魔導師シャ・ノワール 無印偏 第十四話 シャ・ノワール拾われる
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フェイト side

 

 

「ねえフェイト?やっぱりノワールが戻ってからのほうがいいんじゃない?」

「ううん。ノワールが居たら絶対に反対される」

 

恐らく陸地にはもうジュエルシードは無い。あと探していないのは海の中。

そこに魔力流を打ち込んで強制発動させて封印するという物。

 

海の中にはまだ数個のジュエルシードがあるはず。

一人で全部封印できるか分からないけど・・・。

 

「だけどさ・・こんなの無茶だよ・・・」

「でも・・母さんに喜んで欲しいから・・・もとの優しい母さんに戻って欲しいから・・・」

 

そうなったら母さんにノワール、アルフと私の四人で笑って暮らせる筈なんだ。

あ・・でもノワールは仕事で手伝ってて・・・でも優しい彼の事だ。頼めばきっと一緒に居てくれる。

ノワールの事を思うと母さんとはまた違う、暖かな気持ちが心に広がっていくのを感じる。

きっと・・これが恋なんだと・・・思う・・・・その為なら私は

 

「わかったよ・・・空間結界とその他のサポートは任せて!」

「うん・・お願い!」

 

 

そして、特大の魔力スフィアを空に浮かべ。

体から魔力が大量に抜ける体の疲労に堪えながら大きな金色の魔力流を海へと叩き込んだ。

 

「ノワール・・私に力を貸して・・・」

 

 

 

 

 

フェイト side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高町なのは side

 

 

「フェイトちゃん!」

わたしとユーノくんがアースラにお手伝いに来て一週間ほどが経ったある日。

突然、船の中にアラートが鳴り響いて。艦橋に辿り着くと。

そこには稲妻が奔り嵐の海の中をもがくように飛んでいるフェイトちゃんの姿でした。

きっと海にあるジュエルシードを集める為に。

前に町の中でやったみたいにまた魔力流を打ち込んだようです。

 

 

「あ、あの!わたしすぐ現場に!」

「その必要はないよ。放って置けばあの子は自滅する」

「えっ!?」

 

すでに艦橋に居たクロノくんに冷たく言い放たれます。

 

「例え自滅しなかったとしても、力を使い果たしたところで叩けばいい」

 

「でもっ!・・・」

 

ふらふらで今にもあの黒い海に飲まれてしまいそうなフェイトちゃんを見て。

わたしにはずっと助けてと言っている気がします。

 

「そうね・・私達は常に最善の選択をしないといけないわ

 残酷に見えるかも知れないけど、これが現実」

 

リンディ艦長さんもクロノくんと同じ意見のようです。

 

そんなの放って置けないよ・・・・。

フェイトちゃんをお手伝いしているノワールくんの姿も見えないし。

アルフさんはサポートで体一杯みたい。

誰も助けてくれない・・一人ぼっちなんだ・・・・。

 

【行ってなのは】

【えっ?】

 

念話が聞えて後ろを向くと。微笑んでわたしを見つめるユーノくんが立っていました。

 

【僕がゲートを開くから。行ってあの子を】

【でも、ユーノくん!わたしがフェイトお話したいのはユーノくんとは...】

【関係・・ないと思う・・・でも、なのはが困ってるなら力になりたい

 なのはが僕にそうしてくれたみたいに・・・・】

 

そして、ユーノくんの後ろに光のゲートが現れ。

わたしはそれに走り込みます。

 

「なっ!君は!」

自体に気がついたクロノくんの静止する声を無視してゲートに入ります。

「な、なのはさん!?」

「君達は!」

 

「ごめんなさい!高町なのは指示を無視して勝手な行動を取ります!」

 

今、助けてあげるからね!フェイトちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユーノくんの転移魔法でフェイトちゃん達の結界内に転移して。

その後は、ユーノくんとアルフさんのサポートもあって。

 

 

 

フェイトちゃんと二人で一気に6個のジュエルシードを封印しました。

 

雷と暴風で荒れていた海は少しずつですが静かになって行きます。

 

 

封印したジュエルシードを挟んでフェイトちゃんと向き合い名前を呼びます。

 

「フェイトちゃん・・・」

「君は・・・」

 

どうしてわたしがこんな事をしたのかフェイトちゃんはよく分からないみたいです

そして、今まで感じて来た思いをフェイトちゃんに伝えます...

