とある 美琴メイドin上条家 デラックス♪
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美琴メイドin上条家 デラックス♪

 

 

 大覇星祭の賭けに敗れた御坂は俺のメイドになってご奉仕するとか急に言い始めた。

『あ、アンタ……じゃなくてご主人様が大覇星祭で私に勝ったから。罰ゲームとしてご主人様の好きそうな服装でご奉仕してあげることにしてあげたのよ!』

 御坂の訴えに押し切られてしまい、結局うちに招いて世話をしてもらうことに。

『別にっ! 妹が既にこの家のことを知っていたとか、私を呼んでくれなかったとか全然怒ってないんだから!』

『別に私は……アンタ…ご主人様が土御門さんと付き合っていようがみだらに愛し合っていようが構わないわよ』

 御坂は着いた早々から怒ったり妙な誤解をしたりと忙しかった。それでもメイドに固執するもんだから家事を任せたワケなんだが……。

『ぎゃぁああああああぁっ!! 洗ってない男物のパンツを触っちゃった〜〜っ!!』

 御坂に技術があるのは認める。プロの指導を受けて、それを一発で理解してしまうコイツはまさにプロ顔負けの技術と知識を有している。

しかし粗忽者という御坂の性格上の問題。そして電撃能力と電化製品の相性の悪さ。これらの原因によってコイツにメイドの才能がないことだけはハッキリした。

 それでも意欲的なので無碍にすることもできず、一緒に買い物に出ることに。そして、スーパーに行く途中で彼女は俺達の前に現れたのだ。

 

『私の名は佐天涙子。御坂さんが旦那様の嫁に相応しいか試させてもらいに来ました』

『佐天さん、だと?』

『よ、嫁に相応しいかって……ぷしゅぅ〜〜〜〜っ』

 本人には悪意も驚異も感じない。

 なのに俺に死をもたらす気がしてならない少女。

 それが佐天さんだった。

 

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「初ぃ〜〜春ぅ〜〜っ! 退屈で死にそうだよぉ〜〜っ!」

 大覇星祭が終了して数日後の日曜日のお昼時。

 私は初春の家に突然現れてお昼ご飯のカレーを略奪。その後ベッドの上に寝転がって無為に時を過ごしていた。で、退屈に耐え切れなくなって初春に話しかけたのだけど。

「私は『雄二×明久 運動会裏の秘密の情事』を読むのに忙しいんです。話し掛けないで下さい。まったく、ホモは最高です」

 初春はBL本を読むのに夢中で私の相手を少しもしてくれない。

「暇〜暇〜暇だよ〜〜っ」

 手足をバタバタさせながら私が如何に退屈に押し潰されてしまいそうかを全身で訴える。

 佐天さんは退屈に耐えられるように出来ていない。常に面白いことを求めて動いていないと死んでしまうのだ。止まったら死んでしまうマグロのように。

「うるさいです。私は男達に輪姦された明久が心の傷を癒す為に雄二に激しく抱かれて嫌なことを忘れようとするシーンを読むのに忙しいんです。音読しましょうか?」

「いや、結構です」

 初春は座布団を敷いて座りBL本から全然目を離してくれない。チラッと見えた本の中では2人の裸の少年が激しく重なり合っていた。

 ごめん。そっちの世界は私には無理っす。

 

「そんなツレないことばかり言っていると……スカート捲るぞ」

 私よりも男を優先する。より正確には男同士の恋愛を優先する初春に不満を表明する。

「どうぞご自由に。私は雄二に抱かれてホッとした明久が康太の姦計に嵌って再び男達に輪姦されるシーンを読むのに忙しいんです。まったく、総受けは最高です。音読しますか?」

「だから止めろっての」

 初春はBL本から目を離さずに淡々と言ってのけた。ていうか何でこの子は男同士のエッチモノ、しかも陵辱系がこんなに好きなのだろう?

 どこでこの子はこんなに歪んでしまったのだろう?

 とはいえ、初春がこんな状態でいる以上スカートを捲っても意味がない。私はパンツが好きだけど、もっと好きなのは驚く女の子の表情の方。

 初春のリアクションが期待できない以上、パンツだけ見ても魅力は半減だった。恥じらいのないパンツはただのパンツ。飛べない豚の様に無価値なのだ。

 

「初春〜。何か面白いことないの〜?」

 スカート捲りは諦めて初春に他の愉悦を求める。

「BLなんてどうですか? 最高に素敵な世界ですよ」

 相変わらずBL本をガン見しながら初春は答えた。

「えっと、その、BLはちょっと……」

 私自身は同世代の男の子が好きというノーマルな恋愛観を持っている。物語上でも男女カップリングが好きだ。

 最大限譲歩しても「ごきげんよう、お姉さま」な百合な世界は許せる。けれど、男同士は勘弁して欲しい。

「おかしいですね〜? BLが嫌いな女の子なんてこの世界に存在する筈がないのに。もしかすると佐天さんは実は男の子なのですかね?」

 BL本を凝視しながら初春は大きく首を捻った。この子の中では真実らしい。

 

「じゃあ、ホモなんてどうですか?」

「同じでしょ。それ……」

「なら、ゲイですね。ゲイ同士の恋愛で決まり♪」

「だから同じでしょうが!」

「仕方ありません。男色でどうですか?」

「だから言ってることがみんな同じでしょうが〜〜っ!」

 大声で怒鳴る。ツッコミに疲れて肩で息をする。

「私としてはBLとホモとゲイと男色はみんな全然違う世界なんですけどねえ?」

 初春はBL本をガン見したまま大きく首を捻った。

「初春のマニアックな世界での違いなんて知らないわよ……」

 初春の背中が、やけに遠くに見えた。

「じゃあ百歩譲って、男の娘を好きになってしまい強引に押し倒してしまう少年の野性味溢れるラブストーリーとか」

「だからBLから離れろ〜〜っ!」

 初春は私が知らない間にとても大きくなり過ぎていた。立派に成長し過ぎて涙が出そうになった。

 

「BLが駄目だと言うのなら、BL作品の中に現れるジャンルやシチュエーションしかありませんね」

「あくまでBLから離れないわけね」

 鋼の精神を身に付けた初春にまた感動の涙が込み上げて来る。弱虫で泣き虫だった初春はもういないのだ。

「放課後の体育館倉庫とか夕日が差し込む無人の教室とかどうでしょうか?」

「いや……どうでしょうって言われても」

 面白いことがないか聞いているのに学校内の一空間だけ言われてもどうしろと?

 

「仲の良い親友同士が、固い絆で結ばれた先輩と後輩が、熱血指導に燃える教師と不良学生が。シチュエーションを想像しているだけで私は72時間費やす自信があります」

 新たなBL本を広げて見たまま初春は大きく頷いてみせた。

「うん。それは費やさなくて良いと思う」

「なっ!? 何ですか、それはっ!? 佐天さんに合わせてソフト路線の事例を挙げたのに。やっぱり佐天さんは男同士の陵辱物じゃなきゃ満足出来ないって言うんですね! この鬼畜変態! でも佐天さんが同じ道に目覚めてくれて嬉しいです♪」

「怒ってんのか嬉しがっているのかはっきりさせなさいっての」

 初春は薬でも飲んで社会復帰の為のプログラムを受けるべきだと思う。

 

「もう、佐天さんは本当にいつも我が侭ですね。我がままクイーンですよ。でも、わたしの中ではクイーンって美少年にしか使わない称号なんですけどね」

「我が侭なのは認めるけれど、今この瞬間だけは拒否するよ」

「後残っている楽しいことなんて略奪愛による寝取り寝取られぐらいしかありませんよ」

 初春が大きく溜め息を吐き出す。

「略奪愛……寝取り寝取られ、か」

 初春のその言葉は確かに私の中の何かを揺り動かした。

「私が今読んでいる『秀吉×明久 総受け地獄の惨禍』では、雄二の恋人だった明久が言葉巧みに近付いて来た秀吉に襲われてやがて身も心も隷従していきます。他人の恋人を奪い取ろうとする略奪愛はノーマルなBLでは得られない興奮がありますよ」

 初春の鼻息が背中越しに聞こえて来た。

「他人の恋人を奪う……か」

 その瞬間、私の脳に昨日の御坂さんとの会話が思い浮かぶ。

 

『ちっ、違うからぁっ! 当麻は私の恋人でも彼氏でも何でもないんだからぁ〜〜っ!』

『わっ、わわっ、私が当麻のことを好きなんてあるわけがな〜〜〜〜いっ!!!』

『分かった。当麻の欲望を私が管理しながら満足してもらうことにする。その、メイド服でご奉仕することで……』

 

 御坂さんが勝負に負けた当麻という男子高校生を好きなことは明白だった。

 だからメイドになることをけしかけて2人が恋人同士となるようにお膳立てをした。

 けれど、それだけで良いのだろうか?

 カップルが誕生する土壌だけ作って後は若い者に任せるで終わってしまって良いのか?

 そんな半端な行動が佐天さんの生き方に合ったものだろうか?

