緋弾のアリア 白銀の夜叉
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            第八話 「武偵殺し」との対面

 

 俺がアリア達と別れて家に入るとすぐに電話が掛かってきた。 

 「何だよ」

 「何だよとは失礼ね。 仮にもあんたのカウンセリングをしてやってるんだから謙虚でいなさいよ」

 「はいはい」

 「それで、どうなのよ。 東京での生活は」

 「悪くはないな。 ただ・・・俺と似た運命背負ってる奴と・・・少しな」

 「分かった。 じゃあまた都合がついたら電話するからね。 こう見えてもあたし結構忙しいんだから」

 「ああ、悪かったな」

 俺は電話を切ってベッドに横になった。 侑里を失って落ち込んだ俺のカウンセリングの依頼を受けてくれるあいつには感謝だな。 あいつは俺と一緒にSSRの授業を自由履修した奴だ。 あいつはずっと超能力の芽が出なくていつも俺が馬鹿にしていたな。 でも噂で聞いたがあいつは精神医学の知識がすごいって。 それを活かしているんだろうが何故だ? 何故大阪武偵高からのけ者にされた俺の為にそんなことをするんだ? あいつにとにかく信頼できる仲間や友達を数人でいいから作れと言われたがこれからどうなることやら・・・

 

  俺が登校するとアリアの席は空だった。 何故だと思っているとキンジとここの強襲科では万能タイプの武偵の不知火亮の会話が聞こえてきた。 何でもアリアはチャーター便で帰国するらしい。 どうするかな。 後を追うか、黙って見送るか・・・・聞くまでもないな。 あいつについていかないと、侑里を殺した奴の情報が得られないからな。 俺は羽田に張り込んでアリアがゲートを通ると同時にヒースロー空港行きの飛行機のチケットを買った。 全席スイートクラスとかどんだけだよ。 財布の金が千円単位しか残ってねーじゃねえか。 そんな時に不意に、

 「武偵だ! 離陸を中止しろっ!」

 その声はキンジか!? 何でこんな所にいるんだよ!? 席を立とうとしたが飛行機はもう離陸中だ。 仕方ない。 水平飛行に移ったらキンジ、そしてアリアと合流だ。

 「ようキンジ、どうした? アリアにはもう関わりたくないんじゃないのか?」

 「竜也!? お前こそ何でこんな所にいるんだよ!?」

 「俺はアリアから敵の情報を聞き出そうと思っただけだ。 そういうお前は?」

 「それどころじゃない! アリアがこの飛行機で『武偵殺し』に会ってしまう!! あいつには勝てない!! アリアが殺される!!」

 アリアが殺される? それに『武偵殺し』がこの飛行機に現れる? キンジの奴、どこでそんな情報を? いや、そんなことより今はアリアとの合流が先か。

 アリアの個室はベッドやシャワールールまであるセレブ御用達のものであった。 まあ、この飛行機自体がそうだが。

 「よう、アリア」

 「キ、キンジに竜也!?」

 「さすがにリアル貴族様だな。 これ、チケット片道二十万ぐらいするんだろ?」

 「断りもなく人の部屋に押しかけてくるなんて、失礼よっ!」

 「お前にその台詞を言う権利は無いだろ」

 「同感だな」

 「・・・なんでついてきたのよ」

 「太陽はなんで昇る? 月はなぜ輝く?」

 「うるさい! 答えないと風穴開けるわよ!」

 「けっ、開けられるもんなら開けてみやがれ。 俺はお前からイ・ウーの情報を聞き出すためだ」

 「武偵憲章二条。 依頼人との契約は絶対守れ。 俺はこう約束した。強襲科に戻ってから最初に起きた事件を一件だけお前と一緒に解決する―――――――『武偵殺し』の一件は、まだ解決して無いだろ」

 へえ、キンジの奴、それなりに律儀だな。

 「何よ・・・竜也はともかくあんたは何もできない役立たずのくせに!」

 アリアが吠えたのに俺は呆れた。 おいおい、戦闘面以外に役に立つ事だってきっとあるだろうに。

 これからはどんな相手だろうがアリアは一人で戦っていくとの事、俺達にロンドンに着いたらすぐに引き返せと伝えてきた。 俺はその時にアリアが持っているイ・ウーの情報を教えろ、教えないとお前がキンジにやったようにどこまでもつきまとうぞと脅した。 もちろん風穴開けるぞと言われたが開けてみろと言い返した。

 「お客様に、お詫び申し上げます。 当機は台風による乱気流を迂回するため、到着が30分ほど遅れる事が予測されます―――――――」

 機内放送が流れ、600便は少し揺れながら飛ぶ。 その時不意に・・・・

 ガガン! ガガーン! バチチチチッ!

  比較的近くにあった雷雲から雷の音が聞こえてきた。 その時に少しキンジとアリアが問答し合ったらしいが無視していたがすぐにまた雷の音が聞こえて短く悲鳴をあげたアリアを見て納得した。

 「へえ、お前雷が苦手なのか」俺の問いに

 「う、うるさいわよ」と答えたくないという態度のアリア。

 「雷が苦手なら、ベッドに潜って震えてろよ」と言うキンジ。

 「うるさいって言ってるでしょ!」

 「雷を操る敵がいたとして満足に戦えるのか?」とさりげなく俺は聞いてみる。

  アリアは「余計なお世話よ!」と言い返した。

  激しく響いた雷の音についにアリアはとうとう座席からジャンプしてベッドに潜り込んだ。 キンジ、替えのパンツ持ってるかって、悪意がないとはいえ、セクハラに近いぞ。

 運が悪いのか腕が悪いのかこの飛行機、雷雲のすぐ近くを飛んでやがるな。 

 「〜〜〜き、キンジぃ〜〜〜、竜也ぁ〜〜〜」

 しまいにはキンジの服の袖を掴んできやがった。 まるでこどもだな。 キンジは怯えるなと言い、テレビを操作する。 テレビに映ったのは遠山の金さんだった。 おいおい、こんなの俺たちのような年の人間が見るわけねぇだろ。 しばらくすると・・・

 

  パン! パァン! 