 

「・・・わたしノワールくんと同じようにフェイトちゃんとも友達になりたいんだ」

「っ!!」

 

《ゴロゴロッ!ビシャァァァ!!》

 

「ぐああああああああああああぁぁぁぁ!!!」

そんな時、空が再び雷鳴によって鳴り響き。

あの人の叫びと悲鳴が広がりました。

 

 

高町なのはside out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・はぁ・・やっと着いた・・・って、もう終わりか?」

 

戦闘行動は止まっており。ジュエルシードもなのはとフェイトが飛んでいる空に静かに浮んでいた。

 

【どうやら出番なしだったみたいにゃね】

 

「それならそれでいいさ・・いやッ!待て!クローシュ!」

『ブリッツアクション!』

 

即座にクローシュも反応し。フェイトとなのはが浮んでいる海上に向かう。

 

「くっ!もっとだクローシュ!もっと!」

『ブリッツ!ブリッツ!』

ブリッツアクションを何十にも使用して高速で彼女達の頭上へ辿り着いたその時...

 

《ゴロゴロッ!ビシャァァァ!!》

 

「ぐああああああああああああぁぁぁぁ!!!」

 

「ノワールッ!!か、母さん!?な、なんで!!・・・」

「ノワールくんッ!?」

 

そらに渦巻いていた魔力の剛雷がフェイト目掛けて落ちてきて。

その間に入るもシールドを張る暇も無く俺はそれに打たれた。

 

無理な転移を繰り返して辿り着いた俺に魔力は殆ど残っておらず。

分厚いバリアジャケットも殆ど効果をなくしてパージされた。

 

そして、雷の衝撃で海面に吹き飛ばされ。海の中へと沈む。

海面にも雷の衝撃で急に荒れてしまい。海面に上がることも出来ずに海流にも飲まれていく。

魔力ダメージとその付属効果の為か・・ビリビリと体が痺れ、上手く動かない。

そんな中、どうにか念話を送ることはできた。

 

 

 

【フェイト・・アルフ・・・ジュエルシードを回収して離脱しろ・・・俺はこのまま離脱する】

【ノワール!今助けに!アルフも手伝って!】

 

【平気だ!・・ジュエルシードを持って逃げろ・・・後で追いつく】

 

今、海に入っても海流に飲まれている俺の回収は難しい。

それに時間を掛ければ追跡も振り切れなくなる。

さらに本来の目的であるジュエルシードの回収を怠るのは俺のやられ損だ。

 

 

【でも!】

【ここはノワールの言うとおりにしようフェイト!このままじゃ】

 

どうやらフェイトより離れて見ていたアルフの方が冷静に状況を判断しているようだ。

いつもの姿からは想像もできないが・・・。

 

【うん、だけど....】

 

【・・・あ?】

 

【【絶対戻ってきて!!】】

 

【わかってる・・・さ・・・・・アルフ・・フェイトを頼んだぞ・・・】

 

 

 

その念話を最後に俺は意識を手放し。暗い暗い海の中を彷徨って行く・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次に意識が気がつくとどこかの海岸へ打ち上げられていた。

気絶してあれからどれくらい時間が立ったか分からないが日は越していないだろう。

既に日が落ちかけていることからざっと数時間というところか・・・。

下手をすれば海流に呑まれたままに海の海底に沈み、二度と太陽を拝めないところだった。

どうやら悪運は昔からいいようだが・・・。

 

「ぐっ・・・動けもしない・・・・クローシュ・・・」

 

【魔力はほぼ使い果たしているにゃ。怪我もほどほどに酷いにゃ。動物に変身して体力を戻さないと危険にゃ】

 

魔法によって動物などに変身できる魔導師は

魔力や怪我の回復の為に動物の姿で過ごすことも多い。

 

俺も変身は出来る・・・だが、俺は変身できる動物からあまり好きじゃない。

というより、変身できる動物が狙ったと言える生き物だからだ。

 

「仕方ない・・・・術式・・シャ・ノワール」

 

言葉を発しながら頭の中で術式を組み。クローシュのサポートもあって

体が黒く光って。体が縮んで行く。

体にはフサフサとした毛が生えそろい。細くしなやかな四肢に変化していく。

頭には三角の耳が生え。細く長い尾が生える。

 

まさにその姿はシャ・ノワール(黒猫)だった。

 

「にゃう・・・(くそ・・団員にも見せてない姿をさらすことになるとは)」

 

 

