あまい三角関係
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【唯】

 

 夏休みにムギちゃんが別荘に招待してくれた。最初はほとんど言葉を交わさなかった

から私だけだと思っていたけれど、集合場所であるムギちゃんの別荘の前にたどり着くと

門の前にあずにゃんの姿があった。

 

「あずにゃああああん」

 

 それはもう高速道路の自動車のごとく駆け抜けてあずにゃんに抱きつくと、心臓でも

止まるんじゃないかってくらいの勢いで驚いていたのだ。

 

「ゆ、唯先輩!? 何でここに」

「ムギちゃんに誘われて」

 

「私もムギ先輩に誘われて来たんですよ」

「へ?」

 

 ムギちゃんが誘うからにはちょっとエッチなことも覚悟して、いや楽しみにして

来たのにあずにゃんがいるってことは普通の遊びかな。とも思えた。

 

 ムギちゃんはお嬢様だし私たちが慣れている遊びでも十分に楽しむから

見ていてすごく微笑ましいけれど、ちょっとその気になって来たから拍子抜けである。

 

 それはあずにゃんも同じようで私と目が合うと軽く苦笑をしてからほぼ同時に溜息を

吐いた。そして微妙な間を空けた後にあずにゃんが恐る恐る私に聞いてきた。

 

「あの、律先輩や澪先輩は何で来なかったんでしょう」

 

 そういえば同じ寮にいるわけじゃないから今日何をしているのかがあずにゃんには

わからないのか。私は頬を指でかきながらあずにゃんの耳元に近づいて囁いた。

 

「りっちゃんが今度こそ澪とヤる!って言ってラブホに行くんだって」

「ラブ・・・」

 

 私の言った一部の単語を繰り返し言おうとして途中で止めるとあずにゃんは

俯きがちになって顔を赤く染めていた。あずにゃんは相変わらずウブで可愛いな。

 

 そう思っていると玄関からムギちゃんが出てきて私達に向かって手を振って

近づいてきた。ムギちゃんが門のセキュリティを簡単に解除をすると

私達は中へと通された。

 

 どうやら今日という日のためにお手伝いさんや両親をすっごい説得して

この別荘を借りたんだとか何とか。今日はどんなことして遊ぶんだろうって

気持ちを切り替えた私はワクワクしていたのだけど。

 

「はい、お二人に私の気持ちを込めて」

「これって・・・」

 

 ムギちゃんに渡された白い箱を手に取ると、中から甘い匂いが漏れていた。

この匂いはチョコの匂いだ。それはあずにゃんも気づいたようで二人して驚いた

表情を隠さなかった。

 

「私の手作りなの〜。やってみたかったんだ」

 

 顔を赤らめて嬉しそうに呟くムギちゃん。そうか、今日はバレンタインの日であった。

女の子が男の子にチョコを渡す日だと思って興味を持たなかったが好きな人同士だったら

関係ないのかもしれないって少し胸がくすぐったくなる。

 

「梓ちゃんと、唯ちゃん。どっちも本命」

「ムギちゃん・・・嬉しいよ」

「ありがとうございます!すごく嬉しいです!」

 

 しかし、どっちも本命にしろ。二人を同時に呼ぶのはどういう意図があるのだろうと

思っていたら、私たちが礼を言った後すぐに二人の間に収まる風に私達に抱きついてきた。

 

 ムギちゃんは新しいもの、やったことないことに夢中になる。一度決めたら

実行するまで諦めないしぶとさを持つ。私はムギちゃんが二人を呼んでチョコをくれて

抱きつくといったらもう・・・3Pしかない。

 

「ど、どういうことでしょう?」

 

 そして把握しきれない後輩が約1名いた。

 

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 部屋に通されると今まで過ごしてきた写真が納まっているアルバムが本棚に収まり

テーブルの上には駄菓子が豊富に入っている器があった。

 

 普通の広さだけど窓からは海が一望できて、部屋の隅には大きめなベッドが

一つ置かれていた。3人までは入れそうである。

 

 それを確認して思ったのはここに来て数日は滞在しているものだということ。

 

