ソードアート・オンライン rebirth of fencer
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第1層【はじまりの街】中央広場

 

「おい、上を見ろ!」

 

一人の声が聞こえた後、広場にいた全員が上を向く

底には空に一つだけ赤い何かが浮いており、やがてそれが空を埋め尽くす

それには【Warning】【System Announcement】が交互に赤いフォントで書かれていた

回りからは「やっとアナウンスが入るのか」「早くログアウトさせろ!」などと聞こえてくる

恐らくこれでログアウトできるとこの場に居るほぼ全員が思っているだろう

だが、ユウトは

 

(何だ?この妙な胸騒ぎは…この感じ…何処かで…)

 

と内心でそれが何なのか考えていると

 

「なっ!?」

 

空を埋め尽くした物の結合部分から

赤くドロリとしている様に見える血液の様な何かが

とてつもない量で流れ出ていた

それは地面には落ちず、一ヵ所に集まる様に流れていった

やがてその血液の様な何かが出てこなくなった時に急激に形を変え

巨大な人を形作っていき、それはフードで顔が隠れたローブの人の姿になった

いや、人と言って良いのだろうか?

それには中身が無いのだ、ローブの中は空洞になっており、ただ巨大なローブが浮いているだけに見える

手袋の隙間にも本来ならば人の腕が見える筈が何もなく、ローブの中には肉体が無い事になる

回りからも「なぁ、あれGM(ゲームマスター)?」や「何で、顔無いの?」等と聞こえてくる

すると

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

GM?から声が聞こえる

その低く落ち着いた男性の声にユウトは何故か聞き覚えがあった

だがそんな事よりGM?の言った「私の世界」と言う言葉に疑問を感じていた

 

(私の世界?ゲームが自分の世界…どういう事だ?)

 

そう考えていると

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

(茅場…晶彦?)

 

皆、驚愕の顔を浮かべるがユウトはピンと来なかったようだった

 

「なぁ、キリト…茅場晶彦って誰だ?」

 

「…知らないのか?茅場晶彦は…SAOの産みの親だ…」

 

キリトの言葉を聞き、ユウトは驚愕する

産みの親?そんな奴が一体何しに?等、考えていると

 

『プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。

しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく、≪ソードアート・オンライン≫本来の仕様である』

 

「し…仕様、だと?」

 

茅場の言った事にクラインが反応する

 

『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない

…また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない。

もしそれが試みられた場合…ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、

諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる』

 

この場に居る、全プレイヤーが茅場の言った事を理解するのに数秒かかった

彼の言った事は外せば問答無用で殺すと言っている様な物だった

ユウトの隣に居るキリトとクラインも呆けた顔で見合っていた

 

「はは…なに言ってんだアイツ、頭おかしいんじゃねぇのか?

んなこと出来るわけねぇ、ナーヴギアは…ただのゲーム機じゃねぇか。脳を破壊するなんて…

んな真似が出来るわけねぇだろ、そうだろキリト!」

 

後半、かすれ気味の声でクラインが叫ぶ

キリトは少し考える様な仕草をとった後

 

「…原理的には、有り得なくもないけど…でも、ハッタリに決まってる。

だって、いきなりナーヴギアの電源コードを引っこ抜けば

とてもそんな高出力の電磁波は発生させられないはずだ。大容量のバッテリでも

内蔵されてない…限り…」

 

話の途中でキリトが絶句する

クラインは何か察している様で静かに口を開く

ユウトはまだ余り、状況を理解していないが二人の雰囲気を肌で感じとり、ヤバい事なのは分かっていた

 

「内蔵…してるぜ…ギアの重さの三割はバッテリセルだって聞いた。

でも…無茶苦茶だろそんなの!瞬間停電でもあったらどうすんだよ!!」

 

『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除

または破壊の試み…以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。

この条件は、既に外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。

因みに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制解除を試みた例が少なからずあり、その結果』

 

茅場は一呼吸入れた後

 

『…残念ながら、既に二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 

何処かで細い悲鳴が聞こえた

このゲームがデスゲームに変わった事を実感させられる事柄だった

だが、周囲のプレイヤーは信じられない、又は、信じたくないかの様な表情を浮かべていた

ユウトは何故か冷静であり、茅場が次に言う言葉を待っていた

一瞬だが、茅場がユウトの方を見た気がした

 

「信じねぇ…信じねぇぞオレは…ただの脅しだろ。出来るわけねぇそんなこと。

下らねぇことぐだぐだ言ってねぇでとっとと出しやがれってんだ。いつまでもこんなイベントに

付き合ってられるほど暇じゃねぇんだ。…そうだよ…イベントだろ全部…オープニングの演出なんだろ…そうだろ?」

 

クラインが力無く座り込む

キリトも口には出していないがそうであってほしいと願っているような目をしていた

だが、ユウトは動揺などせずに冷静に茅場の次に言う言葉を待っていた

また一瞬、茅場がユウトの方を見た気がした

 

『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される危険は既に低くなっていると言っていいだろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま

二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれる筈だ。

諸君には、安心して…ゲーム攻略に励んでほしい』

 

「な…何を言っているんだ!ゲームを攻略しろだと!?ログアウト不能の状況で、呑気に遊べってのか!?

