超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編
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「まぁ、((5%|・・))だとこのぐらいか」

 

黒紅の炎が空を焼いている情景を見上げながら、空は呟いた。

空が放った煉獄の猛火の余波は、周囲の木々を刹那に焼滅させ、地面は真っ黒に染まっている。

もし、俺達がもう少し空と離れていたなら、燃える感覚すらなくそこらの灰燼と成り果ていただろう。

空は徐に長太刀を握っていない方の手を空に向けた。

今でも空間を焼いている獄炎、炎熱の斬撃の余波で周囲の物を焼いていた火炎が渦を巻いて、空の手に集まっていき、白銀の鱗をした鞘へと変わる。

金属と金属が擦り合う音が空間に響き、長太刀を鞘に納めた空は周囲を探る様に見渡し、残念そうにため息を吐いて俺達に背後を見せて歩き出す。

 

「ま、待て……!」

 

既に『((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))』の使用時間を超え解除した俺は、震える足を抑えながら、立ち上がる。

空はぴたりと足を止め、微かに顔をこちらに向けた。

 

「僕のことを気にしている余裕はないよ。さっき言ったじゃん僕が消したロボットと同機体がシアンの工場を破壊しますってご丁寧に説明したよ?」

「っ………!」

 

伸ばそうとした手がその言葉に止まる。

信頼の心を抱けない空の言葉が、溶けるように胸に入り込んでくる。

俺の近くにいたネプテューヌは既に変身を解除、アイエフとコンパもモンスターの大群を瞬く間に焼き尽くし、あのロボットを一撃で葬った空を直視して動かない。

空はその様子に、呆れた様にため息を吐いて、体を振り向かせて俺達を見る。

 

「何か、聞きたいことがあるの?」

「なんで、俺達を……?」

「あー……んーー……」

 

俺の質問に頭を抑えて唸る空。

何かを考えているようで、そして言葉を選んでいるのかように、俺には感じられた。

 

「ネプテューヌ……で、いいよね」

「私の名前を何で知っているの?私のファン?」

 

多少、いつものハイテンションはないものの、口調は何時もの通りだった。

 

 

「君の妹に何かあれば、助けてくださいって、土下座する勢いで頼まれたからね」

 

その言葉にネプテューヌの表情が凍ったように止まった。

 

「え、えぇ?……私の…妹…?」

「うん」

 

もういいかな、と言わんばかりの面倒くさそうに顔を歪めている空は、今にも消えてしまいそうに思えるほど急いでいるような、呆れているような表情だった。

 

「あなた、ネプ子の過去を知っているの!?」

「それなりには……だけどね」

「あの!お願いします!ねぷねぷの忘れちゃった記憶を教えてください!」

「やだ」

 

必死のコンパの懇願に空は即答だった。

 

「僕も忙しい身でね。これ以上君たちに時間を割くほど暇じゃないし、義理もない」

「そ、そんな……」

「むしろ、何もかも忘れてしまった記憶喪失者は面倒だ。だって、自分の存在価値が見いだせない。そんな奴に本当の自分を話した所で、それを事実として受け入れれる?その行為は、自分と無関係な……他者の記憶を教え込まれていると同威儀で、それはまるで洗脳だよ」

 

吐き捨てるように空は空を仰いで、話すことは無いと再度俺達に背後に見せて木々の間に消えて行き、黒ずんだ大地には俺達三人だけが残った。

コンパも、アイエフも、俺も、妹がいると告げられ黙って俯いたネプテューヌに視線が行く。何だか気まずい空気が流れる。

 

「………た…」

 

…ん?

 

 

「やったぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

火山が噴火するが如き、ネプテューヌはガッツポーズと声を上げた。

 

 

「ね、ネプ子…?」

「聞いた!?私に妹だって、全然思い出せないけど言われてみれば何だかそんな気がする!どんな娘かなー、やっぱり私に似て可愛いのは絶対だよね!」

「あー……うん、そうだろうな」

 

うん、ネプテューヌのいつものテンションが更に上がった。

自分に家族がいることが、自分を心配してくれる人がいることが、どれほど嬉しいか……俺にはベールがいるようにな。

 

「よーし!何だかよく分かんけど、シアンがピンチらしいから急いで戻ろう!!」

 

元気溌剌な声でネプテューヌは駆けだした。

コンパとアイエフと視線を合わせて微笑み、俺達も急いでネプテューヌの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は走って森林を抜け、ラステイションの町へ戻った。

空の言っていることが事実であるなら、かなりの時間を消費したことになる。

街にはいつもの賑やかな人の川が無く、恐怖から逃げるように人々が建物やらに逃げる。

裏表で暗躍するアヴニールがまさかここまで過激な手段を取るなんて、俺自身の考えを悔やみながらシアンの工場へ向かおうとすると後ろで同じく走っているコンパが、指を差した。

 

「シ、シアンさんですぅ!」

 

必死で逃げる人々を避けながら、コンパが叫び指差す方向には確かに作業着を着たシアンの姿が合った。

シアンは俺達の姿を見ると、縋るように俺達の元まで走ってくる。

 

「はぁはぁ、助けてくれ!……アヴニールのロボ共が…ウチの工場に……!!」

「!ッ…急ぐぞ、ネプテューヌ、アイエフ、コンパ!!」

「「「OKだよ!/了解よ/はいです!」」」

 

顔色が悪く、額に油汗を流すシアンに安全な場所に避難しろと伝え、俺達は更に急いでシアンの工場に向かう。

シアンの工場はここからそれほど離れておらず、直ぐに目的地に到着出来たが、俺達は思わず足を止めた。

ひん曲がった鋼鉄の柱が無造作に突き刺さっている道路、無尽蔵に破壊された機械は火花を上げながら煙を立てている、そして半分ほど天井がない工場からは、俺達を襲ったロボットの顔が現れる。

