ゼロの使い魔……にはならなかった 4
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フーケの一件があった翌日、ネギは一人で広場を散歩していた。

 

「はぁ、昨日は大変だったなぁ。本当にいろいろと」

 

ネギが言ったいろいろとは、フーケを捕まえた後のことだ。

フーケを捕まえた後、学院長に引き渡しに行った。するとフーケは実は学院長自身が町の酒場で見つけて雇った女性だったらしい。

その雇った経緯を話しオスマンはそこにいた人達に白い目で見られていた。

話が終わり、学院長室学院長室を出たあと、ルイズにが言い寄ってきたのだ。

 

「さて、聞かせてもらいましょうか? あんた達は一体何者なの!? なんであんなに戦いなれてるのよ!? ていうかあのすごい魔法はいったい何なの!? あんなの見たことも聞いたこともないわよ!」

 

「ちょっと待ってください! そんなに一気に聞かれたら答えられないですよ!」

 

「そうよ、ルイズ。少し落ち着きなさい」

 

キュルケにたしなめられて少しは話しやすくなった。

 

「えっと、それでは順を追って話していきますから」

 

そうして、ネギの話が始まった。

 

「……話をするぶんにはよかったんですけど、ルイズさん途中で何度も口を挟んできて説明を終えるまで予想以上時間がかかっちゃいました」

 

昨日の事を思い出しため息をつく。

 

「それにしても、こっちの世界に来て三日ですか。この三日間、元の世界に戻る手掛かりは全くなし。早く帰る方法を見つけなくちゃ! そういえば皆さん、心配してるかな。いいんちょさんなんか心配性だからなぁ」

 

自分たちの状況を何とかしなくてはいけないのについ他の人の心配をしてしまう。

こちらの世界に来て3日とはいうが、実際したことといえば決闘騒ぎだとか盗賊の捕縛だとか夜間勉強だとかその程度だ。

暇を見てオスマンさんに許可をもらい図書館を調べてみたりもしたが、どうやら言葉はわかっても文字がわかるようになるわけではないらしく、見た本の内容がさっぱりわからなかった。

今度コルベールさんにでも頼んで文字を教えてもらおうか、そんなことを考えていると。

 

「ああ、みんな心配していた。ちなみに委員長は気を失って倒れていたぞ」

 

「!!」

 

後ろから聞き覚えのある、しかしここにいるはずのない人(人じゃないけど)の声が聞こえた。

振り向くとそこにいたのは

 

「ま、師匠(マスター)!?」

 

そう、ネギの師匠であるエヴァンジェリンが不適な笑みをしてそこにいた。

 

「ど、どうして師匠がここに?」

 

「ふん、なんだ? せっかく迎えにきてやったのに嬉しくはないのか?」

エヴァンジェリンは少し不機嫌そうな顔になった。

 

「い、いえ! そういうのじゃなくてですね、師匠はどうやってここに来たんですか? ここは僕達がいた世界とは違う世界なんですし」

 

「空間を移動することなど、私にとっては大したことではない」

 

そういえば、とネギは修学旅行の時のことを思い出した。

 

(ということはまた学園長先生が5秒に1回判子を押しているんだろうなぁ)

 

《登校地獄》それはネギの父親であるナギがエヴァンジェリンにかけた呪いである。

そのせいでエヴァンジェリンは魔力を極限まで抑え込まれて、学園の外に出ることが出来なくなってしまったのだ。

修学旅行の時は強力な呪いの精霊をだまし続けるために複雑高度な儀式魔法の上、学園長自らが5秒に1回エヴァンジェリンの東京行きは学業の一環であるという書類にはんこを押していたそうだ。

今回も多分そんな感じになっているんだろう。

 

「とは言っても、流石に世界の壁を越えたことはないから、お前らが異世界に行った可能性が出てきたことを調べて分かった後は、いろいろと手詰まりではあったが。

……あいつに来てな」

 

「あいつ、って誰ですか?」

 

するとエヴァンジェリンは手に持っていたものをネギに見せた。

 

「こ、これは! カシオペア!?」

 

エヴァンジェリンの手には一つの懐中時計が握られていた。

 

「あぁ、そうだ。少し前に、超のやつが戻ってきてな、これを渡してきたんだ。なんでも、前のカシオペアを改造して異世界の壁を通りやすくするようにしたものだと」

 

