好き、これからも友だち
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 春の日差しが降り注ぐ学校の中庭に、楽しそうな笑い声が響き渡っていた。そんな笑い声に合わせるようにして、暖かい風が芝生を吹き抜ける。

 その場所で、((仲谷|なかたに))((皇祐|こうすけ))は一人、お弁当を食べていた。

 高校入学してから、一ヶ月が経とうとしている。クラスの中でも、気の合う同士が集まったグループのようなものが出来上がっていく頃だ。

 皇祐も、入学式に新入生代表として挨拶をしたおかげもあって、クラスのみんなに声をかけられた。毎日、机の周りに人が集まってくるのだ。

 裕福な家庭で育っていた皇祐は、中学の頃にはそのイメージが大きく印象づいていた。高校でも、それを知っている人が話題に出すものだから、余計に好奇心が煽られ、あらゆることをみんな聞いてくる。

 家のことは、あまり触れられたくないことだった。だけど、切り抜ける方法がわからなかった。どちらかというと人と会話するのは苦手で、うまく話せる自信がない。

 皇祐は、その場をやり過ごすように曖昧に答えた。そして、これ以上質問攻めにあいたくなかったから、回避するために、みんなから距離を置くようにした。

 そのうち、飽きたのか、周りに人が集まることはなくなった。用がない限り、話しかけられることもない。

 代わりに、感じが悪いだの、お高くとまっているなどと、かげ口を叩かれた。そして、皇祐はクラスで浮いた存在になり、孤立していった。

 それで良かったと思っていた。

 人と一緒にいるのは、わずらわしい。

 そう感じていたから、一人でいることが楽だった。

 勉学に励むために学校に来ているのだから、他には何も必要のないこと。

 父親にも、そう厳しく教えられていた。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 家のことは、使用人がほとんどやってくれる。掃除、洗濯、食事の用意など全てだ。仕事でほとんど家に帰ってこない親の代わりでもあった。

 その使用人が、ある日突然辞めてしまう。父親と合わなかったのだ。

 家にいることが少ない父親だから、使用人と関わることは滅多にない。だけど、その日は父親が家に一日中いたらしく、なぜか使用人と言い争いになったという。皇祐が学校から帰ってきた時には、使用人が家を飛び出していなくなったあとだった。

 よくあることだから、驚きはしないのだが、次の使用人が決まるまでが不便になる。家のことは全て任せているから、自分で何かするのは困難なのだ。

 辞めてしまった使用人に、思い入れはなかった。親の代わりでもあったが、短期間で辞める人ばかりで、心を開く前にいなくなってしまうのだ。だから、寂しいという感情は生まれない。

 しかし、翌日の昼に、皇祐は悲惨な目に合うのだった。

 いつもお弁当は使用人が作ってくれる。だが、辞めてしまった以上、それまでは自分でどうにかしないといけない。

 学校には、購買部がある。そこで昼食を買おうと思ったのだが、購買部の前まで来て、皇祐は途方に暮れた。

「……これって、買えるのか?」

 昼休みの鐘が鳴ったと同時に、みんな即座に購買部に急ぐ。中には、授業が終わる前に、教師の目を盗んで抜け出す人もいた。

 そんな人たちを不思議に思っていたが、いざ自分が当事者になればわかる。ゆっくりとした足取りで購買部に向かったのが間違いだった。既に人だかりができていて、ものを選ぶのも厳しいように思えた。

 だが、躊躇している余裕はない。昼休みの時間は限られているのだ。早くお昼を買って、次の授業が始まる前に食べてしまわないといけない。

 皇祐は、その人だかりの中に足を進めてみることにした。

 何とか中には入ることはできたが、今度は人に押されて、身動きが取れなくなった。前に進むことも、後に戻ることもできない。

 高校生男子の平均身長よりもだいぶ低い皇祐は、体型も細身で小柄だった。だから、すぐに人混みに飲まれてしまうのだ。

 たくさんの人がぶつかり合い、押し潰されそうになっていた皇祐が、人と人の隙間を見つけて、どうにか手を伸ばした。何でもいいから、指に触れたものを掴んでみる。

 棚にあった袋に入ったパンらしきものが、二袋も手にすることができた。それを大事そうに胸に抱き、店員にお金を払って、地獄のような場所からようやく脱出する。

 ほっと息をついた皇祐の姿は、制服だけじゃなく髪も乱れていて、ひどいありさまだ。学生らしく短い髪型ではあったが、前髪だけは少し長めで、こだわりを持っていた。

 父親には、短髪でいることを言いつけられているから、見つからないようにするのが大変だった。

「明日は、学校来る前に買ってこよう……」

 そう心に決めて中庭に向かおうとしたら、大声を上げて騒いでいるのが聞こえてきた。何ごとかと思って声のする方に視線を移せば、男が購買部の店員と何やら揉めているようだ。

