魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第五十四話 昇進
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 地球の季節は三月。これから少しずつ暖かくなっていくであろう今日この頃…。

 折角の日曜日。今日はゆっくり家で過ごすかと思っていた矢先に、ゲンさんに呼び出されたので『また事件かな?』と思い108隊舎に来てみたが…

 

 「長谷川三等陸士。今日付けでお前さんは((二等陸士|・・・・))に昇進だ」

 

 「は?」

 

 ゲンさんが発した言葉の意味をすぐに理解出来なかった。

 

 「何だその顔は?」

 

 「いや、俺入局して『そろそろ2ヶ月か』っていうぐらいしか経ってないのにいきなり昇進と言われましても…」

 

 「その2ヶ月で既に3件の事件解決に関わってるだろうが。その内、デパートでのテロリスト鎮圧は単独で行い、この前の高ランク違法魔導師の逮捕にも貢献してんだ」

 

 確かにデパートでの一件、密輸物の押収、高ランク違法魔導師の逮捕と現場で関わった事件は3件だな。

 

 「それを((地上のトップ|レジアス中将))は大層評価してくれてな。この昇進を推薦・後押ししたんだよ」

 

 「うーん…」

 

 「特に3件目の違法魔導師の件は地上にとっても頭痛の種だったんでな。それを取り除いたお前さんが評価されるのは当たり前の事だと思うぞ」

 

 「ならワッキーさん達は?」

 

 「アイツ等、口を揃えて『長谷川三等陸士の力が無ければ出来なかった事なので評価されるなら長谷川三等陸士だけだと思います』って言いやがってな」

 

 「…そうですか」

 

 「ちなみにもうこれは決定事項だからな」

 

 「…分かりました。別に昇進が嫌って訳じゃないのでありがたく承ります」

 

 「おう、呼び出した用件はそれだけだ。時間取らせて悪いな」

 

 「いえ、それでは」

 

 部屋を退出して転移魔法を使い、家に帰る。

 

 「ただいまー」

 

 「おかえりなさーい」

 

 出迎えてくれたのは我が家の末娘的存在のルーテシア。

 パタパタと足音を鳴らして駆け寄ってきたルーテシアの頭を撫でる。

 

 「おかえりなさい勇紀君。やけに早かったけど仕事じゃなかったの?」

 

 続いて姿を見せるのはメガーヌさん。

 

 「ただいまですメガーヌさん。今日呼ばれたのは仕事じゃありませんでした」

 

 俺は自分が昇進した事をメガーヌさんに告げる。

 

 「そうなの。おめでとう勇紀君」

 

 「おめでとー」

 

 「あはは、ありがとうございます」

 

 「じゃあ今日はお祝いしましょうか♪」

 

 「わーい♪」

 

 俺の代わりにルーテシアが喜ぶ。

 

 「ま、お祝いするかは皆にお任せしますよ」

 

 「多分皆祝ってくれるわよ。シュテルちゃん達早く帰ってこないかしらねえ」

 

 シュテル達は今日、訓練校に行ってるので朝から俺、メガーヌさん、ルーテシアしか家にはいない。

 

 「とりあえず、何かする事無いですか?もうヒマでヒマで」

 

 「じゃあ、おにーちゃん。くーちゃんとこにいこう?」

 

 ルーテシアが言う。

 

 「久遠か。…そうだな、家に居てボーっとするのもアレだし」

 

 神社、もしくはさざなみ寮に行って久遠と遊ぶのもいいかも。

 

 「メガーヌさん。俺とルーで昼から久遠のトコに遊びに行ってきます」

 

 「分かったわ。じゃあ買い物とかは私一人で済ませておくわね」

 

 「あ、その時は俺も付き合います。今日は確かトイレットペーパーや、洗剤が安売りだった筈なんで」

 

 朝のチラシの内容でその二つが特売だったと記憶している。

 

 「そう?じゃあ私が家を出る時に連絡するわね」

 

 「お願いします」

 

 「わたしもかいものにいくー」

 

 「ルーも?じゃあ、3人で買い物だな」

 

 「うん♪」

 

