真・恋姫†無双 〜孫呉千年の大計〜 第1章 5話
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第1章 黄巾賊討伐・独立編 05話『対峙 荊州黄巾賊』

 

 

 

天和・地和・人和の三人を太平妖術の書を使い操りし十常時の一人・段珪

今や3人の下に導師という立ち位置で黄巾賊を束ねていた

 

秦時代に放置され、後漢の時代になろうとも拠点となりえない為

荒れ果てて放置されいる古城に、この度の黄巾の乱の首謀者・段珪がいた

 

これまで孫呉の斥候が所在を掴めなかった理由ーそれは2週間に1度、拠点を変更する念の入りようで

青州で操りし三姉妹の舞台も、直前告知の不定期開催であった為

明命達斥候が情報を掴んで急行した時には、すでに”もぬけのカラ”なんてことが多々だったのだ

 

この5年、黄巾賊が略奪し吸い上げた富の大半を”お布施”と称して洛陽へと移送していたのである

 

段珪自身は荊州黄巾賊を指揮し、操りし三姉妹は歌を唄い青州黄巾賊を束ねる格好であった

がしかし、北部軍・西部軍の平原国・済南国の相次いでの陥落に、さすがの段珪も頭を悩ませていた

 

今までは青州の状況が悪くなれば、荊州より流入させていたが、今回はそれも封鎖され上手くいっていない

状況はさらに悪化し、荊州の状況すら危うくなってきておる・・・

 

それもこれも・・・”全て奴ら”・・・孫呉がらみか・・・ええい 忌々しい奴らじゃ!

 

死に損ないのくせに・・・油虫の如く、何処からともなく湧いて出てきおる!

この賊もそろそろ潮時かのぉ? 張譲殿へ一度問うてみるか・・・

 

「誰か! この書状を急ぎ、”例の方”へ早急に届けよ」

「ハッ!」

 

そう、この”行為”が徒になるとは・・・この時予想だにしていなかった段珪であった

 

消息を掴めぬが米の流通の一件から、危険な時には必ず動く!と読んだ冥琳

この度の冥琳の策謀と一刀の青州での活躍が、真綿で首をしめるかのように・・・結実しつつあったのである

 

 

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ここは寿春から南へ20里(1里=500M)にある平原 ここで蓮華達、廬江の部隊と合流すべく小休止していた

その合間に、この度の陣容を一刀達の部隊の者達を集め言い渡す一刀

 

「さて・・・今回の配置だが・・・北郷隊は二手に分かれる 槍は左右均等に分け、鶴翼左に弩弓隊 鶴翼右に騎馬弓隊がつく

 鶴翼左指揮官は楓(程普)さん 副官に子虎(徐盛) 参謀は穏

 鶴翼右指揮官は祭さん 副官は珊瑚(朱桓) 参謀は亞莎

 鶴翼中央には蓮華を指揮官とし副に緋蓮さん 後は思春 参謀は冥琳・紅・藍里(諸葛瑾)

 という構成だ 瑠璃は明命の指揮下に入るように・・・」

 

「よし!」

「ハッ!」

「はっはい・・・」

「分かりましたわ」

「わかった」

子虎(徐盛)、珊瑚(朱桓)、亞莎、瑠璃(凌統)、藍里(諸葛瑾)の了解の旨の返事が返ってくる

 

「うん 元気のいい返事だ珊瑚」

「ハッ ありがとうございます!」

と頭を撫でられる珊瑚は、顔を真っ赤に染め一刀の手に身を委ねている

 

「以上で終るが・・・何か質問はあるか?」

と珊瑚を撫でるのを終えた一刀が周りにいる皆を見渡す 

 

「ん? 子虎 何だ?」

「隊長の名が出てないけど何処に?」

「俺は雪蓮の傍だ」

「御大将の元か〜〜〜楽そうでいいな〜」

「あはは すまんな子虎」

「若い頃の苦労は買ってでもしろっていうのに・・・隊長ときたら・・・」

「あはは 子虎 悔しかったら功を立て出世するんだな?」

「も〜隊長のいじわる〜〜〜〜〜〜」

と子虎をイジる一刀達の笑い声が辺りに響く

ここにいる皆が、死線を潜り抜ける一刀と雪蓮を知る事となるのは、もう暫く先の事となる

 