「否っ。断じて否っ! 佐天さんは最後まで介入し、責任を持つと共に自分自身もとことん楽しむ。それが私ってもんでしょうが!」

 やはり御坂さんの様子を直接覗き、場合によっては武力介入も止む無しと決意を改める。

 

「初春。御坂さんが今どこにいるか分かる?」

 初春は薄い本に目を向けたまま左手で端末をパチパチと叩いた。

「ここから割と近くの公園みたいですね。何故かメイド服を着て、知らない男の方と一緒にいるようですけど」

 初春は30秒もしない内に御坂さんの居場所を割り出してしまった。

「凄いけど……何でそんなに早く割り出せるのよ?」

「レベル5の超能力者にはそれぞれ監視用カメラによる24時間監視体制が構築されているんですよ。そこにちょこちょこっと侵入しただけのことですよ♪」

 薄い本に視線を向けたまま事も無げに初春は答えた。

「…………そういうシステムって侵入したら大変なことになるんじゃないの?」

「バレなきゃいいだけのことですよ」

 初春はまったく平常心で男同士の熱愛物語を読みふけっている。

「ホモ最高〜です♪ 世界中ホモだけで満たされればどんなに素晴らしいことでしょうか」

「じゃあ私、そろそろ旅立つわね。そしてそんな世界、一代で滅びるでしょうが」

 薄い本に夢中な初春に別れを告げて、面白いものを求めていざ出発。

 

 そして私は……ツンツン頭の男性を前にして完全にテンパっている御坂さんを初めて見たのだった。

 私は……最高に光り輝く楽しいおもちゃをみつけたのだった♪

 

 

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「佐天さんだと? 君は一体何者なんだ?」

 目の前に現れた少女に、俺は御坂と真剣バトルをした時以上の緊張感を覚えていた。

 正確に言えば緊張感の質が違う。御坂との対決が力と力のぶつかりから来る緊張感なら、佐天さんから感じるのは……知略臭というか愉悦臭というか。

正面勝負は避けて俺の弱い所をピンポイントで抉ってくるようなそんな予感がする。

「だから私は御坂さんが旦那様の嫁に相応しいか試させにもらいにきました。いわば、嫁ジャッジメントです」

 佐天さんは誇らしげに胸を反らす。……この子、御坂より遥かに大きい。じゃなくてっ!

「それはあれか? 俺が御坂の婿に相応しいかチェックしようということですか? でも、そんな心配しなくても俺と御坂は別に……」

「違いますよ」

 佐天さんは首を横に振ってみせる。

「旦那様を試すのではありません。御坂さんが嫁に相応しい技量を持っているかを試すんです」

「御坂が試されるってのがワケ分からないのだが? 試すんなら無能力者の俺の方じゃないのか?」

 佐天さんの意図が分からずに俺の謎が深まった。

 

「チッチッチッ! 分かってないなあ、旦那様は」

 佐天さんは口の前で指を左右に振ってみせながら笑っている。

「御坂さんほどの女性が選んだ男性である旦那様が外れのわけがないじゃないですか」

「御坂が俺を選んだだって? 何だそりゃ?」

 佐天さんはとてもおかしなことを言っている。御坂が俺を選んだって?

「それは勿論御坂さんが旦那様のことを好……」

「わ〜〜わ〜〜わ〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 御坂は大声を出しながら体を割り込ませて佐天さんの発言を遮ってきた。

「ですから、御坂さんは旦那様のことを……」

「お願いだから言わないでぇ〜〜〜〜〜〜っ!!」

 御坂が涙目になりながら必死にお願いしている。むっちゃ必死だ。

「あの御坂を手玉に取るとは……やるなっ」

「旦那様ほど上手くは操れませんよ♪」

 視線を交わす俺と佐天さん。やはりこの子、デキる。

 

「どうして? 私、学園都市のレベル5の第3位なのに……。何でレベル0の無能力者2人に人生をよい様に弄ばれているのぉ〜?」

 落ち込む御坂。哀れでもあるが可愛らしくもある。まあ、それよりも、だ。

「そうか。佐天さんもレベル0なのか」

「ええ。中1にして人生の酸っぱい部分を散々見ているレベル0です」

「なるほどな。君が御坂を手玉に取れる理由が少しだけ分かった気がする。はっはっは」

「ええ。常盤台のお嬢様はすごく可愛いんですよ。ふっふっふっふっふ」

 佐天さんとはまだ出会ったばかりだけど何か分かり合えた気がする。

 何て言うのか……彼女は俺と似ている。俺と彼女は同じポジションなのだと。

「この2人黒っ!! お馬鹿な明るいキャラ気取っている癖に2人とも黒っ!!」

 俺と佐天さんは……御坂いじり仲間なのだ。

 

「それで、結局佐天さんは何をどうしたいんだ?」

 質問に対して佐天さんは黒い笑みを発した。

「どちらが優れたメイドかを勝負して、私が勝ったら旦那様を略奪愛します」

「何ぃいいいいいいいいいぃっ!?」

「何ですってぇええええええぇっ!?」

 同時に絶叫する俺と御坂。

「じゃあ、佐天さんは上条さんの身体が目当てだって言うんですか!?」

 咄嗟に両腕で自分を抱き締めて警戒する。女子中学生に身体を求められる俺。何て嬉しい。いや、何て倒錯的な事態なんだぁ〜〜っ!!

「いや、別にそういうのは良いですから。年収700万の目処がついたらお嫁にもらってくれればそれで十分です」

 佐天さんはとても冷めた瞳で答えた。

「やたら打算臭いにおいがするんだが?」

「打算ですから♪」

「ひっ、酷い……っ」

 この中学生、本当にやりおる。

「まあ、旦那様は割りと格好良い男性だから、交際を申し込んでくれるんなら今すぐ特別にオーケーしてあげても良いですけどね」

「略奪愛って言ってるのに上から目線!? かしずくのは俺の方なのか!?」

 俺は佐天さんという少女に恐怖せざるを得なかった。だが、動揺する俺よりも更に激しく動揺を示したのが御坂だった。

 

「さっ、ささ、佐天さんが当麻のことをす、すす、好きだなんてぇ……っ」

 御坂は完全に思考麻痺状態に陥っていた。

「誰も好きなんて言ってませんよぉ〜」

「佐天さんは俺のありもしない将来性に目が眩んでいるだけだぞ〜」

 2人して御坂に語りかけるが戻ってきてくれない。何故こんな自虐を披露しながら御坂を慰めないといけないのだろうか?

 ていうか、御坂が何に対してショックを受けていると言うのか?

 

『『あっかり〜ん』』

『は〜〜い。ゆるゆりっ、はっじまるよぉ〜〜♪』

 

 突然頭に思い浮かんだ某アニメの冒頭シーンを思い出す。

「もしかして、御坂のヤツ。俺に佐天さんを盗られるんじゃないかと心配してっ!?」

 考えれば考えるほどにあり得る話だった。

 学校も学年も能力レベルも全く違う2人が仲が良いなんて恋愛絡み以外にあり得ない(断言)。ということは──

 

『美琴た〜〜ん、マジチョー天使ぃ〜〜♪ ペロペロペロペロペロペロペロペロ(*´ω`*)♪』

『だっ、ダメです。佐天お姉さま。そんなにペロペロされたら、わっ、私は……ユニバ〜〜ス♪』

 

「年下だろうが、佐天さんの方がお姉さまに決まっているよな」

 2人の関係はきっとこんな感じに違いない。女の子同士でカップルになるのも別に俺は悪いとは思わない。むしろこの2人のそういうシーンなら見てみたくもある。

けど、でもだ。

「佐天さんに御坂を渡すのは……やっぱりできない相談だよな」

 心に熱い感情が渦巻く。御坂を他人に渡すことに強い拒否感を抱いている。

 それが何故なのか。俺はまだハッキリとは答えを出せない。でも、御坂を誰にも渡したくない想いだけは本物だった。

 

「なあ、御坂」

「なっ、何よ。ご主人様?」

 動揺する御坂をジッと見る。

「どっ、どうしたのよ? そんなに真剣な表情で見つめて」

「お前、今日は俺のメイドなんだよな?」

「そっ、そうだって最初から言っているじゃない」

「そうか」

 御坂は佐天さん登場以来テンパッたまま。そんな彼女にご主人様として命令を伝える。

「なら、上条当麻が命ずる」

「何を?」

 御坂が無意識に半歩下がる。そんな彼女に対して俺は力強く命令した。

「佐天さんとメイド勝負して、俺の為に勝ってみせろっ!!」

 俺の大声が往来に響き渡った。

 

 

 

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「佐天さんとメイド勝負して、俺の為に勝ってみせろっ!!」

 当麻の大声は佐天さんの登場で混乱していた私の頭を更に真っ白に染め上げた。

 でも、その茫然自失状態から抜け出した時、私の心を占めたのはとてつもない幸福感と高揚感だった。

 

『佐天さんとメイド勝負して、俺の為に勝ってみせろっ!!』

 

 この言葉を解釈し直してみる。

 当麻は、佐天さんから私が勝負を申し込まれ、私が負けたら佐天さんと当麻が付き合うことになる流れの中でこの言葉を発した。

 即ち、この言葉はその流れを含めて解釈し直せば以下の様になる。

 

『佐天さんとメイド勝負して、俺の為に勝ってみせろっ!!』

  ↓

『俺は佐天さんと付き合うつもりはない。だから俺の為にメイド勝負に勝てっ!』

 

 でも、この解釈ではまだ不十分だ。

 何故なら、これだけだと当麻が佐天さんと付き合いたくない理由が分からないから。

 佐天さんは見ての通りの美少女。スタイルも私より全然良い。人懐っこくて明るくて親しみ易い。男の子から見ればすごくポイント高いはず。

 当麻だって普通であれば付き合いたいと思うはず。にも関わらず、当麻が私に勝つように命じたのは何故か?

 それは、佐天さん以外にお付き合いしたい子がいるからでは?

