北郷一刀の本気
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真桜の工房に足を運んだとき、偶然目に入った図面に、俺は驚きを隠せなかった。

 

「なぁ真桜。これ…」

 

「ん?あぁそれかいな。旅をしてる商人から無理やり押し付けられてなぁ…。見たことも無い図面やから作りようが無くてなぁ…」

 

「……真桜。どんなコンセプトか分かれば作れるのか?」

 

「こん…せぷ…と?」

 

「つまり、その武器の形や特徴さえわかれば作れるのかってこと」

 

「まぁそれさえ分かれば後はどうとでも…」

 

「なら、この武器を作って欲しいんだ」

 

「いくら隊長の頼みでも、知らんもんを作るなんて事はうちでも…」

 

「俺…この武器を知ってるんだ」

 

「なっ、ホンマかいな!」

 

「あぁ、だから作ってくれないか?」

 

「でもまだ仕事が終わってないんやけど…」

 

「じゃあ仕事の合間にちょっとずつでも!頼む!」

 

「……はぁ。わかったわ。任しとき」

 

「頼むな。それじゃあ凪たちも待ってるし急ぐぞ」

 

「あいな」

 

その後、凪たちと合流し、いつもどうり街の警邏へと繰り出した。

 

 

――それから一週間後

 

 

「どや、隊長?」

 

ヒュン!ヒュンッ!

 

「すごいな…ここまで再現してくれるとは」

 

俺が今持っているのは日本刀。

真桜がこの図面をもらったのが誰なのかはわからないが、間違いなくこの大陸の人間ではないだろう。

それに、どう考えても今この時代にこの形の刀があるのも考えられない。

…それを言うと、今ここに俺が居ること自体がありえないので考えないことにする。

しかし、この世界の武器が俺には合っていなかったので、これは予想以上の収穫だ。

 

「これなら…っ」

 

「そこまで喜んでもらえるとうちも嬉しいわ。ただ、少し刀身がもろいと思うんやけど…」

 

「この剣はこれでいいんだ。叩くとかって言うより切ることに重点を置いてるから」

 

「…そぉか?まぁ使ってみて、改善したいところがあればいつでも言ってや。うちが完璧な改造したる」

 

「あぁ、その時は頼むよ。」

 

刀を鞘へと戻し腰に差す。

左手で鞘を支え、流れるように抜き放つ。

袈裟切り、手首をひねっての返し、横一文字…。

今まで武器の重さでできなかった動作をなんなくこなす。

 

「武器の相性…とでも言うのかな」

 

「そりゃあ武器にも相性はあるやろう。うちは弓はからっきしやし」

 

血払いをする動作をし、刀を再び鞘へと戻す。

 

「ところで隊長。その武器の名前は何なん?」

 

「名前か…」

 

日本刀…なんて言ってもこの世界じゃ通じないし、それに今のこの世界にはあってないだろう。

関羽の青龍偃月刀みたいなかっこいい名前がいいだろう。

 

……日本刀でまっさきに思いついたのはこの名前だった。

 

「…小鳥丸」

 

「コガラスマル…なんや微妙な名前やな」

 

「飛び回る鳥のように、流れる剣さばきができればいいんだけどね」

 

アニメやマンガなんかでは良く出てくる名刀だ。

刀の出来も、素人目の俺から見ても全然悪くない。

むしろ…この刀の良さを出せるかどうかは俺次第だ…。

仕事と鍛錬を両立させるのはきついだろうなぁ…

今からその厳しさが頭に思い浮かぶ。

 

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――さらに数ヵ月後

 

前回魏の最強の武将は誰かという大会があったのだが…、城の庭でやったため、みんなが本気を出しすぎて城が壊れそうになったため途中で中断された戦いがいくつかあった。

そのため、今回はその雪辱を晴らすべく、演習場を用いての大闘技大会となった。

発案者はもちろん俺。

今回は、兵士たちにも武将の戦いを見せ、より忠誠心をあげるという目的もあるが…。

それ以上に、俺自身がこの刀で戦ってみたかった。

戦いが起きて欲しいとは思わないが、せっかく作ってもらったこの刀。試したくてうずうずしているのだ。

 

今回は俺も参加すると華琳に伝えると…

 

「死ぬ気?」

 

と真顔で言われた。そりゃああんな豪傑たちと本気でやりあえるとは思っていないが…。

それでも、こんなことでもしないと、前に進めない気がしたのだ。

 

そして、今日が大会当日。

 

俺の一回戦目の相手は…

 

「ゲッ!春蘭かよ…」

 

