リリカル龍騎 −深淵と紅狼−
[全1ページ]

左右反対となった、虚像の世界。

 

「が、は…ッ!!」

 

鮫のような特徴を持ち、仮面で顔の隠れた水色の戦士―――仮面ライダーアビス。彼は今、全身ボロボロの状態で膝を付いていた。そんな彼の目の前に立っているのは、鳳凰らしき黄金の戦士。

 

「私を含め、残るライダーは四人だけとなった。貴様はもう用済みという訳だ」

 

黄金の戦士―――仮面ライダーオーディンがそう告げて、手に持った杖に一枚のカードを装填する。

 

≪SWORD VENT≫

 

二本の剣が飛来し、オーディンの両手に収まる。

 

「フンッ!!」

 

−ザシュッドシュッズバァッ!!−

 

「ぐ、が…おぁ…!?」

 

オーディンの連続して繰り出す斬撃を、アビスが喰らい続ける。反撃を試みようとしても、オーディンは瞬時に彼の真後ろへとワープし、再び斬撃を浴びせる。

 

そして…

 

「ハァッ!!」

 

−バキィィィィィンッ!!−

 

「がふ…」

 

アビスのベルトに差し込まれている、鮫のエンブレムが刻まれた水色のカードデッキ。それにオーディンの繰り出した一撃が命中し、バラバラに粉砕される。

 

「これで、お前も終わりだ」

 

オーディンは剣を放り捨ててから、彼に対して振り向く事も無くその場から瞬時に姿を消す。一人残されたアビスは変身が解除されて青年の姿へと戻り、その場に倒れる。

 

「ゲホ、ゴホッ……まだ、だ…」

 

青年は血を吐きながらも、砕け散ったカードデッキに右手を伸ばそうとする。

 

「俺……は………ま、だ……ッ…」

 

青年の手が砕けたカードデッキに届きそうになったその時…

 

 

 

−シュゥゥゥゥゥ…−

 

 

 

(…!)

 

 

 

伸ばした右手から、少しずつ粒子が出始めた。いや、右手だけじゃない。身体中から少しずつ粒子が出始め、消滅しようとしていた。

 

 

 

(ここまで、なの…か……いや、自業自得…か…)

 

 

 

青年の視界が少しずつぼやけていく。そこで青年は右手を伸ばす事をやめ、右手が地面に落ちる。

 

 

 

(疲れるな………生きるのは……)

 

 

 

「本当………めんど……くさ、い――――――」

 

 

 

そこから、青年の意識は途絶えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ぅ、ん…」

 

青年は目を覚ます。

 

「…ッ!?」

 

意識がハッキリしてきたのか、ガバッと起き上がって周囲を見渡す。

 

「…何だと?」

 

窓のあるそれなりに綺麗な部屋で、青年にとっては全く知らない場所だった。いや、そんな事は今は非常にどうでも良い事、問題は別にある。

 

 

何故、俺は生きている?

 

 

そんな疑問を抱いたその時、部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。

 

「あ、起きたようね」

 

「!」

 

ドアを開けて、アリサが部屋に入ってきた。

 

「ここは…」

 

「私の屋敷よ」

 

アリサはベッドの近くにある椅子に座る。

 

「びっくりしたわよ。家に帰ろうとして公園通ったら、あなたが砂場で倒れてたんだもの。しかもあれから長い間目覚めずに結局夜になっちゃうし」

 

それを聞いて、青年は余計に疑問が深まった。

 

(俺が、公園の砂場で倒れていた…?)

