ゼロの使い魔 〜魔法世界を駆ける疾風〜 第二十五話
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決闘騒ぎから三日が経ち、普段とは少しだけ違う日常が再開される

 

普段とは違う点

それは義父上と義母上、エレンにカトレアとマチルダ、テファが学院にいることだ

 

―――最も義父上と義母上は学院長とアルビオンに関する密談で、なかなか顔を合わせる事も無かったが

 

エレンとカトレアは使い魔たちの世話を

マチルダは以前に秘書をしていた事から、学院長が密談の為に出来ない仕事を代わりにこなしている

テファは今、俺の横で授業を見学している

 

「最強の系統を知っているかね?では…ふむ、ミス・ツェルプストー」

 

今受けている授業は風の魔法教師、ギトーの授業だ

ギトーは長い黒髪に漆黒のマントを靡かせている男である

不気味な風貌からか、その尊大な物言いからかは不明だが生徒からは人気が無い

 

「『虚無』ではないんですか?」

「伝説の話をしているわけではない。もっと現実的な答えを聞いているのだ」

 

いちいち引っかかる言い方をするギトーにカチンと来たのか、キュルケは突っかかる

 

「『火』に決まっていますわ。ミスタ・ギトー」

 

キュルケは髪をかき上げ笑みを浮かべてそう言い放つ

 

「ほほぅ、どうしてそう思うかね?」

「全てを燃やしつくせるのは、火と情熱。そうではありませんこと?」

「残念ながら、そうではない」

 

ギトーは腰に刺さっている杖を抜き放ちながら言う

 

「試しに、君の得意な『火』系統の魔法をぶつけてきたまえ」

 

キュルケだけでは無く教室の全員が耳を疑った

この教師は何を言ったのか、と

 

「どうしたね?君は確か『火』系統が得意な筈ではなかったかね?」

 

挑発するような言葉、いやギトーの言葉は明らかな挑発だった

 

「火傷では、済みませんわよ?」

 

目を細めてキュルケは問う

その言葉には実力に裏付けされた自信が垣間見える

 

 

 

―――しかし俺は思った

確かにキュルケは優秀なメイジである

それこそ、このトリステイン魔法学院で五指に入るほどの

 

 

しかし、だがしかしだ

トライアングルクラスが、スクウェアクラスのメイジに勝てるのか?

それも真正面からただ魔法を放つと言う、一回勝負どころか一技勝負

ギトーは強い、が貴族メイジの例に漏れず慢心している

策を弄せば相手のクラスが上であろうと勝てるだろうが―――

 

 

 

そんな思考をしている間にも話は進む

 

「かまわん、本気で来たまえ。その有名な、ツェルプストー家の赤毛が飾りではないのならね」

 

ここまで言われるとキュルケとしても本気を出さざるを得ない

キュルケの顔から笑みが消え、胸の谷間から杖を抜く

豊かな赤毛がぶわぁっと炎の如くざわめき、逆立った

杖を振り呪文を詠唱すると小さな火の玉が現れた

ゆらゆらと揺れ動く火の玉はキュルケが詠唱を続けていくにつれてどんどんと大きくなる

詠唱を終えたときには直径1メイル程の炎の玉となった

 

 

キュルケが手を大きく振るのと同時に、轟々と音を立てて燃える炎の玉がギトーへと撃ちだされる

唸りを上げて自らへ迫る炎を避けようとする仕草を見せずにギトーは先ほど抜いた杖を振るう

 

 

 

空を裂く風は一瞬いとも容易く炎の玉を掻き消し、その勢いのままキュルケをも吹き飛ばそうとする

 

 

 

ガタァン!!と大きな音を立て、椅子が吹き飛ばされる

しかしそこに座っていた筈のキュルケはいなかった

皆が彼女を探している中ギトーとタバサ、そしてテファだけは天井の一点を見つめていた

 

「…何をしているのかな。ミスタ・ナミカゼ?」

 

天井を見つめたままギトーが声を発する

生徒達は疑問に思い、クエスチョンマークを浮かべるが、上から聞こえる声で疑問は氷解する

 

「いえ、あのままではミス・ツェルプストーが怪我をしてしまう恐れがあったので、勝手なことですが横槍を」

「まったくですな。今は私の授業中です。勝手な行動は慎んでいただけますかな?」

 

天井にはキュルケを小脇に抱えた俺がぶら下がっていた

その俺に対してギトーは軽い皮肉を言う

 

「すいません。このままだとトリステインの外交問題に発展しかねないと思ったので」

「外交問題?」

 

ギトーは怪訝な顔をして俺の話を聞く

俺の腕の中のキュルケが少し声を上げかけたが、微笑みながら口に指を当て喋らないようにと言うジェスチャーをする

 

「ええ。知っての通り彼女はゲルマニアからの留学生です。その留学生を魔法学院の教師が傷つけたとなればどうなるか、お分かりですよね」

「…………」

 