 

「ひどいです……全壊ですぅ。これじゃもうお仕事できないです……!」

「………許せない」

 

拳を力強く握りしめる。

また空と会ったせいで不機嫌になり先ほどまで黙っていたデペアも怒気を流れ、あのロボットに向けて破壊衝動が思考を支配していく。

黒曜日を顕現させた、手に敵を破壊できる武器の重みを持つ。

 

「アレがこんなコトをしたんだね。許せない!」

 

横で光が満ちる。

そして晴れるその時は、何時も陽気さは消え、冷徹な眼差しでロボットを睨みつける変身時のネプテューヌが、総合技術博覧会に出す予定の武器の試作型の刀を握りしめる。

アイエフも静かに怒気を出しながら、袖から素早くカタールを出し、コンパも巨大な注射器を構える。

 

 

「行くわよ。みんな」

「言われなくても」

「絶対に許せないです!」

「あぁ、ぶっ壊してやる」

 

 

『((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))』は既に使用したので暫くは使えないが、関係ない。

デペアがうんたらかんたら文句を言ってくるが、それはお前の特性上ダメだと黙らせ、小さく息を吸って大きく吐き、意識を鋭く尖らせる。

 

『最優先ターゲット確認シマシタ、目標ヲ撃退スル』

 

ロボットが俺達を確認したのち機械音が放たれる。

お前自身に怨みがあると言っても過言じゃないが、とりあえずアヴニールに生まれたことを後悔してくれーーーそう俺は心の中で呟き、黒曜日の剣先をロボットに向け、ネプテューヌと肩を並べて駆けだした。

『((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))』が使えない以上、俺に空中戦闘はあまり出来ない魔法を使って飛ぶことは出来るが、残念なことに方向転換とか細かいことが苦手だ。

 

「みんな!あのタイプは関節部分が弱い!コンパは狙撃、アイエフは錯乱、一撃は天と地を分けてネプテューヌと俺でやる!あと町中は二次被害が危ないからまずは町の外におびき出すぞ!」

 

巨大な鉄槌に幾多の棘を付けることで威力を増したモーニングスターの打撃を躱し、俺はネプテューヌ達に向けて叫ぶ。

全員はすぐさま頷き、コンパとアイエフの射撃で気を引きながら俺は壁などを利用しながら攻撃を躱しながらシアンの工場から引き離し、街の外を目指して走る。

奴の体格は約5メートルほどで横幅はそれほど大きくはなく、ネプテューヌは空を飛びながら、俺はそこらのビルなどの建物を使いながら出来るだけ何もない空間におびき寄せ、街の外へ誘導させる。

 

「紅夜!」

 

ネプテューヌが叫ぶと同時に、ロボットの下半身の亀の様な甲羅が開き、そこからいくつものミサイルが発射される。

あれがホーミング特性を持っているか、確かめようがない。

地上のコンパとアイエフを狙っているのか、ネプテューヌと俺を狙っているのか、それとも全てを狙っているのか、分からないが、あんな物を町中でぶっ放して非難している人の建物にでも突っ込んで爆発したらどうする気だ!

 

「魔刃閃・翔牙!」

 

魔力で造った針の様に細い斬撃が打ち上げたミサイルを覆うように弾幕を造り、一斉に空に光華と爆音を響きたてる。

 

「やるわね」

「朝飯前だ!」

 

ロボットは不気味に機械音を立てながらブーストを吹かしながら俺達との距離を詰める。

あともう少しで、ラステイションの街から出れる!そう思ったその時だった。

 

「あぅ…!?」

「コンパ!!」

 

コンパが何かに躓いたのか転けた。

元から彼女は後方支援型で、あまり体力がある方じゃない。

あの廃棄工場から急いで走って、更にこのロボットを街から引き離す。全部、全力疾走だったんだここで無理がきたのか!

ロボットは俺達を余所に、コンパが転がったその姿をチャンスと認識して、右手に握る巨大な斧をコンパ目掛けて投擲しようしている。

アイエフがコンパに手を貸して立ち上げるが、遠目でも足から出血が見えて直ぐに走れる余裕はない!

ネプテューヌと俺じゃ、あの手が振り終わるまでの時間を妨害するのは無理だ!

 

「ぐっ、【風を集え、我が意思に従え】!!」

 

手段を考えている場合じゃない!

詠唱を唱え、風の層を足元に造り、一気にコンパ達の元へ飛んだ瞬間、ロボットから斧が投擲される。

横に薙ぎ払うように離れた斧は、横回転しながら身動きできないコンパとアイエフ目掛けて飛ぶ。

 

「紅夜、コンパは!」

「分かってる!」

 

だが、微かに俺の方が早くコンパ達を背にして滑り込む形で入れた!

直ぐにアイエフとコンパを抱えて、先ほどと同じように風を操り、その場から跳躍する!

 

「あ、ありがとうございます……」

「私達…空、飛んでいる…」

 

左右に抱えたアイエフとコンパが呟く。

八階建てのビルを容易く超えるほどの高度、全て見渡せるほどでもないが、それなりにはラステイションの町を見渡せる。

その横に、ブーストを吹かしながらネプテューヌが並ぶ。

 

「そろそろね」

「あぁ…!」

 

既に人気のない街はずれの森林とは目と鼻の先だ。

微かに後ろに視線を泳がせれば、あのロボットが予想通りに追ってきている。それでいい。

 

 

「みんな」

 

俺は呟き、ネプテューヌ達の視線を集める。

そして、深呼吸をしてロボットを睨む。

 

 

「あいつをスクラップにする時間だ。存分に暴れよう」

 

今度は俺達の番、反撃の時間だと俺は黒曜日を握りながら宣言した。

 

 

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