 当麻は土御門さんとの爛れた汚れきった関係を否定している。そうなると、当麻には他にお付き合いしたい女の子がいると見た方が自然。

そしてその女の子とは、先程までの流れから考えて……。

 

『佐天さんとメイド勝負して、俺の為に勝ってみせろっ!!』

  ↓

『俺は佐天さんと付き合うつもりはない。だから俺の為にメイド勝負に勝てっ!』

  ↓

『俺は美琴を嫁にするんだから佐天さんと付き合うつもりはない。だから勝てっ! そして結婚して俺の子供を産んでくれ。名前は女の子だったら麻琴。男の子だったゲコ夫だ』

 

「まったく、ご主人様ってば本当に困ったちゃんなんだから♪」

 上半身を限界まで踏ん反り返しながら当麻を見る。

 まったく、私のことが好きなら正面切ってそう言えば良いのに。あんな間接的にしか言えないなんて本当にヘタレなんだから♪

「でもまあ、ご主人様のご命令ってんなら果たしてあげなくもないわ」

 視線を佐天さんへと向け直す。そして、できる限りの目力で彼女に向かって不敵に訴え掛ける。

「という訳で佐天さん。どちらがご主人様に相応しいか、勝負しましょう。勝つのは勿論私だけどね」

 私の申し出を受けて佐天さんも愉悦を浮かべた。

「へぇ〜。この家事技能レベル6の佐天さんを相手にメイド勝負を受けようとは……大きく出ましたね、小娘が。いいでしょう。叩き潰してあげます」

「一応、私の方が年上なんだけどね」

「フッ。温室育ちのごきげんようお姉さまな方々が何年先輩だろうと、私の敵ではありませんよ」

「フフッ。ただの温室と、超エリートの温室を一緒にしてもらっちゃあ困るわね。最強と名が付くお嬢様集団をね」

 笑い合いながらメンチを切り合う私と佐天さん。

「お前ら……着ているのはメイド服なのに、何でそんなレディースみたいな睨み合いしているんだ?」

 当麻が何か知らないけれど震えている。まあ、そんな些細なことはどうでも良い。

 今はただ、私にとっての最強のライバルを排除するのみ。

 

「それで、メイド勝負ってのはどうやってやるの?」

「私に決めさせて良いんですかぁ? それとも負けた際の言い訳作りですか?」

「フッ」

 佐天さんをニヤッと笑いながらみる。

「サムライはどんな勝負であろうと背を見せないものなのよっ!」

「いや、御坂はサムライじゃねえだろ……」

 当麻が何か言っているけれど無視。

「御坂さんの覚悟は固いようですね。なら、メイド技能五番勝負を申し込みます」

 佐天さんは淡々と勝負名を述べた。

「メイド技能五番勝負だとぉ〜〜っ!?」

 当麻が驚愕の表情をみせた。

「知っているの、当麻?」

「ああっ。およそ主夫として腕に覚えのある者ならその名を知らない奴はいないさ」

 当麻は主夫なのかという根本的な疑問は湧くけれど説明を聞いてみることにした。

 

 

冥土魏悩呉蛮勝負(メイド技能五番勝負)

 

 古代中国魏王朝の皇帝曹丕は長年の宿敵である諸葛亮孔明が宰相を務める蜀を討ち滅ぼさんと軍を動かそうとしていた。

 だが、そんな魏の進軍にとって懸念となっていたのが、蜀と同盟を結ぶ呉の孫権と北方南方の異民族、漢族から見た所の蛮族であった。これら勢力の存在は魏の存続自体を危ぶませるものだった。

 孔明は魏の弱点を見逃さず、呉と蛮族を巧みに操りながら魏を牽制し続けた。その結果、異民族平定と呉との戦争に明け暮れることになった曹丕は結局冥土に旅立つまで蜀に軍を派遣することができなかった。

 現代のメイド技能五番勝負が、主君の為に己が才を発揮して、敵が死ぬまでその目的達成を封じる冥土魏悩呉蛮勝負に由来していることは言うまでもない。

 民明書房刊『メイドの起源は古代中国にあり』

 

 

「負けた方には死が待ち受けているという恐ろしいメイド技能勝負のことさ」

「主夫ってのはそんな悲壮感溢れた決闘を常識のように知っているものなの?」

 遠い。そんな勝負を提案してくる佐天さんも。そんな勝負を知っている当麻も遠い。

 レベル0って変態なのがデフォなの?

 当麻と私の間には変態と常識人という差があるわけなの!?

 でも、負けられない。

「5つの分野でメイドとしての技能を競い合い、3勝した方が勝ち。分かり易い勝負でしょう?」

 佐天さんはまたニヤッと挑発してみせた。

「最初からそう説明すれば良いのよ。いいわ、受けて立ってあげるわ」

 幾ら佐天さんが最高の家事技能を有していようと私は負けない。

 だって、私は当麻に嫁になることを求められているのだから。来年には赤ちゃんを抱かせてあげることを求められているのだから。

 

 

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 夕暮の往来は斜陽が眩しい。けれど、その斜陽よりも厄介な眩しさを放っているのが佐天さんだった。

「それでは第一の勝負は夕飯のお買い物対決です」

 佐天さんが対決種目を告げる。メイドとしては無難な対決と言えるだろう。

「ご主人様。今日の夕飯の材料費はお幾らですか?」

「ええっと……3人で1000円でお願いします」

 上条さんGDP的には、2人でも3人でも同じ金額しか出せない。

「…………じゃあ、隣の区画のスーパーに移っても良いですか?」

 佐天さんは上を向きながら尋ねる。

「私は構わないけど」

「御坂がいいってんなら、移るか」

 3人の意見が揃い、ここから10分ほどの位置にあるスーパーへと移動していった。

 

「では改めてルールの説明です」

 割と大きめのスーパーを前にして佐天さんがバトルのルールについて説明を始めた。メイド服の少女が2人並んでいることで注目を集めてしまっているけれど、この際仕方ない。

「私と御坂さんが、1000円で支払える食材を籠に詰めてご主人様の元へ持ってきます。ご主人様はどちらの食材の方が美味しい料理が出来そうか判定を下してください」

「つまり、2人の選んだ買い物籠の内、1つだけを買うと」

「そうなりますね」

 佐天さんは頷いてみせた。

「食材の目利きなら私だってプロに指導を受けてちゃんと覚えているんだから」

 勝負内容を聞かされても自信を崩さない御坂。けれども、俺には勝負が始まる前から既に確信があった。

 この勝負、御坂に勝ち目はないと。

 俺の予想通りの理由でこのスーパーを選んだのだとするのなら。佐天さんはやはり相当な策士に違いなかった。

「それじゃあ、一番勝負。始めますよ!」

「いつでも良いわよっ!」

「んじゃ、スタートな」

 2人は勢い良く店内へと駆け込んでいく。そんな2人の後を俺はゆっくりと歩いて店内に入っていった。

 

 

 そして20分後──

「勝者……佐天さん」

 俺は買い物勝負の勝者を宣言していた。

「フッ。当然ですね」

「そ、そんなぁ〜〜っ」

 胸を反らして勝ち誇る佐天さんとガックリと落ち込んでみせる御坂。

けれどもこれは仕方ない。最初からどちらが勝つか決まっている勝負を受けてしまった時点でコイツの負けは決定していた。完璧な戦略ミスだ。

「しっかし、えげつない手を使うなあ、佐天さんは」

「獅子はお嬢様を狩るのにも全力を尽くすものなのですよ」

 踏ん反り返ってみせる佐天さん。この子が本気で勝負を挑み続けるのなら、御坂の勝ち目はないかも知れない。それは上条さん的には困るんだがなあ。

 

「一応審査員として今の勝負を解説しておくと、御坂の敗因は大きく分けて2つある」

 指をVの字に突き出しながら解説する。

「1つ目は、予算制限が厳しい中で、御坂には何と何を買うかという食材の組み合わせの戦略が乏しすぎた点だ。選別眼自体は優れているようだけどな」

 御坂の籠に入っているのはトマトと豚ロース。トマトは並んでいる中で最高のものを選んでいるであろうことは分かる。ロースもしかりだ。

 うちに卵とパン粉と小麦粉があるか聞いてきたので、豚カツを作ろうとしていることは見て取れた。

 しかし、夕飯の人数が3人になった為にロースの費用がかさんだ。そして御坂は単価の高いトマトを3つ熱心に選んだ為にそこで予算を使い切ってしまった。

 如何に豚カツを美味しく作ろうとも、他に並んでいるのがトマトだけではあまりにも寂しい。

 お嬢様である御坂が厳しい予算制限に慣れていなかったことが大きな敗因に繋がった。

「そして2つ目、佐天さんのホームで勝負したのは致命的なミスだったな」

 御坂の最大の原因は、アウェイで無策に勝負を受けてしまったこと。

「どうして佐天さんの籠にはこんなにも沢山の食材が入ってるのよぉ〜? 明らかに1000円越えてるじゃないのよぉ〜」

 御坂が悲しげに不満の声を漏らす。

「いやぁ〜。私、このスーパーには通い慣れているので、色々な種類の無料引換券を持っているんですよねぇ〜」

 佐天さんは財布に入っている大量の無料引換券を提示してみせた。

 そしてその籠の中にはどう見ても4000円分を越える食材がどっさりと入っていた。

 干物、缶詰、中にはお菓子やジュースなんかも存在する。物量的に勝負にならなかった。

 

「じゃあ私、清算してきますね。私が行かないと割り引いてくれないのもあるので」

「ああ、頼むよ」

 レジは佐天さんに任せて落ち込んでいる御坂を慰めに掛かる。

「お前が一生懸命食材を選んでくれたのは分かっているからな」

 頭にポンッと手を乗せて撫でる。

「でも、勝負にあっさり負けたのは悔しい……」

 御坂はムスッとした表情でいじけてみせている。膨れっ面のまま俺に頭を撫でられ続けていた。

「もし、勝負にこだわるってんなら……戦略をよく練るか全力以上の全力を出さないと、あの子には多分勝てないぞ」

 御坂の体がビクッと震えた。御坂が真正面からの力押しタイプなら、佐天さんは知略を張り巡らせるタイプだ。戸愚呂弟と仙水という違いか。

 佐天さんは御坂の弱点を的確に突いてくる。レベル0として自分の限界を悟っているであろう彼女はクレバーな戦法を極めているのだろう。

「…………っ」

 御坂が不安げな瞳を俺に向けた。

「だけど……俺は御坂が勝つことを信じているからな」

 頭をわしゃわしゃと力強く撫でる。

「うんっ」

 御坂は力強く頷いた。

 

