真・恋姫無双 三人の天の御遣い 第二章『三??†無双』 其の二十一
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第二章  『三??†無双』 其の二十一

 

 

本城 皇帝執務室      (時報:桂花一人目 金桂生後五ヶ月)

【秋蘭turn】

 未の刻(午後2時)を少し過ぎた頃。

 私は皇帝執務室の扉を叩いた。

 

「一刀、入るぞ。」

 

『『『え!?秋蘭!?』』』

 

 扉を開ける前に私だと気付く。

 わざと言葉を少なくして声を掛けたのに、それでも私の声だと分かってくれる。

 少々意地が悪いとも思うが、好きになった男が私の声を聞き分けてくれると云うのは嬉しいものだ。

 扉を開けて中に入ると一刀たちは三人とも驚いた顔をしていた。

「そんなに驚かなくてもいいだろう・・・」

 私が不満げに言うと一刀たちは困った顔になる。

「い、いや・・・だってもう昼過ぎだし・・・」

「検診は午前中だろ?」

「てっきり今日は誰も来ないと思ってたから・・・・・」

 まあ、今まで検診で懐妊が判った者達は華佗の所から直接ここに来ていた様だからな。

「悪いが先に華琳さまへ報告に行かせてもらった。」

「ええっ!?・・・・・でも・・・秋蘭なら・・・」

「「ま、まあ・・・しょうがないか・・・」」

 そこで素直に納得されるのも面白くない。

 もう少しいじめてやるか♪

 

「そういう訳で懐妊の報告なのだが・・・」

 

 そっけない態度で言ってやるが、一刀たちは真摯な顔で私の前にやって来る。

 

「「「ありがとう、秋蘭。俺たちにして欲しい事が有れば何でも言ってくれ。」」」

 

 いじめるつもりが、返り討ちにされた。

 何とも頼もしい言葉と態度に胸が早鐘を打ち始める。

 一刀たちはもう、眞琳さまを始め何人もの子供が居る父親なのだ。

 貫禄と云うか余裕も備わってきて男らしくなった。

 私は浮かれる気持ちを抑え平静を装う。

「して欲しい事か・・・では、先ず私の話を聞いてもらおうか。」

 私達は座って話を始めた。

「先程華琳さまに『外史』の事を伺った。」

「「「ああ・・・・・今まで秘密にしていて・・・・・ゴメン。」」」

 謝る態度もどこか堂々としている。

「いや、実はある程度予測はしていたのだ。紫一刀と初めて会った時にしてもらった説明や、その後も華琳さまや風に一刀たちの事を訊かれる事が有ったのでな。」

 済まなそうにしていた一刀たちは、私の言葉に少し安堵したようだ。

「今思うと初めて会った頃の紫一刀は初々しく何処か可愛げがあった気がするな。」

「あの時は結構必死だったんだぞ・・・・・春蘭が理解してくれなくて。」

「ふふ、姉者らしくて可愛かったではないか・・・・・おっと、話がそれた。一刀たちの事を予測はしていたが、今まで教えて貰えなかったと云うのには少々残念だ。」

「「「うっ!!」」」

 寂しげな顔で言ってやると遂に冷や汗をかき始めた。

「明日は一日私と一緒に居てくれると云う事になっていたな♪」

「「「何でもお申し付け下さい!!」」」

 一刀たちが椅子から床に飛び降りて土下座をした。

 ようやく一刀らしい所が見れたな。

 こんな態度の一刀たちが可愛いと感じるのは華琳さまの影響だろうか。

「では、買い物に付き合って貰おう。後宮に移るのに何かと欲しい物が有るのでな。」

「「「心得まして御座いますっ!!」」」

「明日は姉者抜きで、私とデートだ。私のしたいようにさせてもらうぞ♪」

 

「「「え?・・・・・・デート?」」」

 

「不満か?」

 今度は拗ねてみせる。

「「「め、滅相も御座いません!全身全霊を掛けてデート致しますっ!!」」」

「では、明日を楽しみにしているぞ。」

 そう言って私は立ち上がった。

「「「もう行っちゃうの!?」」」

「明日の準備をしたいからな。浮かれた気持ちで用意をするのもデートの楽しみの一つだろう♪」

「・・・浮かれた・・・」

「・・・用意・・・」

「・・・楽しみ・・・」

 

「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!燃えてきたあああああああっ!!」」」

 

 ちょっと薬が効きすぎたか?

