銀の槍、呆れられる
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「ん? お師さん、全員そろってどこに行くんでござるか?」

 

 ある朝、涼が山門を警護していると、その上を見知った顔が飛んでいるのを発見して声を掛けた。

 声をかけられた四人は、立ち止まって山門へと降り立った。

 

「……少し古い知り合いのところにな」

「古い知り合い、でござるか?」

「おう! というか、姉ちゃんも会ったことあるぞ!!」

 

 元気よく将志の肩の上から答えるアグナに、涼は首をかしげた。

 

「はい? 心当たりが無いんでござるが……」

「涼。貴女、ここで私たち以外の神様にあったことがあるはずですわよ?」

「そうそう♪ かなちゃんとケロちゃんだよ♪」

 

 愛梨がそういうと、しばらく考え込んでいた涼はハッとした表情で手を叩いた。

 どうやら思い出したようである。

 

「……ああ〜! 拙者が初めてここに来た時の二柱でござるか! でも、いきなりどうしたんでござるか?」

「……なに、そこにある俺の社を建て替えることになってだな。一時的に加護が切れるから、その穴埋めに行くのだ」

「それで、せっかくだからみんなで会いに行こうって事になったんだ♪」

「もう随分会ってねえからな〜 元気にしてっかな?」

「それならたぶん心配ないですわよ。きっと喧嘩しながらでも仲良くやってると思いますわよ」

 

 将志達は久々に会う面々に期待を膨らませながら口々にそう言う。

 実際には将志は出雲に召集を受けた時に会っているのだが、他は長いこと会っていなかったのだった。

 

「……そういうわけで、しばらくここを空ける。涼、留守は任せたぞ」

「引き受けたでござる!」

 

 涼が笑顔でそういうと、将志達は目的地へ向けて出発した。

 

 

 

 

 

 

 将志達は近くに大きな湖のある神社の境内に降り立った。

 将志達は力を抑えているため、普通の人間には見えないようになっている。

 

「……ここに来るのも久しぶりだな……」

「ん〜、何年ぶりだっけか?」

「ざっと二百年くらいですわ」

「う〜ん、随分と間が空いちゃったね♪ さあ、早く会いに行こう♪」

「あ、あの……あなた達はどなたですか?」

 

 口々に話をしている一行に、声をかけるものが居た。その人物は白い胴衣に赤い袴を着た少女であった。

 将志はその格好から巫女であると判断し、声を掛けることにした。

 

「……この神社の者か?」

「い、いえ……ですが、この神社のことは知っています」

 

 将志が声をかけると、少女は緊張した様子で答えを返した。

 どうやら目の前の一行が人間ではないことに気付いているようである。

 

「……今の俺が見えるということは、この神社に住んでいる神も見えるな?」

「え、あ、はい……」

「……ならば伝えてくれ。槍ヶ岳 将志、建御守人が来たと」

「は、はい!?」

 

 将志が正体を明かすと、少女は驚いた表情を浮かべた。

 建御守人の名前はやはりこの辺りにも響き渡っているようである。

 もっとも、ここが発祥の地なのであるからそれが当然なのかもしれないが。

 

「……驚くことはない。俺達はここの神とは古い知り合いだ。俺達はここで待っている。連絡を頼めるか?」

「わ、分かりました!」

 

 少女はそういうと本殿へと走っていった。

 一行はその様子を笑顔で見送った。

 

「可愛い子だったね♪ ここの巫女さんかな♪」

「……違うとは言っていたが、恐らく巫女ではあろうな」

「そういえば、うちの神社には神主も巫女もいねえな」

「必要がありませんものね……お兄様、普通に人前に出てきますもの」

 

 実は将志は銀の霊峰では人間にも見える妖怪という体裁を取っているため、預言者である神主や巫女を必要としないのである。

 よって、将志の神社には人間が存在しないのだ。

 もっとも、銀の霊峰の頂上までくる時間と体力と根性のある人間など滅多に居ないのだが。

 しばらくして、一風どころかかなり変わった帽子をかぶった少女が奥からやってきた。

 

「んあ? おお、将志じゃないか! 随分久しぶりだね」

「キャハハ☆ ホントに久しぶりだね、ケロちゃん♪」

「あーうー! ケロケロ言うな〜!」

 

 腕を振り上げて諏訪子は愛梨に抗議した。

 それに対して、将志に肩車されたアグナが声を掛ける。

 

「まあ良いじゃねえか、蛙の姉ちゃん!!」

「……私、本当は蛙じゃないんだけどなぁ……」

「気にしたら負けですわ、諏訪子さん」

 

 肩を落としていじける諏訪子に、六花は苦笑しながらそう声を掛ける。

 すると、諏訪子は首を軽く横に振って暗い気持ちを振り払って話題を変えた。

 