「他に質問・・・はなさそうだな? それでは蓮華達が合流するまでしばらくここで待機だ」

「「ハッ」」

と散会の意思を伝え終えると、一刀は雪蓮達の元へと向かう

 

 

○朱桓 休穆 真名は((珊瑚|さんご))

 

 『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の朱氏の一族

 槍術の腕を買われ、楓の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

 部隊内では『忠犬・珊瑚』の異名がある程、一刀の命令には”絶対”で元気に明るく忠実に仕事をこなす

 

○徐盛 文嚮 真名は((子虎|ことら))

 

 弓術の腕を買われ、祭の指揮下にいた 一刀の部隊編成召集時に選抜された中から、一刀に隊長に抜擢された『呉の三羽烏』の一人

 『人生気楽・極楽』をモットーにする適当な性格であったが、一刀と他隊長である珊瑚と瑠璃・隊長としての責に接していく上で

 徐々に頭角を現し、後に部隊内では『猛虎』と異名される美丈夫に成長を遂げていくこととなる 

 

○諸葛瑾 子瑜 真名は((藍里|あいり))

 

 朱里の姉 実力にバラツキがあった為、水鏡から”猫”と称される

 その後、水鏡と再会時に”猫”が変じて”獅子”になりましたわねと再評価される

 

 天の御遣いの噂を聞きつけた藍里が冥琳の元を訪れ、内政・軍事・外交とそつなくこなす為

 未熟であった一刀の補佐にと転属させられる 

 初期には転属させられた事に不満であったが、一刀に触れ与えられる仕事をこなす内に((蟠|わだかま))りも消え

 一刀に絶大な信頼を寄せるようになる

 後に亞莎が専属軍師につくと、藍里の内政面への寄与が重要視される中で、藍里の器用な才を愛し

 軍師としても積極的に起用している

 

 

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ああ・・・やっと兄様に会える! 早くお会いしたい! 愛しの兄様・・・

そう思うと蓮華の胸の鼓動が高まり張り裂けんばかりになる 嬉しくなり・・・ついつい無意識に馬の手綱を緩めがちになってしまう

 

「姉様だけ・・・兄様といつも一緒! ズルいです!」

 

と以前に蓮華は一度だけ、自身の我侭を雪蓮にだけこぼした事がある

その時は途中で冥琳が仲裁に入り、事なきを得たのだが

雪蓮と冥琳も尊敬する二人に反目してでも少しも譲らない蓮華の姿勢に

一刀は愛されてるわね〜と、腰に両手を当て溜息をつき、感慨深げに苦笑し蓮華を見送る二人であったが・・・

反抗し去っていく”黒”蓮華はというと・・・

 

姉様には全て敵わない・・・だけど兄様だけは・・・兄様の事だけは絶対に譲れないし譲りたくない!

 

といつもは自身の想いを押し殺す事の多い蓮華だが

”黒”蓮華と化し次々と溢れ出るこの想いだけは・・・自身でも制御不能、もはや止める手立てなどなかったのである

止める事が出来る唯一の人間がいるとすれば・・・愛する兄・一刀だけであろう

 

一刀と合流し会えるとわかった時点から、そわそわして仕事が手につかなくなり、結果遅くなり間違いも増える・・・

又、夜の睡眠時間も少なくなってしまう健気な蓮華に、心配し声を度々かける思春であったが、

私は大丈夫よの一点張りで聞き届けてはもらえず・・・

仕方なく思春は王林に相談を持ちかけるものの・・・

 

捨ておけ! お嬢のは病じゃ 坊やを想う恋患いという名のな

 

と一蹴されてしまうに至り、黙って見守るしかしょうがなかった思春である

今も気が逸り、周りが見えておられない事態に・・・溜息をつき先を急ぐ蓮華に追いつくべく馬を走らせる思春

 

「蓮華様!」

と後方より声をかけてくる思春に対し

「なぁに? 思春」

と後方へ機嫌の良い声をかけつつ手綱を絞り、思春が追いつきやすくするように速度を緩める

 

「北郷と会えるのを楽しみにして、先を急いでおられるのは重々承知しております ですが・・・」

「しっ思春! わっ私は そっそんなんじゃ・・・」

と思春に図星を突かれ、頬を赤らめつつ慌てて体裁をつくろうものの・・・

 