 メガーヌさんとルーテシア、俺の3人で買い物に行く約束をし、メガーヌさんは昼食を作りに、俺とルーテシアはリビングでテレビを観て昼までのんびり過ごしていた………。

 

 

 

 「まてまてー!くーちゃんまてー!!」

 

 「くおん!くおーーん!!」

 

 神社で久遠を追い掛けるルーテシア。俺もさっきまでは一緒になって追い掛けっこしてたけど今はちょっと休憩中。

 

 「勇紀君は混ざらないの?」

 

 「そういう那美さんはどうなんですか?」

 

 「あはは…私が参加してもすぐにコケちゃうからねー♪」

 

 『♪』じゃないと思うんですけど。

 

 「俺は夕方にメガーヌさんと買い物行くんで多少は余力残しておこうかと」

 

 「相変わらず『主夫』やってるね勇紀君は」

 

 「否定出来ない自分がちょっと悔しいです」

 

 タイムサービスや特売を常にチェックしてる小学生なんて普通いないよなあ。

 

 「そういえばもう卒業式のシーズンだけど勇紀君のトコはもう卒業式終わったの?」

 

 「ええ、終わりましたよ」

 

 「泣いたりした?」

 

 「俺が卒業する訳じゃないんですけど…」

 

 でも意外に在校生で泣く奴はいたなあ。主に同じ部活の先輩後輩関係の連中が。

 

 「それに…卒業式が終わった後の亮太に告白する先輩の数が凄かったですよ」

 

 アイツに告白する先輩があまりにも多かったため、列整理したぐらいだし。

 『最後尾はコチラです』っていうプラカードを卒業式で準備する羽目になるなんて思わなかった(ていうかこのプラカード準備したの誰だよ?)。

 告白待ちの行列を見た卒業生、在校生は血涙流しながら列が無くなるのをひたすらに待ち、列が無くなった直後に鬼ごっこが開始されてたなあ(亮太VS卒業生、在校生連合)。

 後、シュテル達も卒業生の男子に告白されたらしいが全て断ったという。

 アイツ等未だに誰の事が好きなのか教えてくれないんだよな。俺は応援しようと思ってるのに。聞いたらメッチャ不機嫌になるし。

 

 …と、まあ卒業式当日の出来事を説明したら

 

 「そ、それは凄いね…」

 

 『あはは』と苦笑いしながら俺の話を聞いていた。

 

 「でもシュテルちゃん達が不機嫌になる気持ちは分かるかな」

 

 「そうなんですか?」

 

 「うん(好きな人にそんな事聞かれたくないよね)」

 

 むう…。

 

 「それで勇紀君はどうだったの?」

 

 「???何がです?」

 

 「その…告白とかされちゃったのかな?」

 

 「…無かったですね」

 

 俺だって卒業した女子の先輩に知り合いはいるけど普通に先輩後輩の関係だし…。

 

 「そういう那美さんはどうなんですか?告白したりされたり…」

 

 「私!?告白なんて一度もしなかったし、された事も無かったよ」

 

 「そうなんですか?実家に戻った時は向こうの学校に通ってたんですよね?」

 

 「通ってたけど、よく仕事の都合で休んでたし…毎年出席日数はギリギリだったんだよ。それに私、あまり目立ってもいなかったから男子の印象にはあまり残ってなかったんだと思うよ」

 

 意外だな。那美さん美人だからそういうの一回ぐらいはあると思ってたんだけど。

 

 「それより勇紀君はどうなの?好きな子とかい、いないのかな?」

 

 「好きな子ですか?いないですね」

 

 まだ恋愛には興味無いからなあ。好きな子とか言われてもピンとこないし。

 

 「でも勇紀君の周りには可愛い子いっぱいいるじゃない?シュテルちゃん達とかその筆頭だと思うんだけど…」

 

 「まあ、確かにその通りですけどシュテル達は家族ですし」

 

 「じゃあなのはちゃん達は?」

 

 「友達」

 

 「じゃ、じゃあその…私とかは?//」

 

 「あー…本人に言って良いかどうか悩むんですけど…」

 

 「良いよ!教えてほしいかな!!」

 

 「…じゃあ正直に言いますけど、ゆうひ姉さんやリスティさん、フィリスさんやフィー姉同様のブラコンお姉ちゃんですかね」

 

 「……………………」

 

 俺が言った瞬間那美さんは地に手と膝をついてorz状態になってしまった。

 …やっぱ正直に言ったのマズったか?

