【東方】従者同士の恋愛事情・第1話Side:Y
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「今日もお疲れ様。また料理のレパートリーが増えたわ。お嬢様も喜ばれるわ。」

「いえいえ、あれくらいなら。というか私も咲夜さんに洋風のお料理教わってるんだから」

 

ここは紅魔館。

の咲夜さんの部屋。

そして咲夜さんの口調がまだ仕事の時のまま。

直後はたいていそう。

でも気がつくと普段というか砕けた調子になる。

その境目を聞き逃すまいと思っているのだけど未だに分からない。

何にでも隙の無い人だ。

 

あ、なんで私が紅魔館のそれも咲夜さんのお部屋に居るのかというと、

以前の異変以来私と咲夜さんは従者同士仲良くなって、というか主同士でも仲良くなってお互いに情報・技術交換するようになった。

といっても主に料理が多いんだけど。

 

つまり私は咲夜さんに和食を教えて、逆に私は洋食を教わるというもの。

ちなみに私はこの案は幽々子様からだろうと思ってる。

いや、ほら食べ物関係なだけにね・・・。

他にも色々と従者としての言動や知識を教わってるのだけれど、お互いの主の性格が違いすぎるので参考程度にしてる。

 

そんな訳で紅魔館に出入りするようになり、今は今日のお務めを終え休憩を兼ねて咲夜さんのお部屋にお邪魔してるという事。

 

咲夜さん曰く、幽々子様と私の関係は主従関係じゃないらしい。

うーん、確かにそうかもなぁ。

だからこそしっかりしなきゃと思ってるのだけど・・・ね。

 

”シュル・・・”

衣擦れの音。

咲夜さんが着替えてるのだろう。

同性なんだから気にしなくてもいいのだろうけど、人の着替えって何となく見てはいけない気がして目を逸らす。

人の、というか今まで白玉楼の中しか知らなかった私は他人とこうしている事自体が慣れないのだけれど。

 

戦ってる時は気付かなかったというかそんなことに気を回してる余裕なんか無かったから当たり前なんだけど、咲夜さんってキレイだなぁ。

背が高くってスラリとして動作というか所作もビシっとしててこう外見だけじゃ無くて内面的なところからキレイ。

キレイというより格好いいという方が近いかも?

と思って居たらいつの間にか着替えが終わったのだろう、咲夜さんが向かいの椅子に座った。

 

それに合わせてついと顔を上げたら咲夜さんと目が合ってしまった。

今考えていた内容の事もあって一瞬ドキっとしつつ曖昧な笑みを返す。

変に思われたかな?

咲夜さんはにっこりとした笑みを返してきた。

これは・・・、判断しづらい。

こういうときは流すに限る。

 

それを察したのかは分からないけどその後は他愛の無い話しをした。

魔理沙が今日は何の本を持って行ったとか。

それをパチュリーさんが怒りつつちょっとニヤけてたとか。

でもってその笑みを小悪魔さんが苦々しく見てたとか。

 

・・・あ、まだ口調の境目見逃した。

むぅ、ちょっと悔しい・・・。

 

ところで紅魔館って修羅場なの?

でも”好き”かぁ・・・。

その感情は分からないでも無い。

というかもしかしたら私にもそれがあるかもしれない。

”かもしれない”というのはまだよくわからないから。

たぶんそうだと思うのだけどでも・・・。

確認するのも怖い気もするし。

 

それを見透かされたのだろうか?咲夜さんが唐突に

「妖夢の好きな人を当ててみましょうか?」

「へ?!な!!ええ?」

 

ふふーんといった表情を浮かべて咲夜さんは唐突に言う。

なにを急に言い出すんだ?!

わ・私の好きな人だって!?

そんなの目の前に・・・、や、まだはっきりわかってないんだけど。

でも逆に言えばそういうこと言うって事は咲夜さんは私が自分以外の人を好きって思ってる事だよね?

裏返せば咲夜さんは私の事を好きじゃ無いって事に・・・?

あ・・・、なんか暗い気持ちがなんだか・・・。

 

とりあえず俯くしか無い私を見て照れてると勘違いしてるのだろうか?

かまわず喋り続ける。

そして咲夜さんはそれまで頬杖をついてた右手を口にあてて考え込む。

いや、これは絶対フリだ。

 

「んーとねぇ・・・。同じ刀というか刃物使いでぇ、髪は白くて短め・・・。」

 

誰の事だろう?