 これで御坂はもう大丈夫。

 そう思ったのだけど──

「二番勝負、料理対決。勝者…………佐天さん」

 第2回戦も落として、御坂はもう後がない所まで追い込まれたのだった。

 

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「二番勝負、料理対決。勝者…………佐天さん」

 当麻の判定をガックリと俯きながら聞くしかなかった。

 私の2連敗になってしまった。

 せっかく当麻からアドバイスをもらったのにそれを活かしきれなかった。というよりも、最初の買い物対決を落とした所で私の2連敗は決まっていたのだ。

 

『それでは第2番目の勝負です。買ってきた材料を使って夕食を作る料理対決です』

『フッ。今こそ捲土重来の時はきた。料理は得意なんだからっ!』

 腕を曲げて力こぶを作る真似をする。

 当麻にいつかお弁当を作ってあげようと思って、料理の練習は怠らずにしてきた。

 料理の技術なら佐天さんにも引けを取らない。自分の力をそう見積もっていた。

 けれど、それは甘い見通しでしかなかった。

 

『何なの、これは?』

 佐天さんが買ってきた食材には常盤台の調理場で見たことがないものが多かった。干したもの、乾いたもの、燻したものが多かったのだけど、どう使えば良いのか分からない。

 失敗した料理を当麻に食べて欲しくない。だからそれらの食材を避けた結果、使えるものは極端に減ってしまった。

 逆に肉や野菜や魚は元から多くはなかった。しかもそれらを佐天さんと等分したものだから、それらをメインに据えることもできなかった。

 そんなこんなで私は自分の料理の腕を発揮することなく惨敗したのだった。

 今になれば分かる。佐天さんは買い物の段階で、私では使い勝手が分からない食材を中心に集めていたのだと。

 食材の選択を彼女に握られた時点で私に勝ち目はなかったのだ。

 

「ごめん。当麻に……ご主人様に美味しいものを食べて欲しかったのに。勝てなかった」

 当麻を前に力なく首を落とす。

「相手が上手だった。そうとしか言いようがない」

 当麻はまた頭を撫でてくれた。優しい表情を見せながら。

「さあ、ご主人様。御坂さん。ご飯にしますからお部屋の方に移動してください。御坂さんの作ったそれも持って」

 佐天さんは作った料理の数々を運びながら私たちに声をかける。

「えっ? 私の料理も運んで良いの? 勝者の料理だけ食べるんじゃ?」

 佐天さんはクルッと振り返って

「作ったものを食べないなんて勿体ないこと。佐天さんの哲学には存在しませんよ」

 ごく普通な感じで自説を披露した。

「それに、御坂さんの作ったそれは、3人で分けるには少ないですけれど。1人に食べてもらうには十分な量のおかずだと思いますよ」

「「あっ!」」

 私と当麻の声が揃う。

 

「ほら、旦那様もぼぉ〜としてないで、運ぶの手伝ってください。働かざる者食うべからずですよ」

「おっ、おう。分かった」

 頷いて慌てて動き出す当麻。ご主人様のくせに配膳の支度を疑問もなく手伝うとか本当にアイツらしい。

「御坂の料理……楽しみにしてっからな」

 当麻は台所を出ていく際にもう1度私の頭を撫でてくれた。

コイツはこういう時、とても優しい。

「うん」

 頷いて返事をする。

 改めて思う。私はコイツのことが好きなのだと。ちょっと悔しいけれど認めるしかない。

「やっぱりこの勝負、負けられないよ」

 佐天さんに当麻は譲れない。それがハッキリした瞬間だった。

 

 

「というわけで、今日の夕飯のメインは炊き込みご飯とお鍋で〜す」

 佐天さんが夕飯について説明を加える。言われてみれば納得の選択肢だった。

「炊き込みご飯は炊飯器で炊けば良いだけなので、誰でも作れる簡単メニューではあります。でも、だからこそ食材の選択とその比率配分が重要なんですよ〜」

 佐天さんはニコニコしながら解説している。干ししいたけやヒジキ、昆布等がお醤油と共に良い香りを醸し出している。

「お鍋もですけどね。貧乏人は如何に高級食材を使わずに美味しいものを作るのか日々努力を怠ってはいけないのです」

 熱い語り。今回も完全に彼女のフィールドで戦ってしまったことは間違いなかった。

 他にもポテトチップスを砕いて玉ねぎとマヨネーズを和えてポテトサラダを作るなんて発想は私にはなかった。ただのお菓子としか認識していなかった。

 調理実習は上手くやってきたと思ったけれど……完敗だった。日常生活での実践力が乏しすぎた。

 

「それじゃあ旦那様。一番食べてみたい料理から食べて下さいね」

 佐天さんがニコニコしながら当麻に料理を勧める。彼女の作った料理はどれも美味しそうだった。

さて、当麻は何から食べるのだろう?

「じゃあ、いただくな」

 そう言って当麻が最初に手にしたもの。それは──

「おっ。この肉じゃが、出汁がちゃんときいていて美味いな」

 私が作った肉じゃがだった。

 えっ?

「ほほぉ。勝者は私であるのにも関わらず最初に御坂さんの料理をいただきますか」

「一番食べてみたい料理から食べれば良いんだろ?」

「旦那様も相当にお人が悪い」

「佐天さんほどじゃないさ」

「「はっはっはっはっはっは」」

 2人が目を細め笑いながら軽口を叩き合う横で私は呆然としていた。

 

「何で、私の料理から?」

 上の空で当麻に尋ねる。

「だって、俺は御坂の料理がずっと食べたかったからな」

 当麻は笑顔を浮かべながらその理由を教えてくれた。

 ……笑顔を載せてのその一言は反則過ぎた。

「そっ、そうなんだ。………………ありがとう」

 顔が茹で上がっていく。ずるいって。鈍感男の癖に突然そんなこと言うのは。

「チッ! 既に2人はラブラブかよ。リア充爆発しろっての」

「別に俺と御坂は…………そんな関係じゃねえっての……まだな」

「でも略奪愛に燃える佐天さんはそんなことぐらいでは諦めません。ですが旦那様の鬼畜な態度にハートブレイクです。よって旦那様が私の作った料理を食べることを禁止します」

「え〜〜っ!? そっ、それは酷いんじゃないか!?」

「こういう時は男らしく切腹かハラキリかカミカゼして誠意を見せるべきでは?」

「死しかねえのかよっ!?」

 2人の軽口は続いている。

 でも、そのやり取りは頭の中に入ってこなかった。

 当麻の言葉が嬉しかったから。

 料理勝負に負けたのに、私の心はこれ以上ないぐらいに幸せな感覚で満ち足りていた。

 

-7ページ-

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 当麻が佐天さんに土下座して謝って食事は再開し、和やかな雰囲気の内に無事に終わった。佐天さんの料理はすごく美味しかった。

「私、まだまだだったわね……」

 唇を噛む。実習と実践は違う。正確には実習だけじゃ足りない。それを思い知った。佐天さんと私の間には家事技能に関して明らかに経験に差がある。

 でも、今は当麻を賭けた真剣勝負の真っ最中。

 経験に差があるとか泣き言を述べている場合じゃない。差を埋める+アルファがなきゃいけない。それを実戦で使わなきゃいけない。

 

「さて、食事の片付けも終わったことですし、第三の勝負といきますよ」

 佐天さんは2連勝して圧倒的優位にいる余裕の表情を浮かべている。おまけに次の勝負内容も決めるのは彼女なのだから優勢を確信するのは当然の措置だろう。

 でも、負けられない。

「次の対決はご主人様癒し対決で〜す」

 佐天さんが明るい声で両手をあげながら宣言した。

「癒し対決って何をするの?」

 今までの買い物、料理と違って内容がよく把握できない。

「ストレスの多いご主人様の心と体を癒す。そんな愛に満ちたメイドとしての真髄を試す競技です」

 佐天さんは両手を胸の前に当てて自己陶酔しながら対決種目について説明している。

「気のせいか俺をおもちゃにしようという悪意のみをひしひしと感じるんだが?」

「まあ、そんな些細なことは横に置いておきまして具体的なルールの説明です……」

「否定してくれないのかよ!?」

 佐天さんは当麻のツッコミをあっさりと切り捨てた。

「これから30分の間、2人で旦那様をおもちゃにして……旦那様を癒して差し上げて、より多く癒しを与えたと旦那様が判定した方が勝ちです」

「今、俺をおもちゃにしてって言ったよな?」

「はて、何のことやら?」

 佐天さんはニヤニヤ笑っている。

「佐天さん。君は一体何を考えている?」

「そりゃあ、楽しいことですよ♪ 愉悦最高で〜す」

「君を見ているとビリビリ御坂が本当に可愛く見えてくるよ」

「御坂さんが可愛いのは万人の常識ですよ」

 バッチリウインク。

「へいへい。そうですね」

 当麻は頭を掻きながら疲れたように首を落とした。

 

「それで、癒すって具体的には何をするの?」

「そりゃあ〜メイドの腕の見せ所なんじゃないですか〜? 何をするかは各自の自由です」

 佐天さんはより一層ニヤニヤしている。悪戯をしたくてたまらないという表情。とても嫌な予感がした。

「でも、御坂さんならではの、御坂さんにしかできないご奉仕の仕方があるんじゃないですか? 旦那様限定でできる特別なご奉仕が」

「特別なことって?」

「そりゃ〜御坂さんが旦那様にエッチなご奉仕をするとか。すごくエッチなご奉仕をするとか。超エッチなご奉仕をするとか♪ 子供作っちゃえば一気に永久就職逆転勝利ですよ」

「そんなこと…できるかぁ〜〜っ!!」

 大声で否定する。

 と、当麻にエッチなご奉仕なんて……エッチなご奉仕なんてぇっ!!