建物などに侵入する時などに便利だと動物に変身する魔法を覚えたのはいいが

よりにもよってからかわれて言われていたシャ・ノワールへと変身してしまったので

団員の誰にもこの姿を見せたことは無い。

 

 

もし、今アリスが追いついて来たらかなりまずい・・しかし背に腹は変えられない。

 

それはもうこの際どうでもいい。だが、ここで一つ問題が増えた・・・・。

 

黒猫になったからと言ってすぐに怪我が治るわけではなく。

未だに体が自由に動かず。海岸に打ち上げられた状態で。

体は冷え、猫という体からいつカラスなどの鳥に狙われるか分からない。

 

管理局には見つからないとは思うが。ある意味別の危険に晒される状況となっていた。

 

「にゃぉぉ・・・(まずいな・・・)」

 

そんな時だった。

 

「あっ!きみどうしたの?」

「?」

 

俺を見下ろす人物が現れ。顔を上げて見つめると

そこには以前見た覚えのある濃い紫色の髪をした少女が佇んでいた。

たしか・・なのはと一緒に温泉に居た子供だ・・・。

 

「大丈夫?怪我してるの?」

「うぅぅ・・・」

 

喉を鳴らして低く唸り威嚇する。なのはの知人ということは。

管理局に見つかる可能性も高くなる。拾われる訳にはいかない。

また、猫の状態でも人間のように喋れるが驚かしてどこかへ行かせるのも気が引ける。

 

「大丈夫だよ?変なことはしないから」

「にゃ!?」

 

優しく体を撫でられ、そのまま抱きかかえられてしまう。

自分が濡れるのも砂浜の砂が服に付くのもお構い無しに

自然と少女との距離が近くなり。至近距離で見詰め合うこととなった。

動物に変身してこのようなことをされたのは始めてで

人間の状態の顔だったら恥ずかしくて少し頬を染めてしまうところだ。

 

「あっ、十字架のペンダントが首に下がってる。猫さんはどこかの飼い猫だったの?」

「にぅ・・・(飼い猫か・・近いと言えば近いな・・・)」

「すごく体冷えてるね。すぐお家で暖めて手当てしてあげるから!」

 

そう言うと少女は俺を腕の中に抱きしめたまま走り出した。

 

 

 

そして、俺は初めてジュエルシードをフェイトと回収した屋敷へと連れて行かれ。

体を洗われて軽い怪我の治療がされると。

その家の少女の部屋と思わしき場所で手当てを受けて猫用のベッドに寝かされた。

 

「疲れてるよね?ゆっくり寝てていいよ?」

「にゃぉん・・・(そうさせてもらうよ)」

 

まさか、あの庭のある屋敷がこの子の家だとはな。

 

屋敷には沢山の猫が居り。あの巨大化していた子猫もやや大きくなった元の姿で走り回っていた。

 

こんなところで団員などにこの姿を見られたら一生笑いものにされる・・・。

 

しかし、窓の外を見ると見たことのあるフサフサの長い毛を生やした猫が佇んでいた。

しかも、目や口元を見るとやや緩んでおり。微笑んでいるようにも見える。

 

「あれ?家の子じゃない猫だ。珍しい」

「にぁわ・・・(最悪だ・・・)」

 

そして、すぐさま念話が飛んでくる。

 

【魔力のリンクも落ち着いたというのに。パスが切れそうなほど弱っていると思えば

 まさか、変身魔法を余儀なくされるほど弱っているとは私も思いもしませんでしたよ】

 

【アリス・・なにもこんな時に来なくても・・・・】

 

その猫は、数時間前に俺の使い魔となったアリスの動物形態だった。

 

【フフッ。ノワールの動物形態よく似合ってますよ。団員が呼ぶ愛称通りですね】

 

【五月蝿い・・好きでこんな格好になってるんじゃない

 それにこれは変身魔法だ。動物形態っていうな】

 

言葉は間違ってはいないが一般的に動物形態などは使い魔などに使われる表現だ。

 

【わかってますよノワール。とりあえずはそのまま魔力の回復に努めてください

 貴方なら3日も経てば全快できるでしょう】

 

 

【ああ・・・】

 

【あと、報告ですが。あのジュエルシードと呼ばれるロストロギア

 海のあった数は6つ。フェイト達、我々側が手に入れた数は3つのようです】

 

【半分は向こうに取られたか・・・総合でもまだ10個だけか】

 

【とりあえず今はゆっくり休んでくださ...あら?】

 

 

