酒!恋姫無双~鬼の御子使い~ 4話
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島津「・・・暇じゃ。」

 

?耶「・・・お館、少しは落ち着いてください。」

 

 

益州を出てからというもの島津は落ち着かない様子でずっとそわそわしていた。

 

島津「ん〜、なんか嫌〜な予感がするんじゃがのう・・・」

 

 

そう、益州を出てからというもの島津はずっと背中をピリピリとした感覚に襲われていた。

 

島津「この感覚・・・まさか・・・な」

 

 

島津自身はこれまでに一度だけこの感覚に襲われたことがある・・・それは・・・・

 

 

 

 

 

 

 

本多忠勝の殺気を正面から受けたときである・・・・

 

 

島津(しかし、あれほどの武人がいるとは・・・・呂奉先ならあるいはか・・・のう)

 

 

この先に何があるのか・・・不安と期待をかんじていた島津であった。

 

 

?耶(凛々しい顔になったり懐かしそうな顔したり・・・今日のお館は百面相だなー。)

 

?耶は今日も相変わらずだったり。

 

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それから、しばらく進んだ頃・・・

 

島津「ん??耶よ、こっちに何か向かってきてないか?」

 

それを聞いた?耶が遠くを見て目を細める。

 

?耶「あー、なんか結構な勢いでこっちに来ますね・・・荷車で。」

 

ふむ、荷車であれだけの速さで走るか・・・・なんか面倒そうなことになりそうじゃのう。

 

?耶「あ!その後ろに一部隊!深紅の呂旗!呂布の部隊です!」

 

呂布は董卓の将軍じゃったはず・・・洛陽で何かあったのかのう?

 

島津「?耶、ちと博打に付き合ってくれんか?」

 

?耶「またですか・・・承知です。」

 

荷車はもうそこまで迫っている。

 

馬を降りて三槍のうち最も切れ味のある「蜻蛉切」を引き抜く。

 

?耶「あれが・・・蜻蛉切。」

 

一度、島津の使っていた「御手杵」は見たことがあるが、それよりは短いものの刀身は血で鈍くなっておらず打ちたてのような輝きをしていた。

 

?耶「綺麗・・・」

 

そして、それを構える島津もまた、いつものような陽気な雰囲気などなく真剣そのものだった。

 

そして、馬がものすごい勢いで島津と擦れ違おうとしたとき・・・

 

 

島津「・・・ふっ!」

 

 

島津が息を吐いたような音がして数秒後・・・馬と荷車は切り離された。

 

馬と荷車を繋いでいたはずの木材は綺麗に切れており、気づいた運転手が慌てて止める。

 

?耶「み・・・見えなかった・・・」

 

?耶は島津の剣速に尊敬すると同時に・・・恐怖した。

あの人を敵に回したらどうなるか・・・そう考えたとき、答えは一つしかなかった。

 

?耶(私は斬られたことにも気づかず死ぬのか・・・)

 

しかし、それと同時にもうひとつの答えも浮かんだ。

 

?耶(お館は、あの力と同じくらい優しいお方だ。

   私が非道な行いをしなければ、あの方に斬られることもない・・・多分、きっと。」

 

あまり確証のある答えではなかったが。

 

 

島津「?耶、なにしとるんじゃ?こっちに来て手伝わんか!」

 

?耶「クスッ・・・はーい!今行きますよ、お館!」

 

そう、今はただお館のもとで学ぶことにしよう。

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島津が切り離した荷車から一人の老人ともう一人小さな女の子が出てきた・・・その目は何も写していない。

 

島津(これは・・・まずいのう。)

 

島津はあんな目をしている民たちを多く見たことがる。

 

家族を目の前で殺された者・・・

人を殺し、闇に飲まれた物・・・

そして、生きることに絶望した者・・・

 

戦国の世では仕方のないこと・・・そう、割り切る人も多く事実それが一番利口なのである。

しかし、島津が追い求めるのは優しい鬼。

人の死に悲しみ、人の幸せに笑い、世の平穏に酔う、そんな鬼。

 

島津(この世界に来てから難儀なものよのう・・・だが、悪くない。)

 

これもまた博打・・・あの子を救えなければ自分の負け。

目の前の女の子ひとり救えなくて、世を平和にする優しい鬼など寝言もいいとこである。

 