「そうだ。先程後宮で姉者は、華琳さまが懐妊した時の様な顔をしていたな。」

 

「「「げ!!」」」

 

「では、明日な。」

 私が部屋を出ると後宮の方から走ってくる足音が聞こえて来た。

 流石は華琳さま。姉者を解き放つ時期を心得ていらっしゃる。

 

「ほ・ん・ご・おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 一刀たちの事だ。心配いらんだろう♪

 

 

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翌日の朝

紫一刀寝室

【紫一刀turn】

 体を揺すられる感覚に、意識が眠りから覚める。

「朝ですよ、起きてください。」

 ん〜?今日は誰が起こしに来てくれたんだ?

 この優しい感じは月か大喬か・・・・・。

「起きないならこうしてしまいますよ、旦那さま♪」

 へ!?ダンナサマ?そんな風に俺の事を呼ぶ子は居ない・・・あ、この頬に感じる柔らかい感触は唇・・・・・一体誰だ!?

 俺が目を開けるとそこには秋蘭の顔が有った。

「しゅ、秋蘭!?」

「おはようございます、旦那さま♪」

 朝の挨拶をした秋蘭の顔が離れて、ベッドの上の俺を微笑んで見ている。

「お、おはよう・・・・・・いや!それよりも秋蘭!どうしたんだ!?その呼び方・・・・・・それにその格好!!」

 秋蘭は何とメイド服を着ていた。

 ロングスカートの本格ビクトリア調メイド服・・・・・俺たち三人がメイド隊用にデザインした物のひとつだけど・・・・・。

「実は以前から着てみたいと思っていたのですが、皆の手前自重しておりました。口調もこの服装に合わせてみたのですが・・・・・」

 そんな!言ってくれれば専用のを考えたのに・・・・・・いや待て!

 メイド服とは本来制服じゃないか。

 制服萌えと云う原点に立ち返ればこの質素とも見えるメイド服はアリか。

 秋蘭の様にスラリとした美女が黒のロングスカートを履くことで醸し出される清潔感。

 その反対に上着とエプロンを押し上げて自己主張するふくよかな胸。

 ・・・・・・・・・アリだな!

「ええと・・・・・昨日言ってたデートの準備ってこのメイド服だったの?」

「はい♪他にも有りますが、まずはお買い物に・・・」

 うん。秋蘭がこんなに清楚で上品に振舞ってくれるんだから、俺もイギリス紳士の様な気持ちで対応しなければ!

 きっと秋蘭がしたいのはそう云った大人のデートなんだろうから。

「よし!今日は気合を入れて秋蘭が満足行くように付き添わせてもらうよ!あっと、言うのが遅れちゃったけど、そのメイド服秋蘭に似合ってるよ。」

「ふふ、ありがとうございます。でも、このメイド服を着るのは今日だけですよ。この話し方も。そうそう、大喬と小喬の様に首輪と鎖も用意した方がよろしかったですか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 それじゃあ特殊な大人のデートになっちゃうじゃないか

 

 

