超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 リーンボックス編
[全1ページ]

ーーー何をやっているんだろう。

ベールの頬に流れた雫を見て、俺はそう思ってしまった。

ただ、辛い目に合っているだろうネプテューヌ達を助けたくて、ただそれだけで俺は動いてきた。

その結果はうまくいったと言えるだろう。だけど、その代わりにベールを泣かせてしまった。

 

『紅夜!』

 

「−−−あぁ!」

 

ぶつかり合った黒曜日とベールのランス。その膠着状態を後ろにブーストを吹かして、いったん距離を取る。

ベールはランス故に懐に飛び込んでしまえば、何とかできる。この教会を襲った時点で、努力して今の所殺人を犯していない。

同じように女神殺しなんてするつもりは滅相もない。出来るなら、無力化して逃げるが………

 

 

ーーー紅夜、紅夜。これを見てください!

 

 

頭の中で、子供のように喜ぶベールの笑顔が過った。

腕を見る。闇色の宝玉が心臓の鼓動のように光る禍々しい籠手だ。

 

「……俺が、俺が、壊したのか…」

 

決意はあった。しかし、覚悟がなかった。

今まで積み重ねてきた思い出を、自分の手で彼女を傷つけてーーー。

 

『紅夜!』

 

「ーーーおおぉぉぉおぉ!!!」

 

止まらない。止まってはいけない。止まってしまえば何もかも無駄になってしまう。

再びブーストを吹かして、ベールとの距離を一気に詰めて黒曜日を横に振るうが、当たる直前にベールは背中の片方ずつ三枚に分かれたバックプロセッサを吹かして上空に飛ぶことで俺の攻撃を躱した。

直ぐにこっちも腕と足と背中の魔力噴射器に火を付けて、追いかけて再び黒曜日で斬りつけるが、これもダンスを踊る様に躱された。

今まで、見てきた女神の中で分かったことは、ベールはスピードタイプだ。

装甲を削り、莫大な加速力を利用した突進と彼女から放たれる散弾のような突きの連撃には、如何なるモンスターは避ける動きすら出来ず、葬られてきたのを俺を見てきた。

彼女のランスの射程に入りれば、あっという間に蜂の巣が出来ても可笑しくない……なのに、先ほどから攻撃しているのに、全て躱されか、弾かれる。なんで……反撃しようとしない!

 

「余裕で、舐めプレイで、俺を倒せるとでも思っているのか、ベールゥゥゥ!!!」

 

「…………」

 

気合のまま、魔力を黒曜日に流して斬撃と共に散弾として放出する。

ベールの足が止まる。ランスで幾つか弾く。

またブーストから莫大な魔力を放出しながら、一気に距離を詰めて黒曜日を縦に振るう。

体を逸らして躱された。二撃目にもう一本の方の黒曜日を横に横一閃に振るうが、槍でガードされた。

しかし、好機だ。このままブーストを吹かして地面に叩きつけてーーー

 

「私は…紅夜と戦いたくなんて、ありません…!」

 

「−−−−」

 

その叫びに、俺の動きは止まった。

 

「どうして、私と紅夜が戦わないといけないですか!?紅夜は一体何のために戦っているのですか!私は、私はーーー………紅夜の((敵|・))なんですか…」

 

強い声音から徐々に風が吹けば、消えてしまいそうなほどベールは今の状況を呪っているように呟いた。

 

『紅夜、もうすぐで使用限界が来るよ!……紅夜?』

 

黒曜日が手から滑り落ちて、量子に変わって消える。

俺も呪いたい。なんで、こうなったのか、こうしなければならなかったのか……分からない。

本当にネプテューヌ達を救う為に、俺はベールを傷つけるしかなかったのか?……分からない。

笑顔を守るはずなのに、壊す羽目になったこの状況が吐き気がするほど頭の中でグルグル回る。

 

「俺を攻撃しろ、グリーンハート」

 

「ーーーー!」

 