「蓮華様・・・大変言い難いことなのですが・・・このままですと合流までに何人脱落いたしますことか・・・」

「脱落? えっ?」

と意味が判らず・・・思春が視線を向ける後方へと・・・蓮華も思春の視線の先を追うと

気息奄々に必死の形相で無言で付き従ってくる皆をみるに至り・・・

「あっ・・・ごめんなさい」

と浮かれて気付かなかった自身の行いを反省し、消えるような声であやまる蓮華

 

「ここで小休止してから合流しましょう」

「承知しました 蓮華様

 皆へ伝え終わりましたら、私は先行して雪蓮様達へ現在の位置情報並びに合流予定時刻等をお伝えしてまいります」

「思春 お願いね」

「ハッ」

と言うと馬首を返し後方へと伝令すべく去っていく思春を、申し訳なさそうに見つめる蓮華であった

 

 

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「姉様 冥琳ご無沙汰しておりました」

 

「ええ 元気そうね」

「お元気そうで何よりです 蓮華様」

と挨拶もそこそこに終えるや

 

「兄様!」

と一刀の胸に目掛けて飛び込んでいく蓮華とおっと・・・と慌てて抱きとめる一刀

蓮華の顔をマジマジと見つめる一刀に対し、疑問符を頭に浮かべつつも、”気付いてくれた”と思い期待が膨らむ蓮華

「ふむ 蓮華 ちゃんと寝ないとダメだぞ?」

「えっ?・・・はっ はい・・・ちゃんと寝ます」

「約束だぞ?」

と一刀に念をおされ頷くものの・・・期待のものとは違った為、眉をひそめシュンとしてしまう蓮華 

 

一刀は蓮華の頭を撫で撫でしつつ

「その・・・なんだ 紅をひいている蓮華 とても綺麗だよ」

 

と一刀は蓮華にだけ聞こえる小声で囁くと

蓮華は瞳を大きく見開き・・・しばしの間、蓮華は一刀を見つめて”きょとん”としているものの・・・

 

気付いてもらえていた事に、サッと頬に赤みが差し、節目がちにチラチラと一刀を見つめ

「本当ですか? 兄様?」

「ああ 本当だとも!」

と笑顔で答えてくれる一刀 

 

今まで萎んでいた華が笑顔の大輪を咲かせ、首に両手を回し一刀へ再度抱きつく蓮華の姿を見て

昨日までの蓮華とは違い、焦燥感というか憑き物?が、すっかり消えうせていることに気付いた

合流前に北郷に頼んで正解であった・・・とホッと胸を撫で下ろし一安心する思春であった

 

 

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合流を果たし再編成を終えた孫呉軍は、最終確認を兼ねて軍議を開いていた・・・

 

「さて・・・通達は終えているだろうが、この度は鶴翼の陣を使う

 鶴翼左指揮官は楓殿 副官に子虎 参謀は穏

 鶴翼右指揮官は祭殿 副官は珊瑚 参謀は亞莎

 鶴翼中央には蓮華様・思春 指揮官とし副に緋蓮様 参謀は私、紅、藍里・・・

 

 大軍に対し鶴翼を使うことに難色を示す者もおろう? 

 本作戦の目的・・・北郷と雪蓮の二人だけで本陣より数里前に位置する

 鶴翼の左右並びに中央は、黄巾賊共を逃がさぬ為の補助的役割にある!

 その事を踏まえた上で、各々の役目を全うして欲しい!

 裏に隠された真の目的は、北郷と雪蓮の名を大陸中に轟かせる為である! 以上だ!」

 

「なんですって!?」

「なんじゃと!?」

「え?」

「ほえ〜〜?」

「隊長・・・」

「・・・そう」

と楓・祭・亞莎・穏・珊瑚・藍里といった将達の反応は様々であったが

その後本陣はザワザワと静まることなく、各将が思い思い意見を述べ合っている

 

 

詳細な作戦内容を聞いた蓮華達反対派は、危険すぎると冥琳へ詰め寄り猛抗議するものの・・・

隣にいた一刀や雪蓮に一喝され諭されては・・・それ以上誰も追求することは出来ず・・・

 