「ねえ、ムギちゃん。箱開けていいかな?」

 

 私は箱から漏れる匂いに我慢しながらムギちゃんの言葉を待つ。

まるでおあずけをくらっているワンコのような気持ちになる。わんわん。

 

「いいわよ、だけど」

 

 いいわよっていう言葉を聞いた直後に手を動かして箱を外すと横からムギちゃんの

白くて綺麗な手が伸びてきて一つ摘んだ。

 

「はい、唯ちゃん」

「え・・・」

 

 摘んだそれを口に咥えると目を瞑って私に向けて顔を出してきた。

それはつまり、口移しってことかな。ちょっとだけ抵抗感があったがチョコと

ムギちゃんの可愛い表情の誘惑に負けて私はムギちゃんの口元に自分のをあてた。

 

 最初はチョコに口を当てようとしたが、ムギちゃんが目を閉じてるのを見てると

ムラムラしてきて私は勢いでムギちゃんの腰と後頭部にそれぞれ手を回して

思い切りキスをした。

 

「ん・・・」

 

 チョコのように甘いムギちゃんの声が聞こえる。チョコを間に挟んで二人の口の

温度にチョコは徐々に溶けていき二人の口の中に広がっていく。

 

 ムギちゃんの粘液と私の粘液とチョコが絡み合ってなんともいえない快感に

心が焦がされる思いがした。まるで一体化してしまったようにムギちゃんを放すことが

できない。

 

 それでもチョコはいつの間にか消えていて、私の背中にムギちゃんが指で

トントンと突いたことで我に返ることができた。

 

「美味しかった〜」

 

 ムギちゃんからその言葉を聞くと少し恥ずかしい気持ちが出てしまう。

ムギちゃんは物足りなさそうに今度はあずにゃんの方を向く。

私もあずにゃんとしてみたい衝動に駆られているのだ。そのことに気づいたあずにゃんは

私達の行為を見て赤らめていた顔を隠して逃げようとしたのを私達は許さず捕獲した。

 

「やめてください!」

「嫌よ嫌よも好きの内ってね〜」

「唯ちゃん良いこという〜」

 

 テンションが上がりきった私達に観念したのか、赤くなりながらも目を潤ませながらも

あずにゃんはベッドに押し倒されたまま私達を見ていた。

 

「唯ちゃんからどうぞ」

「え、いいの?」

 

「えぇ、その後私も美味しく頂くから」

「ありがとう。じゃああずにゃん、そういうことで」

 

「ん・・・んぅ」

 

 ムギちゃんと同じように一つのチョコを咥えて、怯える子猫のように震える

あずにゃんの唇にチョコを当てると、恐る恐る震えながらもそれを咥えようとする

仕草に胸が熱くなってきた。

 

 更に私の唇に触れることであずにゃんからのOKも頂いたのだと思い、

私はあずにゃんを抱いてキスをした。

 

 あずにゃんの舌と私の舌が中へと入っていたチョコを挟んで相手を求めた。

チョコは勢いよく溶けていきあずにゃんの匂いとチョコの匂いが混じりあい、

まるであずにゃんをチョコでコーティングしたのを食べてるような錯覚があり。

私の興奮は収まることを知らずにいた。

 

「んん・・・!」

「んふぅ・・・」

 

 キスしているのと、興奮しているのが混ざって言葉にならない喘ぐような声が

漏れて厭らしい気持ちに拍車をかける。止めようがなかった激しいキスも

チョコが溶けたことが合図となって、私はあずにゃんから唇を離すと

 

 チョコと唾液が混ざったのがつぅっと糸を引くようにして、すごくエロかった。

 

「はふぅ・・・」

「ご馳走様でした」

 

 あずにゃんがへろへろになってぐったりとベッドに横たわっていると

休む暇など与えないとばかりに、入れ替わりにムギちゃんがあずにゃんの顔を覗いてくる。

 

「今度は私としよう。梓ちゃん・・・大丈夫?」

「はい・・・ムギ先輩・・・お願いします」

 