 

 

『ご、ご主人様。こ、今夜も、み、美琴を可愛がってください……』

『やれやれ。ご主人様に自分からおねだりとは美琴は本当にエッチなメイドだな。これはお仕置きしてやらないとな』

『みっ、美琴をこんな体にしたのはご主人様ですよ……せ、責任、取ってください』

『それは今夜のことか? それとも、一生という意味でか?』

『りょっ、両方です。今夜も、明日も明後日も……一生涯美琴のことを可愛がってください』

『なら、美琴には永遠の契約の証にこれを渡さないとな』

『これは……指輪?』

『これからはメイドではなく、妻として俺の側にずっといて欲しい』

『はいっ。旦那様……あなた』

『『ぶちゅぅ〜〜〜〜♪』』

 

 

「そんな展開……私には無理だからぁ〜〜〜っ!!」

「御坂さんて、頭の中ではそんなエロいことを普段から考えていたんですね。なるほど。思春期中二病的なエロの鑑ですね♪」

 妄想の世界から抜け出すと佐天さんが何故か首を何度も縦に振って頷いていた。その隣では何故か当麻が気絶していた。

「えっ? 当麻に一体何が起きたの?」

「御坂さんの為を思ってのことですよ♪」

 佐天さんは笑顔で答えた。

「旦那様だって、御坂さんの口からきちんと聞きたいでしょうし♪」

「へっ? 何それ?」

 佐天さんの言っていることはよく分からない。

「貸し1つにしておきますね♪」

「はあ…」

 よく分からない内に借りができてしまったらしい。

 

「それじゃあ、旦那様が目覚めたら勝負開始ですからね」

「分かった」

 コクッと頷いてみせる。

「この対決にも負けたら……御坂さんはメイド勝負に負けが決まるんですからね」

「わっ、分かってるわよ」

 絶対に負けられない勝負だった。なら、私も覚悟を決めないわけにはいかなかった。

「当麻は絶対に渡さないから」

「その心意気はヨシっ、ですよ。全力で掛かってきてください」

 佐天さんは不敵に笑っていた。

 

 

 

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 目が覚めると、御坂の綺麗な顔が俺を覗き込んでいた。

「そっか……これが幸せってやつなんだな」

 朝起きたら御坂がいてくれる。

 それは何にも増して幸せなことなんだって唐突に理解した。理解してしまった。

 それと共に自分の気持ちも明確に。こんな簡単なことだったとは……。

 

「で、お前は看病してくれたのか?」

 御坂は俺の顔をタオルで拭いてくれていた。そもそも何で俺は気を失ったのか分からない。どうやってベッドの上まで移動したのかも。

「看病っていうか……顔の落書きを消してるっていう方がより正しいわね」

 御坂は少し困ったように答えた。

「落書き?」

 とても嫌な響きだった。

「うん。当麻…ご主人様が気絶している間、佐天さんが暇だからって顔に落書きを」

 どんな落書きされたのか気になった。きっと額に『肉』と書かれて、口の周りは髭だらけにされているだろう。目はパンダか眼帯か。鼻毛も忘れていないに違いない。

佐天さんならきっとそれぐらいのことはする。あの子は徹底的に遊び倒すタイプだから。

 確かめてみたい。けれど、見たらショックでしばらく鏡を見られなくなるかも知れない。

 俺は激しいジレンマに陥っていた。

 そして俺の顔に落書きを施した張本人は……。

 

『イカちゃ〜〜〜〜ん♪ 私とデートしてぇ〜〜〜〜♪』

『嫌だゲソォ〜〜〜〜っ!!』

 

 佐天さんそっくりな声の少女が、インデックスそっくりな少女を追いかけているアニメを見ていた。

「やっぱり早苗の声って可愛いなあ〜」

 うっとりとした表情で画面を見つめる佐天さん。気のせいか自画自賛しているようにしか聞こえない。そして俺の方を振り向きもしない。

「あ〜。そうそう。旦那様が目覚めたことで癒し対決は始まっています。だから30分間、御坂さんはしっかりご奉仕してくださいよ」

 そしてテレビ画面にかぶりついたまま勝負の始まりを告げた。佐天さんも参加者の筈なのにやる気が微塵も感じられねえっ。

「旦那様は所詮エロいことしか考えていない男子高校生。エロいご奉仕すればすぐに勝ち名乗りをあげてくれますよ」

 そしてテレビを向いたまま爆弾だけ落としてくれるのだった。

 

「そんなことっ、できるワケがないでしょうが〜〜っ!!」

 顔を真っ赤にして否定してみせるお嬢さま。からかわれているってのに、どうしてそんなにムキになって否定するかねえ?

「できるワケがないのは知ってるからあんまり耳元で騒ぐな。鼓膜が破れるっての」

「何でできるワケがないって決め付けるのよ?」

 急にムッと額に皺を寄せる御坂。

「今自分でできないって言ったじゃねえか」

「アンタ…ご主人に言われると、何だか逆らいたくなるのよねぇっ」

 御坂は俺をキツい瞳で睨むとベッドの上に正座の姿勢で座った。

「さあっ。来なさいっての」

「来なさいって一体?」

 御坂は自分の膝をパンパンと手で叩く。

「ひっ、膝枕してあげるんだから、頭の位置を変えなさいって言ってるのよ」

 御坂の頬は僅かに赤くなっている。

「それは上条さんが膝の上に頭を乗せた瞬間にコゲ条さんにする恐ろしい殺人予告か何かでしょうか?」

「そんなワケがあるかってのぉ〜〜っ!!」

 顔を真っ赤にしながら怒るビリビリ中学生。

「今は癒し勝負の最中でしょうがっ! だから特別に膝枕してあげるって言ってるのよっ!!」

 声が大きくなりすぎてもう怒っているのか照れているのかも分からない。

「まあ、そういうことなら分かった」

 体をモゾモゾと動かして御坂の膝の上に寝なおす。

「あっ」

 御坂から小さな声が上がる。でも、その声を上げたいのは俺の方だった。

 ……柔らかくて温かくて気持ちいいなあ、これ。

 なるほど。膝枕という行為は、単にそれが男女の親密さを示す為の儀式ではなく本当に気持ち良いから行われているものなのだ。俺はそれを今よく理解した。

 

「どっ、どう?」

 御坂の膝の上に頭を乗せてから数十秒。御坂から質問が来た。

「どうって?」

「わっ、私の膝は気持ちいいかって聞いているのよ」

「ああ。気持ちいいさ」

 目を開いて上を見上げる。すぐ近くに御坂の顔が見える。とても幸せなことだった。そう。これが俺の幸せなんだ。

「御坂ってさ」

「何よ?」

 少し警戒した瞳。何か悪口を言われると思っている瞳。

 御坂は俺に対して被害意識が強い。なら、その幻想をぶち殺してしまうことにした。

「こうやって電撃使わないでいるとスゲェ可愛いよな。ほんとっ、可愛いぜ」

「なあっ!?!?」

 御坂は小さく声を発するとそのまま固まった。動く気配は全くなかった。

 電撃を発してくることも蹴りやパンチを発することもなかった。なので俺はそのまま御坂の膝を枕にして堪能し続けた。

 そして──

 

「それじゃあ旦那様。制限時間がきましたので、勝負の判定をお願いします」

「御坂の勝ち。っていうか、佐天さんはこの30分間、一度も俺を見もしませんでしたよね? 現在進行形で見ていないよね?」

「超絶美声の持ち主である織田信奈ちゃんの雄姿を見るのに忙しいので旦那様の顔を見ている暇はありませんよ♪」

 

 俺は御坂の勝利を宣言しながら佐天さんの愛が溢れすぎる態度に涙するのだった。

 

 

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 当麻に膝枕した。それからよく覚えてないけれど、とても素敵なことを言われて呆けた。

「では第四番目の対決は〜、お風呂でご奉仕対決です」

 で、気が付くと次の対決の種目を言い渡されていた。

「あれっ? 第三種目はいつの間に終わったの?」

「御坂さんが旦那様にそれはもう口に出せないエッチなことをして、勝利を飾りましたよ」

 佐天さんはサラッと素の表情で答えた。

「くっ、口に出せないエッチなことってっ!? 私は、一体何をしたって言うのっ!?」

「そんなこと、中1の私にはとても口に出せません。18才未満口出し禁止ですよ」

 佐天さんはポッと頬を赤らめた。

「アンタは私に一体何をしたぁ〜〜っ!?」

 ベッドの上にちょこんっと座っている当麻の襟首を掴む。

「俺からは何もしてねえってのぉっ!」

 当麻は必死に首を横に振る。容疑を認めるつもりは一切なし。

 一体、私は何をされたと言うの!?

 

「御坂さん。足、痛くありませんか?」

「へっ?」

 佐天さんに言われて自分の体の状態を再度検査する。足が鉛みたいに重くなっていた。それに、上部の方が痛い。特に付け根の方が。

えっ? これって……ま、まさか?