 

おかしい。自分はさっきまでオーディンと戦っていた。そのオーディンに負けて俺はカードデッキを砕かれて、あの世界に取り残された。そのまま俺は一人死んだはず。なのに何故…

 

「…くそ、訳が分からん」

 

「は?」

 

「いや、こっちの話だ」

 

どれだけ考えても、答えには辿り着けない。今はこうして生きている事を幸運に思うべきだなと、青年は心の中で考える。

 

「悪いな、迷惑かけた…ッ!!」

 

「ちょ、無理して動かないの!!」

 

ベッドから立ち上がろうとした青年だったが、オーディンとの戦闘で受けたダメージは残っているからかその場に倒れかかり、アリサが上手くそれを支える。

 

「もう時間だって遅いわ。あんたもさっきまで気を失ってたんだし、今日だけでもここに泊まっていきなさいよ」

 

「…悪いな」

 

アリサにそう言われ、青年は再びゆっくりとベッドに座る。

 

「で、私もあなたにちょっと聞きたい事があるの」

 

「何だ?」

 

「私の執事があなたを家まで送る事になったから、一応あなたの名刺を見て住所を調べさせて貰ったんだけど…」

 

アリサが青年の名刺を手に取る。

 

「パソコンで調べてみても、住所が一切検索に引っ掛からなかったのよ」

 

「何?」

 

「何度検索しても同じだったわ。始めから、存在なんかしてないような感じで」

 

「…!?」

 

青年は目を見開き、アリサから携帯を借りて同じように検索をしてみる……が、結果はアリサの言った通りになった。

 

始めから存在してない?

 

そんな事がありえるのか?

 

「…もしやとは思うけど」

 

「?」

 

「あなた、違う世界から来たとかじゃない?」

 

「…はっ?」

 

アリサの一言に、今度は青年が眉を顰める。

 

「違う世界だと? いくら何でも話が飛び過ぎじゃないか?」

 

「あ〜…まぁ、そう言いたくなる気持ちは私にも分かるんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法、次元世界、時空管理局…」

 

アリサの口から説明された内容は、青年にとっては信じ難い事ばかりだった。地球以外にも、いくつもの世界が存在している事。世界の中には魔法が存在している世界もある事。魔法を使える者は魔導師として時空管理局という組織に所属、様々な世界の平和を守っている事。アリサの友人達もその魔導師になって時空管理局に加入し、今は違う世界で活動している事。

 

「一通り簡潔に説明したけど……これで分かった?」

 

「そんなアッサリ信じられたらそいつは色々とおかしい」

 

「まぁ、やっぱりそう思うわよね…」

 

「…ただ」

 

青年はベッドに倒れ込む。

 

「どうやら俺は、そのおかしい奴のようだ」

 

「え?」

 

「俺のいた世界でも、非現実な事なら色々あった」

 

「? どういう事よ」

 

「まぁ、話すと長くな…」

 

言いかけたところで、青年は絶句する。その原因は、青年の視線の先にあるハンガーにかけられたジャケットのポケットからはみ出ている…

 

水色のカードデッキだった。

 

「…嘘だろ」

 

青年は起き上がり、ハンガーにかけられている自分のジャケットからカードデッキを取り出す。

 

(オーディンと戦った時に破壊された筈だ、それが何故ここに…!?)

 

「何、どうしたの?」

 

何のこっちゃと言いたげなアリサが覗き込む。

 

「あぁ、すずかが言ってた奴ね。あんたの服のポケットに入ってたらしいわよ」

 

「俺の服に…?」

 

「そう。で、結局それ何なの? 何かよく分からないカードが何枚も入ってるみたいだし…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

−キィィィン…キィィィン…−

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

 

突如、二人の脳内に耳鳴りが響いてきた。

 

「え、何なのこの音…?」

 

「ッ…何だと…!?」

 

突然の耳鳴りにアリサは困惑しているが、青年はこの耳鳴りを聞いて表情が一変した。しかしそれも当然であろう。

 

青年にとって、それは今までに何度も聞いている音なのだから。

 

(まさか…!!)