そうして考えているあいだにも時間は進む。

 

兵士「張譲様!ご無事ですか!?」

 

張譲「馬鹿者!わしの名前を口にするなといったじゃろうが!」

 

兵士「すっすいません!」

 

島津「あー、二人で漫才してるとこ悪いが追っ手が来たぞ?」

 

ニヤニヤしながら言う島津に?耶がため息をつく。

 

張譲「なっなんじゃと!?おい、お前ここで奴らを食い止めろ!?」

 

兵士「なっ!?無茶言わないでください!相手は呂布ですよ!」

 

張譲「ちっ、役立たずめ・・・おい、そこのお前!」

 

島津「ん?儂か?」

 

と、惚けたような声を出す。

 

張譲「そうだ、お前だ!金でも女でも何でもやる、呂布を足止めしろ!」

 

島津「ふむ、まぁ儂ならできるだろうよ。」

 

そう答える島津に驚愕する?耶に、大笑いをする張譲。

 

張譲「そうか!なら頼ん「じゃがな」・・・は?」

 

急に話し出す島津に怪訝な顔をする張譲。

 

島津「儂には嫌いなものがあってのう。

   一つ、頼み事をするのに礼儀がなっていないやつ。

   一つ、自分の責任を人に擦り付けて保身ばかり気にするやつ。

   そして、最後は・・・女を危険な目に合わせるやつ。

   この三つのどれかにでも触れた奴には絶対従わないと生涯決めてるんでね。

   悪いが、儂はその話降りさせてもらうぞ。」

 

それに・・・と言葉をつなげる島津。

 

 

島津「時間稼ぎは十分出来たようじゃしの・・・そうじゃろう、呂布よ。」

 

そう声を掛けると馬から降りて歩み寄ってくる呂布。

 

呂布「ん・・・ありがと。」

 

小さく、だがしっかりと礼を言う呂布にうむうむと頷く島津。

 

島津(しかし、これが呂布か・・・確かに武の才に関しては郡を抜くが・・・それだけじゃのう。)

 

これが呂布に対する島津の第一印象・・・しかし・・・

 

呂布「お前・・・月、悲しませた・・・殺す」

 

殺す・・・この言葉を発した瞬間に空気が重くなった。

周りの兵は顔を歪め、?耶ですら冷や汗を浮かべていた。

 

?耶(なっ・・・これが呂布の殺気。足が自然と震えてきて逃げ出したくなるってのに

 

   

 

 

  なんで!お館は呂布のとなりでニヤニヤできるんだよ!?)

 

?耶心からの叫びである。

 

その頃の島津、

 

 

島津(いやいや、これは驚いた・・・まさか、これほどまでに人外離れしとるとは・・・

   じゃが、やはり将としてはイマイチじゃのう・・・兵まで怯えさせてどうするのやら。)

 

はぁっとため息をつくと呂布に告げる。

 

島津「呂布よ・・・一旦その殺気を沈めんか。お主の部下が怯えておるぞ。」

 

呂布「・・・ん。みんな、ごめん。」

 

島津の声を聞いて殺気を収める呂布・・・兵たちは密かに島津に感謝していた。

 

一方島津は素直に謝る呂布におじいちゃんが孫を見るような生暖かい目をしていた。

 

島津(儂にも孫がおったらこんな感じじゃったのかのう・・・ないな。)

 

自分で想像して無いという結論に至って若干憂鬱になっていた。

 

蚊帳の外にされた張譲は怒り心頭させ、暴挙に出る!

 

張譲「おい、お前たち!こいつがどうなってもいいのか!」

 

となりの少女の首に剣の刃を当てる。

 

その瞬間、呂布が殺気を溢れさせるが、その頭を軽く優しく撫でる呂布。

 

呂布の殺気は霧散し、兵士たちは安堵するが・・・次の瞬間、それよりも大きな殺気に襲われた。

 

兵たちは地面に膝を着き・・・

?耶はその目に涙を浮かべながら殺気を立てている人を見つめ・・・

そして、呂布ですらその殺気に一歩引いてしまった。

 

その殺気は、先程まで優しい顔で呂布の頭を撫でていた島津からだった。

 

島津「・・・・・おぉっっと!すまんすまん!」

 

島津がそう言って殺気を収める。

 