各々が不安を掻き消すかのように、気丈に振舞って配置場所へ戻り指揮してはいるものの・・・

開戦が迫るに連れて、蓮華は心配も不安も増大するに至り、我慢できなくなった蓮華は近くにいた冥琳に声をかける

 

「冥琳 本当に姉様と兄様・・・大丈夫なのよ・・・ね?」

と冥琳にというよりは、蓮華自身を落ち着かせるような問い方であった

 

「私もこの作戦については随分問いました・・・もちろん行う北郷にも雪蓮にも・・・

 がしかし、今の策を実行せねば・・・このままでは・・・残念ながら他国に畏怖を抱かせ続ける事など不可能でしょう」

 

「今の私達はあの敗戦から立ち直ったものの・・・弱小で舐められることはあっても・・・畏怖する勢力など・・・皆無でしょうよ

 その油断を突く・・・というのも手だけれど、被害を最小限に抑えるのには、敵への畏怖と味方への揺るぎ無き忠誠は必要不可欠だわ」

と冥琳の言葉を受けて付け加える緋蓮

 

「母様・・・」

 

「そしてこの5年で資金も蓄え、名声を得られる機もこの度熟しましたわ 

 後は孫呉は強敵だ又は手強いという”風評・名声”を得なければならないのです 

 本来は徐々に積み重ねた上に得られるモノ・・・と言えなくもありませんが・・・

 ですが・・・悠長に待っている訳にはいかない”理由”があるのです 蓮華様

 しかし、現在の私達では、すぐに敵への畏怖と味方の忠誠が揺らいでしまう・・・立ち位置なのです

 それでは私達はいつまで経っても、強者と戦う度毎に味方の離反を不安視し、降伏を唱える輩が煽り立てないとも限りません」

 

「紅・・・」

 

「ですから私達の御旗である”天の御遣い”である北郷と”孫呉の王である雪蓮”には

 大陸中に自他共に認められる存在に、本作戦をもってなってもらうのです・・・」

と冥琳は豆粒ほどの一刀と雪蓮に視線を向け、蓮華に対し胸を張って答える

 

「・・・そう 全て覚悟の上なのね・・・兄様も姉様も・・・皆も なんだか歯痒いわね 冥琳」

と儚げに冥琳へと力なく笑いかける

「はい・・・蓮華様」

 

雪蓮、北郷・・・頼んだぞ!と強く念じる冥琳は、軍師室での一刀と雪蓮を交えた出陣前のやり取りを、目を瞑り回想していた

 

 

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「北郷 正気か!?・・・私は反対だ!黄巾賊相手に蛮勇を奮ってどうする!

 ここでもし万が一があってみろ! もう取り返しがつかんのだぞ?」

 

「・・・冥琳 孫呉に今一番必要なのはなんだ?

 おれや雪蓮の心配をしてくれている事もわかる 蛮勇? 冥琳自身が今一番欲しいものは判っているんだろ? 

 資金は得た・・・機は熟した 後は・・・ 

 味方に勇気・安心感を与え、敵には死への畏怖を与える・・・”一騎当千”という戦場の華だよ」

 

「・・・っ だがな北郷!」

 

「相手が賊1万程度なら蛮勇とも言えよう しかし今回は荊州黄巾賊10万が相手だ 

 死ねば蛮勇・・・だが生還したなら味方を鼓舞し敵に畏怖を与える英雄・・・そうだろう?冥琳

 きっと帰って来るから・・・な?」

と冥琳を諭すように、はにかんだ表情をみせる一刀に対し

「ああ・・・きっと・・・だ・・ぞ?」

と大切な人と親友を死地へ送る苦しみを飲み込み、一刀の胸に頭をちょこんと置き、静かに目を瞑る冥琳

「ああ 信じてくれ!」

冥琳に決意を促すかのように、力強く冥琳へ囁く

 

「雪蓮 いるんだろ? 聞いてた通りだ」

「なっ!」

「あら・・・なぁんだ ばれちゃってたんだ」

と部屋の隅から立ち上がる雪蓮

 

「はぁ〜 気配断ちは”違和感”で俺にはすぐバレる」

「ぶ〜 上手くできたと思ったのに・・・ まぁ 良いもの見れたしいいけれど?