「……そうだね。そんなことより、風の噂で聞いたことについて質問があるんだけどさ……」

 

 そういうと、諏訪子は愛梨とアグナのほうをジッと見つめ、微妙な表情を浮かべた。

 それを受けて、視線を向けられた二人は首をかしげた。

 

「うん? 僕のほうを見て、どうかしたのかな?」

「なんだ? 俺にも何かあるのか?」

「……あー、将志と六花は後でね。あいつと一緒に質問するよ。だからちょっと向こうに行ってて」

「……? ああ」

「はあ……分かりましたわ」

 

 諏訪子の言葉にうなずくと、訝しげな表情を浮かべながらも二人は離れていった。

 それを確認すると、諏訪子は愛梨達のほうへ向き直った。

 

「僕達に何が聞きたいのかな?」

「ねえ、将志ってさ、好きな相手居るのかな?」

「え?」

「なんだ? 何でいきなりそんなこと訊くんだ?」

 

 突然の諏訪子の一言に、思わず呆けた表情を浮かべる二人。

 そんな二人に対して、諏訪子は話を続ける。

 

「顔が良くて、強くて、紳士で、料理が美味くて、愛想は悪いけど優しくて……そんな男が独り身だったとして、いつまでも放っておかれると思う?」

「……何が言いたいのかな、ケロちゃん♪」

「将志を狙っているのはあんた達だけじゃないってことだよ。神有月の出雲で、将志に送られる熱視線は凄いんだから」

 

 諏訪子は出雲での将志の様子を思い浮かべながらそう話す。

 実際問題、将志の性格や料理に惹きつけられたものはかなり多いのだ。

 しかし、それを聞いてアグナは首をかしげた。

 

「ん〜? でも、兄ちゃんの周りにそんな気配は無いけどな〜?」

「それはみんなそれぞれの仕事で忙しいから会いに来れないし、将志も将志で宴会になるとすぐに料理だの手合わせだので居なくなっちゃうからね。それ以外で話をするのは私と神奈子ぐらいだし……あの時の周りの視線、痛いんだよね」

 

 諏訪子はそう言いながら苦笑いし、頬を掻く。

 将志を狙っている者からすれば、親しく話をしている諏訪子や神奈子は嫉妬の対象でしかないのだった。

 

「もしかして、将志くんに口説き落とされた子も居たりするのかな?」

「……それに関して質問。将志に殺し文句を覚えさせたのは誰? あいつ、うら若き乙女の揺らいだ心に適切に止めを刺しに行くから凄く性質が悪いんだけど?」

「それなら、六花ちゃんだよ♪ それと、たぶん将志くんはそれが殺し文句だって気付いていないと思うよ♪」

「なお性質悪いわ!!」

 

 愛梨から殺し文句の実情を聞いて、諏訪子は声を荒げた。

 その横で、アグナが首をかしげていた。

 

「なあ、殺し文句って何だ?」

「そうだね……たとえば、悩んで落ち込んでいるところに「……上辺だけの信仰だと? 断言しよう、それだけは絶対にない。もしそうだというのなら、お前のその身に宿る力は何だ? 心の底からの信仰を受けているからこそ、お前はそれ程の大きな力があるのではないのか? もっと自分に自信を持て。少なくとも、俺はお前が上辺だけの進行を受けるような者ではないと信じている。だから、自分が信じられなければ俺の言葉を信じろ」と顔を持ち上げて眼を正面から見つめながら言うとか?」

「……ケロちゃん、それって……」

「神奈子が言われた原文ママですが何か? 倒れてしまいそうな時に縋れるものがあったらそりゃ縋るでしょ」

 

 諏訪子はそう言いながらため息を付く。

 その当時、神奈子は自分の信仰の裏にはミシャクジの祟りによる諏訪子への信仰があり、自分はその表層を覆っているだけに過ぎないのではないかと苦悩していた。

 それを見かねた将志は、落ち込み悩む神奈子を元気付けようとして声をかけたのだった。

 その結果が上記の言葉である。

 

「あ〜、それたぶん兄ちゃんは励まそうとしただけだと思うぞ?」

「そのただ励ましただけの言葉であいつは危うく堕ちるところだったんだけどね……おかげでしばらく神奈子は頭が混乱して使い物にならなかったよ」

「きゃはは……ごめんね、迷惑かけて……」

 

 疲れた表情でそう語る諏訪子に、愛梨は苦笑いを浮かべながら謝罪した。

 ひとしきり疲れた表情を浮かべると、諏訪子は話題を切り替えることにした。

 

「でも、将志ってそういう話は多い割りに、色の話とかあんまり聞かないんだよね。何というか、自分の仕事に忠実すぎて周りを見ていないような感じでさ。そんなもんだから、みんな諦めようにも諦められないんだよね。だから、早いとこ誰かとくっついてくれないかなとか思ってるんだけど」