兵たちは深く息を吸い、?耶は頬を伝っていた汗を拭い、呂布は・・・目をキラキラさせていた。

 

呂布「お前・・・恋より強い?」

 

目をキラキラさせて聞いてくる呂布に苦笑する島津。

 

島津「さぁどうじゃろうな・・・少なくとも将としてならお主より優秀じゃと思うが?」

 

呂布「・・・?」

 

この様子をみて島津は、この子の周りに軍師はいないのかと不安になった。

 

島津「はぁ、いいか?殺気をただ溢れさせては味方に影響する。ならば、どうするか。

   なに、簡単なことよ。殺気を相手だけに向ければいい。

   あの、張譲とやらにぶつけてみるがいい。今は儂の殺気で気絶しておるがお主の殺気があの者   だけに向かえば驚いて起きるだろうよ。」

 

呂布「・・・ん。」

 

ニヤニヤと言う島津に素直に頷く呂布・・・ある意味最強のコンビである。

 

そして殺気を溢れさせる呂布・・・まだ、絞れていない。

 

島津「まだ、溢れておる。相手を睨むように、向ける相手だけに集中するんじゃ。」

 

島津がそう言うと、徐々に溢れていた殺気は収まり完全に収まったところで張譲が跳ね起きた。

 

張譲「・・・ハッ!ワシは!」

 

呂布「・・・起きた。」

 

そう言って島津を見る呂布に「じゃろ?。」と言ってニヤニヤする島津。

 

張譲「何をニヤニヤしておる!・・・ん?劉協はどこじゃ!」

 

焔耶「え?この女の子が劉協様!?」

 

実は張譲が気絶している間に焔耶がその女の子を連れ戻していたのである。

 

しかし、女の子の目は未だに何も写してはいない。

 

張譲「くっ!兵士共、儂が逃げ切るまでの時間を稼げ!生き残った者には願うものを与えるぞ!」

 

兵士「ぎょっ御意!」

 

張譲の並々ならぬ気に負けたのか、それとも己が欲に負けたのか、兵士はこちらに向かってくる。

 

島津「ふむ、呂布よ・・・どっちを殺りたい?」

 

これは兵士20人を相手にするか、遠くに逃げようとする張譲にするかの選択である。

 

呂布は若干悩んだ後、ある方向を指差した。

 

呂布「・・・こっち」

 

呂布が指差したのは兵士20人・・・兵士の顔が青ざめた。

 

島津「なら、儂があっちかのう・・・殺っていいのか?」

 

呂布「・・・ダメ、詠が殺すなって言ってた。」

 

こやつ、忘れておったな・・・そんな視線を向ける。

 

呂布「・・・ごめん・・・なさい。」

 

シュンとして謝る呂布に無性に頭を撫でたくなった島津。

 

島津(これが保護欲なのかのう・・・)

 

そして、無視されたと思って更にシュンしてしまう呂布の頭を撫でながら言う。

 

島津「あぁ、いいんじゃ確認のためじゃったしの・・・・なぁ、呂布・・・これ使いたくないか?」

 

そう言って背中の三槍のうち「日本号」を抜く。

 

呂布「・・・!!」

 

日本号を見た呂布が残像が残るほど早く頷く。

 

島津「素直に謝った褒美じゃ・・・ほれ。」

 

そう言って日本号を渡す。呂布はしっかりと受け取り、その刀身に見惚れる。

 

呂布「・・・きれい」

 

その刀身は太陽の光で煌めき、その刃は鋭さと美しさを兼ね備えていた。

 

呂布「・・・いいの?」

 

島津「はっはっは、しっかり返してもらうからな?」

 

呂布「・・・ん、分かった。」

 

そう言って呂布は兵士に向かっていく。

兵士は向かってくる呂布に怯え、また持っている槍の美しさに見惚れていた。

 

島津「さて、儂も行くかのう。」

 

張譲はその姿が小さくなるまで逃げていたが・・・島津にはなんてことのない距離である。

 

島津「頼むぞ、信長。」

 

ブルンと鼻を鳴らし駆ける信長・・・この名前は文字通り織田信長から取っており、馬の見た目はまさに魔王だった。それを一目見て、魔王と名づけようとしたがそれでは面白くないと元の国で魔王と呼ばれていた信長の名前をつけることにしたのである。

