IS?インフィニット・ストラトス?黒獅子と駆ける者? |
episode173 王の力を受け継ぐ者達
「これは・・・・・・凄いねぇ・・・」
「・・・・」
帰還した隼人達が持ち帰った残骸を束は興味津々で見ていた。
隼人やユニコーン、リインフォース以外は医務室でフェイとフィアに治療を受け、ラウラ、セシリア、エリーナは引き続き外の警戒に出ていた。
「これら全てがはっくん達を手こずらせていたって言うのも凄いや」
「・・・・」
隣に居たアーロンは腕を組んで残骸を見る。
「その代償に、殆どの機体はかなりの損傷を受けているようだがな」
視線を左に向けると、IS状態で単独展開された白式、紅椿、ラファール・リヴァイブCV、打鉄弐式・改、ゴールドフレーム天、AGE-1、エピオンがハンガーに固定されて修理を受けていた。
どれも装甲に損傷を受け、最も大きな損傷はどの機体も内部機器に大きな損傷を受けていた。
「まぁね。特にエピオンのレヴァンティンが折られたって言うのはちょっとショックかな。私が心血注いで鍛え上げて作った一級品なのに・・・」
少しガッカリした表情でエピオンの近くに置かれていた刀身が折れたレヴァンティンを見る。
まぁ自信作が壊されたのは誰でもショックだが・・・
「まぁ、予備の刀身はあるから交換できるけど・・・肝心の機体がね・・・」
「やはりかなりまずい状態か」
「うん。最低でも一週間は必要になるね」
「そうか・・・」
「まぁ、エピオンを優先的にすれば三、四日で済むけどね」
「現時点では一夏のインフィニティーの方が戦力的にもいいと思うが?」
「そうなんだけど、いっくんはちーちゃんよりも怪我が大きいからね」
「なるほど。・・・それで、バインドの量産機については何か分かったのか?」
「まだ詳しくまでは調べて無いんだけど、少し調べた範囲でも未知の技術が沢山使われていたのが分かった」
「やはりそうか・・・」
「まぁ、量産機程度じゃ調べられる限度は見えてるけどね」
「・・・・」
「上位機種が手に入ったら何か分かりそうなんだけどねぇ・・・」
「・・・・」
「ところで、隼人は今何所に居る?」
「はっくんなら・・・・・・病室だよ」
「病室?」
「はっくんが見つけた女の子を見に」
「・・・あぁ。あの子か」
アーロンは隼人が担いでいたカプセルの中に入っていた女の子を思い出す。
「見つかった場所が場所だからね。精密検査はしていくよ」
「・・・・」
「もしかしたら良くない結果が出るかもしれない」
「そうだな・・・」
「でも、何だか不思議だよねぇ」
「なにが?」
「はっくんだよ。あの子を見る目が何だかいつもと違っていたの」
「どう違うのだ?」
「うーん・・・何て言うかな・・・」
束は額に手を当てて「うーん」と唸って考える。
「・・・うーん」
「分からないのなら無理して答えなくて言い。お前の言い方だと変な誤解を招きかねないからな」
「むー」
束は頬を膨まらせる。
「・・・・」
隼人はイスに座って病室のベッドに眠っている女の子を見る。
女の子は静かに寝息を立てて眠っていた。
(今思えば・・・こんな小さな子がどうしてあんな所に居たのが不思議だな・・・)
場所が場所である為に、恐らくこの女の子は普通とは違う・・・その為に油断は出来ない。
(それに、この子を見ていると・・・どうも懐かしい感じがするな)
初めて会ったはずなのだが、前にも見た事があるような、懐かしい感じがする。
「・・・・」
「・・・・」
すると女の子は魘されているのか、不安げな声を出しもそもそと身体が動く。
「・・・・」
隼人は宥めるように女の子の頭を優しく撫でると、女の子は一安心したかのように落ち着く。
落ち着いた事を確認してからイスから立ち上がり、病室を出た。
『やはりアルタートゥムの存在は私と隼人、それにお前とバンシィだけに留めておくのか』
「うん」
ユニコーンとリインフォースは休憩所でコーヒーを飲みながら話していた。
「別に他のみんなが信用出来ないってわけじゃないけど・・・アルタートゥムはやっぱり人間が使うべき代物じゃない」
『・・・・』
「バインドとの戦いで有効活用した後、これを破棄する。二度と再生できないように」
『そうか。正しい判断だな』
「隼人君だって同じ事を言うはずだからね」
『そうだな』
「・・・まぁ確かにコレがあれば今の世界問題も解決に導けるかもしれない。でも、あまりにも強大すぎる」
『今の人類では使いこなせない、か』
「そう。・・・これはISよりもタチが悪いからね」
『・・・・』
「これだけでも、世界大戦が起こせれる程だから」
『・・・・』