ふざけるな!こんなの、もうゲームでも何でもないだろうが!!」

 

茅場に向かってキリトが叫んだ

だが、茅場は数秒間黙った後話を続けた

 

『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、≪ソードアート・オンライン≫は、既にただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。…今後、このゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に…

諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

 

「…馬鹿馬鹿しい」

 

キリトはそう呟く

大半のプレイヤーは信じていない様だったが

ユウトは違った

彼は頭の片隅にある違和感を感じながら、根拠は無いが茅場の言っている事は本当だと、感じていた

 

『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、

第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればいい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員がログアウトされることを保証しよう』

 

「クリア…第百層だと!?で、出来るわけねぇだろうが!!ベータじゃろくに上がれなかったって聞いたぞ!!」

 

とクラインが叫ぶ

確かにクリアするには第百層の攻略、だが今自分達が居るのは第一層

それにベータテスト時はたった六層しか上がれなかったとユウトとクラインはキリトから聞いていた

さらに、ゲームオーバーが許されない、してしまったら二度と目を覚ます事が出来なくなる

これでは何年かかるか分からない

それでもユウトはこの城の頂を極めるとはそう言う事かと

冷静にこの現状を見ていた

 

『それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。

諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

 

茅場の言う通りに全プレイヤーが一斉にメインメニューを開き、アイテム欄のタブを叩く

するとアイテムの一番上にアイテムが追加されていた

そのアイテムは【手鏡】だった

これで何が?と思いながらユウトは手鏡をオブジェクト化させる

手鏡を手に取り、裏面を調べたり、鏡を覗き込んだりするが何も起きない

キリト達も何がなんだか分からず、呆然としていた

ユウトはまぁ、時期に説明が入るだろうと思っていたら

回りのプレイヤーやクラインやキリトを白い光が包み込んだ

何だ、一体!?と思った瞬間、ユウトもその光が包み込んだ

 

数秒後、光は消え、ユウトが目を開けると底にはさっきのプレイヤー達の風景が…

いや、ちょっと待てとユウトは目を疑わせた

さっきまでとは違い、男女比率がおかしくなっているのだ

さっきと比べ、圧倒的に男が多い

中には女アバターを使っていたのであろう、スカートを着ている男もいた

ここから推測するに恐らく現実の肉体と容姿がアバターにスキャンされ形作られたのでは無いか?とユウトは考え、まだ手に持っていた手鏡を覗くと、やはり自分の見た事のある顔になっていた

 

「なぁ…お前…ユウトか?」

 

「んっ?」

 

声をかけられ、振り向くと見た目は少女に見えなくもない同い年くらいの少年とまるで野武士もしくは山賊の様な男がいた

 

「お前ら…キリトとクライン?」

 

ユウトの問いに二人とも頷く

 

「そうか…なるほどな…」

 

「どうした?」

 

「俺達は現実の体を何らかの方法でスキャンされ、今ここでそれを再現されたんだ」

 

「スキャン…そうか!ナーヴギアは高密度の信号素子で頭から顔全面をすっぽり覆っている。

だから、脳だけじゃなくて、顔の表面の形も精細に把握できるんだ…」

 

ユウトの言った事にキリトは様に話す

 

「で、でもよ。身長とか…体格は…待てよ。おりゃ、ナーヴギア本体も昨日買ったばっかだから覚えてるけどよ。初回に装着した時のセットアップステージで、何だっけ…キャリブレーション?とかで

自分の体をあちこち、自分で触らされたじゃねぇか。もしかしてアレか?」

 

「あ、ああ…そうか、そう言う事か…」

 

クラインの言った事に納得するキリト

 

「待て、俺はそのキャリブレーションをやっていない」

 

「「はぁ!?」」

 

キリト達はユウトの言った事に驚く

 

「じゃあ…お前…どうやって始めたんだよ?」

 

「知らん、前にも言ったように目が覚めたらここにログインしていた

そんな事より茅場が何故こんな姿にしたのかが重要だ

ゲームをプレイさせるだけならさっきのアバターでも良かった筈だ」

 

「…現実」

 

「現実?」

 

キリトの呟きにユウトが反応する

 

「あいつはさっきそう言った。これは現実だと。このポリゴンのアバターと…数値化されたヒットポイントは、両方本物の体であり、命なんだと。それを強制的に認識させる為に、茅場は俺達の現実そのままの顔と体を再現したんだ」

 

「でも…でもよぉ…キリト…何でだ!?そもそも何でこんな事を…」

 

クラインが叫ぶがユウトが静止させ

上を見るように指を指す

それにキリトが続く

 

「もう少し待てよ。どうせ、直ぐにそれも答えてくれる」

 

キリトが言い終わると同時に上から声が聞こえる

 

『諸君は今、何故、と思っているだろう。何故私は…SAO及びナーヴギア開発者の

茅場晶彦はこんな事をしたのか?これは大規模なテロなのか?あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と