事ここに至りようやく自体の重大さに気付いたのか、ギトーは顔を青ざめる

 

「ま、今回は未然に防ぎましたが、次回から気を付けて頂ければそれで手打ちにいたしましょう。ミス・ツェルプストーもそれでいいですね?」

「え、ええ。わたしは特に怪我もしてないし、いい思いも出来たしそれでいいわよ」

 

キュルケの言ういい思いが何かは分からないが、テファとルイズが不機嫌なことから推測は出来た

しかし口にも顔にも出さずに言葉を続ける

 

「ミスタ・ギトーは如何ですか?その条件でよろしいでしょうか」

「………ああ。それでいい」

 

苦虫を噛み潰したような表情で渋々同意するギトー

そしてぶら下がりっ放しだった事に気が付き、ゆっくりと天井から落ちてキュルケを座らせる

その際にウィンクを飛ばされ、耳元で『ありがと。ダーリン…』と囁かれ色々と危なかった

 

 

 

静かになった教室に、勢い良く扉が開く音がガラッと響く

扉を開けたのは緊張した面持ちのコルベール先生

だが彼は妙に可笑しい格好をしていた

頭にはいつもの輝きは無く、代わりにロールされた馬鹿でかいカツラを被っている

この時点で教室のみんなは笑いをこらえていた

中には我慢できずにブッと吹き出してしまった者もいる

見るとローブの胸にはレースの飾りやら刺繍やらで飾り付けられていた

マチルダが学院に来たからめかしこんでいるのだろうか?

 

「ミスタ?」

 

ギトーが眉を顰める

 

「あややや、ミスタ・ギトー!失礼しますぞ!!」

「授業中ですが」

 

コルベール先生を睨みながらギトーは短く言葉を紡ぐ

 

「おっほん。えー今日の授業は全て中止であります!」

 

彼のはなった言葉に生徒達から歓声が上がる

歓声を抑えるように両手を慌しく振りながらコルベール先生が続ける

 

「静かに。えー皆さんにお知らせですぞ」

 

もったいぶりながら彼は仰け反った

仰け反った拍子と先ほど両手を振った所為か彼の頭から巻き髪のカツラがずり落ち、輝かしい頭が現れてしまう

教室中は既にくすくす笑いが溢れていた。まだ我慢している生徒もいたが、殆どが陥落寸前だ

そこにタバサが爆弾をぶっ込んだ

 

「滑りやすい」

 

ぽつっと呟いた言葉だが、タバサの声は良く通る

すなわち教室に響き渡り少しの間だけ静寂が訪れる

静寂の後、教室中が爆笑に包まれた

中には腹を押さえながら爆笑している者も、笑いすぎて呼吸困難になってしまっている者も見える

キュルケはタバサの肩を叩きながら何事かを言っている

笑いをこらえながら言っているためか、その言葉は途切れ途切れだ

 

「あなた、たまに口を開くと、言うわね」

 

コルベール先生が何事かを怒鳴っているが、爆笑の渦に呑み込まれて良く聞こえない

しかしその剣幕に驚いたのか教室はやっと静かになり、彼がめかしこんでいる事と授業中止の理由が明かされた

 

『魔法学院にアンリエッタ姫殿下が訪問する』

 

その思わぬ吉報にまたも教室が沸く

ルイズまでもがパァッを笑顔を咲かせる中、俺は一人だけ渋い顔をしていた

 

「(さて。姫が来ると言う事は当然、衛士隊のワルドも来ると言う事だ。気を引き締めなければ…。しかし原作どおりに進むのか?原作ではあちらについていた((マチルダ|フーケ)))は此方についている。不安要素に事欠かないなぁ…」

「ハヤテ、どうしたの?顔、怖いよ」

 

俺が厳しい顔をしていることに気付いたのか、テファが顔を覗き込んでくる

その無邪気な笑顔に勇気付けられ、一層気合を入れる

 

「大丈夫。ちょっとした考え事だから」

「気分が悪かったら言ってね?わたしも心配だし、姉さん達だって心配するから」

「ハヤテ?ほら、貴方も正装をしなさい!姫様が来られるのよ!」

 

うん、と首肯して再び気合を入れる

アルビオンの攻略は彼女達を守るためにも最優先だ

失敗は出来ない。そう心に決めてルイズの呼びかけに応えた

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さてお待たせいたしました。第二十五話です

現在ハヤテはワルドに対して警戒度が75%位です

この世界が原作どおりに進むかも分からない、でも警戒しなければ最悪の場合…

といった感じとなっております

 

さて次回の投稿をお待ちください

説明
第二十五話です。お楽しみいただければ幸いです
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コメント
いえ、まだですねw今は某烈風がアルビオンの事で説教に参加できないので、時期を見計らってますwww(ディアーリーズ)
嫁から前回のことは説教されたのかな?(ガルム)
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