.hack//SAO アインクラット編第三話
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「マジ、この時代に生きててよかったぜ!!」

――《ソードアート・オンライン》“初心者”曲刀使いクライン――

 

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(トンネルを抜けると雪国………ってあったよな?)

 

《ソードアート・オンライン》におけるゲームの開始地点《始まりの街》の石畳に降り立った俺はふと、そんなことを思った。

 

(これがゲームの中の世界…)

 

自分の右手を見る。

握って開いてを繰り返す。

確かに、手の感覚がある。

周囲のざわめきや、大気の匂い、陽の暖かさや風を感じる。

                             ・・・

(AIDAサーバーに囚われた時を思い出すな…ま、あっちほどリアルじゃねぇみてーだが)

 

確かに、五感全てをこのゲームは感じることが出来る。

だが、AIDAによって作られた擬似サーバーで感じたPCとの一体感、(と言うよりは融合と言ったほうが適切か?)は感じられない。

結局、どれだけ緻密に作られていてもVR(ヴァーチャルリアリティ)だってことだな。

 

(さて…んじゃ、とりあえずパイに言われたように5時までは適当に散策するかな)

 

パイにダイブする前に言われていた、ハロルド・ヒューイックの《ブラックボックス》の影響。

碑文の活性化やらナンやらは感じられない。

ま、俺のPCが『The World R:2』のハセヲじゃない時点であんまし心配してなかったが。

碑文の因子、つまり“スケィス”がこのPCには宿っていないからな。

PCと精神融合して、一度は碑文全てを集めた身だったとしても、《三崎亮》と《碑文使いPCハセヲ》両方が揃ってなきゃ意味は無い。

 

(まぁ…外見は『The World 』の1stフォームのハセヲのまんまだが)

 

顔はそれっぽくなった。

防具が初期装備だから、もし今後続けるなら1stフォームに近いのを見つけてみようかとは思う。

                  マルチウェポン

武装に関しては、残念ながらこのゲームに錬装士の職業(厳密に言えば職業自体が設定されていねぇ)は無かったので、無難に片手用短剣を使うことにした。

欲を言えば双剣を使いたかったが、そういう武装は無い。

 

(無いものねだりしてもしかたねぇし…どーせ5時にはログアウトすんだ。最初は適当で構わねぇーだろ)

 

と、そこまで考えて苦笑する。

結局、俺にとってのPCは『The World 』のハセヲだってことになってると…。

 

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「ぷきーっ!」

 

目の前で間抜けな声を出して砕け散った青い色のイノシシモンスター。

いわゆる、スライム相当の雑魚敵。

ソイツを倒した俺は軽く息を吐く。

 

(《ソードスキル》に関してはだいぶ解ってきたな…モーションに乗る感覚が大事らしい)

 

このゲームの《技》は他のゲームの様にコマンドを入力する方法じゃ出ない。

それは当然だ。

この世界に入ってる俺は現実の肉体を動かしてるワケじゃない。

大事なのはイメージ。

スキルは初期モーションがシステムに感知されれば勝手に出る。

タイミングを合わせるだけだ。

 

(しっかし、双剣がねぇのは残念だな。やっぱ片手だと違和感バリバリだ(笑))

 

初期装備の無名の片手用短剣を鞘に仕舞いながら首を振る。

最後にプレイした…そしてもっとも慣れしたんだ『The World 』の感覚が抜けない。

ま、アレだけ色々あったしこの感覚は一生付き纏うんだろう。

 

(そーいや、このゲームで片手装備を両手に持ったらどーなるんだ?)

 

ふと、疑問が浮かぶ。

真っ当に考えりゃ何らかのペナルティーがあるんだろうが…。

 

(…試すのはタダってな)

 

先ほど敵からドロップした同じ片手用短剣を左手に装備してみる。

その瞬間、【System Error】の文字と共に視界の端に《ソードスキル使用不可》のアイコンが浮かぶ。

 

(やっぱりダメか…?しかし…)

 

左手の短剣を振ってみる。

 

(振ること自体は出来そうだな…ならっ!)

