう? 言うてみい」

 

「簡単に言えば、アレだ。ペットボトルのコーラを一気飲みなんてできない。でも少しずつ回数を重ねてなら飲める。どうだ?」

 

「え、えらくシンプルに言ったもんじゃな。じゃがまあ、概ねその通りじゃ。連続して使用すればあの部屋が爆発してしまう」

 

「ほら、合ってる」

 

ドヤ顔を決めてやると、チヨリちゃんは苦笑した。

 

「とにかく、もう一度深層意識に入り込めるのは明日じゃ。今日はゆっくり農業でもしておけ」

 

「んな暢気な…」

 

俺が言おうとすると、しゃがんでいたチヨリちゃんは立ち上がって額の汗をぬぐった。

 

「ワシがなんでこんな山の地下で、わざわざ農業しとると思う?」

 

「いきなりだな…なんでって言われても……食糧の確保?」

 

「それもあるが、もう一つある。こっちの方が重要じゃな」

 

「あのさぁ、自分で考えろって言うけど、考えても分からないようなことを聞いてこないでくれよ」

 

「…それもそうじゃの。簡単なことじゃ。『息抜き』じゃよ」

 

「息抜き?」

 

「ああ。行き詰った時、上手くいかない時、こうして自然に触れて一度忘れる。おぬしもそうじゃろ?」

 

「……………」

 

「おぬし、ここに来るまでになにかあったようじゃな。それをどうにかしたくて躍起になっておる。しかしセフィロトの制御…それが足枷になってどうすることもできない。違うか?」

 

まるでエスパーかなんかなのかみたいに人のことをズバズバ当ててきやがる。脱帽もんだぜこりゃ。

 

「よくわかるな。その通りだよ。友達が大変なことになってるんだ。助けてやりたい」

 

「そのISの持ち主か」

 

チヨリちゃんが指差す俺の首にはラファールがかけられている。

 

「腕に一つ、首に二つ…一人で国一つを落とせるレベルじゃのぉ」

 

「はは。俺にそんな度胸はないよ。だけど…」

 

 

ザクッ

 

 

鍬を地面に下ろす。もう『うね』は完璧に仕上がっていた。

 

「俺は助けられるなら、国一つ…フランスだってなんだって相手にしてやるさ」

 

「その意気じゃよ。気分はどうじゃ?」

 

「ああ。ますますやる気が出てきたよ。けど大分気分は落ち着いてる」

 

そう言うと、チヨリちゃんは口元に薄い笑いを浮かべた。

 

「じゃあ、あの部屋に行くとするかの。ついて来い」

 

「え? 明日なんじゃないのか?」

 

歩き出すチヨリちゃんを呼び止める。

 

「本当は一日にいくらでも使える。おぬしは冷静さを欠いておったから、あえて使わせなかったんじゃよ」

 

そしてチヨリちゃんは縁側にあがった。

 

「どうしたー、はよ来んかー」

 

奥からチヨリちゃんが俺を呼んでいる。

 

「…かつがれたみたいだな、どうやら」

 

俺はやれやれと頭を振り、それについて行った。

 

「では、準備はよいな」

 

部屋にの前についたチヨリちゃんは俺に聞いてきた。

 

「おう。いつでもいいぜ」

 

「では…!」

 

チヨリちゃんが扉を開けると、以前と同じように部屋の真ん中に椅子が置かれている。

 

「よし……」

 

部屋に一歩踏み出す。なんかちょっと緊張してるな、俺。

 

「そうじゃそうじゃ。瑛斗、最後に一つ言っておこう」

 

「なんだ?」

 

「否定するな。目を背けるな」

 

「ありのままを受け止め、受け入れろ、だろ? わかってるよ。行ってくる」

 

そして俺は椅子に座った。次の瞬間、部屋は輝き出した。

 

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一「インフィニット・ストラトス〜G−soul〜ラジオ!」

 

楯「略して!」

 

一&楯「「ラジオISG!」」

 

一「読者のみなさん、こんばんは!」

 

楯「こんばんわ。今日のゲストはおねーさんこと楯無おねーさんよ」

 

一「さて、今日も張り切って行きましょう!」

 

楯「一夏くん、ちょっと待って」

 

一「…? なんですか?」

 

楯「今日の質問ね、私宛に来てて、内容が私がカレーを作るときに何か隠し味でいれるの? っていうのなのよ」

 

一「はぁ」

 

楯「と、言うわけでおねーさんはカレー作ってきたのよ」

 

一「お…おお。そうですか」

 

楯「食べてみてよ。それで隠し味を当ててみて」

 

一「別に全然オッケーですけど。ラジオ的にはどうなんでしょう?」

 

楯「へーきよ、へーき。ささ、食べてみて」

 

一「…大丈夫ですよね? なんか変なもの入ってませんよね?」

 

楯「まぁ…心外だわ。せっかく作ってきたのに……おねーさんショック…」

 

一「ああいえいえ! 食べます! 食べさせていただきます!」

 

楯「うん、じゃあどうぞ」

 

一「い、いただきます」(パクッ)

 

楯「………」

 

一「………」(モグモグ)

 

楯「………」(ニヤリ)

 

一「楯無さん…これは……!?」

 

楯「さぁ! 何がはいっているでしょーか!」

 

一「ハバ…ネロ……?」

 

楯「ピンポーン! 大正解でーす!」

 

 

一「やっぱりなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 喉がぁぁぁぁぁぁぁっ!!」(ゴロゴロゴロッ!!)

 

 

楯「よくわかったわねぇ」(ニコニコ)

 

一「もしかしたらなーって! もしかしたらなーって思ってたけど、ホントにやりますか普通!!」

 

楯「や、でもすごいわよ。そんなに入れてないのに当てられちゃうなんて。はいお水」

 

一「ど、ども…ふぅ」

 

楯「私、辛いの好きなのよ。だからカレーにはちょっと入れたりしてるの」

 

一「な、なるほど…! よくわかりました……」

 

楯「うふふ。やっぱり楽しいわねぇ」

 

一「こっちは軽くトラウマになりそうですよ」

 

楯「一夏くんはどうなの? 織斑家のカレーは何か入れたりするの?」

 

一「そ、そうですね。いたって普通ですよ。炒めた玉ねぎ入れたり、時間かけて煮込んだり」

 

楯「ふーん? やっぱりマドカちゃんや織斑先生と一緒に食べたりするの?」

 

一「マドカが来てからはそうですね。休みの日とかは三人で食べたりしてます」

 

楯「家族団らんってわけか…いいわね」

 

一「いやぁ、そんな」

 

楯「照れちゃって。可愛いわね。さてと、それじゃあエンディングよ」

 

 

流れ始める本家ISのエンディング

 

 

楯「やっぱり、瑛斗くんがいないと歌い手さんもいないからカラオケになっちゃうわね」

 

一「アイツ、早く戻ってきてくれればいいんですけど」

 

楯「次回の本編は瑛斗くんがバトルするそうよ」

 

一「なるほど。…って、どこからそんな情報を?」

 

楯「ほら、そこのカンペに書いてあるのよ」

 

一「本当だ」

 

楯「メインパーソナリティが一人欠けてるとカンペも動かなきゃいけないのね。それじゃあ!」

 

一「みなさん!」

 

一&楯「「さようならー!」」

説明
序盤はラウラsideの話です(タイトル浮かびませんでした)
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コメント
鈴に質問です!!酢豚以外で自信のある料理は何でしょうか? (カイザム)
一夏に質問、もし箒と鈴どっちかしか一緒にいられないならどっちを選ぶ?(茶漬け漬茶)
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インフィニット・ストラトス

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