 息も切れ切れだけどあずにゃんは嬉しそうに笑みを浮かべながらムギちゃんの

問いかけに応じていたが声が小さかったから、頷く動作と一緒にOKをしていた。

その仕草が何だか可愛らしい。

 

「んあぁ・・・ムギ先輩」

「ふふ、可愛いわ。梓ちゃん」

 

 改めて傍から見ると、とてもエロチックな光景なんだなぁと顔が熱くなっていくのを

感じていた。ちゅ、ちゅ〜しているだけなのに・・・っ

 

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「ふぅ、満足満足♪」

「・・・」

 

 終わった後、濃厚なキスより息継ぎをするような連続でしていたキスを満喫したのか

ムギちゃんは肌の艶がよくなり、あずにゃんは疲れきった表情をしていた。

 

 近くにあったテーブルにカップを置いて紅茶を淹れるムギちゃん。

よく見るとそれは部室に置いてあったものと同じ物のように見えた。

 

 テーブルの傍にある椅子に座ってムギちゃんが奥からお菓子らしきものを

持ってくるのを待つ。このワクワク感がたまらなかった。

 

「駄菓子と普通のお菓子どっちがいい?」

『普通のお菓子でお願いします!』

 

「そ、そうなの・・・」

 

 すごい嬉しそうに駄菓子も持ってきたムギちゃんだけど、それは子供の時に

食べ飽きてるし、高級そうな紅茶には高級そうなお菓子が合うだろうと思った。

 

 ムギちゃんは普通と言っているが、一般家庭からしたら十分に高級そうな風貌を

している。箱からオーラを放っているかのようだ。

 

「じゃあ、いただきます〜〜」

「どうぞ、召し上がれ〜。梓ちゃんもどうぞ」

「あ、じゃあいただきます・・・」

 

 手を合わせてからすぐさま私は箱に手を伸ばすと嬉しそうに微笑むムギちゃんが

あずにゃんにもすすめている。一つ一つ袋に入っていて、小さめのケーキのような形を

したお菓子を早速口に入れた。

 

 しっとりとしたスポンジからチョコが噛む度に口の中に広がるようなのがたまらない。

ひかえめな甘さと深みのあるコクがたまらなくて、思わず声に出してしまうほど。

 

「ん〜、おいひい〜」

 

 空いてる手は頬に当てて美味しさを堪能しながら幸せそうに言葉を漏らすと

つられてあずにゃんも口にして私と同じような顔をする。

 

 それを嬉しそうに見つめているムギちゃん。時はゆっくりと過ぎていき、

最近の出来事を報告がてら楽しく話していると、あずにゃんの部長話に華が咲き。

 

「あー、私もあずにゃんが部長の軽音部で活動してみたかったな〜」

「え・・・。でも、律先輩ほど明るくないですし」

 

「そんなことないわよ、憂ちゃんからもらったDVDにはすごく良い映像だったし」

「ねぇ、ムギちゃん♪ ・・・はっ・・・!」

「どういうことでしょうか、二人とも」

 

 うっかりムギちゃんと私が内緒にしていないといけないことを口が滑ってしまい

あずにゃんにバレてしまった。椅子から立ち上がるとあずにゃんの位置から

怒ってますよオーラがひしひしと私に体に突き刺さる。

 

 怖くて見れたもんじゃないよ。

 

「ふふふ」

「あずにゃん?」

 

 恐る恐る見ると嬉しそうに笑うあずにゃんの顔が視界に入った。

怒っていたわけではなさそうだ。

 

「確かに面白そうかもしれませんね」

 

 ありえないことですがっていう言葉を言ってもう一度あずにゃんは椅子に

座って紅茶を啜った。

 

「私、部長らしいことできていますかね」

 

 映像に出ていることについて聞いているのだろう。私とムギちゃんは当たり前と

ばかりに大きく頷いていた。やや空回りしてたけど、楽しそうで元気な軽音部が

続いていたのは私達にはとても嬉しかったのだ。

 

「さすがあずにゃんだと思ったよ」

「これからも軽音部をまとめていってね」

「はい・・・あっ・・・でもけっこう憂に助けられてる部分もありますし」

 