「御坂さんは記憶が飛ぶほど呆ける体験をした。足の付け根が痛い。メイド服姿の美少女が旦那様にベッドでご奉仕。これらのキーワードから連想されることを何でしょうね〜♪」

 佐天さんはすっごい楽しそうに笑っている。その笑いを聞いて御坂美琴のパーソナルリアリティーは崩壊した。

「責任を取れぇ〜〜〜〜っ!!」

 枕を手にとって当麻に殴りかかる

「だから俺は何もしてないっての!!」

「それじゃあ私からしたって言うのかぁっ! 男らしく責任を取りなさいってのぉ〜〜っ!」

 枕で何度も何度も殴りつける。色んな感情がごっちゃになって自分が何をしたいのかよく分からない。

 でも、こういう場合、男がちゃんとした態度でそれ相応の責任を負うのがけじめだろう。

 私が清い体に戻ることはもうないのだから。もう私は今後の人生を上条美琴として生きていくしかないのだから。………………フッ♪

「御坂は30分間、俺を膝枕し続けて足が痺れているんだっての!」

 当麻が声を張り上げる。

「じゃ、じゃあ、何で股の所が痛いのよ?」

「俺のツンツン頭が御坂の股の部分に当たっていたからだろ」

「じゃあ、責任は?」

「取るべき過失が存在していない」

「チッ!」

 舌打ちが出た。脳内で展開していたネオ・パーソナルリアリティー上条美琴が消失していく。

手出せよな。そして私にプロポーズぐらいしてみせろっての。このヘタレ当麻がっ!

 

「じゃあ、次の勝負は今から旦那様がお風呂に入ります。旦那様が入浴を終えるまでにご奉仕でより気持ち良くさせた方が勝ちで〜す」

 趣味欄に愉悦と書きそうな少女は楽しげに勝負内容を説明してくれた。

「お風呂でご奉仕って、それはメイドの仕事じゃないと思うんだけど?」

「御坂さんがなりたい“夜のメイド”的には合っていると思いますけど?」

 何言ってんのコイツと言わんばかりに首を傾げられる。

 ……佐天さんの中の私がどこまでダメな人間なのか凄く気になった。畜生っ!

「じゃあ、旦那様は今からお風呂に入ってください。10分後に私たちも水着に着替えてお風呂場に行きますので」

「みっ、水着っ!?」

 当麻が大きく目を見開いて驚く。背中流すだけなら今の格好のままでも十分のはず。

「もぉっ♪ 旦那様ったら私たちに裸で入ってきて欲しいんですか? まったく、御坂さんと並び立つエロスの鑑ですね。24時間頭の中がピンク一色だなんて♪」

「誰もそんなことは言ってねえだろうがぁっ!」

「何でエロスの基準が私なのよぉっ!」

「はいはい。リア充夫婦の仲の良さは分かりましたから。旦那様はさっさとお風呂場に移動してくださいね」

 佐天さんパネェ。私も当麻も軽くあしらわれている。

「うう……不幸だ」

 当麻はブツブツ言いながら風呂場へと消えていった。

 

 

「さて、私たちも着替えるとしますか」

 私の理解を置いたまま佐天さんは持って来た鞄の中身を漁り始めた。

「いや、着替えるって言われても、水着なんて持ってきてないし」

「私が色々持ってきたから大丈夫ですよ♪」

 佐天さんの鞄の中には確かに色々な水着が入っている。でも……

「これ、佐天さんの水着よね?」

 白いブラを手に取って自分の胸に当ててみる。服の上からでもカップが余ることが簡単に見て取れた。

 佐天さんはブラと私を交互に見て手を叩いた。

「ああ。胸囲の格差社会ってやつですね」

「…………ええ。早急に是正されるべき問題よね。マニフェストに載せるべきよね」

 俯いて小声で答える。きっと、来年にはこの格差はもっと大きくなる。新自由主義が私を苦しめる。ガッデム!

「まあ、是正は不可能でしょうけど。今日の所は初春の小学生時代のスクール水着でも着て我慢してください」

 佐天さんが鞄の中から紺色のワンピース水着を手渡した。

「小学生……しかも初春さんの水着が私にピッタリなんだ」

「胸的には多分」

 涙が出た。

「わ〜ぴったりぃ〜」

 そして、実際に水着は私にピッタリだった。特に胸の部分が。

 世界に永久革命をもたらそう。全ての格差を破壊してやろう。

 そう、心に決めた。

 

 

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「水は電気をよく通す。なるほど。ここが俺の人生の終焉の地。というわけだな」

 風呂に浸かりながら自分の人生の締め括りについて考える。

 俺は佐天さんに出会ってからどうしようもなく死の香りを感じ取っていた。

 その正体がようやくハッキリと分かった。

 今から始まるであろう御坂とのお風呂イベント。それが俺の死の正体なのだ。

「せめて……ポロリでもあればなあ」

 人生の最期ぐらい男の子として嬉しいイベントも体験したい。それが死への直接の原因に繋がろうとも。

「って、硬派が売りの俺が中学生を相手に何を情けないことを言っているんだか」

 頭を振りかぶって雑念を打ち消す。

 神裂やオルソラならともかく、相手はまだ13、4歳のお子様じゃないか。

 不埒な考えを抱くにも値しない。

 

「お待たせしました〜♪」

 佐天さんが浴室に現れた。布面積の少ない、際どいライトグリーンのビキニ水着を装着して。

出るとこは出て引っ込むとこは引っ込む。俺のクラスメイト女子の平均よりもナイスバディーな少女が目の前に立っていた。

 女子中学生が不埒な考えを抱くにも値しないだと?

 それがお前の考えだって言うんなら、少女の成長を見くびる嘲りだって言うんなら、まずは俺のそのふざけた幻想をぶち殺すっ!!

「すいやせんでしたぁ〜〜っ!!」

 佐天さんに向かって深く頭を下げる。

 中学生には色気がないなんて、俺もとんでもない幻想に囚われていたもんだぜ。

「あの、何を謝っているんですか?」

 佐天さんが瞳を細めて怪訝そうな瞳で俺を見ている。

「女子中学生を馬鹿にしていた俺の幻想をぶち殺していたんだ」

「言葉の意味がまるで分からない説明をどうもです」

 佐天さんは冷淡な瞳で俺に向かって軽く頭を下げた。そして振り返って手を伸ばした。

 

「じゃあ、そろそろ主役にお入り願いましょうか」

「ほっ、本当に入らないとダメなの?」

 当惑する御坂の声。愉悦少女はがっちりとその腕を掴んで離さない。

「ダメに決まってますよ。御坂さん、このお風呂ご奉仕勝負を棄権したら私に旦那様を略奪愛されるんですよ」

「…………分かったわよ」

 渋々、本当に渋々返事しながら脱衣所とを隔てる扉を越えて御坂が入ってきた。

 

 御坂はスクール水着姿で現れた。その姿に俺は呆然と見惚れていた。

 細い腰。健康的にスラリと伸びた手足。

 胸のボリュームは確かに乏しい。けれど、それを補ってなお余りある全身の均整の取れたプロポーション。

 美というものを俺は知った。

「なっ、何とか言ったらいいじゃない。佐天さんに比べて胸がないとか馬鹿にすれば良いじゃない」

 御坂は俺と目を合わせようとしない。横を向いたまま頬を染めている。

「きっ、綺麗だ」

 素直な気持ちが口に出た。

「なっ、なあっ!?」

 御坂の口が半開きになる。何か言おうとして声が出せない。そんな感じになっている。

「俺は今まで大きな思い違いをしていた」

 己の過ち。自らの幻想を告白し始める。

「色気とはおっぱいの大きさ。そう思っていた時期が自分にもありました」

 他人の幻想ばっかり砕いてきた俺が、実は一番大きな幻想に囚われていた。

「けど、本当に綺麗なものはおっぱいの大きさに関わらず綺麗なんだって。御坂を見て思い知ったよ」

 吹寄の胸を見て青春を滾らせてきたのは嘘じゃない。佐天さんの水着姿を見てJCを侮ってきた愚かな自分に気付いたのも本当。でも、それ以上に御坂の水着姿は強烈なインパクトをもたらしていた。

「御坂はさ、その、スゲェ綺麗だよ」

 己の幻想が砕け散るのを自覚しながら御坂に素直な感想をもう一度告げた。

 

「さて。じゃあ、第四勝負を私は棄権しますね」

 佐天さんは俺に背を向けて扉の外に出る。

「一体何でだ?」

 佐天さんだったらこの状況をもっともっと楽しみそうな気がするのだが?

「そうですねえ。強いて言うのなら……」

 首だけ振り返って最高の笑顔を彼女は披露してくれた。

「水は電気をよく通すから。でしょうかね?」

「あっ!」

 佐天さんの言葉の意味を理解すると同時に俺は風呂からの脱出を試みる。しかし、上条さんの不幸回路は既に発動してしまっていた。

「うぉっ!? 何でこんな所に石鹸がっ!?」

 タオルを巻いて浴室から出た所で何故か落ちていた石鹸を踏んでしまう。そしてそのままバランスを崩して倒れこんでしまった。

「「へっ!?」」

 俺は御坂を巻き込んで転んでしまったのだった。

 

「「あっ」」

 俺の真下、すぐ近くに御坂の綺麗な顔。俺は今、御坂を押し倒すという構図になってしまっている。

 しかも、倒れる時に左腕を引っ掛けて御坂の肩ヒモ部をずり下げる形で。御坂の胸がないおかげで大事な所は見えていない。いや、そもそも谷間に該当するものが……。

 でもこれは、見方によっては俺が御坂に良からぬことをする目的で押し倒したと受け取れられても仕方がないかも知れない。さて……。

「佐天さ〜ん」

 唯一の希望に声を掛けてみる。

「わっ、私、旦那様のお葬式には必ず参列しますから。じゃなくて、ベッドの準備をしてきますねぇ〜っ!」

 佐天さんは逃げた。全力で逃げた。

 レベル0である彼女はよく知っていた。

 今の状況が無能力者にどうにかできるものではないことを。

 なら、もういいじゃないか。

 死を受け入れよう。

 濡れたこの体で電撃はどうにかできるもんじゃない。

「綺麗だぜ。御坂」

 最期に素直な気持ちをもう一度吐露する。

 

 次の瞬間、鋭い痛みと共に俺の意識は一瞬にして刈り取られた。

 最期にちょっぴりいい目を見られたぜ……。

 

 

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 私が退避した直後、お風呂場から激しい放電の光と音が聞こえてきた。

 それと共に上条さんの断末魔の悲鳴も。

 それから1分ほどして呆然とした表情の御坂さんが水着姿のまま部屋へと戻ってきた。

「どうしよう、佐天さん?」

 御坂さんは戸惑いを全面に出した表情で尋ねる。

 それは殺人事件を起こしてしまったことに対してですか?

