超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ラステイション編
[全1ページ]

「あの空を誘いだすのか……」

『結構、あいつは単純だから簡単だよ』

 

俺は何をするんだろうとデペアの指示に人気のない場所……最初にロボットに襲われ、空が廃棄工場ごと焼き尽くした場所へやってきた。

あの煉獄の火炎の影響で、周囲は黒く焦げており少し指で恐らく((石だった|・・・・))ものを拾い上げて少し力を入れて握りしめるとボロボロに崩れていく。

全てを灰燼と化したあの斬撃、それでもあいつはこの惨状を見ながら((5%|・・))だと呟いていた。

あの炎を纏う太刀と空の力で巻き起こされたこの火炎が両方本気を出した時、もしかしら星規模までの威力を秘めているかもしれない。

 

「はぁ、俺はあんなチートマンとどんな関係なんだ?」

 

思わず零れる疑問。

だけど、デペアは聞かないふりをしているのか下手くそな口笛を吹いている。……聞いても答えるつもりはないという意思表示か。

俺としても、あのなんというか胡散臭い言動の空にあまり信用できないが、あいつと少なからず関係を持つデペアが提案しことならば、とりあえず懸けてみよう。

あのあと、予備策としてアヴニールのメカ型モンスターからモンスターの神経で作り出した生体基盤というのを手に居れば、アヴニールと国政院を問い詰められるらしくネプテューヌ達はそっちに行っている。

俺は、デペアに従い空を呼んで見積書を手に入れることが先決だ。

 

「それじゃ、方法を教えてくれ」

『Ok、それじゃあまずは手首を思いっきり斬って』

 

オーケー、分かった。

黒曜日を量子から大剣に変え、それを手に俺は手首にーーーって!!

 

「何をする気だ!?そんなことしたら周囲に血に飢えたモンスターを呼ぶぞ!俺の回復能力でも思いっきり斬ったらしばらくは使い物にならないぞ!!」

 

思わず流されそうなった!。

黒曜日を手首から離して手甲から出現したデペアの体の一部である宝玉に怒鳴る。

 

『大丈夫だよー。ニヒルが素早くやればモンスターが絶対に来ないから』

「……聞いていいか?」

 

何がどう大丈夫なのか、分かんないまま俺は頭を掻きながら宝玉を見つめる。

 

「お前は一体、何をするつもりだ?」

『えーと、簡単に言えばラステイションを人質にしまーす☆』

 

 

…………。

 

…………。

 

…………はぁ!?

 

『いや、下手すればゲイムギョウ界になるのかなぁ…?それはニヒルの力量になるけど……』

「待て待て待て待て待てぇ!!意味が分からない!!」

『まぁまぁ、ギャルゲーで言えば比較的安全ルートを歩くと思ってよ♪』

 

どこが!?ラステイションを人質とか、世界を人質とかどこに安全性があるの!?

それと手首を斬るのとなにの関係あるんだ!?

 

『やろうとしているのは、誰にでも媒体と生贄さえあればできる召喚術さ』

「それに血が必要なのか……?」

『正解ー♪』

 

子供の様な無邪気さを感じる声音で明るく褒め称える。

頭が痛くなるのを感じながら、俺は口を開く。

 

「人質なんて……そんなことは出来ない」

『なんで?』

「それは脅しだ。確かに俺は空という人物を良く思っていないかもしれないがだからと言って……」

 

俺からすれば、それは卑怯な行いだ。

別に善や正義を語るつもりはないが、それをお前のように笑いながら出来る程、俺はおかしくはない。

 

『ーーー((僕はゲイムギョウ界の味方だし|・・・・・・・・・・・・・・))』

「……!」

『あいつが言っていた言葉だ。真に遺憾だけどあいつとはそれなりの付き合いだ。だから言葉には絶対な意思を感じることが出来た。あいつ自身嘘を嫌っている性格だし、僕達がするのは失敗を前提とさせた召喚術さ……大丈夫、あいつなら絶対に光の速さ以上のスピードで阻止してくるさ』