前に春蘭とは手合わせしたが、アレははっきり言って姑息。よく言って良策。

だが今回はその手は使えない。なんたってお互いの技を競い合うのだから、真っ向から立ち向かわねばならない。

 

ルールは前と同じ。相手に降参させるか、戦闘不能にさせるかの二つのみ。

武人のみんなには細かいルールは不要なのだ。

 

 

そして、俺と春蘭が舞台へと上る。

 

 

「北郷か…いつぞやの借りを返す時が来たな!」

 

「貸した覚えが無いんだけどな…」

 

「うるさい!あの時の雪辱を、今こそ晴らしてくれる!」

 

「…ちょっと前の俺と思うなよ…」

 

この数ヶ月、睡眠時間を削ってまで鍛錬してきたのだ。簡単に負けるわけには行かない。

 

鞘から小鳥丸を抜く。

 

「なんだぁ、その細い剣は」

 

「俺の世界の剣だよ。刀っていうんだけどな」

 

「ふん。そんな細い剣で、私の剣が受け切れるのか?」

 

「さぁて、どうだろうな」

 

食って掛かったような言い方もこのぐらいにしないと、本気で切れてしまうのでほどほどにしておこう。

 

「それでは、一回戦…始め!」

 

銅鑼の合図と共に、予想どうり春蘭が突っ込んできた。

 

「死ねぇえええ!」

 

「くっ!」

 

振り下ろされた剣戟を、刃を寝かせ、最大限衝撃を緩和する。

 

「どうしたっ!前と変わらぬではないか!」

 

畳み掛けて来る春蘭に防戦一方。太刀筋は荒いくせに、速さと重さがあるからいなしきれない!

 

「まだ、一撃も受けてねぇよ!」

 

「なら、その一撃で終わらせてやる!」

 

俺の挑発にあっさりかかり、一際剣を大きく振り上げた。

その隙に2、3歩後方に避け、一撃を交わし、右側へと接近する。

 

「このっ…ふん!」

 

横払いの一閃を、打ち払い、切りかかる。

 

「おりゃあ!」

 

「させんっ!」

 

力では負けているが、速さではそこまで引けは取らない。

鍔迫り合うことはせず、ただ一撃を高速で切り付ける。

 

「ぬぅっ……、ちょこまかと!」

 

春蘭の一撃を交わし、回り込み切る。

一連の動作はほとんど機会がかっていた。

 

「っ!し、しまった!」

 

俺が左右に走り回っていたことで、春蘭のバランスが崩れた。

 

「隙あり!」

 

崩れた軸足側から切りかかる。

 

「やらせはせん!」

 

その崩れた状態から俺の剣戟を片手でいなそうとする。

なんて力技なんだ!

だが……

 

「何!?」

 

先の一撃はフェイント。本命を春蘭のわき腹に叩き込む!(もちろん峰打ち)

 

「ぐはぁっ!」

 

「…俺の勝ちだな」

 

小鳥丸の切っ先を春蘭に向けながらの宣言。

 

「勝者、北郷一刀!」

 

「つ、疲れたぁ…」

 

試合終了の銅鑼を聞いた瞬間、腰が抜けてその場に座り込んでしまった。

 

まさかの大番狂わせに、会場は騒がしい。

我が軍最強と謳われていた夏侯惇将軍が、俺のような若輩に負けてしまったのだ。

今でも勝てたのが不思議なくらいだ。

 

「お疲れさま。一刀」

 

「あぁ、華琳。へへっ、勝っちまった」

 

「よく春蘭に勝てたわね。春蘭が油断していたとは思えなかったし…」

 

「いや、でも春蘭だからこそ勝てたようなものだよ」

 

「どういうことだ北郷!私が弱いとでも言いたいのか!」

 

「そうじゃないって。俺は戦い方を春蘭にあわせただけさ」

 

「何?どういうことだ?」

 

「多分冷静に判断してくる秋蘭なら勝ててないだろうな〜」

 

「だから、どういうことなのだ!」

 

「だから、これは固定観念を利用した戦い方なんだよ」

 

「こてい…かんねん?」

 

「こうに違いない。そんなことはありえない。という人間の心理を利用したということかしら?」

 

「その通り。俺が一撃を打ち逃げる…っていう動作を繰り返してただろう?」

 

「えぇ、アレは力負けするのを恐れていたからではないのかしら?」

 

「それもあるが、一番は俺がフェイントを放つという可能性を無くさせる為だ。

 あれだけ打って来ておいて、フェイントを一撃も出していないのだ。きっとフェイントはこないだろう。…っていう具合にな」

 

