超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編
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その夜、俺はケイブ先輩の家でお世話になった。

聞いてみたが、俺は世間では死んだことになった。モンスターに襲われて喰われて遺体も出ていないことに情報が改変されている。

体中に銃弾を受けて蜂の巣状態になった遺体が出れば、流石に不信の一つもあるだろう。それに、元々危ない稼業だったので、世間はそれで簡単に納得するだろう。

………それにしても、暇だ。ケイブ先輩の言う限りでは既に俺が死んだことから数日が経っている。裏からベールには、生きていると既にケイブ先輩が伝えてくれるように頼んでいたので、問題ない。

俺の肉体と意思は、どうしようもないが、俺を心配してくれる人に対しては、どんな事情があれ安全を報告しないと流石に胸糞悪い。

 

国を、女神を裏切った異端者。産まれたその地の女神を信仰せず、他国の女神を信仰する者が呼ばれるその汚名。特に信仰に対して、厳しく管理するリーンボックスにとって、異端者事態が国の恥だ。

 

『なんだか、僕が眠らされている間に色々とあったみたいだったね』

 

「……あぁ、色々とな」

 

ケイブ先輩は、仕事で既にこの部屋には俺しかいない。

今まで音信不通だったデペアの体の一部である闇色の宝玉が手の甲に浮き出て、ちかちかと光りながら声を発す。

 

『あいつから、全部知った?』

 

「お前の知っている全部の範囲と、俺の知った全部が同じとは分からない……けど」

 

『……けど?』

 

「少なくても、俺という人格が偽りであることは分かったな」

 

これから、どうしようと呆然と天井を眺める。

ケイブ先輩は、俺に考える時間をくれた。ここにいたいいと言ってくれた。ーーーけど、ダメだ。

ここにいても、何の解決しない。前にも後ろにも進むことは無く、ただ俺は立っているだけになる。

それだけなら良かったが、この場所がもしばれてしまえば、ケイブ先輩に迷惑が掛かる。あの人にだって、生活がある。……なら、俺のすべきことはなんだ?

 

「……は、ははっはは」

 

『…………』

 

こんな時でもーーーこんな時でも、思考は他人の心配ばっかだな。

自分なんて、本当にどうでもいい。それもそうか、最初から破滅を知らない体なんだ。傷つくのは精神だけ、零崎 紅夜はどれだけ強固なメンタルだったんだよ……。

 

「なぁ、デペア」

 

『……何かな』

 

「紅夜は、零崎 紅夜は……人を殺したことがあるか?」

 

『ーーーーーー』

 

原初の思考に刻まれている。俺にとって守るべき、救うと決めた人々。

俺の質問は僅かな反発だった。これだけの想いを、たかが単一の人間が将来掲げる信念じゃない。狂気者でもなければーーー………。

 

『ある』

 

デペアの発言に驚くことは無かった。当然だ、バケモノでも人間でも、女神の様な存在でもないかぎりそれは不可能だと思っているからだ。

 

『数えれない。あいつは言ったかもしれない紅夜は、十六の因果を喰らった史上最悪の魔人だ』

 

「その、十六の因果の意味が俺にはよく分からない」

 

『……因果、つまり原因と結果。それは分かるよね』

 

「……あぁ」

 

思えば、デペアが素直に零崎 紅夜を聞いて素直に教えてくれたことがこれで始めたかもしれない。

いままで、俺をゼロとして呼んでいたデペアの心境がどう変わったか分からない。これに次があるのか、ないのか、俺には未来なんて予想も出来ないけど、最後に聞いてみたかった。

 

『原因と結果がただ真摯に付き添って続いていくーーーそれは万象を差す、つまり世界だ』

 

「−−−それは、つまり。零崎 紅夜は」

 

『世界を喰らった暴虐者だよ。老人も赤子も、男性も女性も、関係ない。それが子犬でも子猫でも生物であるならば、存在するならば、尽くを殺戮した。それを食らい続けた結果、神々すらを打倒する力を得て、世界すらを飲み込んだ。あとは無限のループさ。これが十六回続いた』

 

「そっ……か…」

 

『…驚かないんだね』

 

驚いているさ。

今の思考とあまりにかけ離れている。守る者も救う者も零崎 紅夜には存在しなかった。世界を喰らった暴虐者は、一体どんな経由で今にたどり着いたんだ?