「超さんが!! そうですか。確かに彼女ならこの状況を知っていてもおかしくはありませんからねぇ」

時間移動ができるからと異世界移動もできるように改造するとは、いったいどれだけ高度な魔法科学が確立されているのだろうかと思う反面、ネギは数ヶ月前に未来へと帰って行った教え子のことを思い出していた。

 

「まぁ、それはいいとして、とっととみんなを集めてこい。帰るんだろう?」

 

「あ、ちょっと待ってください。こっちでお世話になった人達にお礼を言いたいんです」

 

そういいネギは走り出そうとした。

……すると

 

「ネギ? あんたそこで何やってんのよ。ていうかその子誰?」

 

反対側からルイズがやってきた。

 

「あ、ルイズさん! 師匠、紹介しますね。この人はルイズさんと言いまして、この魔法学校の生徒です。ルイズさん、こちらはエヴァンジェリンさんと言いまして、僕の師匠です。とても強い魔法使いなんですよ」

 

と、ネギはお互いを紹介した。

しかしその紹介にルイズは

 

「はぁ! こんなちんちくりんが師匠!? 冗談でしょ!?」

 

エヴァンジェリンを疑わしい目で見た。

自分のことなど棚上げである。

 

「……ほぅ、そうか。……お前こそ、頭の悪そうな面をしているな。さぞ落ちこぼれているだろうなぁ」

 

エヴァンジェリンは頬をひくつかせながら、お返しとばかりにルイズに言い返した。

 

「な!? お、おぉぉ落ちこぼれですってぇ!? ふ、ふん、あんたなんてホントはめっちゃくち弱いんでしょう!

ネギもかわいそうよね、こんな子供のお遊びに付き合わされてるなんて」

 

「(プチッ)……いいだろう。そこまで言うならば私の力見せてやろう。ボーヤ!」

 

「は、はい!!」

 

ルイズと言い合っていたエヴァンジェリンは突然ネギを呼んだ。

いやな予感がするのは、ネギのこれまでの経験上きっと間違いではないのだろう。

 

「いい機会だ。今私は登校地獄の呪いと学園の結界から解放されていて全力を出すことができる。だから……これから私と特訓だ!」

 

「や、やっぱりぃ!! 本当にやるんですか!?」

 

「当たり前だ! こんな機会滅多にないんだからな!」

 

「あぅぅ〜」

 

ムキになったエヴァンジェリンはもう止められない。

ネギにはそれに従う以外に道はなかった。

そんな本気の半泣きをみてルイズは、「なんか私、早まったこといったかしら」と額にうっすらと汗を浮かべていたとか。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「……と言う訳なんです」

 

エヴァンジェリンとの話の後、事の次第を伝えるため部屋に戻ってアスナ達に説明し終えたネギ。

そこにルイズはいたがエヴァンジェリンはいなかった。

エヴァンジェリンは特訓場所として指定した、先程までいた場所で待っているとのことだ。

本人いわく、言い合いになったルイズとはあまり一緒にいたくないそうだ。

 

「そっかぁ、エヴァちゃんが迎えにきてくれたんだ。でも、ルイズ! あんた初対面の人に対しての礼儀がなってないんじゃないの? こんなことになっちゃったのあんたのせいだってちゃんとわかってる?」

 

「う、うるさいわね! あの子が悪いのよ! ていうか、何ビビッてんのよ、あんなちっちゃい子に!」

 

ルイズは悪びれもせづに言い返してきた。そんなルイズにアスナ達は何も知らないことを哀れむような目で見つめていた。

 

「ちっちゃいって……ルイズさん、師匠って外見は女の子のようでも、本当は吸血鬼でもう数百年生きてるんですよ」

 

「は、はぁ!? 吸血鬼って、それ本当なの!? だ、だって吸血鬼って物語の中でしか……」

 

衝撃の事実にルイズは言葉が出ない様子だ。

というか、吸血鬼と言ってしまったが、こちらにもちゃんと吸血鬼の話はあるようで内心安心した。

もし吸血鬼と言って理解されなかったら、まだこちらの世界来て情報も多くないネギ達に、エヴァンジェリンの怖さを伝えるすべが思い浮かばなかったところだ。

 

