アルコールのせい、ではないのです
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 ふかふかと気持ちのいいソファーに転がって暖炉の火をぼんやりとみつめていると、つい眠ってしまいそうになります。

 お酒がはいっているせいですかね。

 テーブルを見るとビールとワインの瓶が数本置かれています。

 久しぶりにルートヴィッヒさんのお宅に停めていただいて二人で飲んでいたら、うれしくてつい飲みすぎてしまいました。

 ルートヴィッヒさんよりも飲んでいないというのに、思考と体がふわふわと雲の上にあるようでうまく働きません。

 おや。

 ルートヴィッヒさんが私の顔を覗き込んで何かおっしゃっていますね。

 なんでしょう。

 

「大丈夫か?俺も調子にのって飲ませすぎてしまったな。すまない。」

 

 申し訳なさそうな顔をしてらっしゃいますねぇ。

 

 自分で飲んだんですからかまわないんですよ。

 

 そう言っても、「だが」とかなんとか言って困ったように目尻を下げる彼がかわいらしくてつい頬が緩んでしまいます。

 

 どうしました?顔が赤いですけど。

 

 それにしても綺麗な瞳ですね。

 氷のような、空のような、海のような。

 どれで表したらいいのかわかりませんが。

 これが私のものになったらいいのになぁ。なんて。

 あ。

 そっぽ向かないでくださいよ。

 

 ね、どこにいくんですか?おいてっちゃいやです。

 袖を掴んだだけで固まらないでくださいな。

 

 「し、仕方のないやつだな。ベッドに連れていってやるからもう寝ろ。」

 

 おや。肩を貸してくれるんですね。

 抱きおこされるとルートヴィッヒさんの体温が伝わってきて、すごく暖かいです。

 でも動きたくないですよ。もうちょっとこのままがいいです。

 

「な、何を言っているんだお前は。もうちょっとだな……。」

 

 こっちをみないでブツブツ言う彼になんだか腹が立って、いつもより動きのぎこちない唇に噛み付いてやりました。

 

「ー−−−−!」

 

 うふふ。ルートヴィッヒさん、まるでゆでだこのようです。

 肌が白くて血の巡りがよくわかります。

 ご満悦でちろりと舐めると唇に残ったおつまみにしていたチョコレートの味がしました。

 あれ?これはもしかして。

 

「お、お、前なっ!」

 

 朝になったらすごく鎖国したくなる予感がするのですが、今は頭も体もふわふわとして夢の中にいるようで。

 本当に夢になる前にきちんとしておかないといけませんよね。

 

 私、接吻してしまいました。

 ねえ、ルートヴィッヒさん。責任とってくださいますか?

 

 今なら冗談にできる気がしますし。

 お酒のせいで忘れたふりもできますから。

 だから。

 

「も、もちろんだ!」

 

 おや、これは。

 でも嬉しい予想外です。

 真っ赤になっている彼の首に腕をまわしてだきついてやります。

 

「菊。」

 

 もう。急に名前で呼ばれたらびっくりするじゃないですか。心臓に悪い。

 

「ベッドにだな……。」

 

 声色がいつもと違いますよ。聞いたことがない声ですこれは。

 少し掠れた低い声。

 ドキドキどころかぞくぞくするんですけれど。

 ここで寝たふりをするべきかどうか一瞬迷ってしまいました。

 けど。

 

 やさしくしてくださいね。

 

 おもいきりの笑顔で返すと何故かソファーの上に下ろされました。

 あれ?

 

「すまん。ここでいいか?」

 

 もう。仕方のない人ですね。

 あまりいじめないでくださいね。

 ルートさん。

 

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