リリカルなのは×デビルサバイバー GOD編
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 地球から旅立って数時間、カイトはミッドチルダに辿り着いていた。

 クイントと合流後、まず連れて行かれたのは、とある次元世界の観光世界だった。ゼストたちから聞かされた計画によると、管理局の船に乗って行くから目立つ。なら、一般人と共に、ミッドチルダへと行けばいい。という、なんとも至極単純な話だった。

 その弊害として、直行で行く道のりと比べて、数倍ぐらいの時間をかけて、ミッドチルダへと移動することになる。

 

「ここがミッドチルダ……?」

 

 カイトの眼前に広がる世界は、確かに最先端都市と言える程の発展を遂げているといえた。

 しかしそれは、カイトの持つ常識の範囲内での話であり、SFとかでよく見る、宙に浮いている車などがあるわけではなく、ホイールを地につけ走っている。

 

「想像してた光景と違ったかしら?」

 

 クイントの問いかけに、カイトは小さく頷いた。

 そういえば、空を飛んでいる人間も見かけないが……。そのことについて、聞くとクイントは。

 

「一応法律で空を飛ばないように決めているのよ。勿論、緊急時や管理局員はそれに当てはまらないんだけどね」

「そうですか」

 

 世界が違えば法律も変わるということだろう、いやそもそも国が違うだけで法律が違うのだから、当然といえば当然なのだが。

 

「……早速教会に行きたいところだが、今日はもう遅いか」

 

 ゼストが空を、時計を見ながら言う。

 確かにもうすでに、陽は落ちており、この時間に会いに行くのは、非常識だと思えた。

 

「ホテルをこちらで用意してある。ついていてくれ」

 

 ゼストとクイントの後ろについていく形で、カイトは歩いて行く。

 世界が違うからといって、人が違うというわけではないのか、地球人とくくっていいのかは、この場合わからないが、とにかくあまり変わった人はいない。

 

「てっきり、守護騎士たち……というよりザフィーラやアルフに似たのが居ると思った」

 

 と、カイトが言うと。

 

「それは例外中の例外が集まっているだけだ」

 

 と、ゼストは答えた。

 そもそもミッドチルダを加えた次元世界において、小さな小競り合いはあるものの、ロストロギア関連の大きな事件が二回連続、それも非管理世界で起きたのはここ数百年でも異常であるとのこと。

 

「だからこそ、ハラオウン艦長は地球へ留まると決めたのだろう」

 

 最後にゼストはそう締めた。

 あれだけのイレギュラーがあれば、その場に留まるという選択もひとつか。と、カイトは納得した。おそらくは、それだけが理由ではないのだろうけど。

 

「っと、ここが宿だ」

 

 ゼストが急に止まったことで、その後ろを歩いていたカイトは、彼にぶつかりそうになる。

 

「……ここが?」

 

 口を開けて、カイトは呆然と目の前の建物を見ていた。

 

 高級住宅街や、でかいビル群を抜けた先に存在する、場違いとも言える、和風な旅館。

 コンクリートしかなかった、先程までの場所とは違い、大量の草木が生え、まさに風情あふれる旅館といった感じだ。

 

「この感じどこかで……?」

 

 はっきりと示される違和感。その中でカイトは懐かしさがこみ上げるのを、こらえきれないでいた。

 その正体をつかめないで、ちょっとした気持ち悪さを感じていると、隣にいるクイントがこう言った。

 

「こんなところにあるなんてオカシイと思うでしょうけど、似ているでしょう? ハラオウン艦長の私室と」

「うん、確かに」

 

 思い出すのは、先程彼女が言った通り、リンディ・ハラオウンが自身の艦にもつ私室のことだ。SFに登場するような艦に乗っていたら、いきなり純和風の世界に放り込まれたあの奇妙な感覚を、彼は生涯忘れることはないだろう。

 

「とにかくだ」

 

 クイントとカイトの会話を、ゼストが遮るように言う。

 