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房都 東部商店街

【秋蘭turn】

 緑一刀と赤一刀も起こし、私の作った朝食を食べてもらった。

 私は給仕に専念する為、先に食べてしまっていたのだが、一刀たちはどうやらそれが不満だった様だ。

「秋蘭の作る料理は美味しいけど、一緒に食べた方がもっと美味しくなるって。」

 そんな事を三人が揃って力説している。

「それは昼食の時のお楽しみです。今日は私のしたいようにさせて下さるのでしょう?」

 こう言って微笑みかけると大人しくなった。

 商店街に着くとかなりの人出だった。

 今月は眞琳さま方四人の誕生日のお祝い、それに翠、麗羽の出産と相次いだ為にいつも以上に街が活気づいている。

「あれ?夏侯淵様ではありませんか!そのお召し物だったので気が付きませんでしたよ。」

 私が懇意にしている雑貨屋の店主が声を掛けてきた。

 この店は魏領の品を扱う専門店で、看板に華琳さま御用達を掲げる事を許されている。

「てっきり御遣い様が新しいメイドを口説いている最中かと思いましたよ。」

「「「俺たちはそんな事してないって!」」」

「なぁにを仰いますか♪『江東の二喬』を街中で口説き落としたのは、未だに語り草ですよ。」

 赤一刀が膝を抱えて黙ってしまった。

「店主、実は私も懐妊してな。今日は入り用な物を買いに来たのだ。」

「なんと!それはおめでとうございます!成程、御遣い様は夏侯淵様を気遣いご一緒だったのですか。これは失礼な事を申してしまいましたな。」

「「「いや、別にそこまでじゃ・・・・・」」」

 ふふ、私がデートに連れ出したのに、勘違いされて困っているな♪

「旦那さまはお優しいですから。ねえ、旦那さま♪」

 そう言って擦り寄ると顔を赤くしてあたふたし始めた。

「いやあ、お熱いですなぁ♪これは今年の夏が早く来そうですな。あっはっはっは。」

 店主の笑い声に私達も一緒に笑う。一刀たちは半ば自棄っぽい笑いだったが。

 

 その後も色々な店を廻っては同じ様なやり取りを繰り返した。

 

 

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房都正門側城壁

【紫一刀turn】

 散々引っ張り回され、体よりも精神的に疲れた・・・・・。

 太陽が真上に来たので昼飯にしようと云う話になったら、秋蘭に城壁の上へ連れてこられた。

「弁当を作ってくれてたのか。」

「どこか行きたい飯店でも有りましたか?」

「「「いやいやいや!秋蘭の手作り弁当が食えるのにそんな事言ったらバチが当たるよ!!」」」

「そう言って頂けると嬉しいです、旦那さま♪」

 う〜ん、未だにこの口調と『旦那さま』には慣れないな・・・・・秋蘭に『一刀』って呼ばれるのにも慣れるのに時間かかったのに。

 それはまあ、秋蘭のやりたい様にするってのが今日の大前提だから、言わないけどね。

 俺たちはここに来る前に立ち寄った正門の詰所から借りた呉蓙を敷いて、その上に座って弁当箱を開けた。

「「「おお!おにぎりの弁当か!」」」

「以前、旦那さまがおにぎりのお弁当が好きだと仰ってましたので。」

 うう!何という心配り!

「・・・・・泣いて・・・いるのですか?」

「いやぁ、昔を思い出しちゃってさ。」

「子供の頃から遠足とか運動会とかにおふくろがおにぎりを握ってくれてさ。」

「剣道の大会でもわざわざ持ってきてくれて・・・・・食った後は気合が入ったっけ・・・」

 秋蘭は華琳と一緒に俺の元の世界の話をしてあるから、余り説明しなくて済むのが助かる。

「お母上が持ってくる?」

「この世界に来る直前まで通っていた学校は寮に入ってたんだ。」

「ああ、成程・・・・・」

「おにぎりってさ、握ってくれた人の想いが込められていると思うんだよね。普通の料理だって同じだろうけど、直接手で握る物だからさ、特にそう思うんだ。」

「それで食べると気合が入ると・・・・・やはり必勝の願いを込められたのでしょうね。」

「それはどうかな?秋蘭だって俺と出会ったばかりの頃の事覚えてるだろ、強く無かったの。」

 秋蘭は少し考えてから苦笑いをした。

「おふくろはむしろ『みっともない試合をするな』って気持ちだったと思う。おふくろも剣士だからさ、その辺は厳しかったな。」

「お母上も剣士だったのですか?」

「「「あれ?言ってなかったっけ?」」」

「はい、お爺さまに鍛えられたとは聞いていましたが。」

「俺の家は剣道場だって話はしたよね。親父とおふくろは学生時代に全国大会で知り合ったって言ってた。俺に教えるのが爺ちゃんなのは親父の仕事が忙しくてさ、おふくろは妹に教えてたし。剣道一家って友達からよく言われたっけ・・・」