 

 「あ、あはは…そうだよね。間違ってはいないよ…」

 

 那美さんの表情は暗い。

 

 「で、でもお姉ちゃんとしては好きな方だよね?き、嫌いじゃない…よね?」

 

 「それは勿論」

 

 「そ、そっか。よかった(これで嫌われてたら私もう立ち直れなかったよ)」

 

 何やら安心したように息を吐く那美さん。

 

 「おにーちゃん、つかれたー」

 

 「おかえりルー」

 

 こっちに寄ってきたルーを膝の上に座らせるとそのままルーはもたれかかってくる。

 頭を撫でると気持ち良さそうな表情を浮かべる。

 

 「くうん♪」

 

 「久遠も疲れたの?じゃあおいで」

 

 久遠も那美さんの膝の上に乗り、そのまま丸まってしまう。

 

 「ルーは疲れて眠くないか?メガーヌさんと買い物行くまでまだ時間あるから眠たいなら寝てていいぞ?」

 

 「だいじょうぶ!わたしはねむたくないよ!」

 

 「そうか」

 

 元気いっぱいの笑顔で答えるルーテシア。

 

 「ルーちゃんは本当に勇紀君が好きなんだね」

 

 「うん!おにーちゃんもママもくーちゃんもなみおねーちゃんもしゅてるおねーちゃんたちもみんなだいすきだよ!」

 

 「ありがとうねルーちゃん。私もルーちゃんが大好きだよ」

 

 「くおーん♪」

 

 久遠も『ルーの事好き』って言ったみたいだな。

 

 「おにーちゃん、のどかわいた」

 

 「ん?そうか、ちょっと待ってな」

 

 宝物庫から水筒を取り出してコップにお茶を注ぎ、ルーに手渡す。

 ルーテシアはコクコクと喉を鳴らしゆっくりと飲んでいく。

 久遠は丸まりながら、つぶらな瞳でお茶を飲んでいるルーテシアを見つめる。

 

 「…久遠も飲みたいのか?」

 

 「くおん」

 

 これは肯定の返事と受けとっていいよな。

 久遠は那美さんの膝の上から下りると人型になる。

 

 「はい、くーちゃん」

 

 まだ半分ぐらい残っているお茶の入ったコップを久遠に渡す。

 

 「…いいの?」

 

 「うん!」

 

 大きく頷いて返事するルーテシアを見てから久遠もお茶を口に付け、飲み始める。

 

 「ていうか水筒にはたっぷりお茶入ってるんだから全部飲んでからあげても良かったんだぞルー?」

 

 「そうなの?」

 

 首を傾げて聞いてくるルーテシアに頷いて答える。

 

 「でもいいの。くーちゃんとなかよくはんぶんこ♪」

 

 「半分こー♪」

 

 ホントに仲が良いなルーテシアと久遠は。

 

 「あっ、久遠これ食べるか?」

 

 俺が宝物庫から取り出したのは油揚げ。

 それを見た瞬間、久遠の瞳がキラキラと輝きだす。

 

 「食べる♪」

 

 「じゃあプレゼント」

 

 俺が手渡すと久遠は

 

 「勇紀…ありがとう♪」

 

 早速はむはむと食べ始める。

 

 「おにーちゃんおにーちゃん。わたしもなにかたべたい」

 

 クイクイと服の裾を引っ張っておねだりしてくるルーテシアに

 

 「ルーにはこれ」

 

 宝物庫から取り出したのは俺の好物のお菓子、『チョ〇あん〇ん』。

 

 「わー、おかしー♪」

 

 ルーテシアも瞳を輝かせているので早速箱を開封し、ルーテシアに渡す。

 

 「いただきまーす♪」

 