「今日、キミにはここに泊まってもらうが……問題はないか?」

「ん、問題はないよ。そこらへんの適応力というか、慣れっていうのは日本人が一番もってるものだろうし」

 

 和風、洋風。二つの価値観を併せ持つのは、日本独特の強みと言える。

 確かに、ほかの国でも他国の文化を取り入れ始めているが、自身の家に和と洋。二つのものを取り入れているのは、日本以外には数少ないといえる。

 

「だから問題はないさ」

 

 ニッ、と笑いながらカイトは言った。

 ゼストとクイントは互いに顔を見合わせると、少し苦笑い気味に頷きあった。

 

「では、また明日。午前十時ごろに向かいに来る」

「分かった。それじゃ、また明日」

 

 ゼストとクイントが帰っていくのを、カイトは見送る。否、正しくは彼らが立ち去る方向にある場所……ここからでもよく見えるほど大きな、ビルを見ていた。

 

「多分あそこが……」

 

 途中で置いてあった地図を見て確認する。ミッドチルダの文字を読むことはできないものの、知らない文字の一つの単語を覚えておくことぐらいは出来た。だから、あそこに立っている建物を持つ団体の名を、少年は知っている。

 

「時空管理局の本部か……」

 

 そうつぶやいたあと、彼は旅館の中へと入って行った。

 

* * *

 

「それで、キミは彼をどう見た?」

 

 管理局本部へと帰る道中で、ゼストはクイントにそうたずねていた。

 いきなりの質問に、少し困惑の表情を浮かべたのちに、思案。その少し後に答えを出した。

 

「大人びてますね。噂に聞いた、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、あとは闇の書の主、八神はやて。彼女たちも九才という歳とは思えない。と、言われてますからもしかしたらそれが普通なのかもしれませんけど」

「それについては同感だな。ついでに言えば、クロノ・ハラオウンもあの歳にしては大人びているといえるだろう」

 

 もしかしたら、次代の魔導師が先駆けなのかもしれんな。と、ゼストは言った。

 もしそれが本当だとしたら、喜ばしいことだ。と、クイントは思う。

 

「でも……ただ彼に関してはどうなのでしょうね? それにしては、少しひねくれていると言いますか。普通、あの歳だと管理局のような存在に憧れると思うのですけど」

「かも、しれんな」

 

 どこか感慨深けに……いや、思い出すようにゼストが言った。それに気づいたのか、少しだけ……そう、ほんの少しだけ頬をほころばせて、クイントは尋ねた。

 

「もしかして、ゼストさんもそんな時期が?」

「でなければ、俺もあいつも……管理局に入ってはいないさ」

「あぁ……そうかもしれませんね」

 

 

 先程までの表情は何処へ行ったのか。クイントは勿論、ゼストの表情もかなり沈んだものとなっている。

 

「どちらにしろ。俺も、お前も……あいつも同じだ。管理局を疑っているという意味でな」

「……そうですね」

「さぁ、行くぞ。少々遅くなってしまったが、メディーヌが待っている」

「はいっ」

 

 道は違うものの、彼らもまた戦うものだ。今まで信じていた組織の真実を知るために、再び信じることができる用意なるために、彼らは戦う。

 けれど彼らは……その先に待ち受ける現実を、まだ知る由もない。

 

* * *

 

 なかなかに爽快な朝だ。と、庭先にでたカイトは思った。

 旅館の人に色々と話を聞いたが、魔導の力を利用することによって、管理局に類する世界はかなりクリーンな技術を使用し、現在の生活に役立てている。とのことだ。

 その証拠に彼が今日泊まった、部屋には魔導のちからを宿す機器がそこにあった。電気でもガスでもない力で部屋を暖めるその技術は、今の地球でもっとも欲しいと言えるエネルギーだろう。

 まぁとにかく大事なのは、そういう技術もあって、ミッドチルダという世界の朝は、地球と比べてとても綺麗な空気を吸うことができるということだ。

 