「そうだったのですか・・・・・ちなみにお父様のお仕事は?」

「警察・・・こっちで言うと街の警備隊が近いかな・・・執金吾とまでは行かないけど、結構部下のいる役職で、職場でも剣道の師範役だって言ってたな。」

「成程・・・昔、華琳さまに街の警備を任された時に出された案はお父上のお仕事を知っていたからなのですね♪」

「それでも素人に毛が生えた程度の知識しか無かったけどね。覚えてるだろ?結局は警備隊に入って解らない事を体験してようやく形にしたんだから。」

「ええ、よく覚えていますよ。先走った根回しをして、華琳さまに怒られた事も♪」

「「あっはっは♪そんな事になってたのか、紫。」」

「うるせえ!お前らだって外史の記憶が無い状態で華琳にこき使われてみろ!毎日、刃の上を歩く様な気分になるぞ!!」

 ・・・・・あの頃から俺は秋蘭を結構頼っていたな・・・・・華琳への報告書で相談したり、春蘭をなだめてもらったり・・・・・。

「でもさ、あの頃って毎日が凄く充実してた。こんな風に城壁から街を見下ろすと、今でも陳留を思い出すよ。」

 あの当時の事が有るから今の俺はこうしていられる。

 あの頃は秋蘭が俺の子を身篭ってくれるなんて想像もしなかった。

 例えあの頃から外史の記憶が戻っていたとしても同じだったろうな。

 俺が秋蘭に振り返ると、そこには眩しい物でも見るような秋蘭の笑顔が有った。

 

「さて、午後は何をするのかな?おにぎり食べて気合も入ったし!何だって言ってくれ!」

 

 照れ隠しも有ってそう言って見せる。

「午後は・・・・・」

 

 

 俺たちは秋蘭に連れられ城に戻った。

 秋蘭の希望は一緒に夕食を作る事。

 勿論俺たちは頑張って手伝った。

 作業中の秋蘭はメイドさんと言うより、新婚さんって感じでもう・・・・・こんなに美人で、可愛くて、料理の上手い嫁さんって、元の世界じゃ絶対に貰えなかったろうな。

 そう言えば外史の記憶が戻ったばかりの頃、緑と赤が羨ましいと思った事が何度か有ったけど、秋蘭、華琳、流琉のお蔭で食生活に関しては俺が一番充実していたと断言できるぜ!!

 

 出来上がった夕食をゆっくり食べて談笑し、夜になって別れ際に秋蘭からオヤスミのキスを貰って、俺たちは最高の気分で一日を終えたのだった。

 

 

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翌日

後宮談話室

【秋蘭turn】

 今日からはこの後宮での新しい生活が始まる。

 

「北郷おおおおおおおお!きさまらああああああああああああ!!」

「「「どわああああああああ!!朝から出会い頭に何なんだああああああああ!!」」」

 

 ・・・・・・・・筈だ。

「春蘭!子供達が泣き出すから後宮では騒がない様に言ってあるでしょう!!」

 一刀たちを追いかけていた姉者が華琳さまのお言葉で大人しくなる。

 但し、声と物音だけ。

「(大人しくぶっ飛ばされろ!)」

「「「(ぶっ飛んだら物音が立つだろうがっ!)」」」

 囁き合いながら物音を立てずに室内を走り回るとは・・・・・一刀たちも腕を上げたな。

「(だから『大人しく』ぶっ飛ばされろと言っているっ!!)」

「「「(そんな器用な真似できるかっ!!)」」」

 いや・・・・・今も充分器用だと思うぞ。

「(大体何を怒ってるんだよ!?)」

「(やかましい!貴様秋蘭に何をした!?)」

 ん?姉者は私の事で怒っていたのか。

「姉者、何を言っているのだ?」

「「「(そうだ秋蘭!言ってやれ!!)」」」

「子供を孕んだのだから、何をしたのかは当然・・・」

「「「(やっぱり言わないで!)」」」

「(その件に関しては一昨日ぶっ飛ばした。今は昨日こいつらが秋蘭にした事で追いかけているのだ!!)」

 一昨日は逃げきれなかったのか・・・・・まあ、昨日は朝から異常が無かったから大丈夫だろう。

「「「(昨日は一日一緒に居たけど、やましい事は何もしてないぞっ!!)」」」

「(しらばっくれるか!貴様らっ!!秋蘭にメイド服を着せて『旦那さま』とか呼ばせてたそうではないかっ!!)」

「姉者・・・それは私がしたくてそうしたのだ。」

「(なにい!?秋蘭!気でも狂ったのかっ!?)」

「「「(春蘭・・・いくら秋蘭でも、お前に言われたら落ち込むぞ・・・・・)」」」

「私は至って正気だぞ、姉者。私はこの帝国の建国以前から一刀に惚れていると自覚していた。その頃から思い描いていた夢を実現しただけだよ。」

「(しゅ、秋蘭・・・・・)」

「姉者だって一刀に惚れているではないか。よく思い出してみろ。」

「(わ、私は華琳さまが一番・・・)」

「それは私も同じだ。男で一番は一刀たちだ。そうだろう姉者♪」

「(う・・・そ、そうなのか・・・・・?)」

 時々一刀たちが構ってくれないと言っては押しかけるのに自覚が無いとは・・・いかにも姉者らしい♪

 華琳さまも姉者のこの態度が琴線に触れた様で、笑顔で姉者の手を取る。

「春蘭。貴女、昨日は一日眞琳と遊んでくれたじゃない。とても良い笑顔だったわよ♪貴女は自分も子供が欲しい、秋蘭が羨ましいと感じているのよ。その表現方法が判らないだけなのよ。」