「……それじゃ、まるで俺達が悪人だな」

『アキャキャキャキャ☆』

 

また、気に障る笑い声を上げるデペア。

大きく息を吸って吐いて、自分の手首を見つめる。

俺は断じて((被虐性欲|マゾヒズム))ではない、総合技術博覧会までにはなんとしてもアヴニールと国政院をなんとかしなければならない。

 

「……召喚するって言っていたよな。生贄は俺の血って言うのは分かったが、触媒は?」

『ん?それも問題ないよ。触媒は君の((体の中|・・・))にあるからね』

「……記憶喪失前の零崎 紅夜が持っていたのか」

『うん、そうだね』

 

黒曜日を見た。

漆黒の幾多のモンスターを葬ってきたとは思えない美しい刃に映ったのは俺だ。

一つため息を吐いて、気を強く持ち、黒曜日を逆手に構えてその刃を左手の手首に当てーーー思いっきり引いた。

 

「−−−−ッッッ!!!!」

 

噴き出す鮮血。

焦げて黒色になった大地が紅に染まっていく。

今まで幾度となくモンスターと戦ってきた。手首が深く斬れる以上の怪我もしてきた。

だから、これぐらいの痛みぐらいは我慢できる。けど、デペアさすがに大量出血が続けば俺の体が持つか分かんないぞ!

 

『黒曜日を地面に突き刺して』

 

ぐっ……心配事一言もなしかよ……。

逆手に構えたままの黒曜日を血で汚れた大地に突き刺す。

同時に、左手と右手限定で『((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))』が顕現され左手の出血を圧縮して、荒々しい黒色の籠手から黒曜日を通してデペアの力と同時に『何か』が注がれていき、俺の血が操作されていくように俺を中心に円を造り、思わず吐き気をがする文字が刻まれていく。

 

 

『Huんguるい Muぐるuなふ 九とぅruふ 

ruルいエ ウが=naぐル ふtaぐん!』

 

デペアは、妙な歌らしきもの詠い始めた。

ガリガリガリと猛スピードで削らされていく俺の魔力。

それは、ヘドロが波となって襲い掛かってくるような感覚であり、俺は気づけば口が開けなくなってしまった。

 

『Huんguるい Muぐるuなふ 九とぅruふ 

ruルいエ ウが=naぐル ふtaぐん』

 

何度も声を出そうとするが、吐かれるのは空気だけだ。

念話で必死にストップ!と叫ぶが、聞こえている筈なのにデペアは聞こえないようにまた呪文を詠う。

いつの間にか、耳に届いていたはずの風の音が死んだ。

血の臭いで寄ってくると思っていたはずのモンスターの気配は全くない。まるで、今ここの空間はゲイムギョウ界ではない異世界にいるような錯覚に陥っていく。

頭の中を冒涜的な文字が流星の様に現れて、消えていく。

 

『Huんguるい Muぐるuなふ 九とぅruふ 

ruルいエ ウが=naぐル ふtaぐん!』

 

ーーーここは、祭壇。

薄れていく意識の中で、結論が出た。

悍ましい、禍々しい、理解できない恐怖が形となった絶対悪が降臨するための場所。

膨れ上がる妖気、空間が次元がねじ曲がっていく。

薄らとそれは影となって大地を覆い始めていく。

この世界を包まんとする支配欲が軋んだ空間から生命エネルギーを犯す悪臭を溢れだせる。

今まで戦ってきたモンスターがゴミのように思えるほどの存在感、恐怖と悪で紡がれた化物、それは深き海淵に自分の領地と共に封印されし者の『影』がーーーー

 

 

 

「なにやっとんじゃぁぁぁぁぁ−−−−−!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

ドゴォォォォォォォォォン!!!