 一つを口に放り込んでモグモグと食べる。その表情はご満悦のモノになっている。

 

 「久遠もルーちゃんも幸せそうだね」

 

 「全くです」

 

 久遠とルーテシアを俺と那美さんの二人は微笑ましく見守る。

 その後、充分に休憩を取った俺、ルーテシア、久遠は再び鬼ごっこやなわとびなんかで仲良く遊び、メガーヌさんとの待ち合わせの時間まで神社で過ごしていた………。

 

 

 

 「勇紀くーん!ルーテシアー!こっちこっちー!!」

 

 スーパーが見えてくる。

 入り口前にメガーヌさんが立っており、俺達の姿を見かけると声を上げて手を振ってくれる。

 

 「ママー♪」

 

 ルーテシアもメガーヌさんの側に駆け寄っていく。

 そのままメガーヌさんに飛びついたルーテシアの頭を優しく撫でた後、母娘仲良く手を繋ぐ二人。

 俺も二人にゆっくりと近づく。

 

 「お待たせしましたメガーヌさん。ひょっとして結構待ちました?」

 

 「そんな事ないわよ。丁度5分ぐらい前に着いたばかりだから」

 

 「そうですか。…じゃあ、買い物しましょうか」

 

 「そうね」

 

 「しゅっぱつしんこー」

 

 ルーテシアの掛け声を聞き、三人でスーパーの中に入る。

 すぐさま特売されているトイレットペーパー、洗剤をゲット!

 トイレットペーパーも洗剤も、一人につき1つしか購入出来ないので俺とメガーヌさんで別々に買い物カゴに入れる。

 他には砂糖、塩こしょう、七味唐辛子みたいな調味料をカゴに入れる。

 

 「わたしもかうー」

 

 とルーテシアが言うが

 

 「ルーに両方は重いと思うぞ?洗剤だけなら持てるだろうけど」

 

 「ぶう〜。わたしだってもてるもん!」

 

 頬を膨らませて可愛らしく怒ります。そんなルーテシアを見て苦笑しながら

 

 「じゃあ、これ持ってみる?」

 

 ためしに買い物カゴをルーテシアの前に置く。カゴを持ち上げようとするが

 

 「う〜〜〜………」

 

 やはりカゴを持ち上げる事が出来ない。

 

 「おもい〜〜…」

 

 すぐに疲れてカゴを床に置く。

 

 「じゃあ、洗剤だけならどう?」

 

 カゴの中の洗剤だけを持たせてみる。

 

 「もてるー♪」

 

 「よしよし。じゃあソレ持ってレジに並ぼうな?」

 

 「はーい」

 

 「あら?ここで晩ご飯の材料も買っていかないの?」

 

 「今日((スーパー|ココ))で買いたかったのは特売品と調味料だけなんですよ。後は商店街の方で買おうと思っていたもので。今日は商店街の八百屋さんが野菜全品1割引きで販売してるらしいんで野菜はそっちで買って、肉や魚も商店街の方で見ようかと。別にココで済ませても良いですけどどうします?」

 

 メガーヌさんに聞いてみる。この情報は昨日、買い物した際に八百屋の店主に聞いたので間違い無いだろう。

 

 「じゃあ、商店街の方に行きましょうか。少しでもお金は節約しないとね」

 

 メガーヌさんも俺の意見通り、商店街で買い物を済ませる事に賛成してくれた。

 

 「あれ?勇紀君やん。それにメガーヌさんとルーちゃんも」

 

 「ん?…はやてか。そっちも買い物か?」

 

 後ろから俺達の名前が呼ばれたので振り返ると買い物カゴに特売品と食材を詰め込んだはやての姿があった。

 

 「そや。今日はトイレットペーパーと洗剤が特売って新聞の間に挟まってたチラシに書いてたから買いに来たんや」

 

 「俺もだ。丁度洗剤が切れかけてたからこのタイミングでの特売は有り難かった。あとは調味料を主にな」

 

 「ちなみに明日は米が定価の3割引きらしいで」

 

 「そんな情報乗ってなかったぞ?」

 