頭の中に色々な顔が浮かぶ。

 

「でもって同じ従者という立場で・・・」

 

ん?あれ?

と思ってつい顔を上げてしまう。

 

「背は割と高めかなぁ?でも胸は・・・グスン」

そう言いながら咲夜さんは自分の胸に手を当てながら泣くフリをする。

 

それを見て

思わず、・・・本当に思わず。

「胸なんて関係ないです!咲夜さんはそのままでスラッとしてて格好いいと前から思ってそんな咲夜さんが・・・あ!」

 

私は何を口走ってしまったんだろう?

これでは咲夜さんが好きって言ってるものじゃない。

や、それは間違いじゃないけど、でもまだ自分の中では分かってないし、それにそんな事言ったら咲夜さんが迷惑に・・・。

でも、あれ?

私が好きな人をって言いつつ自分の事言うって・・・

え!?

そうなの!?

ちょ・ちょっと待って!!

まだ気持ちの整理が、てか元々分かってないところに更に混乱が

あう、自分でも分かる位顔が赤くなってる。

それに気付いた瞬間、なんだか余計に恥ずかしくなって両手で顔を覆う。

 

しばし沈黙が流れる。

たぶん実際には数秒だろうけど、私には何10分にも感じた。

まだ顔が赤いので手を覆ったままチラリと目線だけあげる。

咲夜さんの顔を見る為だ。

 

なんていうんだろう?

というかこれが”ドヤ顔”って言うんだろうな。

むしろそれの見本?

ふふーんとにやけつつしてやったりな表情。

 

うう、恥ずかしい。

このあと何を言ったらいいんだろう?

と考えてると咲夜さんの方から語りかけてきた。

 

「妖夢は隠し事が下手よねぇ。まぁそこがかわいいんだけどぉ。」

 

途中までちょっとだけむっとなったが後半のある単語に反応してしまい、ますます顔が赤くなった。

咲夜さんが私の事”かわいい”って、えと、ちょっと嬉しい。

って、喜んでる場合じゃないんじゃ?

というか従者が感情まるわかりって問題あるんじゃ?

と、無意識的現実逃避を始める。

こんなことではいけない。

 

「さ・咲夜さんだってかわいいじゃないですか!!」

 

って、これ反論になってないよね?

慌ててる思考の中にも冷静なツッコミを自分にいれてる。

 

「あら?さっきは『キレイ』って言ってくれたのにこんどは『かわいい』?どっちなのかしらぁ?」

 

私の顔をニヤニヤしながら言う。

って、あれ?これもしかして”詰み”ってやつなんじゃぁ?

素直に負けを認めた方がいい?

 

うん、もう認めよう。

全部。

 

「ど・どうして私が咲夜さんを好きだってわかったんですか?!」

 

認めると言いつつ質問を投げかけてしまうのはまだ素直になりきれてないな。私。

でも咲夜さんはそんなこと気にせず

 

「んー?それは見てれば分かるというか・・・ねぇ・・・。まぁ、何となく伝わってきたって言う方が近いかな?」

 

「へぇー、そんなに私の事見てたんですか?」

 

わざと意地悪に聞いてみた。

ちょっとした抵抗。

だから認めたんならそういうことやめればいいのに。

自分で未熟な部分に気付いてしまう。

そんな私の中の葛藤を知ってか知らずかあっさりと言う

 

「だってぇ、好きな子の事はずっと見ていたいと思うじゃ無い。」

 

この人なんて事を爽やかに言うの?!

って、え?”好きな子”??

これって私の事よね?

てことは咲夜さんも・・・?

ええ!?

 

元々混乱状態な頭の中は更に混乱に・・・。

というか混乱を通り過ぎて真っ白に。

少なくとも一瞬は思考停止になってた。

そして気がついたら顔を覆ってた手は降りてて、目を見開いて咲夜さんを見つめてる。

 

「ふふ、そんなに情熱的に見つめないでよ。さすがに照れてしまうじゃない。」

 

と言われて凝視してたことに気付き、そしてちょっとだけ冷静さを取り戻した頭で最大の疑問を聞いてみる。

 

「てことは・・・あの・・・咲夜さんも私の事・・・を・・・・?」

 

「うん、私も妖夢の事好きよ。で、妖夢は?」

 

って、何を聞き返してるの?この人は。

さっき言ったじゃない。

 

「で?って言われてもさっき言ったじゃないですか?!」

 

「そうだけど、さっきのは話の流れでって感じだったから。

私はちゃんと聞きたいなぁ。」

 

・・・なんていうの?こういうのを”小悪魔的笑み”っていうんだろうな?

