超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編
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それは、ヒキガエルのような生き物だった。

自在に伸縮するぬるぬるとした灰色の皮膚、顔とも言える部分にはピンク色の幾多の液体を垂らす触手が不快なダンスを踊っている。

その手に握るは、何らかの木の枝の先に鋭い石を紐で結んだ原始的な槍。その先端にはまだそれほど時間が経ってない生々しい血が滴り落ちている。

彼らーーー『ムーン=ビースト』達は、その触手から感じれる風の流れ、電磁波等を感じることで地形や生き物がどこにいるかを判断することができる。更にそれから特殊な電磁波を出して、仲間とコミュニュケーションを取ることが出来る。

夕方の空、子供は家に帰る時間、大人たちは一日の仕事を終わらせているそんな時間帯に高く生えた木々に陽光が遮られ、暗闇の空間の中で屍の山が築かれていた。

徹底的に殺された人の山、殺した上で幾度もなく急所を突かれ、引き千切られた、冒涜的な行動による残物。

残虐の限りを尽くした彼らは、この世界に呼び出した者の気配を感じ、軍隊のように一列に並び、槍を横に持ち、腰を下げた。その姿はまるで、自分たちの主を招く様だった。

 

「………ふっ」

 

夕闇の空をバックに姿を現したのは、冷笑の表情をした影の濃い男性だった。

這い寄る混沌『ナイアーラトホテップ』それが彼の名前、彼の存在だ。

当たりを見渡す派手に殺戮された紅夜の遺体を放棄しにきた教院関係者たちに息ひとつ、眼球ひとつ動かすこともなく絶命している。

少し離れた先には、黒い袋を引き千切り人として原型を保っていることすら怪しい零崎 紅夜の姿だった。

彼は少し前に恩人の命令に背き、異端者としてその体を銃弾の雨が襲ったのだ。

 

「…あぁ……君たちはもういいですよ」

 

ナイアーラトホテップは暫く、紅夜の遺体を観察してから数分後、要約ムーン=ビーストの方へ視線を向けて鬱陶しくに手を振るって彼らの住処に還した。

改めて、ピクリとも動かない紅夜に視線を向けると突如、紅夜を隠すように漆黒のオーラが発せられ、そのオーラが収まると紅夜は立ち上がっていた。ドラゴンを模った漆黒の鎧を身に纏って。

 

「お久しぶりです…………………………………おっぱいドラゴン?」

 

『何故に疑問形?あんた僕の名前を忘れているでしょ』

 

「えぇ、私は格下の名前なぞ覚えませんからメンドクサイし、例で言えば私は大企業の社長、あなたはその支店の下っ端アルバイト生のレベルでしょうか?あ、違いましたね親の脛を齧ることしか能がない引き籠りニートですね。はい」

 

『ーーーーッ』

 

目の前の邪神にデペアは拳を握りしめた。まただ、自分如きの強さでは何もできない、言い返せれない。精々自分は、伝説で描かれる程度の悪龍でしかない。目の前の存在は、世界の全てを混沌に叩き込みそれを酒のつまみにするほどの史上最悪の邪神だ。

蟻と象、それ以上の差がデペアとナイアーラトホテップの間には存在する。

つまり、ナイアーラトホテップはいつでも、どこでもデペアを殺すことが出来る。それは、あの破壊神でもだ。気分一つで無に還される。

零崎 紅夜の使い魔となって、世界の広さを見てしまった、理解してしまったデペアという存在は、あまりに弱小であることを知った。

 

「さて、何の用です?私はあなたと話している時間すら惜しいのです。あの冥獄界ーーーネーミングセンスの欠片のない世界でお仕事をしている我が友に抑えている隷属は有限ですからね。彼はあー見えて、一度『ティンダロスの猟犬』を絶滅一歩手前まで追い詰めたことありましたし、多数戦闘は得意なのですよ?」

 

『……紅夜をどうする、つもりだ…!』

 

ただ一言、それだけを言うだけでデペアは生命の塊にチェーンソーでも差し込まれゆっくりと加速する幾多の刃で削られている気分だった。

悔しい、そしてとても遺憾だったが、空にどれほどの暴言を吐いても多少怒ったりする程度のリアクションだ。

しかし、目の前の存在は違う、一歩選択を誤れば、肉体は久遠の果てまで殺し尽くし、その魂魄は混沌にて砕き散らす慈悲の欠片もない、ただ自由に生きるだけの狂気の存在。

 

「はぁ、あなたも有機体イムナールでもですが、想像できることをなぜ聞くのですか?時間稼ぎ?それても文章稼ぎ?」

 

『確認をしたまでだよ』

 

ドラゴンの鎧、デペアの肉体の一部から焦りの冷や汗が流れる。

ナイアーラトホテップにとって、デペアの鎧の中で眠っている零崎 紅夜はどうでもいい存在だ。彼が気にするのはデペアが、空が知る零崎 紅夜である。

ぴとっ、デペアの鎧の中で紅夜の指が微かに動いた。体中を打ち抜かれた人間なら絶対に死んでいる肉塊、しかし紅夜は、ほぼすべての力を封印しているといっても((人間ではない|・・・・・・))。紅夜は、元々邪神共が最低でも餌程度の認識しかない人間でありながら、邪神を総べるほどの力を持つまでに進化した規則外中の異常例だ。