「う〜ん、難しいと思うよ♪ 悟りきった朴念仁だもんね、将志くんは♪」

「なんつーか……欲が無さ過ぎるんだよな、兄ちゃんって。あったとしても強くなりてえとか、自分を磨くことばっかだしな。休みの日にどっか出かけるか訊いてみたら、「俺より強い奴に、会いに行く」としか言わなかったし」

「そういや、あいつ私らと一緒に暮らしてた時もあんまり何が欲しいとか言わなかったね」

 

 解決策、ゼロ。

 その事実に、三人は深々とため息をついた。

 

「ところで、何で六花ちゃんを話から外したのかな?」

「六花にはちょっと別の話をしたいからね。それに、実の兄妹なのにかなり依存してるみたいだし、今の話を聞いたらどうなることやら……」

 

 諏訪子がそう話していると、その背後から人影が近づいてきた。

 それは背中に注連縄を背負っていて、胸元に鏡を携えた女神だった。

 

「あら、貴方達も来てたのね。随分久しぶりね」

 

 神奈子は愛梨達の姿を認めると手を上げてそう言った。

 それに対して、諏訪子が答えを返した。

 

「あれ、出かけてたの?」

「ええ。ほら、今日建て替えるための資材が届いたから様子を見にね。それで、将志はどこに居るのかしら?」

「将志くんなら向こうに居るよ、かなちゃん♪」

「あ、相変わらずその呼び方なのね……まあいいわ、とりあえず将志と話をしてくるわ」

「ああ、私達も話は終わってるから一緒に行くよ」

 

 愛梨の言動に脱力しながらも、神奈子はその指が指す方向へを向かっていった。

 その後ろから、諏訪子達もついて行く。

 

「久しぶりね、将志。前に出雲で会って以来かしら?」

「……そうだな。あれから自信は持てるようになったか?」

「う、あの時のことはあまり言わないで欲しいわ……」

 

 将志の言葉に、神奈子は頬を赤く染めて俯きながらそう言った。

 その言葉は後半になるにつれてどんどんと小さくなり、最後には聞き取れなくなっていた。

 どうやら、将志の殺し文句は未だに効果を発揮しているようである。

 そんな神奈子を見て、諏訪子は呆れ顔でため息をついた。

 

「……神奈子、アンタまだ立ち直ってなかったの?」

「い、いえ……立ち直ったつもりだったんだけど……やっぱりあの時のこと思い出すとどうしてもあの言葉を思い出すのよ……」

「……俺はそんなに強烈なことを言ったのか?」

 

 将志はそう言いながら首をかしげる。

 

「……将志はもう少し自分の言葉の殺傷能力に自覚を持ったほうがいいと思うよ」

「……むぅ?」

 

 ジト眼を向けてくる諏訪子に、将志はただ首をかしげることしか出来なかった。

 

 

 

 

 しばらくして、将志は自分の分社まで出向いて工事に関する説明を神奈子から受けた。

 その話によると、老朽化によって倒壊しそうな社を取り壊し、新しく少し大きな本社を建てようというものであった。

 神社の規模自体はそんなに大きくは無いので、拝殿などは作られないようである。

 

「これで建て替えようと思うんだけど、問題は無い?」

「……ふむ、問題は無い。しかし、何故急にこんなことを?」

「ほら、今の社って急造のものだから所々ガタが来始めてるのよ。参拝客も多いことだし、この際だからもっとしっかりした社を建てようと思ったのよ」

「……確かに俺の加護があっても、この様子ではそう長くは持ちはすまい。しかし、祭壇は生きているからそれは残しておこう」

「そだね。そんじゃま、確認も済んだことだし、早速宴会にしようよ」

 

 全ての確認が終わった瞬間、諏訪子がそう言い出した。

 それを聞いて、神奈子がため息混じりに答えた。

 

「宴会って……まだ昼よ?」

「いいじゃんいいじゃん、たまには息抜きしようよ」

「そうね……急ぎの仕事も無いし、せっかく集まったんだからたまにはそれもいいか」

「そうこなくっちゃ……って、あれ? 将志は?」

「もう向こうで料理始めてるよ♪」

「早っ!?」

 

 愛梨の指差す方向を見ると、将志は凄まじい速度で材料を切って下ごしらえを始めていた。

 その横では鍋がぐつぐつと煮込まれており、着々と宴会の準備が進められていた。

 

「早く準備しないと間に合いませんわよ? お兄様の料理を作る速さは年々速くなっているんですのよ?」

「あ〜、まだ焦んなくても大丈夫だぞ? 今作ってんのは時間のかかる煮物だからな」

 

 準備をせかす六花に、アグナはそう言って答える。

 六花の横に居るアグナを見て、神奈子は首をかしげた。

 

