ただいま 【真・恋姫†無双】【短編】
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会いたい。

 

 

只、無性に会いたかった。

 

 

 

 

元の世界に戻ってきても想うのは、みんなの事ばかりだった。

 

寂しさを紛らわせ様と、勉学に勤しんだが力が入らず

 

時は残酷にも進んでいくだけだった。

 

 

何をやっても空っぽ。心が満たされる事はなかった。

 

 

 

 

空虚。

 

 

 

 

あの頃の俺に一番、適した言葉だった。

 

 

 

 

限界だったよ。本当に。自分が壊れていく、そんな感じだった。

 

耐えられなくて、忘れようかとも思った。夢を見ていたんだと…。

 

けどやっぱり、忘れられなくて朝起きると、いつも涙を流していた。

 

 

 

情けないだろ。けど……

 

それほど大切な存在だったんだ。

 

 

 

 

夜になると空を眺めていたよ。想う事は、

 

別れの夜の日。

 

 

 

 

後悔していた。あの時諦めなければ、傍に居られたんじゃないかと。

 

役目が終わったと認めなければ、あの世界に存在できたのではないかと。

 

 

 

 

見つめていたんだ。

 

 

 

空に浮かぶ遥か先、みんなが居るであろう、虚空の彼方を。

 

 

 

 

その時だった。頭の中に不思議な声が響いたんだ。

 

戻りたいかと問われたよ。あの世界に。

 

自分の居場所はここだと、声を大にして言える場所に。

 

 

 

俺は戻りたいと叫んだ。よく、信用できたと思っただろ。

 

信じるしかなかった。縋らなければ、月並みな言い方だけど、

 

俺は生きていけない。そう思ったから。

 

 

 

 

けれど、直ぐには戻れないと言われたよ。世界を結ぶ因子が不十分だと、

 

確実に成功させるには、暫し時が必要だと言うこと。

 

俺は了承した。また会うことができる。

 

心に希望の光が射し込んだような気がしたんだ。

 

 

 

 

それからの俺は勉学に力を入れ、休みの日には、鹿児島の爺ちゃんの所に、

 

赴き、剣術の稽古を指南してもらったんだ。みんなに誇れる人に成るため。

 

その想いを成就させるために、一意専心し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そして、時が過ぎ卒業の日。俺は焦れていた。

 

騙されたのではないかと、もしくは、あの声は幻聴だったのかと。

 

時期をしっかりと聞けばよかった。あのときの俺は喜びで、

 

舞い上がっていたんだろう。嘆息をつくと同時に絶望に震える。

 

 

 

 

そう思っていた時、俺の身体が眩い光に包み込まれ意識を失う。

 

目を覚ますと、何も無い空間。正に無という表現が

 

相応しい場所に浮かんでいた。

 

 

 

 

…頭の中で声が響く。約束を果たせる時がきたと。

 

なおも声が響く。

 

幼少の頃から居た世界に戻ることはできなくなると。

 

 

 

 

……愚問だった。みんなに会える。これ以上ない理由の為に、今日まで自分自身を鍛えたんだ。

 

戻れなくてもいい。未練はある。だけど、後悔はしない。俺は頷いた。

 

この世界と袂を別つ決意をした。淡い光が身体を包む。

 

 

 

……父さん。母さん。爺ちゃん。不肖の息子を許してください。

 

恋姫達が生きる世界で、俺も生きていくよ。

 

……今まで、ありがとうございました……。

 

 

 

 

…そう想うと、俺はまた、涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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陽の光で目を覚ますと、俺は原っぱの上で寝転んでいた。

 

……この場所を知っている。無我夢中だった。身体を起こし、

 

辺り一帯を調べる。間違いない帰って来れたんだ。

 

俺は喜んだ、帰ってこれた事に。みんなと会える事に。

 

 

 

不意に声が聴こえる。懐かしく心地が良い声色。

 

焦る気持ちを抑えながら、声が聴こえる方に、

 

俺は歩を進めていた。

 

 

 

…いた。

 

 

 

恋焦がれた人達が居る。

 

少し大人びた、彼女たちが目の前に居る。

 

 

 

 

「皆、揃っているわね。では始めるわよ。三国が同盟してから―――――――」

 

 

 

 

……もう我慢しなくていいよな。

 

溢れる気持ちが抑えられなかった。

 

 

 

 

「おいおい。華琳。一人忘れてないか?」

 

 

「一刀!?」

 

 

「「「北郷!?」」」

 

 

「「「隊長!?」」」

 

 

「兄ちゃん!?」

 

 

「兄さま!?」

 

 

「お兄さん!?」

 

 

「一刀殿!?」

 

 

「「一刀!?」」

 

 

「一刀さん!?」

 

 

 

…やっと会えた。どんなに、このときを願っていただろう。

 

ずっとずっと寂しかった。けど、もう、その様な事は思わない。

 

みんなと一緒に生きていくと決めたから。

 

 

 

だから、万感の想いを込めて伝えるよ。

 

この言葉に、幾千以上の意味も込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――ただいま―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
こちらは真・恋姫†無双の二次創作になります。
前回、拝読、コメント、支援、お気に入り
してくださった皆様。誠にありがとうございます!
今回は一刀視点、華琳と別れた後のお話です。
口調がおかしい所があると思います。
それでも、暇なときに読んで頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。
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コメント
sinryuさん>ありがとう、ありがとうございます〜(南無さん)
良い!!良すぎる!(sinryu)
R田中一郎>良かったと言ってもらえて嬉しい限りですー。コメントありがとうございます。(南無さん)
飛鷲さん>コメントありがとうございます〜。Σb( `・ω・´)グッ(南無さん)
良かった。本作にもこんなラストが欲しかった(R田中一郎)
GJ!!(飛鷲)
ロキさん>感動して頂き嬉しいですー。コメントありがとうございました!(南無さん)
本郷 刃さん>いつもコメントありがとうございます!今まで一刀視点だけのお話を執筆していなかったので、挑戦してみました。読んで頂き嬉しいですー(南無さん)
感動した!グッジョブ!(キリヤ)
華琳と魏のみんなが嬉し泣きしながら一刀に抱きつく光景が目に浮かびました! やはり一刀視点もいいですよね♪(本郷 刃)
霊皇さん>コメントありがとうございます。評価して頂き嬉しいです!(南無さん)
いい!!GOODですよ(霊皇)
タグ
真・恋姫†無双 北郷一刀 華琳  魏アフター 恋姫†無双 短編 

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