「それでも、春蘭は天性の戦上手。フェイントならそれに合わせた動きをするはずよ」

 

「そこで、この刀さ」

 

「天の国の剣…だったわよね」

 

「あぁ。まぁ、持ってみてもらえれば分かると思う」

 

小鳥丸を華琳に渡すと、顔をゆがめた。

 

「何よコレ…軽すぎるわ」

 

「その軽さと速さがこの剣の特徴だからな」

 

「なるほど。これだけ軽いと、相当早いのでしょうね」

 

「あぁ。最後の攻撃以外は、通常の速さの3分の2ぐらいの速さで切ってたからな。その速さに目がなれた春蘭は、最後の剣戟だけ早く見えたはずだ」

 

「そうなの、春蘭?」

 

「は、はい…最後だけ早くなったとは思っていましたが…」

 

「……まだまだ鍛錬が足りないわね、春蘭」

 

「はっ!まだまだ、強くなって見せます!」

 

「ふふっ、期待してるわよ。一刀も」

 

「あぁ。もう、守られてるだけは嫌だからな」

 

 

その時、何故か一瞬だけ、孫策の顔が頭に浮かんだ。

 

 

「ほら、次は季衣と凪よ」

 

「あ、あぁ……こりゃ見物だな」

 

お互い突撃方。激しい戦いになるだろうな。

でも……そんなことより。

 

「…真桜」

 

「ん、なんや隊長?」

 

「悪い、刃が欠けた」

 

「んなっ、もうかいな!」

 

「文句は春蘭に言ってくれよ……容赦ないんだから……」

 

どれだけ斬撃を流したとは言え、あの馬鹿力の前ではビビたるものだったようだ。

 

「しゃあないなぁ…まぁうちの番までまだ結構あるし、ぱぱっと強化してきちゃる」

 

「悪いな。頼む」

 

「貸し一つやで」

 

「…わかったよ。今度なんかおごってやる」

 

「忘れんときや」

 

はぁ…また財布が軽くなるな…

 

 

真桜が戻ってきたのは、ちょうど真桜の出番の時だった。

 

「隊長、とりあえず刃を直して、強度を上げた分、少し重くなったかもしれんのやけど…どないな感じ?」

 

「…んっ、大丈夫。さほど変わってない。これなら次も戦えそうだ」

 

「うし。それじゃうちの番や。行って来るな」

 

「おう、がんばれよ」

 

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真桜と秋蘭の戦いも終わり、いよいよ俺の番。

次の対戦相手は…

 

「……マジかよ」

 

一番戦いたくなかった霞だった。

春蘭ほど甘くも無く、かといって春蘭より弱いという訳でもない。

小細工が利く相手ではない。

 

「隙があるとすれば、あの飛龍偃月刀だな」

 

あの長さを生かしたリーチは正直俺にとっては脅威だ。

だが、そこに付け入る隙があるはずだ。

 

「おぉ、次は一刀かいな」

 

「お手柔らかに頼むよ」

 

「はははっ!それは無理な相談やな!春蘭を倒したやつに手加減はできへんよ」

 

霞の目は強者に飢えた渇望と、強者に出会えた喜色の瞳だった。

 

「今日は気分がいいねん。ほんとは春蘭とも決着付けたかったけど、ここまで強くなった一刀とやり合えるなんてわくわくするわ!」

 

「なら、その期待に応えないといけないな」

 

「せや。だからお互い本気でやりあおうや」

 

「応っ!」

 

 

「それでは、準決勝一回戦…始め!」

 

 

「先手はもらいや!」

 

突出してくる霞の偃月刀の速さはまさに神速。気づいたときには眼前まで迫っていた。

小鳥丸で突きを打ち落とす。が、止まることなく突きが繰りだされる。

 

「おらっ!まだまだこれからや!」

 

「くっ…!」

 

「うちは春蘭みたいに甘くないで!」

 

まるで何人もの敵を相手にしているかのような威圧感を感じる。

リーチの差もあり、相手の懐に足が伸びない。

だが、懐にさえもぐれば、あの長さは欠点になるはず!

 

「…っそら!」

 

突きのリズムを読み、霞の隙を逃さず懐に飛び込む。

 

「甘いわっ!」

 

「何!?…ぐっ!」

 

偃月刀の柄尻で腹に一発食らってしまった。

 

「近づいたらいいっちゅーもんやないで、一刀!」

 

よろけている俺の頭上に偃月刀の斬撃が襲い掛かる。

 

「…くぅっ…重いっ」

 

長物の腹を使い力任せに叩く攻撃にはただただ重さが乗り、真っ向から受けていたら握力がもたない。

 

「容赦なくいくで!」

 

宣言通り、間合いを計る機も与えない連続攻撃が降りかかる。

受けられないことは無いが、このままではいつか力負けしてしまう。

 

ならっ…!