「あら、アグナ? 貴女料理の手伝いをしてるんじゃないの?」

「ん〜? こんくらいのことなら別にこうやって話しながらでも出来るぞ。まあ、封印されて力の制御を集中的に練習するようになってから出来るようになったんだけどな」

 

 将志の特訓によって、アグナは限られた力を効果的に使う術を身につけていた。

 それにより、以前とは比べ物にならないほど正確な力の制御が出来るようになっていたのだ。

 

「そういえば、あんた少し大人しくなったね。封印ってその髪留め?」

「おう。ちょっと俺の力は強すぎるみたいでな。危ないからって少し封印されたんだ。まあ、おかげで兄ちゃんが前より構ってくれるようになったからいいけどな」

 

 アグナは落ち着いた様子で諏訪子に答える。

 その視線は将志にジッと向けられており、いかにも構って欲しそうである。

 

「そ、そう……」

 

 突如として、神奈子は顔を真っ赤にして俯き始めた。

 それを見て、諏訪子が呆れ果てた表情を浮かべる。

 

「……神奈子、あんた今何を想像した?」

「い、いえ、またあの言葉が……」

「あーもう、いい加減にしろ! 初めて告白されて悶々とする子供か、あんたは!?」

「だって……私ああいうこと言われたのは初めてで……」

「だぁ〜! もう、どうしようもないね! 将志の性格、あんた知ってんでしょうが!」

「わ、分かってはいるんだけどね……」

 

 大声でまくし立てる諏訪子に対して、神奈子はしどろもどろになりながら答える。

 その様子を見て、六花はため息をついた。

 

「……これはひどい、重症ですわね……いったいお兄様に何を言われたんですの?」

「それはね……」

 

 六花の質問に、諏訪子は神奈子が将志に言われたこととその状況を洗いざらい説明した。

 

「というわけなのサ!」

「お兄様……自分の言動には気をつけろとあれほど言いましたのに……」

 

 想像以上に酷い事態に、六花は頭を抱えた。

 

「たぶん気をつけた結果がこれじゃねえの? ほら、姉ちゃんってよく兄ちゃんに人に言っちゃいけねえ言葉とか教えてたし」

「キャハハ☆ これこそもうどうしようもないね♪」

 

 アグナの言葉に、愛梨は笑ってそう言った。

 実際問題、もう笑うしかない。

 

「笑い事じゃありませんわよ! こんな言動をあちらこちらで繰り返していたら、そのうち後ろからグッサリやられても不思議ではありませんわ!」

「あ〜、兄ちゃんに関してはそれは……やべぇ、ありそうだ」

 

 六花の言葉にアグナはそう言って冷や汗を掻いた。

 それを聞いて、諏訪子は首をかしげた。

 

「え? 将志なら避けそうなもんだけど?」

「きゃはは……将志くんなら、避けた後に相手の話を聞いた後に自分から刺さりに行くと思うよ……死にはしないけどね……」

 

 クソ真面目な将志のことである。

 刺そうとした相手の言葉を聞いて、贖罪のためにわざと死なない程度に刺されるのは眼に見えているのであった。

 一行がそんな話をしていると、将志がやってきた。

 

「……何の話をしているのだ?」

「い、いえ! こっちの話よ! あ、あはは……」

「ちょっと、神奈子! いくらなんでも挙動不審にもほどがあるよ!」

 

 乾いた笑い声を上げる神奈子に、諏訪子が慌てて声をかける。

 

「……そうか」

 

 しかし将志は何も聞かず、話を切り上げた。

 その様子に、諏訪子は唖然とした表情を浮かべた。

 

「え、今ので納得するの?」

「安心と信頼の鈍さですわね……」

「何言ってんだ姉ちゃん。ああいう風に躾けたのは姉ちゃんじゃねえか」

「つまり、この先将志くんが何かしでかしたら大体は六花ちゃんの責任ってことだね♪」

「ちょ、愛梨!? 何でそんなことになるんですの!?」

 

 突然話を振られて、六花は慌てた声を上げる。

 

「私は妥当だと思うけどなぁ。現にこいつも被害にあってるわけだし」

 

 諏訪子は神奈子を見やりながら追撃をかける。

 それに対して、アグナは同意の意を込めてうなずいた。

 

「そうだなぁ……兄ちゃんの起こす事件って、大体女が絡むからなぁ……」

「うう……お兄様ぁ……」

 

 周囲から総攻撃を受けた六花は、助けを求めて将志に縋りついた。

 

「……よくは分からんが、俺が引き起こしたことならばそれは全て俺の責任となるのが筋だろう。それに関して、お前が咎を負う必要は全く無い。仮にそれでお前が責められることになるのなら、俺は全力を持ってお前の力になろう」

 