「おばちゃん、オレの分、取っておいてって言ったじゃん」

 彼は((小此木|おこのぎ))((敦貴|あつき))、皇祐のクラスメートだ。喋ったことはないが、身体が大きく、どこにいても目に入ってくるから、印象に残っていた。

「はい、はい、ごめんねー」

 忙しそうにしていた店員は、頷きながらも、彼の話を聞き流しているように見えた。その様子が気に入らなかったようで、さらに食って掛かる。

「ねー、ちょっと聞いてるの? スーパーおいしいまるごといちごバナナパン、さっきまでここにあったよね? オレ、見たんだから!」

 随分と長い名前のパンだ。よく覚えていられるな、と皇祐は感心した。勉強のことなら記憶していられる自信はあったが、パンの名前は怪しいところだ。

 店員は、怒っている彼にたくさんのパンを渡し、言いくるめようとしている。それでも、彼は納得がいかないようだ。

 いつの間にか、彼の行動から目が離せなくなっていた。危なっかしくて、放っておけなくなる。

 でも、構っていられる時間はなかった。こうしている間にも、昼休みの時間は削られていく。

 皇祐は、パンを握りしめてそこから離れようとした。不意に、自分の手にしていたパンの袋が目に入った。そこには、『超おいしい!まるごといちご&バナナロールパン』と書かれている。

「あっ……」

 思わず、足を止めた。彼が言っている名前とは若干違うような気もしたが、似たようなパンが他に存在するとも思えなかった。

 彼の方を振り返ってみると、周りで友だちが宥める中、悔しそうに地団駄を踏んでいる。まるで癇癪を起こした子どものようだったが、少しかわいそうに思えた。

 このパンは、皇祐にとってはどこにでもあるパンと同じ価値しかない。だが、彼にしたら特別なものなのだろう。

 皇祐は、ゆっくりと彼に近づいて、声をかけてみた。

「あの」

 傍に寄ると、思っていたよりも体格がいいことに気づく。

「あ?」

 相当機嫌が悪いのだろう。皇祐に向けた瞳は鋭く、口は曲げられていた。顎までの長さの黒髪が、さらりと揺れる。前髪は鼻にかかっていて、普通なら鬱陶しく見えるのに、手入れが行き届いているのか清潔感が溢れていた。だけど、制服のネクタイは緩めていて、着崩している。

「なーに? なんか用?」

 不満げな様子が、彼の声から伝わってきた。

「これ、僕が君のパンを間違って買ってしまったようだ」

 パンの袋を差し出すと、彼は急に表情を和らげた。

「あ! オレの欲しかったパン!」

 皇祐が彼に手渡すと、満面の笑みで喜びを表す。

「すげー、本物だー、うわー」

 パンの袋を空に掲げて、目を輝かせていた。さっきまでの機嫌の悪さはどこに行ったのか、おもちゃを買ってもらった子どものようにはしゃぎ回る。

 やはり、彼の中では余程価値のあるもののようだ。思い切って声をかけて良かったと心から思った。

「悪かったな。じゃあ、確かに渡したから」

「え? ちょっと……」

 彼は何か言いかけていたが、これ以上、関わりたくなかったから、足早にその場を去った。

 自販機でパックの牛乳を買い、中庭のいつものベンチに座った。時間を確認して、がっくりと肩を落とす。昼休みがほとんど失われていた。

「何だか、疲れた……」

 とりあえず腹ごしらえをしようと、パンの袋を見て、更に落ち込むことになる。

 もう一つ手にしていたパンは、レーズンパンだった。よりにもよって、なぜこれを選んだのかと自分を責めたくなる。皇祐は、レーズンが苦手だった。

 昼からも授業があるから、昼食を取らないわけにもいかない。レーズンを取り除くということも考えたが、それを捨てるのも忍びなかった。仕方がないので、牛乳で流し込むようにしてレーズンパンを腹に入れた。

 途中、涙目になりながら、やっとの思いで食べ終えた頃、なぜか小此木敦貴が現れる。

「あー、いた、いたー」

 皇祐の姿に気づいた途端、小走りで近づいてきた。

 パンを間違って買ったことに、文句でも言われるのだろうか、と不安が頭を過ぎった。身構えていれば、突如、腕を掴まれる。

「パンのお金、払ってなかったから」

 手のひらを上に向けさせられ、そこに小銭を無造作に置いた。

「……良かったのに」

「ダメだよ、こういうのはちゃんとしないと」

 そう言いながら、隣にどっかり座った。

 もう用は済んだはずなのに、なぜ居すわるのか。意味がわからなかった。彼から少し離れるため、気づかれないように身体を横にずらしてみる。

 彼の腕には、透明の大きなビニール袋が下げられていた。中にはたくさんのパンが入っているようだ。その中から、さきほどのパンを取り出す。いかにも嬉しそうに、口元には笑みを浮かべていた。