 

天地が振れると錯覚するほどの轟音、白金の閃光が『影』をぶん殴った。

『影』は、その悲鳴を上げその巨大な質量は、木々をなぎ倒し地面に巨大なクレーターを作った。

その衝撃で吹き飛ばされそうになった俺だが、地面に突き刺した黒曜日のおかげでなんとか耐えることが出来た。

 

『おぉ、来た来た♪』

「対邪神殲滅術式解放!光明な世界に汝邪悪!住まう場所無し!虚無の彼方へ葬る剣は、断罪を下す!」

 

神秘的な優しい光が視線を覆う。

ボロボロな俺の体を包むような温かい光。

邪悪を祓う為に顕現させる約束された名状しがたい剣を白金は手に取る。

 

 

「ウルタール・クルセイダーァァァ!!!!!」

 

無垢な一閃。

暗黒を切り裂き永劫に封じる窮極の十字剣閃。

朦朧とした意識の中で知らないことが次々に溢れだし、消えていく。

あの『影』を読みだした際に消費した莫大な魔力に俺は意識が消えかかっていく。

 

そして、最後に俺が見たのは白金の右手に刻まれた中心に燃える柱が描かれた五芒星の刻印だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………知らない天上だ」

 

目が覚めると俺はベットの上にいた。

掃除が行き届いているのかとても綺麗な木材の部屋で棚にはア行からワ行まできちんとしたゲームのカセットが並べられている。

目を引くほどの大きさのテレビ、確定は出来ないが多分84インチの大きさ。(良いなぁ)

体を起こそうにも、指ひとつ動かせない程の疲労感と虚無感に襲われ俺は、首を動かして窓から見える景色を確認すると、重厚な工場が幾つも立ち並んでいる光景が目に映った。……ここは、ラステイションなのだろうか。

暫く、ぼうっと景色を見ているとドアの開く音がしてそこからいい匂いがする小なべを持った純白のコートを纏った夜天 空が入ってきた。

 

「起きた?」

「あ、あぁ……」

 

呂律の回らない返事に通じているか不安だったが、空は微笑んで小なべを俺が寝ている傍の机に置いて、椅子を俺の隣に移動させて座る。

 

「体調は?」

「すこぶる悪い……」

「にゃははは……それは、そうだ」

 

バカなことをしてくれたと呟いて、むにゅーと俺の頬を引っ張る空。

反抗したくても、指一本も動けない状況なのでされるがままだ。

 

「本来なら、数百人の魔術師と数千の生贄でようやく召喚できるかできないかの邪神を呼ぼうとしたんだ、君が罪遺物であることを除いても……全く自殺行為に等しいよ」

 

ぷんぷんと擬音を言いながら腕を組む空。

なんだか、とんでもないことをしてしまった……。

 

「あれは本来、適切な星辰の元、わずかな時間だけ封印が解かれる物なんだ。けど、この世界にはそもそもあっちの世界の星辰は関係ないから、封印なんて規制はなく最初から俺TEEEE状態で呼んでしまうんだ」

「……そんなに危険なのか…?」

「もし、僕が止めずあのまま完全体としてこちらの世界に降臨してしまったのなら……精神ショックで狂気に陥った人がラステイション全域に広まり……そして、ゲイムギョウ界は深刻なダメージを受けていただろうね」

「!!」

 

全身が稲妻が落ちたような衝撃だった。

俺は……そんな悪魔のような化物を世界に呼ぼうとしていたのか……デペアの話に、俺は多少ながら膨張している部分はあるだろうと深く考えないで……。

 

「おい、デペア……詳しいことも話さないであんなことをしたのか……?」

『えっと……そ、その………』

「誤魔化したら……アザトースの庭にお前をぶち込むぞ…?」(目が笑っていないスマイル)

『スイマセンでしたぁぁぁ!!!!!僕が全部悪かったですぅぅぅぅぅぅ!!!!!!』

 

恐らくデペアに体が合ったのなら土下座する勢いでデペアは空に向かって謝罪の言葉を口にする。

空は呆れ半分、怒り半分の顔で俺の頭を軽く叩く。

 

「ったく、……『影』だったから今の僕でも滅ぼせたから良かったよ。あれの肉体が出てきたら流石に不味かった……」

「ご、ごめん……」

「反省、しっかりしてよ」

 