 そう訊きたくなるのをグッと堪える。

「私っ、本気で当麻のことを好きになっちゃってるの」

 その上条さんはもうこの世にいないのでは?

 そうツッコミたくなるのをグッと堪える。

「私っ、どうしたら良いのかな?」

 泣きそうな表情で御坂さんが私の肩を掴んでくる。いつもクールで頼れるお姉さんが気弱な幼稚園児みたいな表情を浮かべている。

 でも、それだけ真剣な想いを抱えていることがその表情から分かった。

 佐天さんの愉悦はここまでにしないといけないらしい。

 

「大丈夫ですよ」

 御坂さんを両腕で抱きしめる。

「御坂さんの想いはきっと届きますから」

 優しく大事に、でも強く固く抱きしめる。

 真面目でいつも頑張りすぎてしまうこの人には誰かの支えがあった方がきっといい。

「御坂さんと上条さんは相思相愛なのは見ていれば大丈夫。だから、きっと上手くいきますから」

 今日数時間見てきただけだけど、2人が互いを意識している親密な関係であることは十分に把握できた。

 後はどちらかが告白すればそれでカップルはすぐに成立する。そういう間柄。

 まあ、上条さんがまだ生きていたらという前提条件がやっぱり付くのだけど。

「…………でも、私から告白なんてできないよ。…………負けた気分になるもん」

「こういう時でも御坂さんは意地っ張りなんですね」

 ちょっとだけ呆れてしまう。私にはこんなに好きを表現しているのに本人には言えないなんて。でも、その意地っ張りが彼女をすごい人たらしめてきたのだとも思う。

「じゃあ、御坂さんが旦那様に尋ねれば良いんですよ。私のこと好きかって」

「えっ? でも、それって……」

「御坂さんは質問するだけですから告白したことにはなりません。旦那様が好きだって返答したら、御坂さんも自分の気持ちを素直に告げればいいんですよ」

 最初の1歩さえ相手に踏み出させてしまえば御坂さんはきっと素直になる。だから、意地っ張りな先輩の為に旦那様には男として頑張ってもらおう。

「じゃあまずは、旦那様の王大人死亡確認、じゃなくて生存確認に行きましょう」

「うん。分かった」

 幼子のように頷いてみせる御坂さんを連れて私はバスルームへと戻った。

 

 

 幸いにして当麻さんは生きていた。コゲ条さんと化していたけれど、息はあった。

 普段から電撃を食らっているっぽいので耐性とかできているのかも知れない。

 2人でベッドに運んで寝かせる。

 ちなみにこの時当麻さんはお風呂場で倒れたので裸のままだった。

 私がパジャマを引っ張り出してきて着替えさせたのだけど──

「なるほど。あれが男子高校生なんですね。初めて見ましたけど、うん♪」

 プロトカルチャーだった♪

「嫌ぁあああああぁっ!! 恥ずかしいから口に出さないでぇ〜〜っ!!」

 御坂さんは両手で顔を隠しながらイヤンイヤンと首を振っている。

「でも、御坂さん。旦那様とお付き合いしたら……」

「その時はその時なのっ! でも今はダメぇ〜〜っ!!」

 エロい妄想ばっかりしている割に御坂さんはとっても初心だった。

 だけど、その時はその時と覚悟を既に決めている所はやっぱりこの人すごい。

 

「じゃあ、旦那様が目覚めたら御坂さんはちゃんと自分の気持ちを伝えてくださいね」

「つっ、伝えるって。佐天さんはどうするの?」

 時計を見る既に10時を回っている。

「そうですね。今日の所はバスルームにでも泊まっていくことにします。そういう訳で私はおふたりの時間を邪魔しませんのでどうぞお楽しみを。むっふっふっふ」

 やらしい含み笑いを発しながら部屋から出て行く。

 この時間に出歩くとアンチスキルに補導されそうだし、2人の邪魔をする気もない。

 そして、2人がどうなるのか見てみたい気もする。

 そんな理由でバスルームに移動して。2人の今後をこっそりと聞き耳立てさせてもらおうと思う。

「ちょっ。ちょっと待ってよ! こ、こんな状態で2人っきりにされたら……」

「レールガンで旦那様のハートをしっかり撃ち抜いてあげてくださいね。五番目の勝負も私の不戦敗で良いですから。それじゃあおやすみなさいで〜す」

 手を伸ばして引き留めようとする御坂さんをすり抜けてバスルームへと入っていく。

 電撃によって前衛芸術空間と化したこのスペースが今夜の寝床となった。

 

 

 それから数十分、いや、数時間経った頃。室内の2人の会話が私の耳に届いた。

 

『御坂が……ずっと看病してくれたのか? また膝枕してくれるなんて俺は役得だな』

『アンタに……当麻にどうしても聞きたいことがあるの』

『何だ?』

『当麻はさ…………私のこと、好き?』

『そ、それは……っ』

『当麻の、本当の気持ちが知りたいの。だから、ちゃんと答えて。お願いっ』

『俺は…………御坂のことが……好きだ』

『本……当……っ?』

『ああ。今日気付いちまった。上条当麻はその生涯の全てを御坂美琴と共にありたいってな』

『そう……なんだ』

『御坂は、どうなんだ? 俺のこと、好きか?』

『うん。大好き。私もずっと当麻と一緒にいたいって思ってるもん』

 

 私は目を閉じて眠りの世界に身を任せることにした。

 これ以上恋人達の甘い語らいを聞き続けるのは野暮ってものだと思うから。

 一仕事終えたことに安堵感を覚えながら私は意識を手放したのだった。

 

 

 

-12ページ-

 

エピローグ

 

 目が覚めた時、私が真っ先に覚えたのは違和感だった。

 頭に覚えるのは何だかゴツゴツして固くて温かい感触。

 目を見開いて見るとすぐ目の前に男の人の顔があった。私の大好きな年上の少年の顔が。

「そう言えば昨日はあのまま寝ちゃったんだっけ」

 当麻の顔を見て昨夜のことを思い出す。

 昨夜私は当麻と恋人同士になった。当麻に好きだって言ってもらえた。私も好きだってようやく言えた。

 それで嬉しくて2人でずっとお喋りしていた。で、喋り疲れて当麻に腕枕してもらいながらそのまま寝てしまったというわけだ。

「私……当麻の彼女になったんだもんね」

 自分の胸に嬉しさと誇らしさがいっぱいに溢れてくる。

「えへへ。私が貴方の世界でただ1人の彼女なんだぞ」

 寝ている当麻の顔に向かって囁きかける。

「まったく。彼女の目の前でこんな無防備で幸せそうな顔しちゃってさ」

 ゆっくりと顔を近付けていく。

 昨夜は恋人同士になれた嬉しさでついお喋りに没頭してしまった。だから、恋人同士らしいことを何もしていない。

 ほっぺにキスするぐらいなら、当麻が寝ていても許されるんじゃないかと思う。

 恋人同士なんだし♪

「恋人ならではの起こし方を食らいなさいっての♪」

 目を閉じて当麻に顔を近付けていく。

 

「昨晩はお楽しみでしたね、御坂さん。うふふふふ」

「ヒィイイイイイイイイィっ!?!?」

 突然背後から声がした。ビクッと体を震わしながら目を開けて振り返る。いやらしい笑い声を発しながら佐天さんが後ろに立っていた。

「おっ、お楽しみなんてしてないわよ! 私たちはまだ、清い関係なんだからっ!」

「恋人同士になっておめでとうございますって意味だったんですけどね。御坂さんのエッチ〜〜♪」

「…………もう勘弁してください。私の負けでいいですから」

 土下座して謝る。心理戦で佐天さんには敵わない。

「まあ、からかうのはこれぐらいにして、旦那様にはそろそろ起きてもらわないと。私達も帰って登校する準備しませんと」

「今何時なの?」

「もう7時過ぎてますよ。ほら」

 佐天さんはテレビを付けた。

 

『次のニュースです。地中海を食らい尽くしたインデックスさんが十字教諸派を併合して新たに食い倒れ教団を設立しました。インデックス代表は[次はこの世の全てを食らい尽くすんだよ。そして私は東西南北中央不敗スーパーグルメになるんだよ! そんなわけで忙しいから50年ほど日本に帰っている暇はないんだよ][シスターちゃん。飲み尽くしも忘れてはダメですよ。そして先生もお供するです]ということです』

 

 画面の片隅に『07:05』の文字と共に送り込まれてきた頭の痛くなるニュース情報。

「何をやっているのよ、あの子は……」

 世界の歴史が変わるニュースをさり気なく目撃してしまった。あのシスター。まさか食欲でヨーロッパを征するなんて……。

「って、悠長にテレビニュース見てる場合じゃないっ! 早く起きなさいよ、当麻っ!」

 当麻の肩をガタガタ揺らして起こす。このままだと3人とも遅刻してしまう。

「うん? 美琴? 目覚めのチューはしてくれないのか?」

「調子に乗るなっ!」

 顔面に向かって思い切り枕を投げつける。

「わっ、私たち。まだ、キスしたことないでしょうがっ!」

「いや、だからこそ記念すべき初キスを今……」

「ムードぐらい考えろっての!」

 顔面に乗っかっている枕を思いっきりグーで殴る。

 私の彼氏がこんなにKYな人間で心底泣けてくる。

 

「いいんですか? 未来の旦那さんをそんな無慈悲に扱っても」

「こんな奴に使う神経なんてないっ!」

 キッパリと言い切る。譲歩の余地なし。

「じゃあ、私が上条さんをもらっちゃってもいいですか? 御坂さん気を使わないなら」

「当麻は誰にも渡さないわっ!」

 再びキッパリ。譲歩の余地は寸土もなし。

「愛のない囲い込みってやつですね。上条さんはそんな御坂さんに疲れて私に癒しを求めて接近しやがて男女の愛へと……」

「俺も優しくて胸の大きな佐天さんに癒されたいなあ」

「浮気したら……2人とも、焼き炭にするからね」

 体から電気を発しながら2人に言ってきかせる。

「「イエスっ! ユア・ハイネス」」

 2人は直立不動で敬礼してみせた。全身から大粒の汗を噴出させながら。

 私、そんなに怖い表情で言ったのだろうか?