「申し訳ございません、我が王。アルタートゥムだけではなく、マテリアルまでも回収できずに・・・」
と、ハルファスは片膝を付き、玉座に座るバルバトスに頭を下げる。
「さすがにこれは手痛いものになってしまったな」
バルバトスは顎に手を当てる。
「想定以上の寒さでレギナが次々と機能停止に陥り、何とか寒冷対策をしてGシステム78に進入できました」
「ですが、そこの守護者達に阻まれ、予想以上の反撃に撤退を余儀なくされました」
と、ハルファスと隣に同様にしゃがんで頭を提げていたベーゼはそれぞれバルバトスに説明する。
「その程度で撤退など・・・情け無いものだな」
と、バルバトスの隣に居るクィーンは従えている二体の無人機の内一体の頭に左手を置く。
「その後体勢を立て直してマスターフェニックスを連れて何とか奥まで進めましたが――――」
「我々が着いた時には・・・既にアルタートゥムとマテリアルが消えていました」
「消えるだと?どういう事だ」
クィーンは怪訝な様子でハルファスに問い返す。
「恐らく・・・我々以外にあそこを知っていた者達による仕業かと・・・」
「馬鹿な。あの場所は人間共は知らないはずだ。それ以前に守護者共を倒せるはずが――――」
「もし、可能性があるとすれば・・・恐らく黒獅子とその仲間達かと」
「・・・あの者達か」
「いくらあの者たちとは言えど、あそこには最強の守護神がいるのです。普通に考えても持ち出すなど――――」
「恐らく・・・・・・マテリアルが彼らを選んだのだろう」
「マテリアルが・・・人間共を選んだ?」
クイーンは驚いた様子でバルバトスを見る。
「それならば彼らがアルタートゥムとマテリアルを持ち出せたのも説明が付く」
「ですが、あのマテリアルが人間共を選ぶなど・・・」
「・・・・」
「しかし、アルタートゥムはまだしも、マテリアルが手に入らなかったのは少しばかり計画に修正が必要になるな」
「あれは我らの計画の要。必ずしも手に入れる必要があります」
「うむ」
「我が王」
と、ハルファスがバルバトスに声を掛ける。
「どうした?」
「ご無礼を承知の上で、一つお聞きしてよろしいでしょうか」
「ほぅ」
「貴様・・・王に向かって問うとは!!」
クィーンはハルファスに向かって怒声を上げる。
「構わん。申してみよ」
「で、ですが・・・!」
「我が言ったのだ。それに疑問があるのか」
「・・・い、いえ」
クィーンは一歩下がる。
「では、一つお聞きします」
「うむ」
「・・・我らバインドの計画の要・・・マテリアル。そもそもを言えば・・・マテリアルとは一体・・・?」
「・・・・」
「お聞かせください・・・。計画の要となるマテリアル。その正体とは・・・」
「よかろう。話してやろう」
「よろしいのですか?」
「構わん。彼女らも我らの部下だ。知る権利はある」
「・・・・」
「マテリアル・・・・・・それはとある人物の遺伝子を受け継いだコピーだ」
「コピー?」
ハルファスは呟く。
「・・・・」
ベーゼもバルバトスの言葉に耳を傾ける。
「かつて大昔・・・この世界とは異なる世界で、人間ともう一つの種族が存在した」
バルバトスはゆっくりと語り出す。
「その者達は人間とほぼ同じだが、もう一つの姿を持っていた・・・」
「もう一つの・・・?」
「そう。強大な力を秘めた・・・高度な技術力と知能を持った金属生命体。それがその者達の正体だ」
「金属生命体・・・」
「大昔にそのような種族が存在していたとは・・・」
「その金属生命体の中に、一人の王・・・いや、『無限皇帝』が居た」
「無限皇帝・・・」
「・・・・」
「その種族の中でも最強の存在であった無限皇帝・・・『インフィニットカイザー』・・・。彼はその力と権力で自らの国を作り上げた。人間と自分と同じ種族が住む王国を・・・」
「だが、その種族と人間は差別関係にあった。最初の両者の接触が最悪の結果だったのが原因のようだがな」
「差別・・・」
「それを直すべく皇帝は王国を築き上げた・・・」
「その通りだ」
「・・・・」
「その皇帝がある時に・・・一人の人間の女と恋に落ちた」
「・・・・」
「種族の壁や偏見などがあったが、それでも二人は愛し合い、やがては二人の間に一人の娘が生まれた。皇帝の力を受け継ぐ子がな」
「・・・・」
「だが、時が過ぎて言ったある時に、皇帝は愛する者を何者かによって殺された」
「・・・・」
「皇帝は怒りと悲しみによって理性を失い、愛する者を殺した者達を抹殺し、自らが築き上げた国をも滅ぼし、やがては自らの身を滅ぼすと同時に世界そのものを滅ぼした・・・」
「・・・・」