 冥琳が甘えてるとこなんて滅多に見れないから・・・フフッ 新鮮よね〜」

「なっ・・・何を馬鹿なことを・・・」

と顔を赤らめ急いで一刀から離れる冥琳に、雪蓮のからかう行為に”やれやれ”と溜息をつく一刀と笑いを堪える雪蓮

 

「冥琳 私も一刀と同じ意見よ? 私との幼き頃の誓い忘れた訳じゃないでしょ? ”大陸の覇王”という称号こそ 私には相応しいわ!」

一刀の決意、そして虚勢を張る親友・雪蓮の自身への気遣いを、暖かく感じながら感謝しつつ・・・

「はぁ〜〜〜 もういい・・・」

と呆れ果てたように装う冥琳

 

「心配性だな」

「心配性ね」

と一刀、雪蓮に揃って溜息をつかれる

「むぅ〜 余計なお世話だ! これが性分だ! 今更変えられん!」

と二人にムキになって、つい反論してしまう冥琳

 

3人はお互いの顔を見つめあい・・・

「・・・ぷっ」

と誰ともなしに噴出すと

 

「ははは」

「あっはっは〜〜〜〜」

「くっくっくっ」

と軍師室に笑い声が響き渡るのであった

 

回想を終え決意を体中に漲らせた冥琳は、静かに目を開き・・・

「最終確認だ! ”鶴翼の陣を維持しつつ半包囲、一刀と雪蓮の邪魔をしないように援護せよ”

 祭殿、楓殿、各軍師達に通達せよ!」

 

「はっ」

 

「無事に帰って来い・・・北郷、雪蓮」

と呟く冥琳

 

そういえば一刀がこう言っていたな・・・人事を尽くして天命を待つ・・・か

ふっ とてもそんな面持ちではおれんなと苦笑する冥琳

 

そこへ誰かがこちらへ寄って来る気配を感じ、そちらへ視線を向ける冥琳

「冥琳様」

と言うと、明命は静かに冥琳へ報告をする

「うん? 明命か・・・ふむ・・・ふむ・・・何? そうか! でかした!明命」

これだけ大声で褒める冥琳も珍しいと思う程、喜色満面な笑みを浮かべて

「明命! 今は奴は?」

「瑠璃ちゃんが見張っております」

「良し! 明命も急ぎ戻ってそのまま動向を探っておいてくれ

 捕縛できるなら可能な限り頼む 何かあったら随時連絡を遣してくれ」

「はい! 承知いたしました 冥琳様!」

というと何処へともなく素早く消え去っていく明命

 

「これで終幕への準備は全て整った! あとは・・・」

今こそ”人事を尽くして天命を待つ”心境に合致するな・・・と感慨深げな冥琳であった

 

 

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一方、心配をする蓮華・緋蓮・紅達、考えに耽っていた本陣にいる冥琳より、数里前に一刀と雪蓮の二人はいた

 

 

「雪蓮 肩に余計な力が入りすぎている それでは戦う前に疲れてしまうぞ? もう少し力を抜け」

「これはね 一刀の世界でいう”武者震い”ってやつよ 一刀が静かすぎるのよ」

「・・・言葉の使い方間違ってると思うが・・・それに静か過ぎるってあのな 郷流『明鏡止水の心』 最初に教えただろ?」

「え?・・・うんうん ごうりゅう・めいきょうしすい・・・のこころ・・・もっもちろん憶えているわよ?」

「・・・雪蓮には精神修養の鍛錬の方が重要だな! うん」

「ぶ〜 一刀どういう意味よ それ・・・」

 

そこへ大軍で押し寄せて来ていた黄巾賊の先遣隊の者が数名、一刀達二人の元へとやってくる

「なんだ〜? おまえら 二人だけで!」

「フュ〜〜〜 そこの女はいいな! 女をおいて男はどっかへすっこんでいろ!」

と思い思いの欲望を吐き下種な笑いを飛ばす

 

「ハァ〜 悪いけれど、これっっっぽっちも趣味じゃないのよね〜貴方達」

「君達には悪いけど・・・ここで死んでくれる?」

と呆れ果てたように挑発し南海覇王を抜き放つ雪蓮と

丁寧な口調でありながら、目を細め徐々に殺気を開放し桜花と月影を抜く一刀の大胆さに飲まれて、足が震え動けなくなってしまう賊達

 