 将志は六花を抱き寄せ安心させるように頭を抱え込みながら、優しいテノールの声で囁いた。

 

「……ええ、頼りにしてますわよ、お兄様……」

 

 六花はうっとりとした表情でその声を聞き入れ、その身を預ける。

 

「……なに、この雰囲気?」

「じ、実の妹まで……しかも普段から親しい分だけ更に強力……」

 

 その様子を、唖然とした表情で眺める神様二人組み。

 

「……いいなぁ、姉ちゃん……」

「う〜……ホントに迂闊ことは言えないね……」

 

 一方、アグナと愛梨はその様子を羨ましそうに眺めているのであった。

 

 

 

 

 宴会が始まると、大騒ぎが始まった。

 将志と愛梨が芸を見せれば、六花とアグナが客の相手をする。

 しばらくすると、皆思い思いに集まって話を始めていた。

 

「うにゃ〜……将志く〜ん……」

 

 胡坐をかいた将志の膝の上では、愛梨が丸くなっていた。

 

「……まるで猫だな……」

「にゃ〜……」

 

 将志が顎をくすぐると、愛梨はくすぐったそうにしながら胸に頬ずりをする。

 まるでマタタビを与えられた猫のようであった。

 

「おう、兄ちゃん! 俺にももう一杯くれ!!」

 

 将志の頭上から、威勢のいい声が聞こえてくる。

 アグナは将志の肩の上に陣取り、そこで酒を飲み続けているのであった。

 かなり酔っ払っており、時折杯から酒がこぼれて将志の頭に掛かっていた。

 

「……どうでもいいが、人の頭の上に酒をこぼすな」

「ははは、悪いな!!」

 

 将志の言葉に、アグナは豪快に笑いながらそう答えた。

 そんな将志に、先程将志が伝言を頼んだ巫女が近づいてきた。

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

「……気にすることは無い。この二人が酒を飲むとこうなるのはいつものことだ」

「そ、そうですか……」

「……それよりも酒の追加を頼む。愛梨はともかく、アグナはまだ飲むだろうからな」

「は、はい!!」

 

 巫女は緊張した面持ちでそういうと、酒を取りに戻っていった。

 その様子を、将志の隣に座っていた諏訪子が笑いながら見ていた。

 

「……緊張しちゃってまあ……自分のところの神様だろうに」

 

 その言葉に、将志はピクリと反応した。

 

「……む? お前のところの巫女ではないのか?」

「うちのはあそこで酔いどれてるよ。全く、どこでああいう風になったのかねぇ?」

 

「いいですかぁ〜! みんな型にはまりすぎなんですよぉ〜! そんなもの、破り捨てなさ〜い!」

「ち、ちょっと……飲みすぎだよ……」

 

 諏訪子の指差す先では、一人の巫女と思わしき少女が酔っ払って周囲に説教をしていた。

 少女は近くに居る人間に次々と絡んでは、酒を飲ませまくっている。

 その横では、酒を取りにいった巫女が暴れる少女をなだめていた。

 

「……何か色々と投げ捨てていないか?」

 

 その様子を、将志は何とも言えない表情で眺める。

 その横で、諏訪子は乾いた笑い声を上げた。

 

「あはははは……まあ、気にしないで。ああ見えて私の子孫だし、力は強いんだから」

「……子供が居たのか?」

「まあね。ちなみにあんたの所も同じ血筋の子がやってるよ」

「……そうか。ならば、礼を言わないとな」

「いいっていいって。この辺りも戦とか結構あったけど、あんたのお陰でそんなに被害は出なかったし、むしろ礼を言うのはこっちだよ」

 

 諏訪子の言葉を聞いて、将志は憂鬱な表情を浮かべた。

 

「……戦か……最近はあちらこちらで戦が起きているな……」

「……浮かない顔だね」

「……俺の加護もそこまで強いものではない。信心が薄ければ守りきれんし、例え強くとも一人が受ける加護には限界がある。……例え神といえども、全てを救うのは難しいのだな」

「あ……そうか。あんたは守り神だから、人の死には敏感なんだったね」

 

 実際に、将志の加護を受けていても戦で死ぬ者は多いのだ。

 何故なら、片方がその加護を受けていたとしても、相手方もその加護を受けていることが多いからである。

 その場合、加護の弱いほうが負けて、怪我をしたり殺されたりするのであった。

 将志が死者に対する思いを語っていると、横から声が聞こえてきた。

 

「ちょっと、そこの神様ぁ! そんな暗い顔をしない! それからこの料理美味しいです! 結婚してください!」

 

 先程の少女は将志に対して空の皿を突き出しながらそう叫んだ。

 その顔を、先程からなだめていた巫女がわしづかみにした。

 

「……少し頭を冷やそうか……」

「え、あ、ちょっ!?」

「お別れですっ!!」

「きゃああああああ!?」

 