 

  何だ? 雷鳴か? いや、これは銃声だ!!

 狭い通路は大混乱になっていた。十二の個室から出てきた乗客と数人のアテンダントが不安げな顔でわあわあ騒いでやがる。 

 銃声のした方を見るとコクピットのドアが開け放たれている。 そこにいたのはさっきキンジと問答した小柄なアテンダント。 そいつがずるずると機長と副操縦士を引きずり出していた。 パイロットは二人共何をされたのか分からねぇが、全く動いてねぇ。

 二人を床に投げ捨てたアテンダントに俺とキンジは慌てて拳銃を取り出した。

 「「動くな!!」」

 俺とキンジの声にアテンダントは顔を上げて何故かニヤッと笑い、一つウィンクをしてから操縦室に引き返し何かを言うと胸元から何かの缶を放り投げた。 これはガス缶だ! 強力な毒ガスだったら吸った時点でお陀仏だ。 俺とキンジは乗客に部屋に戻る事を指示し、自分も部屋に飛び込んだ。 ドアを閉めると同時に機内の照明が消え、乗客の悲鳴が響き渡った。

 

 すぐに非常灯がついた。 俺とキンジを心配するアリアに俺達は体の状態を確認して無事だという事を示す。 やられた、無害だったのかよ。

 「アリア。 あのフザけた喋り方・・・あいつが『武偵殺し』だ。 やっぱり出やがった」とキンジ。

 「・・・やっぱり・・・? あんた、『武偵殺し』が出ることが、分かって・・・」

 「確かに。 どういう事だ? 何故お前が『武偵殺し』が出るってことが分かったんだ?」

 俺とアリアの同じ問いにキンジは少しずつ答えだした。

 「『武偵殺し』はバイクジャック、カージャックで事件を始めて―――――――さっき分かったんだが、シージャックである武偵を仕留めた。 そしてそれは、多分直接対決だった」

 そのある武偵って・・・まさか、キンジの兄貴か?

 「・・・どうして」と問うアリア。

 「そのシージャックだけ、お前が知らなかったからだよ。 電波、傍受してなかったんだろ」

 「う、うん」

 「『武偵殺し』は電波を出さなかった。 つまり、船を遠隔操作する必要がなかった。 奴自身が、そこにいたからだ」

 なるほど、道理で俺が戦っても歯が立たなかったキンジの兄貴が逃げ遅れたって訳か。

 「ところがバイク・自動車・船と大きくなっていった乗り物が、ここで一度小さくなる。 俺のチャリジャックだ。 次がバスジャック」

 なるほど。 この事件はアリアへの宣戦布告だったって訳か。

 「分かるかアリア。コイツは初めからメッセージだった、お前は最初から奴の手のひらの上で踊らされていたんだ。 奴はかなえさんに罪を着せ、お前に宣戦布告した。 そして兄―――いや、シージャックで殺られた武偵を仕留めたのと同じ三件目で、今、お前と直接対決しようとしている。 このハイジャックでな」

 納得する俺と自分が踊らされていたことに気づいたアリアが歯を食いしばるのを無視するように―――

 「この飛行機はハイジャックされてやがります。 部屋の中にいれば乗客に被害は加えやがりません。 ただし、武偵は例外でやがります。 相手をして欲しかったら、一階のバーまでお越し下さいでやがります」

 「・・・誘ってやがる」とキンジ。

 「ああ」頷く俺。

 「上等よ。 風穴開けてやるわ」と息巻くアリア。

 「キンジ、お前は乗客の保護に回れ。 あいつは俺とアリアでやる」

 「いや、俺も行く。 あいつは部屋にいれば乗客には被害は加えないって言ってたぞ」

 「来なくていい」

 「同感だ。 それに、万が一ってこともあるだろ」

俺たちが問答し合っている中再び聞こえた雷鳴にアリアは体をこわばらせた。

 「どうする」

 「・・・く、来れば」

 「チッ、仕方ねえ。 絶対に戦線には出てくるなよ」

 

 慎重に一階のバーに降りた俺達は驚くべきものを見た。 カウンターに座っていたアテンダントが武偵高の制服を着ていたのだ。 それもフリルだらけの改造制服だ。 まさか『武偵殺し』の正体は・・・

 「今回も、綺麗に引っかかってくれやがりましたねえ」

 アテンダントが顔面に被せていた薄いマスクみたいな特殊メイクを剥ぐとその中から出てきたのは・・・

 「―――理子!?」

 「Bon soir」

 青いカクテルを飲んでキンジにウィンクしてきたのは、俺の大嫌いな峰理子だった。

 

説明
誰も信じられなくなった主人公がアリアたちとの交流で本当のつながりを取り戻していく。
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緋弾のアリア 犬夜叉(技・主人公の容姿・境遇) 

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