「この子のお友達かな?入る?」

「にゃぉ〜♪(ではお言葉に甘えてお邪魔します♪)」

 

少女がアリスの前の窓を開き誘い入れ。当然のごとくアリスが部屋に入ってしまう。

 

【おいこら・・・お前はフェイトとアルフのところへ行け】

 

【ノワールの使い魔であることをフェイトさんとアルフさんは知りませんし。

 ノワール無しに近づけませんよ。余計な警戒心を与えるだけだすから一緒に会いましょう。

 それに、あんな魔力を放出した後では皆まともに動けません。

 両陣営とも暫しの休息といったところでしょう。

 あと、今回の件でジュエルシード自体も殆ど回収を終えたと考えて間違いありません。

 怪我を治した後に情報を収集してどう動くか決めましょう】

 

そう言いつつアリスは俺の寝ている猫ベッドのクッションの横に来て体を当てて寄り添う。

ほんのりとアリスの体温が伝わり、体が温まっていく。互いに猫の体であるのでモフモフであった。

 

【なに自然体でくっ付いてるんだ!アリス!】

 

【いいじゃないですか。私も甘えたい時くらいあるんですよ?

 それにこんなに体を冷やしてます。少しでも暖めないといけません

 これは立派な医療行為です。それに、私もノワールと一緒に寝たかったんですからね?】

 

エングレイブのアジトでは時折、姐さんを筆頭とした女性団員に拉致をされ。

女性の寝床へと連れて行かれることはある意味、習慣とかしていた。

そういえばアリスと一緒に寝たことは今まで一度もない。

アリスは団員の中ではある意味一番の常識人だったと同時に苦労人でもあった。

 

ついでに言うと拉致は複数人の一斉発動で行われるバインドで。

雁字搦めにされ逃げれない状態でされていたので、俺どころか団員の誰もがそれから逃げることは困難だった。

まあ・・掛けられるのは俺しか居ないわけだが・・・。

 

【いや、それとこれとは「それじゃ貴女はその子のことお願いね」は?】

 

「にゃう♪(お任せをお嬢様♪)」

 

まるで意思が通じ合っているかのような会話を残して少女が出て行ってしまう。

 

 

結局、魔力が戻る3日間の間ずっとアリスは俺の傍から離れず。

屋敷の少女と一緒に世話をされ。その間になのはのもう一人の知人らしき。

ブロンドの少女に撫で回されたりなどして過ごして。

その屋敷を日の昇る前の暗い時間にアリスと二人、抜け出した。

 

 

「ノワール?」

「いや・・なんでもない」

 

屋敷を振り返り、いつか世話になった少女に借りを返し来ないと思った。

最近、急にだが借りを返す相手が増えてしまったとどこか嬉しくも後悔しながら歩んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリスside

 

 

 

『ムカつく奴だなお前』

 

そう、それは懐かしい私の記憶。

主とのリンクを切断し。素体とされた山猫としての本能だろうか?

一人、死に場所を探して無人世界へ飛んだ私は

歩いて居た地面が突然、陥没した偶然で迷い込んだ洞窟で彼と出会った。

 

『人の言葉も入っているが、俺は使える物は拾う主義なんだ

 こんなところでくたばるなら俺が使ってやる。

 だから、もう自分が用なしなんてムカつくこというな。次、言ったら殺すぞ』

 

自分が使命を終えてあとは消えるだけだと伝えるが。

そんな事を無視して自分勝手な都合で怒って叱ってくれた人の言葉の記憶。

私が泣いて喚いて否定しても無理やりに魔力を分け与えて生き延びさせた人。

 

本来、使い魔というのは所詮、擬似生命体。

使命や役割が終わると契約を解除し消滅してしまう存在。

そんな私でも使える。言い換えれば必要だと言ってくれて。

今では私のマスターとなった主様。

 

 

きっと私を救ってくれたその言葉などはもう忘れてしまっているだろうけど。

私はずっと覚えてて感謝していますよ・・・。

 

 

 

 

 

「ノワール」

 

「なんだ?アリス」

「いえ、なんでもありません♪」

 

最初のマスターには捨てられましたが、彼の使い魔となった今では。

また彼に怒られてしまいそうだけど・・・・

もう私はアリスという新しい名前もマスターも変える気はありません。

一生お傍でお使いさせていだだきますよ・・・ノワール

 

「フッフ〜ンっと♪」

「変なアリス・・・というか抱きつくな!」

 

 

 

 

あと、新しいマスターは抱き心地が最高です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。
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