 

『大分、昔のことだよ。一体なにが合ったのかは分からないけど、幼い時にキャプテンと出会っていた破壊神が死に物狂いで止めて、自分の殺した重さを引きずりながら、キャプテンは夢を見ながら全ての為に戦った。自分を救った破壊神を最大の友として、共に肩を並べて、本当に仲が良かった。あれだね親友以上恋人未満って関係だったかな……あの事件が起きるまでは』

 

「何かあって……空は零崎 紅夜の精神を破壊した…と言っていたな」

 

『うん、僕もあの一撃で危うく破壊されるところだった。凄かったよあいつ、悲壮感溢れる大涙を流しながら、目の前の現実を信じられない表情をしながら、それでも人間なら魂魄を砕け散らすほどの殺気で、いきなり襲ってきた……。あの顔は、とても矛盾していた』

 

「……まるで、誰かに操られたようだな」

 

『破壊神は、旧神っていう世界の善たる存在の隷属で、ある物を媒介に精神操作マインド・コントロールをされているだよ。まぁ、常時じゃなくて、本人も度々気合で振り切っていたけど……けど、あの時は破壊神も精神的に病んでいたからね。とても対抗できるような状態じゃなかった』

 

……思えば、空はよく顔を出す癖にあまり触れ合おうとしなかった。

あの模擬戦を除けば、ほとんど空は俺の顔すら見ようとしなかった。

邪神を召喚しかけて、体調不良でぶっ倒れた時に看護してくれた時も、用事がある以外は、いつも別の部屋にいた。……まるで、逃げるように、遠ざけるように。

 

『こんなことを聞いてどうする………あぁ、そういうこと』

 

「……今から、俺からがすることは……下手すれば殺人だからな」

 

出来るだけ、殺さないように努力はするつもりだ。

けど、何分初めてのことだ。手を見た。知らず力強く握りしめていたのか真っ白だ。

この手が真っ赤に染まってしまうだけで、身震いがした。恐怖が底から這い上がってくる。恐い!恐い!

 

 

ーーーけど、それでも。

 

 

「性分なのか、それとも零崎 紅夜の意思なのかもしれないけど」

 

手紙を書く。せっかく助けてくれたのに俺はケイブ先輩を裏切るような真似をこれからすることになりますと色々と謝罪の言葉を書いて、机に置く。

祈るなら、願うなら、その場にベールも含めた俺にとって、掛け替えのない存在がいないこと。

 

 

『((紅夜|・・))、協力するよ。この世から小さいおっぱいと大きいおっぱいの両方の属性を持つ逸材を失うわけにはいかないからね』

 

「ーーーは、相変わらずだな」

 

外に出る。いつの間にか再生している漆黒のコートが、自然の風に踊る。

空を見た。呑気に風に流される雲、心地いいほどの安らかな陽光に目を細める。

 

 

「このまま、なにもしないのが恐い。例え全てが脚本通りでも、例え全てが決められた物であっても、やっぱり、なにもしない方が恐い」

 

 

無造作に手を振るう。重みが出現する。

モンスターの命を斬る黒刃が、人を守る救うと誓った守護の為の刃を。

俺は、今日この時だけーーーその信念を捨てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンっ、それは昼後の穏やかな空気の中で教会に響いた音だった。

お腹が満たされ、平和と安泰の雰囲気の中で、眠気に誘われていた教院関係者には突然、強引に開かれた扉に一斉に視線を送る。

漆黒のコートを纏った青年が無言で歩み続ける。

黒と白が混ざった銀髪は彼の一歩、一歩と同調している様に不規則に揺れている。

髪によって隠れ気味の真紅と蒼穹のオッドアイは鋭く、何物にも近寄りがたい雰囲気を醸しだしている。

教院の一人が、思わず手に持っていた書類を落す。

それもそうだ。数日前、この手で引き金を絞り確実に銃殺した人物が傷一つもなく来たのだから!

 

「…………ネプテューヌはどこだ?」

 

静かに、そして強く、彼は言い放った。

教院関係者たちは驚きとーーーそして恐怖に支配された。

ここに運ばれて以来、とても真摯で、とても強く、そして時に他国の土産を持ってきてくれる心優しい青年が、この場で((女神が住む領域|・・・・・・・))で武器を出し、冷たい殺意を身に纏ったーーーまるで死神のような姿で、ここにいるのだから。

 

「こ、紅夜くん……?」

 

「……流石に全員が関与している訳じゃないか」

 

教会に突如としてやってきた紅夜の行動。

それは、ネプテューヌの救助だった。イヴォワール教院長は紅夜に暗殺を依頼した。それを断った紅夜は一度殺された。

それはいいと言えよう。しかし、暗殺対象とされたネプテューヌがどうなるのか……紅夜はそれが気がかりだった。

最悪の展開は、別の者がネプテューヌを暗殺すること、そして教会が何らかの手段でネプテューヌを束縛して

じわりじわりと死に追い込むことだ。

紅夜のしたことは、まずネプテューヌが宿屋としている所へ行ったことだった。幸さいわい場所は、一度見送った事があったのではっきりと覚えていた。結果は真っ黒。

宿屋のオーナーとO☆HA☆NA☆SIをしたところ、腰の低い男性であったのか、あっさりとルームサービスの料理に毒を仕込んだことを告白した。紅夜にとってそれは予想内であり、仮にも女神であるネプテューヌを毒で直ぐに殺せるとは思えず、そう考えれば厳重に捕縛する場所が必要だ。そこで思いつくのはここだった。

