古田くんの残念すぎる青春【四之瀬編】 2.ミステイク彼女(後篇)
[全3ページ]
-1ページ-

「あ、あれ……? どうしてここに古田君が?」

 

 

「……どうやら人の区別はきちんと出来るらしい」

 

 

 僕は手紙、彼女から貰った手紙を渡す。ピンク色のラブレター、彼女が書いた手紙。その手紙を四之瀬さんに見ると彼女は首をひねり、次の瞬間には顔を赤らめてしまっていた。

 

 

「えっ……? な、なんで? なんで君がその、三上君に宛てたはずの、三上君の机に入れたはずの、ラブレターをあなたが……」

 

 

「その机が僕の机だったと言う話ですよ」

 

 

「……! ま、まさか! いつもあの席で喋ってるのに……」

 

 

 確かにそうだ。昼休みとかそう言った休み時間、僕は彼に机を明け渡すことが多い。僕、三上君、サラの3人で食べる際は僕は彼に机を明け渡している場合が確かに多い。けどそれは昼休みに限った話。休み時間の多くは僕は席に座ってるはず。

 

 

「だ、だっていつもはあの席で昼食をとっているからてっきりあの席が三上君の席だと……」

 

 

 何でそこで机ではなく、下駄箱とかに入れたり、友達に頼んで渡してもらうなんかを出来ないんだろうか? そうすれば今回のような結果にはならなかっただろうに。

 

 

「三上君にその、手紙の事は話してませんか?」

 

 

「こんな面倒な事を話す訳にはいかないだろう」

 

 

 ただでさえこう言ったラブレターとかは話づらい話だと言うのに、その間違いの話なんて話づらいからわざわざここに来たと言うのに……。こんなことを彼に話してなんになると言うのだ。

 

 

「そ、そう。なら良いわ。ありがとう。この話は出来るならば三上君には内密にして欲しいわ」

 

 

 思わず見とれてしまう美少女が顔を赤らめながら、そう言ってくれるのに僕がその話に答えない訳が無いだろう。僕は頷く。

 

 

「あ、あと出来るならば私の話も聞いてくれない?」

 

 

 さらさらの銀髪を手で撫でるように触りながら、彼女はそう言った。

-2ページ-

 

 

 四之瀬一ニ三はクラスの中でもアイドル的な扱いを受けている“らしい”。『らしい』とはあくまでも彼女自身はそう言った扱いを望んではいないと言う事である。彼女はクラス内で孤立こそしていない物も、かなり偏った扱いを受けているらしい。具体的に言えば授業で発表がある際に自分が一言、二言話すだけで男子が騒ぎ立てるのはざらにある事で、一部の生徒からは『あんたのせいで○○君が私の事嫌いって言うようになったじゃないの!』とあらぬ言いがかりをしてきたそうだ。

 自分自身、容姿が他の人よりも優れている事に多少なりとも実感があった彼女はその事に多少なりとも傷つきながらも強く言い出されずにいた。

 

 

 神は人に二物は与えない。人間は神の名において平等である。いくら口や文では『平等』やら『公平』、『公正』で『フェア』である。だからと言ってこの世界がそうなのかと言えば違う。

 この世界は『不平等』で『不公平』で『不正』に満ちた『アンフェア』な世界。全ての人間が平等なんてことは無く、優劣や身体的差異、家庭環境の違いも存在する。全てが同じとは言い切れず、かといって全てが正しいと言う訳ではない。そして彼女も優れた容姿をしていて、それで彼女はクラスの人達に言われた事によって少なからず傷ついた。

 そこに来たのが彼、三上上成だと言うのだ。その際に優しい言葉をかかえてもらえて彼女はとても嬉しかったらしい。そして礼を言おうか迷っているうちに、彼の事を知るうちに、彼に恋心を抱き、彼に手紙を差し上げた所、

 

 

「――――――僕が来たと言う事か」

 

 

「……はい」

 

 

 学校の帰り道にある喫茶店、『喫茶・サウンドオブミュージック』。毎日、その場にあった雰囲気に合わせた曲をマスターがかけてくれる喫茶店。シックな雰囲気が気分を落ち着かせ、さらに物静かで落ち着いたマスターが入れてくれるコーヒーは格別に旨いと評判である。あんな屋上で長話をする訳にはいかないかなと思い、ここに連れて来た。僕はコーヒー(とは言っても砂糖やミルクなどで甘く味付けはした)、彼女はオレンジジュースを飲みながら話していた。僕は1杯コーヒーを口にする。

 

 

「事情は理解した。けれども僕はあんたと上成をくっつけるほど協力は出来そうには無い」

 

 

「え、えっと流石にそこまでは言うつもりはないです。私はあくまでも、―――――そうですね。彼と喋りたくて。彼と話すための場を作ってくれたらなー、なんて……」

 

 

 指を付けたり離しながら、顔を赤らめて指を回す彼女。その姿は恋する乙女、とっても可愛らしい少女の仕草であった。

 

 

「まぁ、それだけならば僕も合わせるのに協力するくらいならばしても良いなと思うよ」

 

 

「そ、それじゃあ、明日! 明日の昼休み、中庭に三上君を連れて来てもらえませんか!?」

 

 

 明日、か。特に用事がないから大丈夫だろう。とりあえず上成だけ誘おう。サラは誘わない方が四之瀬さんとしては嬉しいだろう。いくら彼女がサラに対して個人的な嫌悪感を抱いていないとは言え、好きな男と食事をしたいと言う場に別の女性を誘うのはあまり良くないだろう。

 

 

「で、では明日の事、よろしくお願いします! あっ、私の分のジュースの代金はここに置いておきますね?」

 

 

 律儀に彼女は自分の分の代金を税込の単位で机に置いて去って行った。割り勘と言う事なのだろう。律儀な彼女らしい。しかし計算をして気付いた。オレンジジュースの代金としては少し金額が高い。そしてこの金額が何かを知った。

 

 

「――――――これ、僕のコーヒーの代金だ」

 

 

 四之瀬一ニ三。

 間違えて僕の机に手紙を入れたり、僕だと気付かずに告白をして、オレンジジュースの代金を払うつもりが間違えて僕のコーヒーの代金を払ったり。

 

 

「―――――彼女、ドジッ子なのか?」

 

 

 明らかにそうだろうなと思う僕であった。

 

 

 その日の夜。僕は家で仏壇に手を合わせる。

-3ページ-

 

 

「――――――――――――、――――。今日、美少女に告白されました。学校の中でもかなり美少女、四之瀬一ニ三さんです。でも彼女は友達に告白するつもりだったみたいです。そう、前々から友達だと言っている三上上成です。どうやら彼女はドジッ子らしくて、僕の机に間違えてラブレターを入れたみたいです。それだけならまだしも完全に告白するまで気付かないのはどうかと思います。けれども僕は彼女と約束をしてしまいました。そうしないと僕はあなたに顔向け出来ませんから。

それによって彼女を上成と付き合わせないと、それ以前に合わせないといけないみたいです。けれども僕なりに頑張ろうと思います。だから見ていてください。僕は僕なりに頑張ろうと思うので」

 

 

 僕はそう言って手を合わせ、目を閉じて黙想しました。彼女の意思を再確認するように。

説明
 ――――――――これは告白から始まる物語。屋上で美少女に告白される僕。けれどもその美少女が告白は間違っていた。これは古田くんの歪んで、間違った、異質な学園青春物語。
 第1回、四之瀬一二三編第2話。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
423 422 0
タグ
美少女 告白 青春 学園 古田新 四之瀬一二三 

アッキさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com