 「ここのスーパーの店長とシャマルが仲良うしてるみたいでな〜。シャマルと買い物してる機会結構多いからわたしの事も覚えられたんや」

 

 「成る程。じゃあその情報も店長さんから?」

 

 「さっき聞いた最新情報や」

 

 「そうか。…じゃあ俺からも一つ。野菜を買うなら今日は商店街で買い物する事をお勧めする。1割引きらしいから。このスーパーで売ってる野菜の値段より若干安くなるぞ」

 

 「それホンマ!?」

 

 俺は頷いて返す。

 

 「ならわたしも商店街に行こ」

 

 「そうしろ。俺達もこれから行くつもりだし」

 

 「ほな、一緒に行かへん?」

 

 「別に良いぞ。メガーヌさんもいいですよね?」

 

 「ええ。構わないわよ」

 

 「かんげいするよー」

 

 「メガーヌさん、ルーちゃんおおきに。ちょう待っててな。カゴの中の野菜だけ戻してくるわ」

 

 はやては踵を返して店内に消えていく。

 しばらくすると戻って来たので俺達と一緒にレジに並ぶ。

 ルーテシアが持っている洗剤は俺が勘定を済ませ、袋に入れた後でルーテシアが『わたしがもつ!』と言ったので洗剤だけは別の袋に入れて貰い、宝物庫には仕舞わずそのままルーテシアに手渡している。

 その後、はやてとメガーヌさんも勘定を終え、皆でスーパーを出て商店街に向かって歩き出す。荷物は各々が自分で持っており、俺も荷物は今は人目があるので宝物庫には収納せず、自分で持っている。

 目的の八百屋さんは商店街に入ってすぐのところにある。

 

 「いらっしゃ……めめめ、メガーヌさん!?」

 

 「こんにちは店主さん。今日は野菜が1割引きで販売していると聞いたもので」

 

 「は、はい!!全品1割引きです////」

 

 「少し見て行ってもいいかしら?」

 

 「どうぞどうぞ!////」

 

 メガーヌさんと会話する店主さんは顔が赤く、鼻の下を伸ばしまくっている。

 

 「…なあ勇紀君。あの店主さんやねんけど…」

 

 「言うなはやて。俺もちゃんと理解してる」

 

 店主さんはメガーヌさんに惚れてるとみた。

 

 「まあ、メガーヌさん美人やからなあ」

 

 「それにあの店主さんも独身だった筈…」

 

 今年で30の大台だったかな?

 

 「…このジャガイモと人参を貰えるかしら?」

 

 「どうぞどうぞ。好きなだけ持っていって下さい////」

 

 好きなだけ持っていかせたら駄目だろう。

 

 「あのおじさん、おかおまっかっかだね」

 

 「ルーちゃんはあのおじさんがお父さんになったらどうする?」

 

 はやてがルーテシアに聞くが当の本人は

 

 「や!」

 

 プイッと顔を背け、即答で拒絶の意を示した。

 

 「そ、即答かいな…」

 

 「まあメガーヌさんの様子を見る限り、店主さんにそんな感情を持ってないだろ」

 

 「…勇紀君、よう((理解し|わかっ))てるやん」

 

 「失礼な。あの店主さんの態度や表情見たら大概分かるだろ」

 

 「…………(他人の事は分かるのに何で自分に向けられる好意には気付かんのや?)」

 

 はやてが『むう』と唸りながらジト目で見てくるんだけどいきなりどうしたよ?

 

 「それよりはやても買い物しなくていいのか?野菜をここで買うんだろ?」

 

 「あっ、うん。行ってくるわ」

 

 「荷物預かるよ。それ持ったままだと邪魔だろ?」

 

 「ホンマ?ならお願いしてええかな?」

 

 「ああ」

 

 はやてがスーパーで買った荷物を受け取り、そのまま八百屋で買い物をし始める様を眺める。

 質の良い野菜を見極めて手に取る姿を見て、『もう立派な主婦だな』と思った俺は間違って無い筈だ。

 

 「ルーも洗剤持つのが辛くなったら言ってくれよ?」

 