驚いたようにベールは目を大きくして、俺を見た。

鬼畜だと、自分行動が憎く見える。けど、ベールの傍には、ケイブがいる。チカがいる。

………だから、俺がいなくなっても、大丈夫だろう。

全魔力を噴射器に回す。いままでないトップスピードの速さで拳を造って、ベールに接近する。

 

「−−−レイニーラトナピュラ…」

 

展開される超高速の連続槍撃。

俺は、恐れずそれに突っ込んだ瞬間、『((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイル))』の尾をベールのプロセッサユニットに突き刺して不完全ながら『((Deain|ドレイン))』を発動させて、力を吸収すると同時に、『((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイル))』を解除する。

散弾の様に放たれた槍撃は、肩と腰に走った。鋭い痛みがある。

 

「−−−本当に、ごめんな」

 

ベールに向かってそう伝える。

鎧を解除したことで飛翔能力を失った俺は、激しい風圧を肌で感じながら地面に向けて落ちていく。

例で言うならビル10階くらいの高さからの落下だ。このまま何もしなければ、潰れたトマトみたいになってしまう。魔力もほとんどゼロに近い状況だ。

 

「デペア、分身を造ることが出来るか?さっき吸収したベールの力で」

 

『……君は、諦めたのか。巨乳ッ子の面子を、女神としての威厳を保つためにわざと負けるようなことをしたのか、でもそれはーーー』

 

「………分かっているよ。……でも、俺には……」

 

もう、ここに居場所はない。

全てを裏切ってしまったのだ。傷つけてしまったのだ。

だから、お願いします。ケイブ先輩、チカ……ベールを助けてやってください。俺にはベールを見る資格すらないと思うからーーー

 

『チッ、全く無茶しやがる。君も疲れただろう?後は、任せて』

 

「……いいのか?」

 

『任せてよ。これでも、君も含めて長いことパートナーしてきたんだぜ?』

 

もう、精神が限界かもしれない。

教会を襲撃して、前ほどじゃないけど体中撃たれてその痛みで、もう指を起こすことすら限界に近い……。

目を瞑る。真っ暗だ。耳がベールの声を拾う。答えることも出来ない。−−−本当に、俺って無力だな。

ベールとネプテューヌ達、両方大事だから両方救う手があったらなぁー……もっと力があればなぁー………。

 

『イア!イア!ショブ=ニグラス!!黒き豊潤の女神よ。我らに恵みを与えたまえ!』

 

もう一つ、デペアにメッセージを残して、冒涜的な聖句と共に、俺のゆっくりと閉じた。

 

 

 

 

「ーーーショブ=ニゴラスの創造力で、自分の肉体のコピーを地面に叩きつけてその場の…まぁ、グリーンハート以外の全員はそっちに意識が傾いた隙に逃げたか。ハスターの風も使用して姿を朦朧とした上で……」

 

『だったら?どうするんだい破壊神』

 

意図的に紅夜を追う輩の意識を別方向だと勘違いさせる認識阻害魔法を発動させて、ボロボロの姿で木に背中を預けて眠る紅夜を僕は、見下ろして、はぁ、とため息を付いて紅夜の隣に座る。

ここは、マードの森と呼んで、それなりにレベルが高いモンスター闊歩する危険な森、貴重な薬草があるが、大陸の中でもかなり奥の地域で雪も降るこの地域に近づく人は、滅多にいない。

 

「甘いね本当に」

 

『甘くないと紅夜でも、キャプテンでもないよ』

 

内心どこにでも行けと言っているような声だ。本当に嫌われたな僕……まぁ、納得もしているから何も言わないけど、謝ったら絶対に『謝るだけで済むなら警察はいらん』とか言ってきそうな奴だし。

とりあえず、ここは雪が降る地域なので空間を捻じ曲げて、別の空間に放り出している所有物を取り出す便利上、保有空間と呼べる所から、僕は毛布を取り出して、紅夜のコートに付いた血痕は『破壊』して綺麗にして

毛布を被せた。

 

『どっかの破壊魔と違って紅夜は、守ったよ。全部じゃない心は傷つけたけど、女神という価値は守った。今頃、悪のモンスターを女神様が直々に対峙した!とかでニュースで盛り上がってシェアが上昇しているんでしょ?』

 

「むぅ……確かにグリーンハートに対するシェアは上がったね」

 

個人的には気に入らないけど。

 

『これも、君が知っている筋書き通りなのか?』

 

「まさか、そもそも『円環外れ』である紅夜と言う因子がハチャメチャしたこの事態は想定外過ぎるって!」

 

例で言うなら、教科書の内容を全部覚えしたのにテストには全く別の問題が出た感じ!