 

青年が窓の方へと目を向ける。窓に映る青年やアリサ達の姿が、僅かにグニャリと歪み出した。

 

「伏せろ!!」

 

「え…キャアッ!?」

 

青年がアリサを伏せさせると同時に、二人の頭上を一本の針が飛び、壁に突き刺さる。

 

「チッ…!!」

 

「な、何で針が…」

 

「説明は後だ!!」

 

青年は斜めを向いた状態で窓の前に立ち、手に持っているカードデッキを見つめる。

 

(何でこれがここにあるのかは知らんが、カードデッキの状態からして“アイツ等”との契約は恐らく続いているまま……もしかすれば…!!)

 

青年はカードデッキを右手から左手に持ち替え、窓に向かって勢い良く突き出す。

 

すると…

 

(! やっぱりな…)

 

窓に銀色のベルトが映し出され、それが青年の腰に装着される。

 

「ベルト…!?」

 

アリサが驚いているのを他所に、青年はカードデッキを持った左手をゆっくり顔の前まで持って行き、そこから素早くベルトの左側へと移動させる。

 

そして青年は、あの言葉を叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

「変身!!」

 

 

 

 

 

 

カードデッキがベルトに挿し込まれ、青年は別の姿へと変身する。全身のカラーは青や水色、鮫の特徴を併せ持った頭部やボディ、左手にはコバンザメのような形状をした装置。

 

海の狩人“仮面ライダーアビス”だった。

 

「姿が、変わった…?」

 

先程から驚かされてばかりであるアリサに、アビスが振り返る。

 

「説明は後でしてやる。今は少し待ってろ」

 

「あ、ちょっと…」

 

アリサが呼び止める前に、アビスは窓の中へと入り姿を消してしまった。

 

「あぁ〜も〜…何が一体どうなってんのよぉ〜…!!」

 

訳の分からない事が連続で起こり続けているのだ、混乱するのも当たり前だろう。アリサはイライラしながら髪を掻き、アビスの入り込んでいった窓を睨み続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

反転した世界、ミラーワールド。

 

「ヴヴヴヴ…」

 

白い身体をしたヤゴのようなモンスター“シアゴースト”がうろついていた。

 

そこへ…

 

−ズドォンッ!!−

 

「ヴェゥゥッ!?」

 

「全く、こんな面倒な時に出てきやがって」

 

シアゴーストの背中に、水の衝撃波が命中。シアゴーストの振り返った先に、左手の召喚機アビスバイザーを突き出しているアビスがいた。

 

「ヴヴヴヴヴヴ…!!」

 

「ご立腹か? 安心しろ、すぐに終わらせてやる」

 

アビスはアビスバイザーを右手で撫でつつ、シアゴーストに言い放つ。

 

 

 

 

 

 

「お前も、さっさと沈め」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この海鳴市に、一人の仮面ライダーが姿を現した。

 

説明
第1話:深淵復活
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コメント
果てなき希望も良いですよね。鎌田は……まぁ、中の人が中の人ですしww(竜神丸)
果てなき希望もいいと思うんだ俺は! 「終りなき戦いを決して恐れはしない」っていう龍騎にピッタリのフレーズが。アビスは「過去と未来のカマタが、ひとつに・・・」が印象的だったw デザインは好きよ?(デーモン赤ペン)
げんぶ:さて、どうなるでしょう?(竜神丸)
それで良いと思います。ちなみに私は挿入歌ではRevolutionも好きです(竜神丸)
取り合えずイメージOPは「Alive A life」で!!(その目に迷いなし)(Blaz)
まぁ、シアゴーストは大量にいますしねww(竜神丸)
最初の餌はヤゴか・・・ミラーモンスターがいるうちは餌は大丈夫だな!(okaka)
アビスはディケイド版でのみ登場したライダーです。なので本来の龍騎本編には登場しません(竜神丸)
主役がアビスか…………………ってか鮫の奴が居た記憶が全然無い。序盤に退場したライダー?(ohatiyo)
タグ
魔法少女リリカルなのはStrikerS 仮面ライダー龍騎 仮面ライダーアビス 舞台は海鳴市 主人公はオリキャラ 

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