戦火に生きし魔鬼 〜蜀伝 神殺しの鬼〜 3
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「で、話ってなんだ?」

 

食事を終えてさっそく話を切り出した。

 

「私たちの仲間になってほしいんです。」

 

関羽ではなく劉備が答える。

どうやらこの話は関羽個人ではなく領主である劉備たちを含めたかなり大規模なものと思われる。ある程度覚悟が必要なようだ。

 

「ならとりあえず人払いをしてくれ。ふたりで話したい。」

 

「関龍どの!?」

 

「わかりました。」

 

関羽がいきり立つが劉備が目配りをすると渋々といった感じで天幕を出ていき張飛、諸葛亮、?統も続く。ちなみに諸葛亮と?統は食事の際に紹介してもらった。

 

「くわしく聞かせてくれるか。君の野望を。」

 

「はい。」

 

そう言って劉備は語りだした。

 

「今この大陸には苦しんでいる人がたくさんいます。わたしはその人たち全員が笑顔で暮らせる戦争のない平和な世の中にしたいんです。」

 

戦争のない平和な世の中、か。

たしかにそれは素晴らしい夢だ。しかし所詮は空想論でしかない。たとえできたとしてもそれには多くの犠牲が必要となる。それを背負う覚悟と器量がこいつにあるだろうか?

 

「これは仮定の話だがもし君がその命を捨てることで大陸が平和になるとしたらどうする?」

 

「捨てます。」

 

劉備が即座に答える。

おそらく民という大のために自分という小を犠牲にできることはできるだろう。だがそれは王ではなく将の役割だ。王は民と共に、もしかしたら民を犠牲にしてでも生き残らなくてはいけない。

 

「なら平和にするために大勢の命をあきらめなければならない。その失われる命を君は背負う事が出来るか?」

 

「たとえ何万でも何億でも背負います。どんなに重くてもひとつ残らず背負って見せます。」

 

そう言う劉備の目には確かな光が宿っていた。何か引っかかるその光は人を惹きつけるなにかを持っている。

俺はこの目を知っている。

いつ、どこで、だれの目かは知らないがたしかに知っている。

ならその光の行く末がどんなものか見届けるとするか。

 

「王が犠牲になることは許さない。たとえなにを犠牲にしようとも、だ。」

 

どれだけ兵が死のうと、どれだけ将が散ろうと王がいれば再建できる。

平和を得ようとすれば命を失う。その重みを背負ったまま生きる覚悟があるならあるいは・・・。

 

「その覚悟を君が持つ限り俺は君の理想を実現させる駒となろう。」

 

「いいえ!関龍さんはわたしたちの仲間です!駒なんかじゃありません!」

 

「・・・20点」

 

「えー!?なんでですか!!」

 

こいつ甘すぎ!?

大丈夫なのか?ほんとうにこんなのが王で大丈夫なのか!?

 

「せめて40ぐらいにしてください!」

 

「その甘さを捨て切れたら50にしてやる。」

 

そんなわけで主に多少の不安があるが俺は劉備のもとに身を落ち着けることにした。

 

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「劉備のところに新たに将が付いたそうよ。」

 

とある城。その玉座の間で一人の王が間者からの報告を将に告げた。

 

「燕。あなた、ちょっと行ってきてくれないかしら。」

 

「なぜ私なのだ?」

 

王は玉座の前に整列している将の列から離れ柱に寄りかかっている将に声をかけた。

王に対する言葉遣いや態度はけして好ましいものではなく今も王を慕う将の数人に睨まれている。

それでもそんな態度を正さないのは王が認めていることもあるが将自身が決して王に忠誠を誓っているわけではないからだ。王もそれを理解しているからこそその態度を認めているのだ。

 

「あなたならその将の実力を正確に見抜けるでしょう?使えるなら引き抜いてきて。それが無理なら殺して構わないわ。」

 

この燕という将、いま玉座にいる誰よりも強い。王は彼女が大陸最強であると信じているほどにだ。

 

「わかった。」

 

短くつぶやき将は玉座の間をあとにした。その先にあるものが己の決心をにぶらせ押し殺してきた一つの感情を呼び起こしてしまうことも知らずに。

 

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