 「だいじょーぶだよおにーちゃん」

 

 あれだけ久遠と遊んだ後だから結構疲れてるかと思ってたんだけどルーテシアの表情からは全く辛そうには見えない。

 しばらく二人でメガーヌさんやはやてを待っている。

 しばらくして戻って来たのはメガーヌさん。はやてはまだ新しい野菜を手にとっては質が良いかどうかを見極めている最中だ。

 

 「おまたせ勇紀君、ルーテシア。時間掛けてしまってゴメンなさいね」

 

 「いえ、気にしてませんから」

 

 「わたしもまだまだだいじょーぶだよ」

 

 「ふふっ、そう?ルーテシアは元気ね」

 

 「げんきげんき♪」

 

 「じゃあ、元気なルーテシアはママの買い物に付き合う?ママはこれから商店街の中を見て回るのだけど?」

 

 「うん!ママとおかいものする」

 

 「じゃあルーテシアは私と一緒に行くとして勇紀君はそのままはやてちゃんに付き合ってあげてくれないかしら?」

 

 「???何故です?」

 

 「はやてちゃん一人みたいだし、女の子にそれだけの荷物を持たせるのは酷でしょう?」

 

 そう言われてみれば、確かにはやては一人だな。買い物の場合は大抵守護騎士の誰かが同伴してるんだが。

 

 「コッチの買い物は私達だけで十分だから、ね?」

 

 「そうですね…分かりました。俺ははやてに付き合いますんで買い物の方お願いします」

 

 「ええ、任せて♪じゃあルーテシア行きましょうか」

 

 「はーい!おにーちゃん、いってきまーす!」

 

 「無理しちゃ駄目だぞ?」

 

 「だいじょーぶー!」

 

 メガーヌさんとルーテシアは商店街の奥へ歩いて行く。

 その直後に買い物を終えたはやてが寄って来た。

 

 「あれ?メガーヌさんとルーちゃんは?」

 

 「メガーヌさんはまだ買い物が残ってるからな。ルーは着いて行ったし。はやてはもう買い物終えたんだよな?」

 

 「うん。野菜以外はスーパーで買い物済ませたし」

 

 「じゃあ行くか」

 

 「へ?行くって何処行くん?」

 

 「はやての家。これだけの荷物一人ではキツいだろ?」

 

 「ええ!?だ、大丈夫やって!!別に一人でも持てるから!!」

 

 「遠慮するな。メガーヌさんにも『女の子にこれだけの荷物を一人で持たせるのは酷だ』って言われたんだ。だからお前の家まで運んでやるよ」

 

 「……ホンマにええの?」

 

 「ああ」

 

 「じゃあお願いしよかな(これ…よう考えたら勇紀君と二人きりって事やん。なら断る理由見当たらんな)//」

 

 俺とはやては商店街を出て八神家に向かう。

 はやては何故か頬を赤らめつつも嬉しそうな表情を浮かべていた………。

 

 

 

 〜〜はやて視点〜〜

 

 いや〜、今日はツイてるなあ。

 今日はわたしの家族が皆仕事、リインもメンテナンスのためマリエルさんのトコに行って買い物を一人でせなアカン羽目になったけど、そのおかげで勇紀君とこうやって二人肩を並べて帰れるんやからな。役得役得♪

 

 「〜〜♪〜〜♪」

 

 「???やけに嬉しそうだな?」

 

 「そう?ま、ええ事あったしな♪//」

 

 「良い事?(八百屋でそんなに質の良い野菜をゲット出来たのか?)」

 

 …多分わたしの機嫌が良い理由に気付いて無いんやろうけど別にええわ。

 ただ、こうやって二人で歩いて帰るだけっちゅーのもアレやな。

 勇紀君がレアスキルで荷物を預かってくれたおかげで今は手ぶらや。

 

 「(せ、せっかくやし…手ぐらい繋いでも……)////」

 

 勇紀君の手をチラッと見る。

 

 「(つ、繋ぎたいなあ…)////」

 