 巫女が力を込めると、掴まれた少女の周りに強い風が吹いて少女は吹き飛ばされた。

 それを追いかけて、巫女は走り出していく。

 

「お、喧嘩か!? 面白そうだな、俺も混ぜろ!!」

「あ〜! ダ〜メ〜だ〜よ〜! みんな〜! 喧嘩はダメ〜!」

 

 アグナはそれを見て眼を輝かせながら加勢に行き、愛梨は喧嘩を静めるべく後を追いかける。

 

「……いくらなんでも飛ばしすぎではないか?」

「うん、そうだね……」

 

 その様子を、将志と諏訪子は呆然と見送った。

 そんな二人に近づいてくる気配があった。

 

「あら、こんなところに居たんですの、お兄様?」

「捜したわよ、二人とも。それで、この面子でどんな話をするのかしら?」

 

 六花と神奈子はそういうと将志の隣に座った。

 諏訪子はそれを確認すると、話を切り出した。

 

「ん〜、ぶっちゃけ将志の状況確認。どうも将志は最近大変なことになってるみたいだし」

「大変なこと?」

「そ。簡単に言えば、引っ掛けた女の子のこと」

 

 諏訪子がそういうと、将志は首をかしげた。

 

「……別に女子を引っ掛けた覚えは無いが」

 

「お前は何を言っているんだ」

「貴方は何を言っているのよ」

「貴方は何を言っていますの」

 

「……解せぬ」

 

 三人揃って同じ事を言われ、いじけたように将志は酒を飲み始めた。

 そんな将志を放っておいて、三人は話を続ける。

 

「それで、実際どうなのさ? 明らかにこいつは将志に惚れてるなって思う奴居る?」

「そうですわね……私が知っている限りでは、お兄様のご主人様と、白面金毛九尾の狐、この二人が主ですわね」

「あれ、あんたのところの後二人は?」

「あの二人は家族ですから除外ですわ」

 

 諏訪子に質問されて、六花は答えていく。

 その言葉に対して、神奈子がため息をついた。

 

「何言ってるのよ。家族といってもあの二人は将志と血縁は無いでしょう? なら、十分に将志を狙えるわよ。第一、神の中には自分の血縁者と契った者も居るから、貴女だって対象になるかもしれないのよ?」

「……はい?」

 

 神奈子の言葉に、六花の眼が点になる。

 将志、愛梨、六花、アグナは家族となっているが所詮は家族ごっこに過ぎないのである。

 更に言ってしまえば、六花すらも自称兄妹なのであり、本当に兄妹なのかどうかは怪しいものである。

 以上のことから、全員将志と婚姻を結ぶことに全く障害は無いのである。

 

「なるほど、ということは今のところ将志の周りには少なくとも五人の女が居るのか……意外と少ないね。話じゃもっと多いはずなんだけどな?」

「どういうことですの?」

「知り合いの話じゃ、町の外で女と遊んでいるところを見つけたのが居るらしいんだよ。必死に炎を操って攻撃してくる女と、将志は楽しそうに戦ってたって話だよ?」

「そうなんですの、お兄様?」

 

 諏訪子の話を聞いて、六花は将志に確認する。

 将志は少し間を置いて答えた。

 

「……それは妹紅のことか? 確かによく勝負した覚えはあるが……」

「……他にはどんな人がいますの?」

 

 それを聞くと、六花は別の被害者が居ないかどうか確認することにした。

 

「あーっと、最近堕ちたの誰だっけ?」

「出雲の話かしら? なら、一番新しいのは静かな紅葉の神様だと思うわよ?」

 

 諏訪子と神奈子は顔を見合わせて、一番最近の被害者を挙げる。

 それを聞くと、六花の眼がスッと細められた。

 

「……ちなみに、お兄様は何て言ったんですの?」

「……別に大した事は言っていないはずだが」

「ほほー、それじゃあ詳しく話してあげよう。こんな感じだったよ」

 

 そういうと、諏訪子は楽しそうに話を始めた。

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

 時は遡り、神有月の出雲。

 毎年この月には日本中の神が集められ、大規模な集会が開かれる。

 その集会が終わると、宴会が始まるのだ。

 料理や手合わせを終えた将志が何をするでもなく歩いていると、暗い顔をして俯いている神が眼に映った。

 

「……なにを落ち込んでいるのだ?」

 

 将志はその神に声をかけた。

 相手は赤い服に黄金色の髪といった格好の女神で、紅葉をかたどった髪飾りをしていた。

 

「……私は……何の役に立っているの……?」

 

 将志の問いに、その女神は呟くようにそう答えた。

 それを聞いて、将志は首をかしげた。

 神である以上、周囲に何らかの影響を及ぼしているはずだからである。

 