 苦笑しながら照れるあずにゃんに私はそのあまりに可愛い仕草に思わず頭をギュッて

抱いて思い切りなでなでをすると、ビクッってなったあずにゃんが抵抗し始めた。

 

「や、やめてください!」

「あずにゃんは可愛いなぁ。大丈夫だよ、しっかりしてるし。大丈夫」

 

「ゆ、唯先輩・・・」

 

 そうして時間がゆっくりと。しかし確実に過ぎていって外が徐々に暗くなってきた頃。

ムギちゃんが紅茶飲んで顔が緩んでる私達に向かって肘をついて話しかけてきた。

 

「今日は遅いから泊まっていくといいわ〜」

「あ、うん。ありがと〜ムギちゃん」

「本当だ。もうこんな時間・・・」

 

 携帯を取り出して時間を確認するあずにゃん。

その姿を視界に捕らえて不敵に笑む私とムギちゃん。

そして二人であずにゃんの肩を叩くと、ビクッとしてから私達の方に向くあずにゃん。

私達は満面の笑みを浮かべて。

 

「夜は長いからたっぷりと過ごそうね、あずにゃん〜」

「今日は記憶に残るバレンタインデーにしましょうね、梓ちゃん」

「ふ、二人とも。私に何をするつもりですかあああああああああああああ!?」

 

 怯えているあずにゃんだったけど、いざ愛で愛でタイムの時にはすっかりその気で

淫らに悶えていたあずにゃんなのでした。

 とはいっても、やったのは午前中のチョコキスとお触りだけでそれ以上のことは

しなかったけれど、私としてはちょっと物足りなかったかな。

 

 今度は3人でもっとイチャイチャしたいなって心の中で想いました。

あずにゃんも、ムギちゃんも大好き♪

 

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 寝る前に割り当てられた部屋の中で今日あった出来事をメモ手帳に記していると

ふと思い出すあずにゃんの言葉。

 

『唯先輩って雰囲気変わりましたよね』

『え、そうかな?』

 

 びっくりして啜っていた紅茶を噴出しそうになった私。

思いもしなかった言葉だったから、本当に驚いた。

 

『何かしっかりしたような気がして・・・』

『えー、そんなしっかりしてないよ。ねぇ、ムギちゃん』

『ん〜。別段変わったことはないけれど。そうね、一人で最低限のことができて、

憂ちゃん頼みじゃなくなったこととか。それか・・・』

 

 時間を置いてからくすくすと笑うムギちゃん。

 

『色んなタイプの人と仲良くなってるから、無意識に相手の顔色とか見えるように

なってるのかもしれないわね』

『そうかなぁ?』

 

 心底不思議そうに首を傾げる私。言われてる当人でさえもピンとこないが、

あずにゃんはわかっていたみたいで。

 

『そういう人ですよね、唯先輩は』

 

 そう言ってムギちゃんと同じように笑っていた。そんなことを思いながら

私は今置かれてる幸せを噛み締めながらそれらを手帳に綴った。

 

 いつしかこれらが歌詞として仕えるかもしれないと思って書き溜めしておくのだ。

それと、寂しい時にでもこれを開けばいつだってその時の光景を思い出すことができるし。

 

 薄暗い部屋の中そんなことを考えながら書き、書き終わると手帳を閉じて照明の近くに

置き、布団を被った。

 

「あー、楽しかった。おやすみ〜」

 

 誰に言うことでもなく自分の中でのシメとばかりに呟いて目を瞑った。

今までにない幸せなバレンタインの日にお礼を、それ以上の幸せを求めて私は頑張る。

 

お終い

説明
けいおんからの唯ムギ梓3人の百合話です。ついでにバレンタイン絡みです。あずにゃんは唯にもムギにも気がありそうだったのでこの3人は3人で絡んでも修羅場とかは無縁な気がします。そんな内容のSSでございます、良ければご賞味あれ
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けいおん! 琴吹紬 平沢唯 中野梓 百合 キス バレンタイン 

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