 けれどこの2人を必要以上に接近させるのは危険すぎる。……私より息がピッタリに見える2人だから。

「ほらっ。2人ともボサッと突っ立ってないでさっさと家を出る支度をしなさい」

「「イエス・マム」」

 息の合った敬礼をしながら答える当麻と佐天さん。その仲の良さにちょっとムッとしつつもテキパキと支度を整える。

 特に私と佐天さんは服装がメイド服だ。自室に戻って着替えなおして学校に行かなければならないことを考えると時間に余裕はなかった。

 

 

「ほらっ。当麻。早く出てきなさいよ」

「旦那様〜。あんまり遅いと奥方様に愛想尽かされますよ〜」

「今出て行くってっ!」

 鞄を持った当麻が慌てて玄関へと走ってくる。それから3人揃って玄関を出た。

 で、そこで──

「や、やあ。カミやん。朝からメイドさん2人を連れて同伴出勤とは……男子高校生には重役過ぎるんじゃないかにゃ〜」

 全身ボロボロで髪がアフロになり果てた土御門さんに出会ってしまった。

「つっ、土御門。いつもなら遅刻ギリギリまで寝てるお前が何故ここに?」

 当麻の顔は引き攣っている。きっと私の表情も同じに違いない。

「昨日の夕方に謎の電撃攻撃を食らってそのままついさっきまで気絶していたんだにゃ〜」

「そ、そうか。それは気の毒にな」

 当麻が土御門さんから目を逸らす。逸らした先には私がいる。

 ジェラスして電撃したと素直に言うわけにもいかずに冷や汗を流す。かと言って、黙っているのも……。

 困り果てて土御門さんの顔を見る。すると、当麻を見ながら表情を赤らめていた。

 えっ?

「俺の体は一体どうしてしまったんだにゃ〜? カミやんを、特にお尻を見ているとどうしようもなく全身が滾ってくるんだにゃ〜〜っ」

 土御門さんは当麻を見ながら荒い呼吸を繰り返している。ちょっとこれって!?

「ど、どうしたんだ?」

 当麻が心配そうに土御門さんの肩に触れようとする。

「今の俺に触れるんじゃないんだにゃ〜〜っ!!」

 土御門さんは当麻の手を激しく拒絶した。

「い、今の俺は……カミやんに触られると、どうなってしまうか自分でも分からないんだにゃ〜〜っ!! 俺の中の野獣がっ! 野獣がぁ〜〜っ!!」

 全身をガクガクと震わせる土御門さん。

 うん。ヤバい。この症状はどう見ても……。

 

「初春っ! 近くにいるんでしょ! 姿を現しなさいっ!」

 佐天さんが怒りの表情で周囲を見回しながら怒鳴った。

「さすがは佐天さん。よくわたしが関与していることをお分かりで」

 階段の影から初春さんが出てきた。とても澄んだ瞳をして。

「アンタ以外にこんな魔改造を施す輩がいるかっての」

 佐天さんが毒づく。

「魔改造ではありません。男同士の愛というこの世で最も基本にして崇高な愛の形態について寝ている間にちょっと説かせていただいただけです」

 初春さんは悟りを開いた賢者の様に澄み切った目と声で語っている。

「つまり……初春さんが、私の彼氏を危険に曝そうとしている黒幕なわけね?」

 瞳を鋭くして初春さんを睨む。当麻が男色の毒牙に掛かるようなことになったら、幾ら初春さんでも許せない。

「わたしは以前にも言ったはずです。仲の良い男同士は目を離すとすぐに絡み合って愛し合うと。御坂さんの彼氏さんは、御坂さんの目の届かない所ではこちらの土御門さんと愛し合う生活を送るようになるでしょう」

「そんなこと、私がさせないわっ! 当麻は未来永劫私だけのものなんだからぁああっ!」

 大声で叫び上げる。当麻の頬がサッと赤く染まった。

「フッ。御坂さんはなかなか面白いことを言いますね。世の摂理を捻じ曲げようとは」

 初春さんはニヤッと笑った。

「これからわたしが“真実”に目覚めさせた数多くの男達が御坂さんの彼氏さんの体を求めて襲い掛かってくるでしょう。総受けです。総受け天国です」

「ひぃいいいいいいいぃっ!? なっ、何だよ。今まで戦ってきたどんな奴らよりもヤバいその軍団は!?」

 当麻が全身を震わせる。

「御坂さんは野獣と化した男達の手から彼氏さんを守りぬけますかね?」

 初春さんは顔半分をダークに染めながら笑ってみせている。そんな彼女に対する返答は決まっていた。

「あったり前でしょうがっ!!」

 力強く宣言してみせる。

「私のレールガンは当麻を守る為に培われたもの。今ならそう断言できる。私の全てをもって当麻を守ってみせるんだからっ!」

「御坂さんの力が学園都市レベル5序列第1位、第2位、第7位をはじめとする男たちにどこまで通じるのか。とくと見物させてもらいますよ」

 初春さんは真っ黒い笑みを浮かべると階段へと姿を消していった。

 

「いっ、一体。どうなってんだよ、これは!?」

「漫画で言う所の新章突入ってやつですね」

 当麻の疑問に佐天さんが答える。私も佐天さんの意見に頷いた。

「私と当麻が結ばれるまでが第一部なら、私と当麻を別れさせようとする勢力との対決が第二部になるってことね」

 当麻の顔を見る。お尻を狙われ、ヒロインと化した当麻を守りつつ愛を育むのがこれからの私の使命となる。

「なるほど。つまり俺はレールガンのお嬢ちゃんの敵になるってことだにゃ〜」

「そして私も上条さんの略奪愛を狙うので御坂さんの敵となるわけですね」

 土御門さんと佐天さんが悪い顔をしながら笑った。

「フッ。みんなまとめて相手になってやるわ。私と当麻の愛の絆の強さを思い知りなさいってのっ!」

 大声で宣言してみせる。

 私と当麻が結ばれるのは新たなる戦いの序曲でしかなかった。

 けれど、私は絶対に当麻と離れない。私は当麻が大好きなのだから。

 その誓いを今日も明日も明後日も、これから一生涯守り通していきたいと思う。

「私の本当の戦いはこれからなのよ〜〜っ!」

 メイド服姿で私は熱く熱く自分の想いを口にしてみせたのだった。

 

「…………その、心配しなくても上条さんは美琴さん一筋ですからね」

 

 完

 

 長い間ご愛読ありがとうございました。

 

 

 

説明
レールガンが始まっているようなのでボチボチ載せ
美琴さんがメイド後編

過去作リンク集
http://www.tinami.com/view/543943

とある科学の超電磁砲

エージェント佐天さん とある少女の恋煩い連続黒コゲ事件

http://www.tinami.com/view/433258 その1

http://www.tinami.com/view/436505 その2

http://www.tinami.com/view/442666 その3

http://www.tinami.com/view/446990 その4

http://www.tinami.com/view/454921 その5

http://www.tinami.com/view/459454 その6(完結編)



水着回

http://www.tinami.com/view/463613 美琴「ていうか、一山超えたら水着回とか安くない?」

http://www.tinami.com/view/470293 美琴「ていうか、一山超えたら水着回とか安くない?」♪♪



上条×美琴

http://www.tinami.com/view/496987  

本気or冗談?

http://www.tinami.com/view/499635

本気or仕事?



その他

http://www.tinami.com/view/529962 姫神秋沙 クリスマス奉仕活動とあわてんぼうのサンタクロース
http://www.tinami.com/view/553468  残念佐天さんと残念な仲間たち 満点を目指して
http://www.tinami.com/view/564727 上条さん家のコタツでみかん

http://www.tinami.com/view/567166  美琴メイドin上条家


【宣伝】3月5日、新しく出帆した株式会社玄錐社(げんすいしゃ) http://gensuisha.co.jp/ 
より音声付き電子書籍アプリELECTBOOKで1作書かせて頂きました。題名は『社会のルールを守って私を殺して下さい』です。ELECTBOOKの最大の特徴は声付きということです。会話文だけでなく地の文も声が入っているので自動朗読も設定できます。価格は170円です。使用環境は現在の所appleモバイル端末でiOS6以降推奨となっています。以下制作です。 作:桝久野共 イラスト:黒埼狗先生 主題歌 『六等星の道標』歌/作詞 こばきょん先生 作曲 波多野翔先生 キャスト:由香里様、高尾智憲様、田井隆造様、坂井慈恵士様、竹田朋世様(皆様 株式会社オフィスCHK所属)発行者 小野内憲二様 発行元 株式会社 玄錐社(げんすいしゃ)。*ダウンロードして視聴できない場合には再度のダウンロードをお願いします。最初の画面では再度課金されるような表示が出ますが、クリックすると無料ダウンロードとなることが表示されます。

無料で楽しめる作品もありますのでアプリだけでもダウンしてくださいね。


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