「……お前は紅葉の神だったな。それで、それはどういう意味だ?」

「……穣子は……豊穣の神の妹はいつも人間に感謝される……でも、私はそんなこと言われない……」

「……それで、自分の存在意義に疑問を持っているというわけか?」

「……うん……」

 

 落ち込む彼女の言葉を聞いて、将志は少し考える。

 そして、ゆっくりと結論を出した。

 

「……俺は人間ではないからこれが正しいのかは良く分からんが……人の眼に見える形で秋の訪れを伝えるというのは、とても大事なことだと思うぞ?」

「……でも……それでも私は一度も感謝なんてされたことは無い……!」

 

 しかし、紅葉の女神は将志の言葉に強く反発した。

 それを聞くと、将志は一つため息をついた。

 

「……このたびは 幣も取りあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに」

「……え……?」

「……小倉山 峰の紅葉葉 心あらば いまひとたびの みゆき待たなむ」

 

 突然和歌を詠み始めた将志に、彼女はキョトンとした表情を浮かべる。

 それを見て、将志はその歌を詠んだ理由をゆっくりと告げた。

 

「……百人一首の中の歌だ。この他にも、紅葉の美しさを歌った歌などいくらでもある。こう歌にまで詠まれているというのに、何故感謝されていないと思う?」

「……あ……」

「……恐らく、直接礼を言われる妹を見て自分に自信を持てなくなったのだろう。だが、気にすることは全くない。お前も充分に感謝をされているのだ。むしろ歌にまで詠まれているのだから、その分自分が勝っていると思えばいい」

 

 将志は俯いた彼女に対してそう言葉を繋いだ。

 すると、彼女の口から静かな声が聞こえてきた。

 

「……秋……静葉……」

「……む?」

「……私の名前……」

「……そういえば、名乗っていなかったな。槍ヶ岳 将志だ。ふむ、妹が居るとなれば名で呼ぶほうが良いか。宜しくな、静葉」

 

 将志は静葉の自己紹介を受けて、そう名乗りを上げた。

 すると、その隣からくぅと可愛らしい音が聞こえてきた。

 

「……あぅ……」

 

 腹の音を聞かれ、静葉は顔を真っ赤に染めて俯く。

 将志はそれを聞いて、笑みを浮かべた。

 

「……そうだな……せっかくだ、お前のために一品作ろう。ついてくるが良い」

「……(こくん)」

 

 将志は静葉の手を引いて台所に案内した。

 そこで静葉に出された料理は、紅葉によって飾られたとても綺麗な季節の料理であった。

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

「何てことがあったよ」

「……そういえば、そんなことをしたような気がするな」

 

 諏訪子がそういうと、将志は何てことのないように頷いた。

 それを聞いて、六花は盛大にため息をついた。

 

「……完璧に堕としに掛かってますわね……」

「ていうか、完璧に堕ちたね、ありゃ」

「将志の性格を知っていても危なかったからね。もし、あ、あれを言われたのが初対面だったら……」

 

 神奈子はそう言いながら盛大に自爆する。

 

「あーうー! いい加減にしろー!」

「あいたぁ!?」

 

 将志の言葉を思い出して悶える神奈子の頭を、諏訪子は思いっきりはたき倒した。

 その横で、六花は深刻な表情を浮かべる。

 

「……とにかく、そろそろ本気で刺されかねない状況になってきたのは間違いないですわね。どうするんですの、お兄様?」

「……どうするといわれても、俺にはどうしようもないと思うが……」

「むしろお兄様以外に誰が収拾をつけられますの?」

「……そうは言うが、本当にどうしようもないのだ。何故なら、俺には恋愛が分からないらしいからな」

「……はぁ?」

「……誰に、どんなに求められても俺は何も感じない。相手の苦しさを理解してやることも出来ない。そんな状態では、俺にはどうすることも出来んと思うが」

 

 将志はつらそうな表情でそう話す。

 それを見て、六花は首をかしげた。

 

「……お兄様? ひょっとして……」

「……ああ。アグナや愛梨や藍、そして主に求められたことはあるが、そのどれ一つとして俺は何も感じなかった。実際、藍に言われるまで恋愛にそんな感情が存在することすら知らなかった。それに分からないのだ。何故自分にはそんな感情が存在しないのか。伊里耶も言っていたが、そんな俺は確かに異常なのであろうな」

 

 将志は凄くもどかしそうな表情でそう話す。

 そこにはどうにかしたくてもどうにも出来ないという悔しさが滲んでいた。

 

「これは思ったよりも厄介な問題に当たったかもね。流石にこればっかりは教えてどうにかなるもんじゃないからね……」

「そうね……そもそも、言葉で言い表せるものでもないし」

「……そうですわね。これに関しては、私達でもどうしようもありませんわね」

 