 見ては視線を逸らし、見ては視線を逸らす行為を繰り返す。時折手じゃなく顔の方も見る。

 うう…ルーちゃんみたいな小っちゃい子が羨ましいわ。何も意識せずに手繋げるんやから。

 

 「???はやて、さっきから俺の方見てるみたいだけどどうかしたのか?」

 

 「い、いや!何でもないよ!!//」

 

 「そうか?」

 

 コクコクとわたしは首を縦に振る。

 勇紀君は首を傾げた後、再び視線を前に戻す。

 

 「(うーん…どうやったら手繋げるやろか?)」

 

 わたしは頭を捻って考える。

 普通に『手繋ご』って言えばいいんやろうけど。

 

 「(言えたら苦労せんわなあ…)」

 

 正攻法が無理なら策を練らんと。

 …うーん、何かええ方法は無いかなあ?

 そう思っているとわたしの左手に温かい何かが触れる。

 

 「ふえっ!?」

 

 それは勇紀君の右手やった。

 わたしの左手をガッチリと掴んでそのままわたしを自分の方へ少し引っ張る。

 

 「あああ、あの…勇紀君!?////」

 

 「何考えていたのかは知らんが前を見てみ」

 

 「前って……あ」

 

 わたしの少し先には電柱があった。このまま考え事しながら歩いてたら今頃はぶつかってたわ。

 

 「その…おおきにな」

 

 「良いって。しかし一体何考えてたんだ?」

 

 「あはは…ちょっとな」

 

 とりあえず苦笑いで誤魔化す。

 まさか『勇紀君と手を繋ぐ方法を模索してたんや』なんて面と向かって言える訳ないやん。

 こんな形で手を繋げる様になるとは思っとらんかったけど目的は達成出来たし結果オーライや。

 

 「悩み事でもあるのなら言ってくれよ?相談ぐらい乗ってやるから」

 

 「うん。でもホンマ大丈夫やから心配せんとって」

 

 そう言うと勇紀君は繋いでいた手を離そうとするけど

 

 「////」

 

 わたしが『手を離さへん』と言わんばかりにギュッと握っていたため勇紀君は手を離す事が出来んかった。

 

 「はやて…力を緩めてくれないと手が離せないんだが?」

 

 「あ、あのな…またわたしが考え事に集中して周りが目に入らん様になるかもしらんから、このまま繋いどいてほしいんやけど…あ、アカンかな?////」

 

 「いや、俺は構わないけど」

 

 「ホンマ!?じゃ、じゃあこのままで…////」

 

 やったわ。これで家まで手を繋げる口実が出来た。

 これで少しは距離を詰められたら皆より一歩リード出来るんやけど。

 けど手を繋いでからは特に何事も無く、このまま家まで着くんかなあと思ってた時や。

 

 ガッ

 

 「っ!?」

 

 足を躓かせてしまい、わたしの身体が前に向かって倒れそうになる。

 

 グイッ

 

 けど倒れる事は無かった。代わりに横から力強く引っ張られ、わたしは

 

 ぽふっ

 

 こっちを向いていた勇紀君に((抱き寄せられていた|・・・・・・・・・))。

 わたしの顔は勇紀君の胸元に寄せられている。

 

 「ふう〜…大丈夫かはやて?ちょっと強引に引っ張ったから腕が痛んだりしてないか?」

 

 「……………………」

 

 少し顔を上に向け、見上げると勇紀君の顔が…。

 勇紀君がわたしの事を心配してくれとるけど、わたしは返事を返せるような状況やなかった。

 

 「はやて?」

 

 「………っ!!〜〜〜〜〜〜っ!!!////////」(ボンッ!)