そもそも、こちとら紅夜がこの世界に来たのを知ったのは、結構最近なんだよ!?そろそろネプテューヌが人間界に落ちて物語が始まるかなぁーて、ちょっと早めに行こうとゲイムギョウ界に来た時に気づいたんだよ!!

 

『………本当に?』

 

「嘘ついてメリットあるなら言ってみてよ」

 

『紅夜の計画性皆無の行動マジ愉悦wwとか』

 

「それは作者の感想だろう!」

 

しかもそれ、超個人的な感想じゃん!僕は作者の化身じゃないし!もっと理論的なメリットを言ってよ!

大体、今までの紅夜の活動って表は冷静だけど、猪のように突っ込むことしかできない能無しと言ってもいいぐらいだから、そんなの見ても楽しくもなんともないよ!

 

「……っで、これからどうするの?」

 

『さぁ?紅夜のことだから、ネプテューヌと合流しようとするんじゃない?』

 

だろうねー。これからどうなるんだろう……ネプテューヌ達が貴族側に拾われないと本当にネプテューヌ死ぬよ?死んだら幼いネプギアどうするんだよ?まだ女神化なんて到底できないよ?。

マジェコンヌがいなければ、別にプラネテューヌが滅んでもそういうルートがあるのかーーっで納得できるけどさ、あのマジェコンヌは、基準的ルートに沿った世界に疲れたマジェコンヌじゃない、闇に浸食されたマジェコンヌだ。

元々この世界に存在した者であっても、あれが動き始めれば、僕は絶対に奴の動きを阻止する許さない。

 

「やっぱり、早急にブラッディハードを用意しないと………」

 

このままだと良くないことが起きる。

紅夜を見る。ぶっちゃけ、ブラッディハートに必要な素質と才能は間違いなく歴代トップだ。

けど、血塗られた運命に紅夜を巻き込むわけには……。

 

『そういえば、紅夜から君にメッセージがあるよ』

 

「ん、なにそれ…?」

 

『ネプテューヌ達をよろしくお願いします……ご丁寧に敬語だぜ?』

 

「………うわぁ、面倒ー」

 

もしかして、紅夜って未来予知能力でもあるの?

ここは、ネプテューヌが取り込んでしまった毒を唯一解毒できる薬草がある森だ。

紅夜の表情を覗き見ると悔しそうだった。……これは偶然か、それとも運命か……深いため息をして紅夜の周囲に結界を展開する。

この辺のモンスターじゃ歯が立たないほどの強度、景色と同化する擬態能力、そして紅夜が目覚めて少しの猶予の後、解除されるように術式を組んでっと……

 

『……やっぱり、君も甘いね』

 

デペアの言葉に僕は、鼻で笑う。

透明色に展開した結界の異常がないが確かめて、再度紅夜の顔を見るやっぱり無力に苦しむような悔しむ表情だった。

全く、そうやって君は人間のように苦しみながら、悲しみながら、楽しみながら、喜びながらの道を選ぶんだね……本当にその精神が羨ましくなるよ。

立ち上がって、周囲を確認する。そんな都合よく近くに薬草がある訳がない。ここは森の出口付近で、もっと奥に進まないと求める者はないだろう。

 

「紅夜の頼みなら、断る理由はないよ」

 

「■■■■■ッッッッアァァァーー!!!!!」

 

『ヴァルヴァドス』を抜き取り、紅夜を見ながらソレの頭を打ち抜く。

後ろから僕の背丈の倍はある巨大な人型のモンスターは、一瞬にして絶命して、ノイズが体を包んで弾け飛ぶ。

 

 

「さて、行きますか」

 

 

 

 

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その16
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