 全員そう言って押し黙る。

 しばらくの静寂の後、諏訪子が大きく手を叩いた。

 

「よし、もうこの話は終わり! さあ、後は呑んで騒いですっきりしよう!」

「うぃ〜……兄ちゃ〜ん……」

 

 諏訪子が飲み会の再開を宣言すると、アグナが将志の元へやってきた。

 アグナは千鳥足で将志のところへやってくると、背中にしなだれかかった。

 

「……どうした、そんなに酔いつぶれて?」

「あれ……」

 

 将志の問いかけにアグナはとある方向を指差した。

 

「うふふ……あらあら、もう酔いつぶれちゃったんですか?」

「うにゃあ……も、もう無理ぃ〜」

「きゅぅぅぅぅ……もう呑めません……」

 

 そこでは、酒瓶を持って笑う巫女と、酔いつぶれて転がっている少女と愛梨の姿があった。

 巫女の顔は赤く、相当量の酒を飲んでいることが分かった。

 

「……おい、あれは不味いのではないか?」

「……あんたのとこの巫女だ。あんたが何とかして」

「私達はちょっと用事があるからね。流石にうちのを放っておくわけにはいかないし」

「私は愛梨を回収してきますわ」

 

 将志が指摘すると、他の三人はそそくさと退散していった。

 将志も退散しようとすると、その巫女と眼があった。

 巫女は、将志を見ると嬉しそうに笑った。

 

「……何やら身の危険を感じるな……」

「あらあら、逃がしませんよ? せっかくうちの神社の神様が来たのに、何のもてなしも出来ずに帰すわけにはいけないですよね?」

 

 巫女はそう言いながら将志の腕を取る。

 先手を取られ、将志は逃げ出すことを諦めるしかなかった。

 

「……まあ、気持ちは分かるが……」

「はい♪ どうぞ呑んでください♪」

「……うむ」

 

 将志は差し出された杯を受け取ると、それを飲み干した。

 

「うふふ……良い呑みっぷりですね♪ それじゃあ、次をどうぞ♪」

 

 すると、巫女は嬉しそうにそう言って将志の杯に酒を注いだ。

 それを見て、将志は酒瓶を取り出した。

 

「……呑ませるだけではもてなしとは言えないな。俺は共に呑んで楽しんでこそのもてなしだと思っている。さあ、一緒に呑もうか」

「はい♪ 良いですよ♪」

 

 巫女はそういうと、将志と一緒に酒を呑み始めた。

 そこから先は将志と巫女の激しい呑み比べになったのだった。

 

 

 

 

 

「……すぅ……」

「むにゅ……」

 

 しばらくすると、将志の膝の上には二つの頭が乗っかっていた。

 一つは先に酔いつぶれていたアグナのもの、もう一つは先程まで勝負をしていた巫女のものだった。

 

「……将志〜、生きてる〜……って返り討ちにしてるし」

「……危ないところだった……流石にこれ以上呑まされれば少しきつかったな」

 

 生存確認をしに来た諏訪子に対して、将志はそう言って答えた。

 事実、将志もこれ以上飲むとどうなるか分からない程度には飲まされていたのだった。

 先程まで自分を遥かに超える量を飲んでいたのにこの有様と言う事実に、将志は内心冷や汗をかいていた。

 

「それじゃ、みんな粗方つぶれた事だし、今日はお開きにしようか」

「……そうしてくれ」

 

 諏訪子がそういうと、将志は頷いてアグナを背負い、巫女を手に抱えた。

 そして母屋へと運び込むと将志は外でいつも通り鍛錬を行い、就寝するのだった。

 

 

 

 余談だが、その翌日に神社は巫女の二日酔いで臨時休業をすることになった。

 なお、生き残っていたのは神奈子と諏訪子と将志だけであり、ただ一人家事のできる将志が馬車馬のように働いたのは言うまでもない。

説明
かつて、自分が神となった社に改築工事をすることになり、二人の神が治める神社へと向かった銀の槍一行。そこで、とある問題が浮かび上がってきた。
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コメント
下手に名前をつけると後々まで出てきかねませんからねぇ。あくまで通過点の一人ですので。あと、神奈子はあの性格上、おそらく将志のああいう態度には慣れていないと思われる。何しろ、将志が手を差し伸べるのは本当に手助けが必要な相手だけですので。(F1チェイサー)
…着たよコレ、神奈子まで将志の天然たらしの餌食になった話が。…もっと後かと思っていたが、結構早かったな。…実際問題、色々仕込んだのは六花なんだし、将志を天然たらしに仕立てた責任は大きいと思うがなぁ…。しかし、将志の神社の巫女と、洩矢神社の巫女。どっちも名称不明なんで、ちょっと区別が付け難かった感じがしましたね。(クラスター・ジャドウ)
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