ニヤニヤしながら聞いてくる。

 

「咲夜さんは意地悪です。」

 

「えー?ひどい。そんなことないと思うけどなぁ。」

 

「そして策士です。卑怯です。」

 

「だからそんな事ないってば。てか私の悪口ばかり?」

 

「私をからかって喜んでる咲夜さんは腹黒です。きっとSです。」

 

「うう、実は私嫌われてるのかしらぁ・・・、グスン」

 

泣くフリをしながら上目遣いで私を見る咲夜さん。

口元は手で隠れてるから見えないけど、きっとニヤけてるに違いない。

 

ダメだ。

完敗だ。

私が嫌いって言わないのを確信してる。

うん、今度こそ本当に認めよう。

 

「でも咲夜さんの事好きです!」

 

言った!

今度こそはっきり言った!!

そして体を起こして咲夜さんに抱きついた。

といってもテーブル越しだったので頭を抱えるような感じなんだけど。

なんでこんな行動を取ったのか自分でも分からない。

言った勢いと顔が赤くなってるのを見られたくないのと先制攻撃的な衝動?

そんないきなりの行動に対して落ち着いた言葉で

 

「ふふ、妖夢って意外に激しいのねぇ」

 

と言いながら咲夜さんも手を回してきた。

そして頭をポンポンと撫でた。

 

あ、なんか懐かしいな。

まだ小さい頃幽々子さまにもこうして貰ったな。

でもあの時とはまだ違う感じ。

それはきっと気持ちが違うからなんだろうなぁ。

 

頭に撫でてた咲夜さんの手はいつの間にか背中に移動してて、こんどは背中をポンポンとしてくれている。

・・・これも気持ちいい。

 

そうしてる間に気持ちが落ち着いてきたので手を離して座り直す。

 

うう、一旦は消えた恥ずかしさがまた戻ってきた。

顔を上げられない。

 

俯きながら、でも何か言わなきゃと思ってると

 

「さて、公言したところで・・・。」

 

と言ったかと思うとナイフを天井に放った。

そこには小さな紙きれがあった。

よく見ると何か書かれてる。

よく霊夢が持ってるお札みたいな感じだけど、なんか違う。

あ、そうか西洋だとこういう感じなのか。

でもなんで?

 

きょとんとしてる私に

 

「実はね。私たちの関係を気にしてる人達が紅魔館には居てね。それで盗み聞きしてたのよね。」

 

「え?盗み聞き。てか気にして・・・?てことはバレ・・・え?!」

 

一旦は落ち着いた頭がまたパニック状態。

今までの会話聞かれてたの?

私の告白聞かれてたの??

って、それ以前に私の気持ち回りに筒抜け!?

 

「でも、大丈夫よ。呪符は破ったからもう大丈夫。」

 

「あ、はぁ・・・。」

 

何が大丈夫かイマイチわからないけど、でも・・・あれ?てことは・・・?

 

「ということは咲夜さんの今までの言動は盗み聞きしてる人にたいして・・・?てことは本当は私の事を・・・?」

 

今までの事は演技で私をからかっていたんじゃ無いかという疑念が一気に吹き出す。

私の事を好きで無いだけでなくからかって・・・

いや!

それはいや!!

聞きたくない。

さっきとは違う意味でパニックになりかけた、まさにその瞬間咲夜さんの手が伸び、手のひらが私の両頬を包む。

自然、お互い真正面に向き合う形になる。

そしてさっきまでの笑みは消え、真剣な面持ちで言う

 

「さっき私は『公言』って言ったでしょ?つまり紅魔館全体に宣言したようなもの。それだけ本気だって事よ。それだけは分かって。ね?」

 

「あ、はい・・・。」

 

さっき急に沸き上がった黒い物は、現れた時と同じように急に消えて行った。

そして同時に泣きたいようなくすぐったいような気持ちがじわじわと沸いてきた。

変な話しだけど、今頃になってお互いが好きという状況を認識してきたようだ。

それと同時にまた恥ずかしいという気持ちも・・・。

にしても咲夜さんは凄いなぁ。

私がこれだけ動揺してるのに全然冷静なんだもの。

それだけ恋愛に慣れてるのかな?