あれの恐ろしさは肌で感じれた。

決して、人智を超越した存在。

勝つとか負けるとか勝負事、以前に目を合わせるだけでその声を聴いてしまっただけで俺は狂いそうになった。勝負として成り立たない化物があいつなんだ……。

 

「ほら、冷めちゃうから食べて元気つけてよ」

 

空は机の上に置いていた小なべを明けた。

体調が悪い俺を気遣って意識して造ってくれたんだろうか、魚介類が入った(妙にタコの具材が多いような……)おかゆだった。

 

「はい、あーん」

「うっ……」

 

レンゲで一定量掬い息を吹きかけ冷まして空は口を空けろと言わんばかりにレンゲを向けてくる。

正直、ものすごく恥ずかしい、思わず顔が真っ赤になってしまう。

全身を隠すように着ているコートの所為で、体格は分からないが白磁のような綺麗な肌に、芸術と言ってもいいほど整った可憐な容姿、一本一本美しい背中まで伸ばした黄金の髪、更に思わず見入ってしまう銀色の双眸。

スクリーンに映され、手の届かない場所で踊る美少女が次元を超えてリアルに舞い降りたと思うほどの宝石のような孤高の((彼女|・・))に男性の夢と語れるあーん♪をされれば流石に動揺するよ!

 

「?ほら、冷めるとおいしさが逃げるよ?」

「う、ぐっ……あーん」

 

心から噴き出す羞恥心を押し止めつつ、一口いただく。

ちょっと冷めてしまったが薄味加減のおかゆが今の俺には、とてもありがたかった。(タコも上手い)

 

「少し診せてもらったけど紅夜、かなり疲労が溜まっていたね、無理でも重ねたでしょ」

「えっと……人助けに…」

「はぁ、なるほどねぇ……やっぱりそうか」

 

納得するように深いため息をする空。

俺の昔もこうやって無理を重ねていたんだろうか?

 

「っで、今更なんだけどなんであんなことしたの?何が目的?」

「あっ!えっとお前にどうしても頼みたいことが合って……!」

「頼みごと?」

 

俺はそれから今までの経緯を話した。

ラステイションの市場を支配するアヴニールとそれを傍観するどころか手だけする国政院、その二つの不正の繋がりを訴えるための証拠となるものを手に入れる為に空に協力してもらおうとしたことを話す。

 

「あーー……そのためにあんな無茶で無謀で自殺行為を?」

「そう、だけど?」

「……………」

 

言葉を失った様に空が頭を掻く。

その時、壁に掛けてあった俺のコートの中に入れている携帯が鳴った。

 

「あ、僕が持ってきてあげる」

 

俺が頼むより先に空は立ち上がり、俺のコートから携帯を取り出して応答ボタンを押して俺の耳元に置いてくれた。

 

『紅夜?私だけど』

 

相手はアイエフだ。

 

「どうしたんだ?」

『えぇ、アヴニール製のメカを倒した所にアヴニールの社員を捕まえてね』

 

へー、それはうまく言えば相手の情報が取れるな、

 

『その社員はちょっと胡散臭いけどアヴニールと縁を切るつもりなの、アヴニールと国政院の不正な取引も知っていて、生体基盤も渡してくれるの』

 

……………あれ?それって……

 

『そっちは見積書手に入れた?』

「俺は……その……」

『まだなのね、それは都合良いわ。紅夜にはお疲れの様子だったし明日から本格に活動するわよ。それまでにきっちり休みなさいよ。それじゃ』

 

プチっツーツーツーと無情に響く携帯音。

空は、ものすごく((可哀そうな者|・・・・・・))を見る目で俺を見てくる。

俺は思わず喉から渇いた笑い声が溢れた、頬にも雫が流れた。

 

 

 

 

「out」

 

結論、俺の今日したことは全部無駄に終わった。まる。

 

 

 

説明
その21
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
589 570 0
タグ
超次元ゲイムネプテューヌ

燐さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
コレクションに追加|支援済み


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com