「皇帝の娘は世界の崩壊に巻き込まれたが、偶然に別の世界へと飛ばされた」
「・・・・」
「やがて時は過ぎ、娘は皇帝より受け継いだ力でその世界で最強の存在となった」
「・・・それが、あの破壊の王・・・『ノルン』の誕生だ」
クイーンが補足を入れた。
「破壊の・・・王・・・」
「・・・ノルン」
ハルファスはボソッとその名を呟く。
「破壊の王の名はナハトヴァールでは無いのですか?」
「ナハトヴァールは破壊の王の力を模造した偽者だ。本物の足元に及ばない」
「あれでも・・・偽者なのか・・・」
「だが、破壊の王もまた、生きている中で一人の人間と恋に落ちた。そして時が過ぎ、二人の間に一人の娘が生まれた」
「・・・・」
「しかし、破壊の王と言えど人間だ。ある時に重い病に倒れ、短い生涯を閉じる事になった」
「・・・・」
「やがて時は過ぎていき、破壊の王の娘も立派に成長し、破壊の王を継ぐ強さを得た王・・・『聖なる王』となった」
「聖なる王・・・」
「後に覇権を巡る三つの王の戦争・・・・・・その中の一人こそが聖なる王だ」
「・・・・」
「その聖なる王の力を受け継いだコピーが、マテリアルなのだ」
「・・・なるほど」
「無限皇帝から始まり、その血を受け継いだ娘が破壊の王となり、そしてその娘も聖なる王となった」
「その力はマテリアルへと受け継がれた、と言うことですか」
「そうだ」
「しかし、コピーでは完全な力は生まれないのでは?」
「普通ならばな」
「だが、幸い聖なる王の遺伝子が残り、更にその力の一部が具現化した物質をコピーのマテリアルに埋め込んだ事により、完全なる聖なる王のコピーが誕生したのだ」
「・・・・」
「・・・しかし、運命とは面白いものだな」
と、バルバトスはボソッと呟く。
「・・・・?」
「マテリアルを見つけたのが・・・破壊の王の力を得た者だからな」
「確かに力はあるでしょうが、あやつはただの転生者では?神々が送り込んだ」
「あぁ。だが、どういうわけかは分からんが、あの転生者は破壊の王・・・・・・即ちノルンの魂を宿らせているのだからな」
「破壊の王の魂を・・・?」
「馬鹿な!?あの破壊の王の魂を!?」
クィーンは驚愕し、ハルファスとベーゼも驚きを隠せなかった。
「あぁ。あの時・・・あの者を見て感じたのだよ。破壊の王の魂を・・・」
「まさか・・・偽者だけではなく、本物を・・・」
「・・・・」
(まさか・・・こんな事が・・・)
「それに、あの転生者の二つ名が黒獅子と言うのも偶然ではないのかもしれんな」
「どういう事ですか?」
「かつて破壊の王は・・・『黒獅子』と言う二つ名を持っていた」
「・・・・」
(あの者の力も・・・確か・・・)
「伝承によれば破壊の王ノルンは獅子の如く戦場を駆け、身に纏う黒い甲冑からその名が付いたと言われている」
「・・・・」
「つまり、あの転生者は破壊の王の新たな姿・・・と言う事になるのでしょうか」
「そうとも捉えられる」
「・・・・」
「・・・・」
「これで満足か」
「え、えぇ。もう疑問に思う事はありません」
「用が済んだのなら、さっさと行け」
「はい」
「・・・・」
そうしてハルファスとベーゼはその場から立ち去った。
「あそこまで教えてよろしかったのですか?」
ハルファスとベーゼが居なくなってからクィーンはバルバトスに問う。
「構わん。いずれ話す事だったのだ。それが早くなっただけの事」
「・・・・」
「しかし、疑問には思うものだ」
「えぇ。一片も関連の無い転生者になぜ破壊の王が自らの魂を宿すなど・・・普通では考えられない」
「・・・・」
「破壊の王があの者を選んだと見るべきでしょうか」
「かもしれんな」
「だから、マテリアルが彼を選んだと言う事ですか」
「恐らくな」
「・・・・」
「では、私はこれで・・・」
そうしてクィーンは無人機二体を連れてその場から立ち去った。
「・・・・」
バルバトスは顔を上げる。
「ご心配には及びません、『陛下』。多少の支障は生じましたが、計画は順調に進んでおります」
と、誰も居ないはずなのにバルバトスは話し出す。
「マテリアルは必ず手に入れて差し上げましょう。陛下のご計画の為にも」
すると玉座の後ろの高い位置の壁にある発光体が薄っすらと輝く。
「全ては陛下の為に・・・」
バルバトスは頭の上のモノアイで後ろを見る。
その中には何かが眠っていた・・・
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! |
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