故に、たかが、全身蜂の巣にされた程度で死ぬわけがない。今も紅夜の体の再構築は始まっている。

 

『−−−ッ!』

 

足と手、そして背中の欠けた形をした翼のブーストに力を込める。

ここで捕まってはダメだ。ナイアーラトホテップに接触したことは、あの破壊神も気づいている筈だ。

デペア自身は、悔しいが太刀打ちできない相手に対しては、逃走という選択肢以外手段がない。

 

 

「一つ言っておきましょう」

 

トンっ、まるで触っただけで崩れてしまいそうな脆い物を触れるようにナイアーラトホテップは肩装甲に手を振れた。

 

「私は、荒事は苦手ですが……」

 

力不足に後悔する暇すら与えず、デペアの鎧は内部に爆弾でも仕掛けられたように砕け散った。

意識が遠くなっていくデペアの意識には、はっきりと全てを見下す様な冷笑をするナイアーラトホテップが映った。

 

「あなたが戦闘態勢に入るまでに最低、千回は殺せます」

 

支えを失った生きている屍は、地面に落ちる寸前。紅夜のコートを噛んで止めた者がいた。

それは、耳が劈く爪でガラスをひっかく様な声で低く唸る。霜と硝石にまみれた翼とたてがみの生えた馬のような頭部を持ち、それは象よりも大きいその体は、羽毛ではなく鱗に覆われていた。その名は、次元を渡ることが出来る特性から、邪神達が移動手段として使用している『シャンタク鳥』だ。

ナイアーラトホテップも、シャンタク鳥の背中に昇り、相変わらず血だらけ状態でも呼吸を開始した紅夜を見て、呟く。

 

「あなたが一番、知りたかったことを教えてあげます」

 

そして、シャンタク鳥はその穢れた翼を大きく広げ、この世界から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な意識中に横一線の光が差し込んできた。それは、とても眩しくて俺は手でそれを防ぎながらゆっくりと瞳を空けた。

 

「………知らない、天井」

 

重たい体を起こした呟いた。辺りを見渡すが全く知らない部屋だ。

俺が眠っていたのはダブルベットぐらいの大きさだ。部屋の大きさは高級ホテルの最上階にでもありそうなくらい広く、窓際には色鮮やかな花が置かれている。どう見ても、大売れのスターや政治的に偉い手等の大金持ちが泊まりそうな高級感あふれる部屋だ。

 

「…あれ?、天国ってこんなところなのか?」

 

溢れた疑問が口に出る。未練はあるが、悔いはなく死んだと思った俺だったが、変な所に来た。

絵本などで語られる様な天国イメージとは、程遠いこの場所に俺は不思議に思いながらベットから降りて立った。

壁際に俺のコートが掛けられており、今の服装はTシャツに長ズボンとシンプルだ。

 

「…な、なんだこれ…」

 

暫く、部屋の中を探索していると禍々しい本棚を見つけた。

見たことない素材で造られているが、そんなことより俺が注目したのはこの本棚に納められている本は、全て鎖に縛られて、厳重に封印されている様に見えた。

これは、危ないと結論を出して俺は再度家を歩き回ると、写真を見つけた。それには俺と空とあと二人の少女が、まるで家族写真でも撮っている様に元気に溢れた笑みを造って映っていた。

 

「……これは」

 

それを見ていると、突如としてドアが開く。思わず身構える、入ってきたのは燕尾服を着た二十前半の男性だった。

 

「お目覚めになりましたか?」

 

「…………誰だ?」

 

「そうですね。ニャル男……とでも名乗っておきましょう」

 

………明らかに偽名だ。それもこの場で思いついたような適当感溢れる名前だ。

とにかく、ここが天国かどうかの疑問だ。俺は確実に頭を撃ち抜かれて死んだのに五感がはっきりとしている

なのに、俺はいまここに生きているという実感が根拠なくある。

とりあえず、情報が欲しい。貴方は誰?俺の状況は?ここはどこなのか等々を聞くがニャル男さんは、教えませんと一点だった。

 

「心配しないでも、あなたに教えることを教えたらあの世界、ゲイムギョウ界に返してあげますよ」

 

「……それは、どうも……っで教えてくれることって?」

 

「あなたの正体です」

 

ーーーー息が詰まった。ニャル男さんの言葉は、まるで筋書きでも書いている様に当たり前のことを言っている様に聞こえた。

ニャル男さんは、少し長話になりますと俺を席に座る様に指示を出してきた俺は焦る気持ちを抑えながら席に座った。

 

「まず、最初にはっきりと言っておきます」

 

静かで、そして強く気持ちを込めるようにニャル男さんは俺を見て口を開いた。

 

 

「あなたはーーー記憶喪失ではないのですよ」

 

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その10
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