「……それでネギ先生、どのように闘うつもりですか?」

 

「特にこれといって作戦があるわけではありません。下手に作戦を考えてもこの短時間に考えられる作戦程度、多分師匠には効かないと思いますし。

だから、僕はただ、今ある力のすべてをぶつけるだけです」

 

「まぁ、実際の所それしかないのでしょうね」

 

「ネギ、先手必勝よ! あんただって前より強くなったんだから大丈夫よ!」

 

「そやね。ネギ君、頑張ってな! 怪我したらウチが治したげるから安心するえ」

 

「皆さん……はいっ! 僕、精一杯頑張ってきます!」

 

みんなから励まされたネギの顔には力が漲っているようにみえた。

特に準備をするものもないため、そのままネギ達はエヴァンジェリンの待っている広場へと向かっていった。

広場に着くとそこにはエヴァンジェリンが、そして少し離れたところに教師達を含めた大勢の生徒達が集まっていた。

 

「こ、これは、いったい?」

 

「ふん、なんだか知らんが、わらわらと集まってきたぞ」

 

呆然としているとエヴァンジェリンが近くにきて話してきた。

 

「すまんのう、実は皆を集めたのは儂なんじゃ」

 

教師陣の中にいたオスマンが、中から出てきてこの状況について説明した。

 

「他の世界の魔法を生徒達に見せるというのもいろいろと勉強になるからのぅ。しかも模擬戦ともなればなおさらじゃ。

この学園では座学での勉強が主でのぅ、模擬戦を行う授業は少ない。それというのもここにいる学生のほとんどが貴族でのう、その階級も様々じゃ。下手に怪我なんぞさせようものならその親からいろいろと文句もきて面倒事も多い。それ故に昔は多く取り入れていた模擬戦の授業も減ってしまった。そのせいか、最近では学生全体の戦闘経験の低下も著しくてのぅ、卒業して実戦の場に出ても大怪我で軽い方、最悪死んでしまう者も少なからず出てくる始末。

じゃから、こちらの勝手ではあるが君たちの模擬戦を彼らに見せてやってはくれんか?

君たちほどの使い手の戦いを見れれば、彼らも少しはやる気や向上心が出てくるというものじゃろう」 

 

「……ふん、お前らの事情など知ったことではないが、まあいい。せいぜい巻き添えをくわないように気をつけるんだな。さぁ、始めるぞボーヤ」

 

「は、はい!」

 

そう吐き捨てるエヴァンジェリンと共に広場の中央へ歩いていった。

 

「ね、ねぇ、あのちっちゃい子、本当に強いの?」

 

ネギ達が離れていき少し不安になったルイズが誰にとなく聞いてきた。

 

「だから本当だっていってんでしょ! エヴァちゃんの力は特訓を受けてきた私たちがよく知ってるんだから!」

 

「ですね。彼女の力は絶大です。力が封印されていた時でさえあれほどの力を持っていたんです。封印がとけている今なら想像もできませんよ」

 

そう言った刹那の言葉にアスナと木乃香は少しだけ身震いした。

 

「……そや、今思ったんやけど。二人が思いっきり戦ったら、こんな近くで見学してたらみんな巻き添え受けてまうんやないかな?」

 

「……た、確かに」

 

木乃香の言葉にネギ達と自分達との間隔を見てみると20〜30mくらいしかなかった。

 

「……これでは確かに巻き添えを受けてしまいますね。お嬢様、アスナさん、他の生徒達や先生達にもっと離れるように言ってきましょう!」

 

刹那の言葉に二人はうなずくと三人はそれぞれ離れていった。

 

「……な、何でみんな人になにも説明しないで勝手に行動してんのよ」

 

離れていくアスナ達の背を見て、何もわかっていないルイズがぼそりとつぶやいた。

 

 

 

 

説明
はい、というわけで(どういうわけやねん)第4話です。
第2話くらいに「あと1、2話で終わり」といいつつ、修正していくうちに文字数も少しずつ増えていき、きりのよさそうなところで区切ると結局もう1話続くことになりました。
では、残すところもあと1話となりましたが、最後までどうぞよろしくお願いします。

それでは、第4話をどうぞ。 
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世界が凍る!?(アサシン)
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