「(・・・そ、そうなのでしょうか?華琳さま・・・・・)」

「あら?春蘭は私の言うことが信じられないの?」

「(い、いえ!決してその様な事はございませんっ!!)」

 うむ、姉者はもう大丈夫だな。

「「「(なあ、秋蘭・・・・・なんか春蘭を洗脳してるみたいで気が引けるんだけど・・・)」」」

「何を言っている?姉者が一刀に甘えているのは知っているだろう。」

「「「そりゃあ・・・・・まあ・・・・・・・・・春蘭、あんまり気にする事無いぞ。」」」

 

「(うわああああああああああああああああああ!ち、近付くなあああああああああああっ!!)」

 

「「「しゅ、春蘭!ちょっと待てよ!!」」」

 姉者と一刀たちが庭へ飛び出してそのまま見えなくなってしまった。

 騒ぎが収まるのを待っていた者達が室内に入り始める。

「うふふ♪これで春蘭の懐妊も早まるかしら?」

「さて、どうでしょう。こればかりは授かりものですから♪」

 私は自分の腹に手を当ててみる。

 まだ何も感じる事は出来ないが、確実に今も成長してくれていると云う確信は有った。

「所で秋蘭、昨日の報告にあった貴女のメイド姿。私も見てみたいのだけど?」

「お望みとあらば今すぐにでも。」

「では、お願いしようかしら♪」

「御意に♪」

 

 

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おまけ壱

秋蘭の娘 ((夏侯衡|かこうこう)) 真名:((鈴蘭|すずらん))

四歳

房都近郊の湖          (時報:桂花 六人目妊娠九ヶ月)

【紫一刀turn】

 北郷学園の遠足。

 子供達にはここに来る途中で華蝶仮面ショーを楽しんでもらい、今は目的地の湖に到着してお弁当の時間だ。

 子供達はみんな可愛らしいお弁当箱を持って俺たちの周りに集まっている。

 そのお弁当箱の中身はそれぞれの母親が作った物・・・・・いや・・・一部、共同で作った母親たちも居るが・・・・・・弁当箱を開けたら炒飯しか入っていないとか可哀想だろ・・・。

 俺たち三人の弁当は秋蘭の作った物。

 だと聞いている。

 誰が作るかはくじで決められたらしい。

 秋蘭の弁当って云うと、鈴蘭を懐妊した時の事を思い出すな。

 なんて考えていたら、鈴蘭の声が聞こえた。

「??。はい、これおべんとう♪」

「「「お!ありがとう鈴蘭。」」」

「このおべんとうねぇ、すずらんもおにぎりつくったのよ!」

 何というサプライズ!愛娘の握ったおにぎりが食えるなんて!

「「「おお!偉いぞぉ♪」」」

 俺たちは三人で代る代る鈴蘭の頭を撫でてあげた。

 そして喜び勇んでそのお弁当箱の蓋を開けると・・・・・・・・・。

 

「おにぎりでちょうせんとひみこをつくったの!」

 

 いわゆるキャラ弁と云うヤツなのだが・・・・・鈴蘭が握ったから形が歪で、しかもその歪具合が妙にリアルさを醸し出している。

 弁当箱に収まっている生首ふたつの横にメモが有った。

 

『すまん一刀。鈴蘭が楽しそうに作っていたので止められなかった。』

 

 秋蘭・・・・・その気持ちは受け取った!

 覚悟を決めて食ってやるぞ!!

 ・・・・・・・・以前七乃に食わされた美羽フィギュアのお吸い物の対極だな・・・これは・・・・。

「「「それじゃあ鈴蘭、ごちそうになるよ♪」」」

 鈴蘭を悲しませない為にも顔の筋肉を総動員して笑顔を作る。

「うんっ♪」

 期待に満ちた目で俺たちを見つめる鈴蘭・・・・・・そう!これは鈴蘭の作ったおにぎりなんだ!!