「ついでに飯もうまい! 良いことばっかしってところかな……今のところは」

 

 問題はそう、今日なのだ。

 聖王教会のトップである、ミネロ・グラシアという老女との会合。彼女との会話により、悪魔使いの情報を得ることができるという期待もあると同時に、これが罠であるという可能性を危惧することを忘れてもいけない。

 結局のところ、警戒するしか今のカイトにすることはないのだけど、。

 

「おはようございます、カイト様」

 

 長く、黒い髪を後ろに束ねた女性がカイトに声をかける。彼女こそがこの旅館の女将だ。

 

「あ、おはようございます。女将さん」

「朝食はあと十分ぐらいでできますのでお待ちくださいね」

「あ、はい。わかりました」

 

 機能の晩飯もかなりおいしかった。とカイトは思う。

 それを思うと、朝食もまた期待できるというものだ。

 

「さて、それじゃ部屋にもどるとするかな。あと十分だって言ってたし」

 

 それとあわせても、約束の時間までまだまだある。朝食を食べたら今度は温泉にでも入ろう。そう思いながらカイトはごきげんな様子で歩いて行く。なんだかんだ言って、この状況を楽しんでいるようだった。

 

 

 午前十時、チェックアウトを済ませたカイトは、旅館内にある、休憩ルームでゼストたちを待っていた。

 約束の時間から遅れて、五分後ようやくゼストは来た。

 

「すまない、遅れた」

「いや、気にしてないよ。色々と忙しそうだしね」

 

 管理局員の忙しさについては、クロノから嫌ってほど、カイトは聞かされていた。というより、そんな話をされて、入る気になる奴がいるのなら、会ってみたいものだ。

 

「あれ? 今日はクイントさんいないのか?」

「彼女は今日、授業参観だそうだ」

「じゅ、授業参観……? え、あれ? あの人子持ち?」

「見えないか?」

 

 かなりの勢いで、カイトは首を縦に振る。そもそもクイントの見た目は、若く見積もって"大人びた高校生"、普通に見ても"綺麗な大学生"といったところだ。

 それが既婚、そして子持ちだと知った衝撃は如何程のものだろうか?

 

「……あぁ、管理局って有給あるのか」

「消化率はかなり低いがな」

「あぁうん。予想通りだよ」

 

 さすがは聞きしに勝るブラック企業……いや、ブラック公務と言ったところか。

 微妙な空気が流れるなかで、それを断ち切るように、カイトは行きますかと言った。

 

「車を用意してある。ついてきてくれ」

「了解っす」

 

 ゼストの用意した車に乗り、聖王教会へと向かう。

 車から見るミッドチルダの町並みは、普通の町並みと同じに見えてぜんぜん違う。

 なにせ人が飛んでいるのが見えるから。

 

「やはり違和感を覚えるか?」

 

 車を運転し、前をまっすぐと見ながらゼストが言った。

 

「それは当然ですよ、人が空飛んでるなんて違和感以外のなんでもない」

「そうか、そうかもしれんな」

 

 それで会話は終了した。というより、そもそも寡黙な人間と、自分から会話しようとしない人間が集まれば、こうなるのも当然のことだった。

 

「そういえば人が空飛んでるってことは、何かあったんですかね?」

「おそらくだがな。とはいえ、取り逃がすほうが可能性としては高いだろうな」

 

 断言するように言う、ゼストにカイトは違和感を覚え問いかけた。どうしてだ? と。

 

「空を飛ぶにしても、管理局の上層部に許可を取る必要が出る。さらに言えば、空と地上で覇権争いというのもあってな。地上から空に逃げられると、更に手が付けられなくなり……結果、取り逃がすことになる」

「あぁ……なんというか、愚かな」

 

 ドラマとかでしか聞いたことがない争いが今、カイトの前で説明されていた。

 