というかこれだけ素敵な人だもの。

沢山恋愛してきても不思議じゃないよね。

私よりも以前に好きな人が居たという事に気付きちょっとだけ気持ちが暗くなる。

 

ってこれだけ短時間で気持ちが浮き沈みするってなんなの?

恋ってこんなに大変なものなの?

もうこの際だから開き直るけど、初めてなのよ!恋愛なんて。

正直どうしていいのかわからないのよぉ。

ふん!!

と、なぜか切れ気味になってる私。

 

どうしていいかわからないので咲夜さんの顔を見る。

でも目を見続けるのはなんか照れてしまうので目線をそらす。

そして照れ隠しの観察。

髪、こうしてみるとちょっと堅そう。案外寝癖が大変そう?

あ、鼻はそんなに高くはないかな?でも整ってるから顔全体が凜々しい印象になるのかな?

唇柔らかそう・・・。

ん?耳・・・なんか赤い?

うん、やっぱり赤い。

なんでかなぁ?と考えてたら無意識に口にだしてたみたい。

 

「みみ・・・あか・・・い・・・?」

 

その瞬間咲夜さんは体を起こし、そしてちょっと後ずさる。

私の頬を覆ってた手の平は今は自分の耳を覆ってる。

 

この時になって自分が無意識につぶやいてた事に気付き、何かを言おうと思ったその時気付いた。

咲夜さん顔赤い?

あれ?今まで赤くなかったよね?

てことは本当は照れてた?

 

そう思った私は今度はちゃんと口にだして聞いてみる。

 

「顔真っ赤ですよ?もしかして咲夜さんも・・・」

 

それを聞いた瞬間顔をぷいって横に向けてぼそぼそと咲夜さんらしからぬ小声でつぶやく

 

「そりゃぁ、私だって確信があっての告白じゃなかったし、それにその・・・恋愛なんてそんなに・・・。

もう、これ以上いわせないでよ!」

 

私は吹いてしまった。

いつのも咲夜さんとは違う咲夜さんが見れたからだ。

そして恋愛経験はそんなに無いって言ってた。

嫉妬する相手が減った。

や、そもそも嫉妬する事じゃないんだけどなんだろう?なぜかちょっと心が軽くなった気がした。

そして・・・

 

「咲夜さんさっき私に『キレイなのかカワイイなのかどっちなの?』って聞きましたよね?」

 

「う・うん・・・?」

 

「やっぱり咲夜さんは『カワイイ』だと思います!」

 

「あ、えと、ありがと・・・?」

 

「正確には照れた咲夜さんはカワイイです!!」

 

「妖夢の意地悪!」

 

一瞬の間の後、二人で笑いあった。

おかしいとか嬉しいとか照れとか色々混じった笑いだった。

 

ひとしきり笑いあった後、目があった瞬間、咲夜さんの顔が近づいてきた。

私は動いてはいけないようなものを感じてただ近づいてくる顔を見つめていた。

そして・・・

 

そして咲夜さんの唇が私の唇に・・・。

私の脳裏にさっき見てた唇が浮かんだ。

あの「柔らかそうだなぁ」って思った唇だ。

うん、やっぱり柔らかい。

 

って、え?これってキ・キス!?

キスだよね?!

初めてなのにー・・・

って、咲夜さんならいいか。

むしろ咲夜さんで良かった。

でも・・・でも・・・・・・いきなりすぎる。

恥ずかしい!!

 

唇が離れたあとどういう顔をしていいか分からずまごまごしてると

 

「妖夢もカワイイよ。そのきょどきょどした感じ。」

 

「咲夜さんの意地悪!からかわないでください!!」

 

「あら?私はからかうつもりは無いのよ。そんな顔を見たらついね。」

 

そう言いながらまた顔が近づいてきた。

私は今度はそっと目を閉じ唇が触れるのを待つ。

説明
n番煎じ承知で投稿。

咲夜視点できました→http://www.tinami.com/view/569295

さくみょんイチャラブが好きすぎて書いてしまいました。

一応これの咲夜視点のも続きもR−18(Tinamiではあげれませんが)も頭の中にありますがあげるかは今のところ未定。
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東方Project 魂魄妖夢 十六夜咲夜 さくみょん 

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