紅夜がまだ疑われていた時代、ケイブの元で監視目的の為に配属されていた特殊警備隊で、仕事の関係上で教会の下にかなり大規模な牢獄があることを知っていたのだ。

女神の力を封じ、尚且つ衰弱させるほどの空間を考えた時、紅夜にはここ以外思いつかなかった。

 

「………お前、俺を撃ったメンバーの一人だな」

 

「!?」

 

黒曜日を手に、紅夜は書類を落した男性に目を向ける。

動揺した刹那、逃走本能が稼働しようとしたときには、既に眼前には紅夜が彼の肩を逃がさないと掴んでいた。

 

「……言え。今の俺は、なんでも((殺せるぞ|・・・・))」

 

不気味に黒曜日が黒い光沢を放つ。

どこかの莫迦が適当に広めたかもしれない噂『女神に匹敵するほどの実力者』それに疑いようのない威圧が紅夜に合った。

しかし、それは決して女神のような優しさと崇めてしまうほどの美しさではない。

その逆、恐れ慄き命乞いをするために畏怖せざるおえない猛悪なバケモノの眼光だった。

 

「た、助けてくれ。俺はーーー!?!?」

 

思わず出たこと言葉は命乞いだった。

まだ死にたくない。家には妻と子供がいるのだ。汚く染まった手かもしれないが、それでも守りたいことがあるその意思を嘲笑うように、紅夜は無言で肩を掴んでいる手を魔力で強化して思いっきり握った。バギッーーー硬い物が潰された効果音が空間に響いた。

 

「ギ、アアアァァァァァァ!!!俺の肩がぁぁ!?」

 

あまりの激痛に男は声を上げた。

その場に居合わせていた人間が悲鳴を上げた。

だが、紅夜の表情は変わらない。痛がる男性の首を掴み持ち上げれた。

 

「知っている、か…知らない…か…下手すれば、赤子でも答えれる質問だ。知っているなら監禁されている牢獄の部屋のナンバーを教えろ。知らないなら知らないと言え、今度関係ない言葉を吠えてみろ今度は首を壊す」

 

「あっ…がぁ…特……殊、7、26…」

 

「そうか」

 

必要ない、利用価値はないと判断したのか、男性を放り投げる。

牢獄室に足を進めようとしたとき、騒がしい音と共に銃など武装をしたここの警備員が一斉に紅夜に向かって銃口を向けた。

 

「異端者零崎 紅夜!何を血に迷ったのか国を、女神様を裏切った亡霊め!」

 

「……それが、どうした」

 

「!、貴様、罪悪感の欠片もないようだな、このバケモノめ!命乞いをするならば慈悲を与えるところ、神聖な場所で貴様のような穢れた者が来る所ではない!撃て、撃てぇぇぇ!!!」

 

一斉に放たれる銃弾。このまま立っていれば数日前のリプレイになるだろう。

紅夜は、黒曜日を床に突き刺し身を小さく丸めた。前回は黒曜日を出す瞬間がなかったが、これだけで数々のロボットを切り裂いてきた黒曜日の硬さを貫くことはできない。

 

『やるのかい?』

 

銃弾の雨の中、デペアは黒曜日を盾にしている紅夜に質問を投げた。

今まで絶対にして向けなかった人に対しての敵意と殺意を惜しみもなく紅夜は発していた。

デペアの声に、紅夜は無言で左手に浮き出ていた宝玉を軽く摩る。まるで、自分の刃を研ぐように。

 

『ゴメン。無粋だった』

 

デペアは紅夜の心の世界。

暗黒と鮮血が支配する空間で、九つの瞳をゆっくり閉じた。

簡単なことだ。自分が聞くのもバカらしい、この紅夜は確かに後悔や苦悩を幾度もなく繰り返してきた。それでも、後の事がどうあろうと覚悟をしてやってきた男だ。

そんな男が、腹を括ったのだ。もう、だれも彼を止められることはできない。

銃弾の雨が止んだ。その瞬間、黒曜日の中心部の下にあるもう一つの柄を握りしめ、大剣から双剣に変えた紅夜は地面に滑る勢いで、警備員達との距離を詰めた。リロードする時間は皆無。逆手に構えた二つの死神の刃は、本来向ける相手を変えて、猛威を振るった。

 

 

 

 

 

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