私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、既に一切の目的も、理由も持たない。

何故なら…この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、鑑賞するためにのみ

私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた

…以上で≪ソードアート・オンライン≫正式サービスのチュートリアルを終了する。

プレイヤー諸君の…健闘を祈る』

 

茅場が言い終わるとローブがどんどん崩れていき、形作る前の血液の様な液体に戻る

そして、現れた時の時間が逆流しているかの様に戻ると空を埋め尽くしていた赤い何かが全て消え

転移してきた時と何も変わらない風景に戻った

変わったとするならばプレイヤーの見た目だけだろう

そして今、≪ソードアート・オンライン≫と言う名のデスゲームが開始された

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ユウトside

 

チュートリアルが終わった数秒間、この広場は静まり返っていたが

今は、皆この広場を振動させるくらいに叫んでいた

 

「嘘だろ…何だよこれ、嘘だろ!?」

 

「ふざけるなよ!出せ!ここから出せよ!」

 

「こんなの困る!この後約束があるのよ!」

 

「嫌ああ!帰して!帰してよおおお!」

 

正に地獄絵図だ

叫びたくなる気持ちも分かる…だが、ここで叫んでどうなる?等と

俺は声に出さずに思っていた

 

「ユウト、クラインちょっと来い」

 

俺とクラインはキリトに引っ張られ

荒れ狂う人波の間を通っていく

 

「キャッ!?」

 

その途中で人にぶつかる

 

「ごめん、大丈夫か?」

 

と言って俺は手を伸ばし、その人を立たせる

 

「あっ、…!はっ…はい!だっだだ…大丈夫です!」(男の人に触られた…うぅ〜…緊張するよ〜…)

 

「そうか、良かった」

 

俺は少し微笑む

その子は俺の一歳下くらいに見える女の子だった

…何か凄く顔を赤くしている、風邪か?いや、SAOにそんな機能は無い、逆にあったら困る

 

「ユウト!早く行くぞ!」

 

と急にキリトが現れ、再び引っ張られる

 

「おっ…おう…じゃあな」

 

「はっ…はい!」

 

俺が手を降ると女の子も手を振り替えしたのが見えた時には

人波でその子の姿は見えなくなっていた

そのまま俺達は広場を出た

 

 

 

 

 

 

俺達はキリトに連れられ街路の一つの馬車の陰にいる

 

「…ユウト、クライン

いいか、よく聞け。俺は直ぐにこの街を出て、次の村に向かう。お前らも一緒に来い

アイツの言葉が全部本当なら、これからこの世界で生き残っていくためには、ひたすら自分を強化しなきゃならない。お前らも重々承知だろうけど、MMORPGってのはプレイヤー間のリソースの奪い合いなんだ。

システムが供給する限られた金とアイテムと経験値を、より多く獲得した奴だけが強くなれる。

…この≪はじまりの街≫周辺のフィールドは、同じことを考える連中に狩り尽くされて、直ぐに枯渇するだろう。モンスターのリポップをひたすら探し回るはめになる。今のうちに次の村を拠点にした方がいい。俺は、道も危険なポイントも全部知ってるから、レベル1の今でも安全に辿り着ける」

 

「でも…でもよ。前に言ったろ。おりゃ、他のゲームでダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフト買ったんだ。そいつらももうログインして、さっきの広場にいる筈だ。置いて…いけねぇ…」

 

「……」

 

キリトは少し寂しそうな目をして俺を見ていた

やれやれ、ここで単独行動するつもりだったのにな…仕方ない…

 

「俺はついていく。言っておくが次の村までだぞ?」

 

「…!あっ…あぁ!!」

 

キリトの目が生き生きしだした

こいつ…本当に男か?

 

「じゃあ、ここでお別れだな、何かあったらメッセージ飛ばしてくれ

じゃあな、クライン!」

 

「達者でな」

 

「おう!後、キリト!おめぇ、案外カワイイ顔してやがんな!結構好みだぜオレ!」

 

「クライン…お前こっちか?」

 

と手を伸ばし、手の甲を顎につける

 

「ちげぇよ!?」

 

「ハハハッ、お前もその野武士ヅラの方が十倍似合ってるよ!行くぞ、ユウト!」

 

「…あぁ!!」

 

俺達は、はじまりの街の北西ゲートを次の村を目指した

 

sideout

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一話目です

原作小説一巻を見ながら、どんな話の流れだったっけ?と思いながら書きました

何か、キリトが半分ヒロイン化してますね(笑)

でも、アニメのキリトが涙ぐみながら走ってるのを見たら…仕方ないね!(笑)

一応キリトにはサチをメインにして、シリカ、リズ…はどうだろう?(笑)

取り敢えずリズはどっちかになると思ってくれれば良いです

サチはキリトのメインヒロインにするので生存方向にするつもりです

では、次回をお楽しみに!

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次の村でキリトと別れた俺は

地道にレベルを上げていった

何時もの様に狩りをしていると一人のプレイヤーと出会う

そして一ヶ月後

遂に第一層攻略会議が始まる

次回[ソードアート・オンライン rebirth of fencer]

第2話「第一層攻略」

説明
第1話「悪夢の始まり」

予想より長くなりました…
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