 

少し離れた場所に居る青イノシシをターゲット。

イノシシがこっちを認識してアクティブ状態になる。

突撃してくるイノシシの動きを冷静に見極めて、すれ違いざまに左手を一閃。

 

「ぷぎゃー!!」

 

悲鳴を上げるイノシシ。

HPバーが減少してる。

どうやらイケそうだ。

 

(《ソードスキル》が使えなくなるのはこの世界じゃ致命的かもしれねぇが…慣れ親しんだ戦い方が有利な場合もあるよな)

 

そこで俺は少し試してみることにした。

思い出すのは『The World 』での双剣の基本技《疾風双刃》

システムのアシストは無くても、この仮想現実なら出来るかもしれない。

振り向いて、再び突撃の様子を見せる青イノシシを見据え、俺は駆け出す。

 

「………ッ!うらぁ!」

 

ドンピシャのタイミングで《スキルトリガー》を発動。(イメージで、だが)

勿論、システム外の動きだから何のエフェクトも発生しないが、イメージ通りの動きでイノシシにヒット。

青イノシシは断末魔を上げてポリゴンを撒き散らした。

 

(悪くねぇ……が、《ソードスキル》に比べるとな………ま、Lvと武器の性能によっちゃイケるかもな)

 

システムのアシストが無い分、威力も見劣りするし当てるのにも苦労しそうだが、俺は《スキルトリガー》を再現したことでほんの少しだけ満足感を味わった。

両手の短剣を鞘に収めると、俺は休憩のつもりで周囲を見渡す。

ちょっと離れた場所で2人組みが青イノシシと戦っている。

赤い髪のバンダナ男と黒髪の男。

どうやら《ソードスキル》の練習らしい。

バンダナの男が奇声を発しながら剣を振り回している。

 

(バンダナは初心者か…黒髪の方はそれなりの経験者っぽいな)

 

何かを拾って隙無くスキルを発動させる様は中々堂々としている。

黒髪の方がイノシシをあしらっている間にバンダナの方がスキルを発動。

流れるようにイノシシに命中しどうやら倒したようだ。

コッチまで聞こえるような雄叫びを上げて喜んでる。

 

(初勝利………か。懐かしいな)

 

俺にとっての初勝利は苦い記憶と共にあるが、あのバンダナ男には無縁そうだ。

そんな感慨に耽っていると、

 

「ピコーン!」

 

軽快なシステムの音と共に、画面端の時刻が点滅する。

 

『PM 4:55』

 

パイとの約束は5時だ。

そろそろログアウトしてメールのチェック…じゃねぇ。

とりあえずの体験報告をしなきゃならない。

俺は右手の人差し指と中指を揃えると真下に振る。

ゲームの《メインメニュー・ウインドウ》を呼び出す動作だ。

そのトップメニューからログアウトボタンを押そうとするが、

 

(………?ログアウトボタンが無い?)

 

ログインした時にはあったログアウトボタンが消えている。

空白のメニュー画面を見つめながら俺は素早く考える。

 

(…バグか?正式稼動初日だから何かしらあるかとは思ったが、よりにもよってログアウト不可かよ!)

 

ログアウト不可に良い思い出がない(AIDA的な意味で)俺は盛大に顔をしかめる。

しかし、怒ったところでログアウトボタンが復活するわけでもない。

俺は溜息を吐きながら、近場の岩に座る。

 

(こんな重大問題が発生したんだ。…直にでもGMからのアナウンスがあるハズ。それにしても俺ってネトゲーするとトラブルばっかだな…呪われてんのか?)

 

ウダウダ考えながらシステムアナウンスを待つ。

正直、俺は油断していた。

このゲームに入ってもパイの危惧したような事態は発生しなかったし、このゲームが『The World 』じゃないって甘い考えもあった。

まぁ、それも仕方が無いんだが。

   ・・・・・

まさかあんな事態が発生するなんて誰にも予想出来なかったのだから。

 

 

 

―――こうして、楽しいゲームであったこの世界はその有りようを、永久に変えた。

説明
SAOにハセヲが爆誕小説第三話です。

正直、憑神とかどーしようか悩んでます。
出したらキリトとかめじゃないチートですし。
auraとかもどうしよっかなー
データの海に消えたオーヴァンにもワンチャン!?
悩みは尽きませんね。


注意*この小説には作者設定、時系列改変、キャラ崩壊、その他諸々が含まれます。
気になる方はブラウザバック!
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時系列改変 小説 SAO ハセヲ 素人 ソードアート・オンライン .hack G.U. キャラ崩壊注意 

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