「そうだな。俺もそう思う……だが、それが愚かなことだと認識して、変えようとするやつも居る」

「変革者ですか?」

「あぁそうだ。それが本当に上手くいくのかはこれから次第だがな」

「ならいいんじゃないですかね?」

「……む?」

 

 運転中初めて、ゼストがカイトに意識を向けたように思えた。

 

「変えようとする人がいて、もしそれい失敗しても誰かがその意志を受け継ぐんじゃないですかね? ようは、失敗してもその意志を継ぐひとがいることが大事なんじゃないですか?」

「……継ぐものか」

「それが誰なのかは、俺は分からないですけど」

「では、考えておくとしよう」

「はい」

 

 そしてまた会話が途切れた。ただ先程の沈黙とは違うのは……。それが思案していることによる、沈黙である。ということだろう。

 

 

* * *

 

 

「さぁ、着いたぞ。ここが聖王教会だ」

「ここが……?」

 

 確かに教会だと、カイトは思った。なぜなら、紺色のフードを被った女性がそこら辺にいるから。という、しょうもない理由からだった。

 

「でかいなこれは……」

 

 大きい教会の本部というのは、どこもこんなかんじなのか? そう疑ってしまうほど、大きな目の前の建物は大きい。

 とはいえ大きいといっても、昨日見た管理局本部とは違い、縦に大きいわけではなくて、横に大きいといえる。それだけ広大な土地をこの聖王協会という組織は持っているということになる。

 

「ついてきてくれ。ミネロ様に会わせる前に、キミに会わせる女性が居る」

「うん、分かった」

 

 彼についていく中で、少年は周りの建物を、自然を、人を見る。

 先程も言った通り、この教会の土地は広大だ。そこにあるのは、教会という役割をはたすための建物と、シスターたちが泊まる寮、更には、医療を受け持つ建物まであるらしい。それに加えて、森といっても差し支えないほどの自然がここにはある。

 これだけの土地、売値どれぐらいになるのだろう? とか思うのが、俗物の考えなのだろう。

 

「……居たな」

「ん……?」

 

 立ち止まったゼストの視線の先に居る人物が、彼の目的の人物なのだろうか?

 遠くから見ても、彼女が自分の髪をとても大切にしているのがよく分かる。何故なら風にあわせて、綺麗な金色の髪がさらさらとなびいているからだ。

 

「"キシカリム"、例の少年を連れてきたぞ」

「……(キシカリム?)」

 

 それが彼女の名前なのだろうか? だとしたらとてもけったいな名前だ。

 キシカリム、そう呼ばれた女性が、カイトたちの方を見て、こちらの方へと歩いてくる。

 

「ありがとございます、ゼスト様」

「気にしなくていい、これが俺の仕事だからな」

 

 優しく微笑む女性と、仏頂面な男性。

 ある意味対極とも言える彼女たちではあるものの、だからといって、対立しているわけでもなく、むしろ仲の良い相手として認識し、会話している。

 

「それでこちらの少年が……?」

「あぁ、そうだ。ミネロ様の会いたがっている、渦中の少年だ」

「はい、分かりました」

 

 ゼストとの会話を終え、キシカリムがカイトと向き直る。

 

「はじめまして、天音様。私の名前はカリム。カリム・グラシアです」

 

 その人が振り向くほどの、綺麗な金髪に負けないほどの美しい笑みを浮かべ、キシカリム……あらため、カリム・グラシアは言う。

 

* * *

 

 今思えば、これもひとつの運命と言う名の扉を開ける鍵の一つだったのだろう、と思う。

 天音カイト、悪魔使い、カリム・グラシア、聖王教会、闇の書……否、夜天の書。

 過去を紡ぐための鎖が今、ひとつに集おうとしていた。

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閑話休題みたいな感じで。

本当はもっとテンポよくしたいんですけど、ゼスト等を出したということもあるので、ここらへんはじっくりとやっていく次第であります。

説明
2nd Day ミッドチルダ

投稿が遅れてしまい申し訳ないです。
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