アルコールのせい、ではない
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 眠い。

 頭がぼんやりとする。

 思考がまとまらなくて視線がふわふわと彷徨ってうまく焦点が定まらない。

 飲みすぎたか。こたつの向こうにごろごろとビール瓶が転がっているのが見えるな。

 二人で飲んでもたぶん半分以上飲んだのは俺だ。本田に勧められて日本酒も結構飲んだ気がする。

 こたつに腰までもぐってごろごろするとなかなかに気持ちがいい。このまま寝てしまってもいいかもしれない。

 本田が上から覗き込んで何か言っている。

 

「風邪をひきますよ。お布団に行きましょうよ。」

 

 意味が頭に入ってこない。

 今でも不思議に思うのだが、あの黒い瞳は本当に見えているのだろうか。

 なんだか細胞からできたなにかではなくて、特殊な鉱物をきれいに磨いたようにみえる。黒曜、黒真珠、オニキス…どれも違う、もっときれいなでもどこかくすんだなにか……。

 また何か言って……どこに行くんだ、もう少し見ていたいんだが……ほら、こっちに。

 

「ちょっ、起きたと思ったらなんですか。お水もってきますから離してくださいよ。」

 

 じっとしてくれないともっとよく見えない。

 真っ赤になった頬がさわり心地がいい。

 む、髪もさらさらと指をすり抜けてこれもまた……。

 

「ルートヴィッヒさん、なんですかいったい。−−−! −−。」

 

 うん。なんだろう。

 一生懸命なにか言っているけれども耳を素通りしていく。

 うんうん、まあそれはいいとしてだ。

 いつにもましてよく動く唇が気になる。

 やわらかいな……頬よりももっとこう……。

 男の唇なんてもっとがさがさしてるものだと思っていたのだが、本田は違うらしい。

 黒い髪白い肌赤い唇といえば白雪姫か。

 姫なんて言ったら怒りそうだ。

 死体に口付る趣味はないが、生きている本田なら……。

 

「ふぇ、ちかっ、近いです!ルートさ、んんんっぅっ!」

 

 唇も舌もやわらかくて、少しだけさっき飲んだ辛口の酒の味がする。

 きつく閉じた目の端に小さく涙の粒がういていて、かわいい。

 正直ゾクゾクする。

 もう少しそういう顔を見たい。

 でも髪をひっぱらられて痛い。

 

「っはぁっ。も、責任とってもらいますよ!」

 

 息をきらせて赤い顔で睨んでくる。

 ちっとも怖くないのをこいつはわかってないのか。

 それに、もちろん答えはJaだ。

 

「え?」

 

 Jaと言ったんだ。聞こえてるだろう。

 ここで責任をとらずにどこでとるというのだ。

 渡りに船?

 もうすこし気のきいたシチュエーションを考えていたのだが仕方ない。

 このチャンスを逃すわけにはいかないからな。

 困って固まっているのかとおもったが、ひたすら顔を赤くして口をぱくぱくしている。

 俺に責任をとられるのがいやなのか?

 

「そ、そんなことはないです。私も責任をとっていただくならルートヴィッヒさんが……。」

 

 ゆでだこのようになって肩口に顔をうずめてきた。

 腹立たしいくらいにかわいい。

 持って帰って地下室にしまっておきたい。

 よし、ここはひとつ。

 

「あの、どこに……。」

 

 布団に行けっていっていただろう?

 酔った勢いではないことをそこで証明してやるから。

 抱き上げてもじっとしているように。

 わかったらJaだ。

 

「……Ja。」

 

 ………。

 移動の時間が惜しくなったんでここでいいか?

 

 

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よっぱらい隊長 どの文を口に出しているかはだいたいご想像におまかせ
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