インフィニット・ストラトス―絶望の海より生まれしモノ―#97
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白熱した専用機の部のレースの結末は、割とあっけなかった。

 

飛び交うミサイルやグレネードの爆発物。

 

牽制の為にばら撒かれる銃弾や衝撃砲。

 

派手に展開される砲火の応酬は最後の最後まで続けられたのだが一瞬の隙をついて抜けだして独走状態に入った楯無がそのまま逃げ切って決着。

 

慌てて追う一年専用機組だが、ダリルとフォルテの上級生組が『出し惜しみなし』とばかりにばら撒いたグレネードに阻まれてしまいそのままゴールまで突入。

 

『あっけない最後』と取るか『白熱した接戦』と取るかは見る側次第なのだが、観客は歓声を上げ興奮に沸いているのだから『白熱した接戦』と見ていたのだろう。

 

 

程なくして、――と言ってもアリーナの状況確認が行われた後に一年生訓練機の部が始まる。

 

その最初を飾ったのは――誰に影響されたのか、一斉に投げられた大型グレネードの爆炎であった。

 

『おお!』と上がる声。

 

爆炎の中から飛び出してきた面々は一機足りない。

 

――どうやら、初撃撃墜のようだ。

 

 * * *

[side:簪]

 

レースを終えた私達はみんなしてしばらくぐったりとしていた。

 

そりゃ、あれだけド派手に爆破爆破の連続をやってれば精神的にも肉体的にも疲れるのは当たり前だと思う。

 

まあ、その引き金を引いた私が言うのもアレだけど。

 

その『ぐったり度』が高いのはお姉ちゃんと先輩二人くらいで、他の皆は私や空くん、あとはシャルロットで慣れたのか結構早く復活してたりする。

 

「さて、エネルギー補給とセッティングしとかないと。」

 

いそいそとピット備え付けの整備施設に向かう。

 

整備状態にした打鉄弐式にケーブルを繋いでエネルギーの供給を開始。

次はディスプレイに繋いで―――よし。

 

まず、背中のブースターパックを外して、武装とエネルギーバイパスもデフォルトに再設定。

あとは荷電粒子砲は…速射砲だから最低出力でいいとして―――って、

 

「あれ?みんな、どうしたの?」

 

見れば私に並んで鈴もラウラもシャルロットもセシリアも通常仕様への再換装とエネルギーや弾薬の補充を始めていた。

 

 

「うーむ、なんと言うか…」

 

「なんか嫌な予感がするというか…」

 

「こう、胸騒ぎがするというか…」

 

「端的に言えば何か起こりそうな予感がしてな。」

 

みんなして『嫌な予感』がするらしい。

 

―――これ、物凄くフラグの匂いがするんだけど。

 

「シャルロット、面制圧仕様って出来る?」

 

「ん?ミサイルとガトリングガンで出来るけど?」

 

「あたしは衝撃砲を拡散衝撃砲のままにしとくから二人で前衛やるわよ。」

 

「そういえば、一夏と箒は上だもんね。了解、鈴。」

 

「では、私は牽制と支援に回ると致しましょう。」

 

「ふむ、戦域管制は簪任せで問題ないだろう。なら私は遊撃でどちらにでも加われるようにした方がいいか?」

 

「必要だったら僕が武器を貸すからね。」

 

「うむ。いざとなったら頼むとしよう。」

 

『何か起こる』前提でポジションとか装備の相談を始めた級友たちの戦闘脳にびっくり。

だけど、まあ…心強いかな。

 

 

「それで、一夏と箒だが―――」

 

そうラウラが切り出すとみんなして微妙な表情を浮かべる。

 

「あの二人は考慮外でいいんじゃないかな。」

シャルロットが苦笑に似た表情を浮かべる。

 

「それにエキシビジョンは織斑先生と空、あと一夏、箒の四人でしょ?」

 

「残念。警備で私とお姉ちゃん――生徒会長も上がってるから――」

鈴の言葉に私が補足するとみんなして葬式ムードに。

 

「そのタイミングで襲撃があったら相手の冥福を祈らせて貰いますわ。」

 

「…だな。」

 

溜め息をつくセシリア、頷くラウラ。

 

「というか、理不尽枠の千冬さんに空、一夏と箒、そこに学生最強の生徒会長とミサイルフリークな簪ってどんな無理ゲーよ。」

 

「み、((ミサイル狂|ミサイルフリーク))…って、酷くない?」

 

織斑姉弟と箒、あと空くんが理不尽枠なのは認めるけど。

 

「言い得て妙だな。」

「うん、その通りじゃないかな。」

 

「ラウラはともかく、シャルロットには言われたくないよ。」

 

「ぷっ、くすくす…」

 

「ちょ、ちょっとセシリア、笑わないでよ!」

 

しまいにはみんなして笑いだす始末。

 

でも、不思議と居心地は悪くない。

 

「さて、さっさと機体の調整を済ませて休んどきましょ。」

 

「賛成。」

 

不安渦巻く胸中はそのままに、私達は着々と準備を進めていた。

 

――――『その準備が無駄になってくれるように』と願いながら。

 

 

 

「―――ああ、そういえば。」

 

「どうしたの、ラウラ。」

 

思い出したかのように――実際思い出したんだろう、ラウラが言い出してシャルロットが首を傾げる。

 

「先ほど見たのだが、警備に当たっている自衛隊の打鉄―――簪のものと同じミサイル内蔵装甲を装備していたな。」

 

「うわぁ………」

 

―――なんで私を見るの?

 

 

「…あの装甲って何発のミサイルが入るんだっけ?」

 

「確か、百は超えていた筈だ。」

 

「…それが四機?」

 

「………見事な飽和攻撃だな。」

 

…だから、なんで私をチラ見するのよ。

説明
#97:Condition yellow

話の切れ目の関係でちょっと短めです。
だんだんとサブタイトルのネタに困ってきた…
今の所、一度も被らせてはないんですけどね?
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コメント
感想ありがとうございます。被害者というか『降りかかる火の粉は焼き払う』思想というか…何度も似たような目に遭ってれば対策し始めそうですよね。(高郷 葱)
最早イベントで何も起きないなんて考えられない専用機持ち達…なんというか被害者としか思えないっすねwww(神薙)
タグ
インフィニット・ストラトス 絶海 

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