 俺たちは頭の中で『鈴蘭が作ったおにぎり』とひたすらリフレインさせ、視点をずらしておにぎりを口に運ぶ・・・・・・。

 

「いやぁん♪わたしってば、ご主人さまに食べられちゃうわん?」

「ご、御主人様♪できれば優しくカミカミして欲しいぞ?」

 

「「「気持ち悪いアテレコするんじゃねえええええええええええええええっ!!」」」

 

 いつの間にか背後に立ちやがって!!

 この後、何とかおにぎりを食べ終え、鈴蘭には「おいしかったよ」と笑いかける事は出来た。

 本当は味を感じる余裕も無かったけど・・・・・・。

 

 鈴蘭本人には悪気は無いのにこんな事になるのは真名の所為かなぁ?

 植物の鈴蘭には毒があるからなあ・・・・・。

 

 

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おまけ弐

華琳の娘 曹沖 真名:眞琳

五歳

本城正門前

【眞琳turn】

 今、正門の前に??、媽媽、妹が全員集まっています。

 どうしてかというと、蓮華媽媽がわたし、香斗ちゃん、蓮紅ちゃん、烈夏ちゃんの誕生日のお祝いにプレゼントをご用意してくれて、そのプレゼントが今から届くからです。

 蓮華媽媽がくださる物、それは象さんです♪

 私は象さんというと、美以おねえちゃんのパヤパヤしか見たこと有りません。

 パヤパヤは特別な象さんなので小さいそうです。

 普通の象さんはお馬さんよりずっと大きいって??たちが言ってました。

 

「楽しみね、眞琳♪」

「うん、媽媽♪」

 

 媽媽も象さんを見るのは初めてだって言ってました。

 ほかの媽媽達も象さんを見た事が無いほうが多いです。

 街のほうからたくさんの人たちの声が聞こえてきます。

 それは象さんを見ておどろいていている声。

 だんだん近付いて来ている・・・・・あ!

 

「すごい・・・・・大きい・・・」

 

 正門前の通りにやってきた象さん・・・・・まだ遠いけど周りの人達とくらべると本当に大きい・・・。

「パヤパヤみたいにピンクじゃないね。」

「黒くて大きい・・・・・」

 そんな妹達の声がきこえてくる。

「(百聞は一見に如かずね・・・・・足音が聞こえて来ないけど・・・そんなに重くないのかしら・・・)」

 媽媽が真剣な顔で考えてた。

「媽媽は象さんの重さがしりたいの?」

「え?聞こえちゃった?でも、象を乗せられる秤なんか無いから無理ね♪」

「はかれるよ。」

「あら?どうやって?」

 媽媽はたのしそうにわたしにききます。

「象さんをいちどお船にのせて、その時のお水の場所にシルシをつけるの。象さんをおろしたあとでお船に重りをのせていけば重さがわかるわ。」

 あれ?媽媽がこんどは私のことをおどろいた顔で見てる。

「眞琳・・・それは誰かに教えて貰ったの?」

「ううん。いま思いついたの・・・・・ダメかな?」

「いいえ。眞琳は凄いわ。私には思い付かなかったもの♪」

 媽媽があたまをなでてくれました♪

「「「眞琳は頭が良いな♪」」」

「??♪」

 ??たちもあたまをなでてくれた。

「どうだ?象さんは。」

「うん!??がおしえてくれたとおりだわ!すごく大きくてまるで」

 

『ぞうさんのおかおって??のオチンOンみたい!』

 

 え?えぇ!?いまのこえ・・・鈴蘭ちゃん!嵐ちゃん!ひまわりちゃん!直ちゃん!それに香斗ちゃんまで!!

「象さんのおなまえは『珍々』というのはどうでしょぅ〜」

 ら、嵐ちゃん!!それ以上はダメェー!

 また、??たちが媽媽達におこられちゃう!!

 

『パオオオォォォオオオン!!』

 

 なんか象さんもいやがってるみたい・・・・・。

「ね、ねえ蓮紅ちゃん!象さんのおなまえ!『((包包|パオパオ))』ってどうかな!?」

「う、うん!烈夏ちゃんはどう思う!?」

「烈夏もそれがいい・・・」

 よかった・・・蓮紅ちゃんと烈夏ちゃんはわかってくれた。

「香斗ちゃんはどうかな!?」

「う〜ん・・・・・眞琳ちゃんと蓮紅ちゃんと烈夏ちゃんがそういうならいいよ♪でも・・・」

「でも?」

「もう一頭いるよ。」

 ああ!そうだった!