「ぐっ なんだこいつら・・・あんだと? 舐めやがって! てめぇら! やっちまうぞ!」

「「オオォーーーーーーーーーーーー!」」

という怒声と共に、一刀と雪蓮の二人へ殺到する黄巾賊の先遣隊の者達

 

「雪蓮 俺の背は任せる いくぞ!」

「ええ! ふふ ゾクゾクするわ・・・私の背もよろしくね 旦那様!」

と一声吼えると、迫り来る集団へと身を乗り出す一刀と雪蓮の二人

 

 

こうして荊州黄巾賊滅亡への火蓋が切って落とされた・・・

 

 

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■■■【オリジナル人物紹介】■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 ○孫堅 文台 真名は緋蓮(ヒレン) 

 

   春秋時代の兵家・孫武の子孫を称し、各地で起こった主導権争いに介入し

   「江東の虎」の異名で各地の豪族を震撼させた

   優秀な人材を率い転戦、やがて軍閥化し孫家の基礎を築いた

 

 

 ○張紘 子綱 真名は紅(コウ) 

 

  呉国の軍師の一人で主に外交を担当。 魏の程c(風)の呉版と考えていただけると理解しやすいだろう

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、姉の張昭と共に臣に迎え入れられる

  張昭と共に『江東の二張』と称される賢人

 

  ※史実では、呉郡の四性でも張昭と兄弟でもありませんのでお間違い無きように。。。 

    呉郡の四性の中で張温しか見当たらなかった為、雪月の”脳内設定”です

 

 ○魯粛 子敬 真名は琥珀(コハク)

 

   普段は思慮深く人当りも良い娘で、政略的思考を得意とし、商人ネットワークを駆使し情報収集・謀略を行う

   発明に携わる時、人格と言葉遣いが変化し、人格は燃える闘魂?状態、言葉遣いは関西弁?風の暑苦しい人に変化する

   このことから「魯家の狂娘・後に発明の鬼娘」と噂される

 

   ※穏(陸遜)は本をトリガーとして発情しちゃいますが、、琥珀(魯粛)は発明に燃えると・・・燃える闘魂に変身って感じです

 

 ○張昭 子布 真名は王林(オウリン) 

 

  呉国の軍師の一人で主に内政を担当。 冥琳とはライバル同士で互いに意識する間柄である

   『呉郡の四姓』と呼ばれる有力豪族の張氏の出 雪蓮直々に出向き、妹の紅(張紘)と共に臣に迎え入れられる

  張紘と共に『江東の二張』と称される賢人

 

   妹の紅は「人情の機微を捉える」に対して「政(まつりごと)の機微を捉える」という感じでしょうか

 

 ○程普 徳謀 真名は楓(カエデ)

 

   緋蓮旗揚げ時よりの古参武将であり、祭と並ぶ呉の柱石の一人 「鉄脊蛇矛」を愛用武器に戦場を駆け抜ける猛将としても有名

   祭ほどの華々しい戦果はないが、”いぶし銀”と評するに値する数々の孫呉の窮地を救う働きをする

   部下達からは”程公”ならぬ『程嬢』と呼ばれる愛称で皆から慕われている

 

   真名は・・・素案を考えていた時に見ていた、某アニメの魅力的な師匠から一字拝借致しました・・・

   

 ○凌統 公績 真名は瑠璃 

 

   荊州での孫呉崩壊時(※外伝『砂上の楼閣』)に親衛隊・副長であった父・凌操を亡くし、贈った鈴をもった仇がいると

   知った凌統は、甘寧に対して仇討ちを試みるものの・・・敵わず返り討ちにあう間際に、一刀に救われ拾われることとなる

   以来、父の面影をもった一刀と母に対してだけは心を許すものの・・・未だ、父の死の傷を心に負ったまま日々を暮らしている

 

   姿はポニーテールに短く纏めた栗色の髪を靡かせて、山吹色を基調とした服に身を包んでいる小柄な少女

   (背丈は朱里や雛里と同じくらい) 真名の由来で目が瑠璃色という裏設定もございます

 

 

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【あとがき】

 

常連の読者の皆様、お初の皆様 こんばんは雪月でございます

年を明けてもお気に入り登録数が増えております嬉しい事態に、皆様に改めて御礼申し上げます

 