「ねえ、いっつも、ここで食べてるの?」

 急にこちらを向いたので、うろたえそうになった。反射的に顔を反らして、返事をする。

「うん……」

「ここ、気持ちいいもんね。でも、雨の日はどうするの?」

「……雨の日は、教室で食べるよ」

「ふーん」

 聞いてきたのは彼なのに、あまり興味がないようだった。彼の視線は、パンの方に戻っている。勢いよく袋を開けたら、こちらまでイチゴの香りが漂ってきた。

「わぁ、おいしそうだー。いただきまーす」

 大きな口をあけて、ぱくりとパンを頬張った。満足そうに目を細め、唇にクリームがついているのも気づかないらしく、夢中でパンにかじりついている。

「やっべー、これすげーウマい」

 美味しそうに食べるその姿を見ているだけで、何だか幸せな、暖かい気持ちにさせられた。

「そんなに、おいしいのか?」

 話しかけるつもりはなかったのに、つい声をかけてしまった。食べるのが早いから、もうパンは彼の腹の中だ。

 皇祐の方を向いた彼は、困った顔をする。

「もしかして、食べたかったの?」

「いや、僕はいらないけど」

「なーんだ、びっくりした。これ人気だから、狙ってる奴多くてさ。オレ、これが食べたくてこの学校に入ったから、もう思い残すことないなー」

 彼の発言に、皇祐は衝撃を受ける。

「え? それって、ここじゃないと食べられないものなのか?」

「似たようなパンはいっぱいあるけど、これはイチゴもバナナも新鮮なものを使ってるし、クリームもこだわってるから全然違うんだって。それに、このパンの生地のやわらかさは絶妙だよ。しっとりしてさー」

「……そう、なんだ」

 興奮して熱く語る彼に、圧倒された。だけど、ここまで喜んでくれるのなら、パンを作った人もきっと嬉しいに違いない。何の思い入れがない皇祐が食べるよりも、求めている彼が食べてくれて、本当に良かったのだ。

 それにしても、彼はなぜ、ここに居続けるのか。既に昼を食べ終わっていた皇祐は、手持ち無沙汰で困っていた。

 いつもなら、食事が終わると本を読んで、休み時間を満喫するのだが。

 彼の方は、そんな皇祐の思いも知らずに、三袋目のパンを幸せそうに食べている。

 いい加減うんざりして、小さくため息をついた。

「そうだ、知ってる? 駅に向かう途中にでっかい豪華な歯医者あるの」

「……歯医者? いや、気づかなかったけど……」

 唐突な話題に戸惑っていた。虫歯でもあるのだろうかと頭を捻る。

「その隣にラーメン屋ができたんだけど、今日オープンするんだって」

「……詳しいな」

「オレもさっき聞いたんだ。学生は百円で食べられるの。すごくない?」

「百円……、それは安い」

 この世の中に、百円で食事ができるところがあるなんて知らなかったから、本当に驚いたという声を出していた。

「でしょ!」

 得意げな顔をする彼が、微笑ましく感じた。食べることに関して、特別な思いを持っているようだ。

 食に執着しない皇祐にとっては、不思議な感覚だった。

 今度は、おにぎりを口いっぱいに入れ、頬を膨らませて食べている。

 頭の中に、動物のリスが浮かんだ。こんな大きなリスがいるはずないのに、似ていると感じたのだ。いつの間にか、彼の食べる姿に目を奪われていた。はっと我に返り、首をふるふると振った。

 彼が喋らない時は、静かな時間が流れた。その沈黙が落ち着かなくて、居心地が悪い。

 何か話さないといけないとわかっていても、何も浮かばない。彼との共通な話題が、自分にあるとは思えなかった。

 やっぱり、彼がここに居る理由が見つからない。苦しくて、重いものが心にのしかかってくるようだった。

 皇祐は、自分の腕時計の時間を確認し、ベンチから立ち上がる。

「もう戻るよ」

「え? まだ時間あるよ?」

 二個目のおにぎりを手に持ちながら、驚きの表情を見せた。

「次の授業の予習をしたいんだ」

「すっげー」

 顔を上げた彼は、目をぱちくりさせて、おにぎりをぱくっとくわえた。

「じゃあ」

 彼から逃げるように、その場を後にした。

 心休まる昼の時間が、一気に沈んだ気分で終わってしまったのだった。

 