 

そして、信長の最も特徴的なところはその見た目からは想像出来ないような、その速さにある。

その駆ける姿はまるで鬼を乗せて走る虎のようで、追われる張譲はたまったものではない。

 

しかし、逃走もむなしく回り込まれてしまう。

 

島津「おぉっとと、どうどう。」

 

張譲「ひっ!」

 

興奮して暴れる信長を落ち着かせる・・・危うく潰すところじゃった。

 

島津「さて、まだ逃げるならちょっと痛い目にあってもらわんといけんのだが?」

 

張譲「たっ頼む!見逃してくれ!そうしたら、なんでもやる!金でも女でも!なんなら国でもいい!

   だから「もういい、黙れ」・・・え?」

 

そこの空気だけが静かに澄んでいく。

 

島津「おとなしく捕まるなら手荒なことはせず、連れて行くつもりじゃったが・・・、お主のあまり   の下衆っぷりに殺意すら沸かんわ。

   本当なら今すぐにでもぶち殺したいところなんじゃが呂布の頼みもある殺すのはやめる・・・   じゃが、お主には死んだほうがマシと思えるような目にあってもらうからな。」

 

張譲「あっ・・・・あっ・・・・あっ・・・・」

 

そして、徐々に殺意を強めていく島津・・・

 

島津「それじゃ・・・せいぜい早く死ねるようにな。」

 

その言葉を聞いた瞬間、張譲の意識はプツリと切れた。

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島津「おっ、終わったか?」

 

自分の仕事を終えた島津が戻ってくる・・・馬が引きずっているのは張譲。

 

呂布「ん・・・返す。」

 

そういって、名残惜しそうに槍を返してくる呂布。

 

島津「はっはっは、そう落ち込むでない。鍛錬ぐらいならば貸してやろう。」

 

呂布「・・・!!」

 

その言葉に目をキラキラさせる呂布・・・尻尾があればブンブン振ってそうじゃのう。

 

島津「そして、儂を超えられたらコレをやろう。」

 

そういって背中から引き抜くのは「蜻蛉切」

 

呂布「!!?」

 

その美しさに呂布は身を乗り出し、後ろで見ていた焔耶と兵士は声を上げる。

 

島津「焔耶・・・お主は一回見とるじゃろうが。」

 

そう言うと焔耶はバツが悪そうに・・・

 

焔耶「いやぁ、あの時は剣速が速すぎて・・・」

 

見えなかったと・・・はぁ。

 

島津「・・・今度から鍛錬追加せねばならんのう。」

 

焔耶「うぇ〜」

 

項垂れる焔耶と不思議そうな顔をする呂布。

 

呂布「稽古・・・つけてるの?」

 

島津「ん、そうじゃな。儂の一番弟子じゃな。」

 

その言葉を聞いて軽く頷く呂布。

 

呂布「恋も・・・やる。」

 

意外なことを言い出す呂布に驚きを隠せない島津。

 

島津「呂布がか?・・・呂布に教えるようなことなどないがのう。」

 

それを聞いてフルフルと頭を横に振る呂布。

 

呂布「恋より全然強い・・・あと、恋でいい。」

 

あっさりと真名を預ける呂布にこれまた驚愕する。

 

島津「・・・それは真名じゃろう?いいのか?」

 

呂布「ん・・・いい。」

 

島津「ふむ、ならば預かろう。儂は、性は島津名は義弘だ。真名はないゆえ好きに呼んでくれ。」

 

焔耶「私は魏延、真名は焔耶だ。」

 

呂布・・・いや、恋はそれを聞くと小さく頷く。

 

恋「ん・・・よろしく義弘、焔耶。」

 

島津「あぁ、よろしくの。それと、稽古のことじゃが、儂で良ければ付き合ってもいいぞ。」

 

それを聞いた恋が小さく微笑む。

 

恋「ん・・・ありがと。」

 

 

 

そして、一向は張譲を引き摺りながら洛陽に向かう。

 

 

 

・・・洛陽までの間、恋が島津の馬に乗りながら槍を羨ましそうに見ていたのは別のお話。

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その瞬間、呂布が殺気を溢れさせるが、その頭を軽 く優しく撫でる呂布。←セルフ頭なでww(がるでにあ)
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