ゼロの使い魔 〜魔法世界をかける疾風〜 第二十二話
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「割とマジですまんかった」

 

と、ある程度まで修復された学院長室で土下座をしているのはオスマン氏

そしてそれを厳しい目で睨み付けているのは、義母上とエレン。対照的に義父上は慈愛に満ちたような目で見つめている

余談だが、学院長室の修復をしたのは俺とエレン、義父上だ。錬金マジ便利

 

「オスマン殿。気持ちは分かりますが抑えてくだされ。何せ今日は婚約の報告の為だけに来た訳ではないのですから」

「あなた?もしや妾が欲しかったなどと言う訳ではありませんよね?」

「無論だカリーヌよ。だから杖を下げてくれ頼むから」

 

文字通りの夫婦漫才を繰り広げている二人から意図的に視線をそらし、俺とエレンは学院長に話しかける

 

「今回はアルビオンで起きている内乱についての会議に来たのです」

「貴族派…『レコン・キスタ』が打ち勝てば、戦火は確実にこのトリステインまで及びます」

 

学院長は姿勢を改め、椅子に深く座りその豊かな髭を撫ぜながら返答する

 

「ふむ、その事なら儂も聞き及んでおる。なんでもレコン・キスタの総司令官は『虚無』を語っておるそうじゃ」

 

まだ反乱が表向きになっていないこの状況で、そこまでの情報を持っているとは…

学院長の手際のよさに思わず舌を巻く

しかしその情報は正確ではない

レコン・キスタ総司令官、『オリヴァー・クロムウェル』の虚無は紛い物だ

 

「…虚無に関連してですが学院長とエレン。そして誰よりも、義父上と義母上のお耳に入れておきたい事があります」

 

俺の放った言葉に興味を引かれて、その目を吊り上げるオスマン氏

そしてやっとこさ夫婦漫才を止めて此方に向き直る義両親。エレンは不思議そうな顔で俺の横顔を見ている

 

「私の左手と右手。そして額と胸に宿ったこのルーン達。学院長はこのルーンを『始祖の使い魔』のルーンと呼びました」

 

上着を肌蹴て胸のルーンを晒す。すぐに服を直し、髪をかきあげて額のルーンと両手のルーンを見せる

 

エレンは僅かに顔を赤らめ、その他の三人は鍛え上げられた肉体に目を見張る

特に義母上の目は獲物を狙う肉食獣の目だ

話を戻して、俺のルーンに目を奪われたのは他でもないエレン。彼女の本職は『((王立魔法研究所|アカデミー))』の研究者だ

伝承で伝え聞いたことしかないルーンに興味津々なのだろう

だが流石にここで調査をする訳にもいかないのか、それとも場の重要な空気を読んだのか、何も言ってはこない

 

「始祖ブリミルの扱う系統は『虚無』だったと聞いております。何故その虚無のルーンが私に宿ったのか?」

 

学院長は何かしかめっ面をして顔を背けている。彼は原作でもルイズが虚無だということに気付いていた節があった

この世界でも知っていたのだろう。しかしそれを軍事利用される危険性を考えて表向きにはしなかった

本当にこの人の観察眼には恐れ入る

 

「簡単なことです。私の主人、ルイズは魔法を使えないと言っていました。それが間違いだったのです。今まで使い手が始祖以外にはいないとされてきた『虚無』の系統。その使い手が現れたとして、誰がわかりますか?『君の系統は虚無だ。おめでとう』などと言える人はいますか?いないでしょう。今生きている者で、誰も虚無系統の魔法を見たことのある者はいないのですから」

 

虚無の担い手に関する考察を一息で言い切る

ヴァリエール家の面々は一斉にはっとした表情で俺を見る

学院長は相変わらず渋い顔ではあったが

 

「―――ルイズの系統は『虚無』です。祖が王の庶子であると言うヴァリエール公爵家の娘ならば、各国の王族に受け継がれたという虚無に目覚めても何ら不思議ではありません」

 

その発言に対する一同の反応は様々であった

 

やはり渋い顔で発言者を見る者

 

娘の系統がはっきりし、しかしそれに対する稽古を如何すれば良いのか悩む者

 

自身の娘が伝説の系統だったことに歓喜する親バkゲフンゲフン…歓喜する者

 

そして妹も魔法が使える、という事に安堵する者

 

 

 

最終的にヴァリエール家全員の感情が爆発し、数分間会議にならない状況になってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…話が随分横道に逸れてしまいましたが、私の持つ情報では虚無は各国の王族に受け継がれました。ならばその使い手も自然王族であるはず。しかしレコン・キスタの総司令官は王族ではありません」

 

俺の発言にまたも一同が驚愕の念をあらわにする

何故なら今の発言は、すでに反乱の首謀者の見当がついていると言ってもよかったからだ

 

「総司令官の名は『オリヴァー・クロムウェル』。これは本名ですが、言うには及ばずクロムウェルなどと言うファミリーネームの王族などおりません」

「つまりは、その者が扱う虚無の魔法は偽者だと言うのじゃな?」

 

学院長の問いに無言で首を縦に振る

義父上は、それを前提に作戦を考える

 

「確かに状況証拠になりうるな。しかしそれだけで煽られた民衆や貴族達の目を覚まさせる事ができるか…」

「私の意見としては何年も準備を重ねてきたとしても、幾らなんでもレコン・キスタの侵攻速度は速すぎます。おそらく洗脳の効果がある魔法か、マジック・アイテムを用いているものかと」

 

クロムウェルは洗脳そして死者に仮初の命を吹き込む、水の精霊の秘宝『アンドバリの指輪』をもってしてレコン・キスタの総司令官となっている

逆を言えば、アンドバリの指輪さえ奪還すればレコン・キスタは勝手に瓦解する

 

「その可能性が高いか。ならばクロムウェルとやらはスクウェアクラスの水メイジかもしれぬな。洗脳など、並大抵のメイジが使える魔法ではない」

 

これも間違った想定だが、可能性に備えるのは間違ってはいない。今はその仮定で作戦を突き詰めていくのが良いだろう

 

 

 

 

 

義父上と義母上、さらに俺と学院長で作戦の大部分の詳細を詰め終わった、まさにその時

ここ数日で聞きなれた、婚約者達の怒声と悲鳴が聞こえてきた

 

「学院長!」

「分かっておるわ!」

 

学院長を呼ぶと彼は既に『遠見の鏡』を発動していた

全員が鏡に映し出された像を覗き込む

そこには―――

 

 

 

 

―――男子学生に囲まれて、目に涙を浮かべているカトレアとティファ。それに対して激昂しているルイズとマチルダが映っていた

 

大体の状況を把握し、学院長室の窓から飛び降りる

地面に着地する際の衝撃はうまく膝を使って緩和して疾走する

 

その背中に、エレンの声援を受けながら

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更新が遅れて誠に申し訳ありません

書き溜めていたデータが消去されてしまい、ただいま絶賛書き直し中です

 

さてアルビオン攻略を目指す((主人公|ハヤテ))

しかしアルビオンの前に婚約者達と((主人|義妹))に危機が迫る

果たしてハヤテは彼女らを守れるのか?

 

次回の更新をお待ちください

説明
第二十二話です。更新が遅れて申し訳ありません。
お楽しみいただければ幸いです
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コメント
ヒマジソさまコメントありがとうございます。そのようなお言葉をかけてくれるだけで、自分の執筆意欲は湧いてきます!(ディアーリーズ)
いつも楽しく拝読しております。ゼロ魔の二次では気に入っている部類なのでこれからも楽しみにしております。(ヒマジソ)
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