 オスとメスを一頭ずつだったんだ!

 メスの象さんのおなまえは・・・・・そういえば??がお話してくれた象さんはメスだっけ・・・。

「メスの象さんのおなまえは『((花花|ファアファア))』はどうかな?」

「花花!おんなのこらしくてカワイイね♪」

 香斗ちゃんが気に入ってくれたみたい。

「一刀、眞琳に感謝しなさいよ。」

 媽媽にはわたしがあわてておなまえをつけた理由が分かってるんだ。

「「「それは勿論!ありがとう、眞琳。」」」

「あはは・・・・・」

「それから、その花花って名前は・・・」

「うん、??にこのあいだしてもらった『かわいそうなぞう』のお話・・・花子から・・・」

「そうか・・・包包と花花は花子みたいにならないようにしないとな。」

「うん、??!」

 

たくさん勉強して、はやく媽媽と??たちのおてつだいができるようになって、象さんも幸せになれるようにがんばらなきゃ!

 

 

 

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あとがき

 

 

秋蘭にメイド服を着せてしまいました。

雷起の趣味丸出しですw

喋り方をどうしようか最後まで悩みましたが

やるなら徹底的にやってしまえと思い決めました。

 

この外史で秋蘭、実は意外と出番が多いです。

さすがは曹魏の頼れるお姉さん!

 

一刀の実家の設定ですが

明治の頃から警視庁に関わっていた事になってます。

公式を元に色々と『北郷家』について調べている内に妄想が膨らみまして。

実家にいた頃の一刀は家族の中で一番剣道が弱かった事にしましたw

 

おまけ壱は

前々回の遠足の続きです。

鈴蘭の毒ですが

「有毒物質は全草に持つが、特に花や根に多く含まれる。摂取した場合、嘔吐、頭痛、眩暈、心不全、血圧低下、心臓麻痺などの症状を起こし、重症の場合は死に至る。」

とあります。

一刀ならきっと耐えてくれるでしょうw

 

おまけ弐は娘視点眞琳編

過去にも何度か触れた史実ネタ、曹沖と言えば象さんですw

元の話は、

孫権から曹操に贈られた象の重さを、曹操は家臣に測るように言いますが誰も思いつきません。

その時、幼い曹沖がこの測り方を提案します。

『曹沖称象』と言って、中国では子供に語り聞かせる話だそうです。

 

 

《次回のお話&現在の得票数》

 

☆月    25票

 

という事で、次回は月に決定しました。

 

以下、現在の得票数です。

 

朱里+雛里24票

流琉   23票

詠    22票

ニャン蛮族20票

小蓮   20票

焔耶   17票

明命   17票

猪々子  15票

音々音  15票

亞莎   14票

二喬   13票

春蘭   11票

星    11票

穏    10票

斗詩   10票

稟    9票

璃々   9票

華雄   8票

真桜   7票

季衣   3票

霞    3票

沙和   3票

冥琳A  2票

思春A  1票

紫苑A  1票

鈴々A  1票

桂花E  1票

風A   1票

雪蓮A  1票

 

※「朱里と雛里」「美以と三猫」「大喬と小喬」は一つの話となりますのでセットとさせて頂きます。

Aは二人目を表します。

 

リクエスト参戦順番→ 朱里+雛里 猪々子 穏 亞莎 流琉 ニャン蛮族 小蓮 詠 焔耶 明命 月 斗詩 二喬 春蘭 音々音 華雄 稟 星 璃々 真桜 季衣 冥琳A 霞 沙和 思春A 紫苑A 鈴々A 桂花E 風A

 

過去にメインになったキャラ

【魏】華琳 風 桂花 凪 数え役満☆シスターズ 秋蘭

【呉】雪蓮 冥琳 祭 思春 美羽 蓮華 七乃

【蜀】桃香 鈴々 愛紗 恋 紫苑 翠 蒲公英 麗羽 桔梗 白蓮

 

引き続き、皆様からのリクエストを募集しております。

リクエストに制限は決めてありません。

何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です(´∀`)

よろしくお願い申し上げます。

 

 

 