 

「………」

 

「どないしたんや!もうしまいかいな!」

 

「………ここだ!」

 

左側来る斬撃を、左腕で受ける!

 

「…ぐぅっ!」

 

「んなっ!なんちゅー無茶するんや!」

 

その隙に偃月刀が届かない間合いにまで下がる。

武人として下がるな…なんて言われたって知るもんか。死んだら元も子もない。

霞の全力を込めた一撃をすべて左腕に受けたため、まともに腕が上がらない。

右腕一本じゃあ力が乗らない。

霞の攻撃も受けきれないだろう。

なら、次の一撃に…すべてをかける!

 

「…やるやないか。その気迫、うちまで興奮してきたわ」

 

「怖いし痛いけど、それ以上に…この勝負に勝ちたいんでね」

 

「…えぇよ一刀。それでこそ、戦いがいがあるっちゅうもんや!」

 

体重を乗せた突きを繰り出す霞。それを左右に避け、機を窺う。

 

体力の限界か、足がもつれてしまった。

 

「止めや!」

 

 

受けられない。なら、受けない!

力が入らない。なら、力を利用する!

 

 

突き出された偃月刀に小鳥丸を乗せ、そのまま霞へと突撃する!

 

「っな!?」

 

慌てた霞は偃月刀を振りかぶろうとした。

その勢いに合わせ、小鳥丸で切る!右腕一本に、霞の力を加えれば!

 

「うおおぉおおお!」

 

ドスッ

 

低い打撃音と共に、霞のどてっぱらに小鳥丸が食い込む。

 

「…がはっ!」

 

鳩尾に入ったのかどうか、一刀自身にも分からないが、手を突いた霞に切っ先を向け、

 

「俺の、勝ちだ」

 

 

うおぉぉぉおぉおおおおぉおおおお!!!!

 

 

大歓声が木霊する。

神速の槍の名手、張文遠に勝ったのだ!

 

「ぃよっしゃああぁいっててぇ!」

 

試合が終わり、霞の攻撃を受けた左腕を振り上げたせいで、痛みが明確になってきた。

 

「一刀、大丈夫!?」

 

「だ、大丈夫…ちょっと打撲っぽいけどっ痛!」

 

「衛生兵、すぐに手当てを!」

 

心配そうな華琳が衛生兵を呼び、俺に治療を受けさせた。

 

「…これは、完璧に折れてますね」

 

「なっ!マジかよ…通りでさっきから痛みがあぁ…痛っ!」

 

「良くこれで最後まで戦えましたね…」

 

「はははっ、戦ってる時は痛みをほとんど感じなかったのにな…」

 

「まったく、あんな無茶すれば当然よ」

 

「ホンマやで一刀。一対一やからえぇけど、左腕使えんのじゃ戦場じゃ生き残れへんで!」

 

「ははっ…目の前の敵に勝つことしか考えられないって気持ちは、霞ならわかってくれると思うんだけどな」

 

「そりゃあ…わかるけど…」

 

「とりあえず、次の試合は棄権してもらいますよ」

 

「そ、そんな!っぁいてて」

 

「そんな腕じゃ、動くだけでも痛いはずです。無理してはこれからに響きますから…」

 

「で、でも」

 

「くどいわよ一刀!時には退くことも肝要よ!」

 

「…わかったよ。なら、決勝は霞が戦ってくれよ」

 

「へっ?う、うちが!?」

 

「だって、このまま決勝戦がないなんてつまんないだろう?だったら、戦ってこいよ。どうせ俺の一撃なんかそんなに聞いてないんだろう?」

 

「いやぁ〜でも結構効いたで。ま、恋には遠く及ばんけどな」

 

「当たり前だろう。天下の飛将軍なんかと俺を比べるなよ」

 

「そう謙遜すんなや」

 

「謙遜もするさ。現にこのざまなんだし……もうちょっと手加減してくれよ」

 

「んなもんうちが知るかいな。一刀の骨が弱いせいや」

 

開き直りやがった…。

 

「それじゃあ、霞には決勝もがんばってもらうわよ」

 

「……しゃーないな、いっちょやったるわ!」

 

「決勝の相手は、凪と秋蘭のどっちかか…」

 

「秋蘭は戦い難いんやけどなぁ〜」

 

「そんなこと言ってちゃ、まだまだね。…ほら、一刀。こっちへいらっしゃい」

 