ようやく黄巾編のクライマックスが切って落とされました

次回の予告として、10万の兵に挑む一刀と雪蓮の運命やいかに!?というところでしょうか

毎度おなじみ〜な宣伝な気がしなくもありません

 

今回の話の部分は、自身でも幾度となく手直ししている処でもありまして

文章が短くて仕方無しに切った処もあり、未だに納得できる展開を描ききれてないな〜という自身の反省点でもあります

それを皆様の目に晒しちゃってる時点でお察しではあります(泣

 

新章に移り、中々出せなかったヒロインであるはずの蓮華さんと一刀親衛隊

・・・じゃなかった呉の三羽烏と瑾さんをやっと揃って出せました

 

まだまだ大活躍とまではいきませんが・・・これから徐々に出番と活躍が増えることとなると思います

 

風向きが変わり仕事が忙しくなってきて、一週間更新がキツくなって参りましたが・・・

某さんの有名なセリフ、まだ・・・まだ終らんよ!という気概をもって、これからも制作して参ります

コメント・ご指摘・なんでも構いませんのでお気軽にカキコください 

私に次回作を制作するお力をお与えくださいませ お待ちしております

 

それではヾ(*'-'*) 次回更新までマタネ〜♪

説明
常連の皆様&お初の方もこんばんは 雪月です

この作品は真・恋姫†無双・恋姫†無双の2次創作となっております
主人公は北郷一刀 メインヒロインは雪蓮と蓮華と仲間達でお送りしております
※猶一刀君はチート仕様の為、嫌いな方はご注意を

更新に関しましては”1週間に1投稿”を目標に、変更になるようでしたら、その都度お知らせ致します

今回からいよいよ黄巾賊完結のフィナレーレへ向けた動きへと移ってきております
真・恋姫†無双 〜孫呉千年の大計〜 第1章 5話『対峙 荊州黄巾賊』開幕となります これからも作品共々、よろしくお願い致します 

※猶、オリジナル武将に関する『人物紹介』は下記に用意してございます そちらをご参照くださいませ
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コメント
>下記続き @楽しみな作品が更新されてなくてショボン・・・なんて事を良く体験した身の上ですので、ダメな時もあるかもしれませんが、クオリティーを落とさずに皆様へお届けできたな〜と思っております ダメだったその際にはお許しを〜 (雪月)
>ぱちしえ様 次回は一刀と雪蓮が大暴れ!! フフフ ゲスト?もちゃんと用意しておりますのでお楽しみに!ってところです(雪月)
>バズズ様 いつもご感想ありがとうございます ふふふ 喜んでくださり制作冥利に尽きます 次回も楽しんで戴けますよう仕込んでおります@w@ (雪月)
>下記続き そろそろ後半の紹介文は要らないのではと思う今日この頃。まあ気になった程度なので というご指摘ありがとうございます ご新規の方がどれだけいらっしゃるのか、把握できないので次回から少し削って様子をみてみますね(雪月)
>Mr.ハリマエ様 増え続けるどこまでーもシャオはいまだ出ず というご指摘なのですが、今回参戦していない王林(張昭)さんが、小蓮さんの教育しているという裏設定だったりします 鋭いご指摘でビックリいたしました 出番はもう少し後になるかと思います あと少しのご辛抱を・・・(雪月)
>りよう様 孫呉陣のオリキャラ随分増えました 皆様に愛される魅力溢れるキャラに育てられたらと思います(雪月)
>りよう様 Mr.ハリマエ様 バズズ様 ぱちしえ様 いつも貴重なコメント・ご意見・ご指摘ありがとうございます(雪月)
次回は一刀と雪蓮が大暴れ!!非常に楽しみですが週一更新にこだわらずマイペースで頑張ってくださいヾ(゜ー゜ゞ)( 尸ー゜)尸(ぱちしえ)
安定の黒蓮華、甘える冥琳、雪蓮の旦那様発言・・・ ツボを押さえつつ黄巾編クライマックスへの加速 良い! 非常に良い!(バズズ)
増え続けるどこまでーもシャオはいまだ出ず・・・・そろそろ後半の紹介文は要らないのではと思う今日この頃。まあ気になった程度なので(黄昏☆ハリマエ)
オリキャラが増えてる(゜ロ゜)さらに楽しみになりますた(*^^*)(りよう)
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