説明
得票数23の秋蘭のお話です。
懐妊判明時のお話+おまけ二本となります。


引き続き、どの恋姫メインの話が読みたいのかリクエストを募集しております。
リクエストの多い恋姫(TINAMI、Pixiv双方の合計)を優先的に書きたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
リクエストに制限は決めてありません。
何回でも、一度に何人でもご応募いただいても大丈夫です。二人目の子供の募集も致しております(´∀`)
ご意見、ご感想、ご指摘などもご座いましたら是非コメントをお寄せ下さい。

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コメント
@taka様  パオーン!とお風呂で・・・・   詠に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起)
子供たちは一刀の○○さんを見てそだt…  リクは 詠 でお願いします。(@taka)
ロードスネーク様  他の子供達が真似をしないことを祈ってあげて下さいw 穏・流琉・焔耶・真桜・稟・沙和に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起)
おにぎりの形w鈴蘭に悪気がないのがなんともw穏、流琉、焔耶、亞莎、真桜、稟、沙和でお願いします 。(ロードスネーク)
rin様  一刀なら耐え切ってくれるでしょう・・・・・・・目覚めちゃうかもしれませんねw 霞・冥琳A・雪蓮Aに追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起)
hayato様  一気に読んでいただきありがとうございます!お疲れ様でした(^ ^;)紫苑と桂花のナース服もいいですね〜wただ、桂花は三人目の懐妊以降インターバルが二ヶ月しかないのを繰り返していくので着る機会が短そうですw 詠・流琉・明命・紫苑Aに追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起)
ガルーダ様  メイド秋蘭に賛同頂きありがとうございますヽ(・∀・)ノ 凪は二人目の時に着てもらいましょうw華佗に弟子入りしてますのでナース服も一緒にいかがですかw 真桜・稟・星・詠・流琉・朱里+雛里に追加、凪A頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起)
メガネオオカミ様  メイド秋蘭に賛同頂きありがとうございますヽ(・∀・)ノ 愛紗には高いハードルですねw今思いましたが、星のメンマづくし弁当と比べた場合どちらがマシですかねw 猪々子・明命・焔耶・華雄・思春Aに追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起)
神木ヒカリ様  眞琳の呟きが引き金でしたwあのシーンを書くまで全く考えていなかったんですけどねぇww 小蓮・ニャン蛮族・音々音・季衣に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起)
morikyou様  ご期待に沿えるよう頑張ります! 流琉・朱里+雛里に追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起)
殴って退場様  あのおにぎりに愛紗の手が加わる・・・・・・・それはもう非人道的兵器に指定されるレベルですねwww 斗詩、星、璃々、紫苑Aに追加頂きました___φ(。_。*)カキカキ(雷起)
殴って退場様  誤字の発見ありがとうございます!報告頂いた後、すぐに訂正させて頂きました。何度も推敲しているのに見落とす間抜けな雷起ですorz(雷起)
天然Sがおる(・・;)・・・・・・・・リクは霞、冥琳、雪蓮でお願いします。(rin)
ようやく読むのが追いついた…。 にしてもここまでくると紫苑さんが後宮の保健指導員で桂花がその助手モドキになってる日常が想像できてしまう。白衣姿の紫苑とネコミミナースな桂花・・・・・・違和感がないなw リクエストは 詠、流琉、明命、紫苑でお願いします。(hayato)
秋蘭のメイド姿とてもいいです!!!あと凪のメイド姿も出して下さい。リクは真桜・稟・星・詠・流琉・朱里+雛里・凪でお願いします。(ガルーダ)
メイド秋蘭…………最高じゃないですか! そして、目指せ!炒飯以外も入っている弁当www  リクエストは猪々子、明命、焔耶、華雄、思春Aで!(メガネオオカミ)
大きいだの黒いだのと言ってる時点で、??のオ0ンチンみたいって言うと思ったよw リクは小蓮・ニャン蛮族・音々音・季衣でお願いします。(神木ヒカリ)
月の話楽しみにしてます。リクは流琉と朱里雛里でお願いします(morikyou)
最初に訂正が、江東の二羌→二喬で。今回は秋蘭の魅力が満載されていた作でしたね。あと貂蝉と卑弥呼の姿のおにぎりに愛紗が手を加えたら究極の毒薬になるかもwww。リクは斗詩、星、璃々、紫苑で。(殴って退場)
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