「えっ、な、何?」

 

「何を驚いているのよ。いいから来なさい」

 

「えぇ、っえ?!俺なんかしたかぁ!?」

 

俺の悲鳴は、準決勝二回戦が始まる歓声に掻き消された。

 

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こうして、大闘技大会は、霞の二度連続の優勝という形で幕を下ろした。

霞自身は、

 

「納得いかん!一刀、再戦や!」

 

「無理だろ!骨折れてんだぞ!」

 

ってな具合で、俺に再挑戦しようとけしかけてくる日々が続いている。

春蘭まで俺と再戦しようだなんて言い出す始末…。

 

「はぁぁ…どうしてうちの将たちはここまで血の気が盛んなのかなぁ…」

 

「あら。あなたもその一人でしょうに」

 

いつの間にか俺の隣に華琳が立っていた。

 

「どうしたんだ、こんなところに」

 

「それは貴方もでしょう。私は、休憩しに来ただけ」

 

嘘付け。さっき凪から華琳が探してるって聞いたぞ…。

まったく…素直じゃないなぁ…。

 

「腕は大丈夫なの?」

 

「あぁ、二月もすれば完治するって。なんでも、綺麗に真っ二つなんだとさ。まったく、霞の力には驚くよ」

 

「私にはあんな事したあなたに驚きよ」

 

「だって仕方ないだろう。あぁして間合いをとるしかなかっ!?」

 

突然、華琳に唇を塞がれた。

 

「…っんふ…はぁ」

 

「な、何だ突然……」

 

「あんまり……無茶ばかりするんじゃないわよ」

 

「……華琳」

 

「誰も貴方に強さは求めていないわ。ただ……そばに居てくれればそれでっ」

 

「…これは俺のわがままなんだ。ただ、俺も誰かを守りたいと思って……」

 

「十分あなたは守っているわ!たくさん……この街だって、あなたが守っているじゃない…」

 

「…それでも、『俺が』守りたいんだ。華琳を……みんなを」

 

「…それで怪我してちゃ、説得力無いわよ……馬鹿」

 

「ん?今なんて…」

 

「なんでもないわよ。ほら、さっさと付いて来なさい」

 

「へっ?お、俺またなんかやらかしたか?」

 

「どれだけ後ろめたいのよ貴方……そうじゃなくて、怪我してるからって仕事が無いわけじゃないわよ」

 

「……えぇっ!」

 

「左腕が使えなくても、右腕さえあれば書類整理はできるわよね?」

 

「い、いやぁ……でも」

 

「問答無用!さっさと働く!」

 

「はっ、はいぃ!」

 

華琳を置いて急いで城に戻る。

 

「まったく……あんなにかっこいいなんて……」

 

後ろから聞こえた華琳の呟きも、すぐに聞こえなくなるぐらい、俺は急いで城に戻った。

 

 

説明
この物語は、一刀が真桜の工房で見つけた、一つの図面から始まった物語である。
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コメント
altail< もりおさんが言ってるのは、この時代に”フェイント”なんて単語が通じるわけないので、春蘭達に対しての説明が無いor春蘭達がこの単語に疑問を持ってないから説明が無いと言ってるのでは?(valeth5)
ここの一刀さん、ものすごく強いですね。そしてかっこいい! やはり一刀さんは鍛え方によったら、物凄い武官・文官になりそうですね。(イマ)
iun< た、確かに……砕けて真っ二つってかなり矛盾してる……。修正しておきますっ(altail)
疑問に思ったのですが骨が砕けたとあったのに綺麗に真っ二つとあるのですが?(jun)
もりおさん<そうですねぇ、細かくは書いていませんが、要するに、体勢が崩れて焦っている為、先の動きに頭が執着しているのです。そのため、本来の春蘭なら反応できたはずの動作も、反応できなかったということですね。フェイントというより、単なる反応速度の問題ですね(汗)(altail)
どうでもいい事かもしれませんがフェイントの説明が無いような気がします(もりお)
本作の内容を崩さず、綺麗に書いているとおもいます。(アルトアイゼン)
誤字報告ありがとうございます。推敲し修正しました。(altail)
同じく!孫策との試合含め続編を期待……あと誤字報告、3ページ目で「だって、このまま〜恋くらいなもんやで」の所、攻撃が「聞く」ではなく「効く」ではないかと(MiTi)
孫策の顔が…のくだりですね。私も期待します(ぬこ助)
続きを期待していいですか〜?気になるセリフ?があったし(羅陰)
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真・恋姫†無双 北郷一刀 魏ルート ct004khm 

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