 

 「ちょ!?やっぱ腕痛かったか!?」

 

 「っっ!!!」(ブンブンブン)

 

 私は首を左右に思いきり振って答える。

 

 「そうか、良かった」

 

 ホッと一息ついてる勇紀君。

 

 「(わわわ、わたし今勇紀君にだだだ、抱きしめられとる!!!)////////」

 

 転びそうになったわたしを助けるためにとはいえ、抱き寄せられ、わたしの顔は勇紀君の胸元に寄せられていたという現実を意識すると顔が真っ赤になるのが自分でも分かるわ。

 彼の心音がトクントクンとわたしの耳を通じて聞こえてくる。

 

 「ゴメンな。俺が強く引っ張り過ぎたせいでこんな体勢になってしまって」

 

 「ううん、別にええんよ。気にせんとって(むしろわたしにとっては棚ぼたラッキーやで。ご褒美にも等しいわ♪)////////」

 

 わたしは自分の頬が緩むのを止められへん。

 もうこのまま時間が止まってくれたら最高やのに。

 しかし現実は無情なもんや。

 

 「じゃあ、もう離れても大丈夫か?」

 

 そして時は動き出すっちゅう事か…。

 

 「あの…もう少しこのままでええ?////」

 

 「いや…このままの体勢でいても仕方ないし」

 

 それはそうやけどこの温もりと現状をもう少し堪能したいんや。

 

 「ホンマもう少しだけ!もう少しだけでええから!!」

 

 「……分かった。けどあまり帰るのが遅くなるのもアレだから少しだけだぞ?」

 

 「うん。おおきにな(堪能堪能♪)////」

 

 いや、ホンマに今日はツイてるわ。

 この後10分近くわたしは勇紀君に抱き着いたまま勇紀君の温もりを感じとった………。

 

 

 

 〜〜はやて視点終了〜〜

 

 あの後すぐにはやての家まで着いて行って荷物を手渡し、はやてと別れたのだがはやての奴、やたらと機嫌が良かったな。悩み事の解決法でも思い浮かんだのだろうか?

 もしそうなら喜ばしい事だ。

 俺は寄り道せず真っ直ぐ家に帰って来たが、まだメガーヌさんもルーテシアも帰って来ていない。

 とりあえずリビングのソファーに腰を下ろす。

 

 「うーん…。この家で一人っていうのは随分と久しぶりに感じるな」

 

 そう思うと途端にこの家を広く感じてしまうな。

 休日の時はシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ、メガーヌさん、ルーテシアの誰かが家に居るのでここまで静かな家の中を懐かしく思う。

 

 「………ヒマだ」

 

 宿題は終わらせてるし、夕食はメガーヌさんが作ると言ってたし(そもそもメガーヌさんが帰ってこないと食材すら無いし)、掃除も洗濯も完了済みだ。

 ゲームは今したい気分じゃないし、漫画も今の所読みたいとは思わない…。

 

 「…テスト勉強でもするか?」

 

 もうすぐ海小は学年末テストが控えている。

 

 「でも小学校の授業内容を今更勉強してもなあ…」

 

 学校の授業内容を聞くだけで俺にとっては復習してる様なもんだし。

 ホントにやる事がない。

 

 「………寝るか」

 

 結局それしか思い付かなかった俺は自室に戻り、その後家に帰って来たルーテシアが起こしに来てくれるまでベッドの中で横になっていた………。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
平和は崩れる。何度でも修羅場するさ!主人公の受難こそハーレムの素だからだ!!(某大佐風に)(海平?)
↓平和という言葉はこの小説では「フラグ」です。(爆)(黒咲白亜)
今回は何事もなく平和な日だw(tenryu)
お気に入り1000人以上, おめでとうございます!がんばってください!(deltago)
相変わらず鈍いこの主人公。しかし、はやては何気に出番というか、勇紀との会話シーンが多い気がする。(chocolate)
俊さん>>将官クラスも夢じゃないよやったね勇紀!原作組に階級隠すとおもろそうだ。(黒咲白亜)
ルーテシアかわぇええええええ(匿名希望)
↓↓それが勇紀クオリティ        後Sts組(ナンバーズ含む)のフラグはいつ建つのだろうか(頭翅(トーマ))
将来、ルーテシアの召還がガリューとくおんのツートップと妄想した。(kaji)
↓俺もそう思った!(Fate)
↓特に言う必要性を感じなかったのは俺だけ?(ohatiyo)
入局二ヶ月で昇進。この調子でSTS開始時にどんな地位に居るんだか。しかし、はやてに昇進した事を言わなかったのは何故だろうか?(俊)
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