 

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 午後の授業が終わり、皇祐は教室から出ようとした。

 その時、肩を叩かれ呼び止められる。

「コウちゃん!」

 振り返れば、そこには小此木敦貴がいた。

「もう! さっきから呼んでるのに、無視するんだもん」

「……コウ、ちゃんって、僕のことか?」

「あれー? コウスケって名前じゃなかった?」

「そうだけど……」

「なら、コウちゃんでいいじゃん」

 聞き慣れない呼び方に、困惑していた。自分をあだ名で呼ぶ人はいない。今までにも呼ばれたことはなかった。彼は、いとも簡単に距離を縮めてくる。

「オレのことは、敦貴って呼び捨てでいいよ。苗字は言いにくいからさー」

 歯を見せてニッと笑った。何が楽しいのかわからなかったが、悪い気はしない。

「……敦貴、何かあったか?」

 名前を呼ぶのは、何となく気恥ずかしくて、声が小さくなっていた。

「ああ、そうそう。コウちゃんも一緒にラーメン食べに行こうよ」

「ラーメン?」

「ほら、昼に言ってたじゃん。新しい店がオープンするって。これから予定あるの?」

 いくつか習い事をしていたけど、この日はちょうど何も入ってない日だった。

「……ないけど」

 そう答えてから、失敗したと思った。

 敦貴の後ろに、こちらを見ている男子が数名いる。みんなで行こうとしていたところに、彼が皇祐の名前を出したのだろう。嘘でも用事があると言えば良かったのだ。

「僕が行っても……」

 雰囲気を悪くするのは、わかっていた。それなのに、敦貴は強引に腕を引く。

「じゃあ、いいじゃん。行こうよ」

「敦貴……!」

 みんなの前に、皇祐を連れ出した。

「コウちゃんも行くってー、早く向かおう。絶対混んでるもん」

 彼らは何も言わなかったが、なぜコイツもついてくるのかといような微妙な空気を漂わせてた。そんなことも気づかず、敦貴は本当に楽しそうに、飛び跳ねるようにして喜びを表す。

 ラーメン屋に向かう途中も、そのテンションのままだ。皇祐の隣を歩きながら、敦貴が一人で喋っている。前を歩く男友だち三名にも、すかさず話を振り、場を盛り上げていた。

 それは自然にやっていることで、前を歩く男子たちが、皇祐がいることに対して不満そうにしているのは、まるでわかっていないようだった。

 店にたどり着くと、敦貴の予想通り混んでいて、長蛇の列になっていた。ほとんどが制服を着た学生なのは、やはり価格が百円で安いからなのか。

「待つのめんどー。早く食べたいからイライラするんだけどー」

 列に並んだ途端、仏頂面で敦貴が文句を言った。

「仕方ねーだろ、じゃあ、諦めるか?」

 友だちの一人が、苛立ちを表情に出す。

「どのくらい待ってるか、誰か店に行って見てきてよ」

「アツキが行けよ」

「また戻ってくるのダルいもん……」

「じゃあ、おとなしく待ってろ」

 皇祐は、敦貴たちのやり取りをハラハラしながら見守っていた。そのまま喧嘩になりそうな勢いだったからだ。

「コウちゃんは、待つの平気?」

 急に話を振られたので、驚いて上擦った声を出す。

「ああ、平気」

「そーなんだ。それなら、順番待とうー」

 面白くなさそうな顔をしていた敦貴だったが、友だちたちとも喧嘩することなく、おとなしくなったのでほっとする。

 三〇分くらい待ったところで、ようやく店内に入ることができた。中はそんなに広くないが、新しい店というだけあって、きれいにされている。

 古くて汚いというのが、皇祐の中のラーメン屋のイメージだったから、意外に思えた。

「お客様は何名ですか?」

 学生にも見える可愛らしい女の子が、皇祐たちの前にやってきて、訊ねてきた。

「五名だよー」

 敦貴が気だるそうな声で答えると、店員の彼女が、店内を確認しながら少し困った顔をする。

「ぎりぎり四名でしたら座れるんですけど……もう少ししたら空くと思いますので、他のお客様を先にご案内してもよろしいですか?」

 かなり混んでいるから、五名いっぺんに座るのはなかなか厳しいらしい。中には相席している人たちもいるようだった。

「そうなのー? じゃあ、ケンちゃんたち先に食べてていいよ。オレとコウちゃん、次に空くまで待ってるから。いいよね、コウちゃん?」

「……構わないけど」

「じゃあ、先に食ってるな」

 三人は店員に案内されて、一番奥の座敷に座った。そこも狭いようで、三人が座ってもやっとという感じだ。

「敦貴……良かったのか? みんなと食べなくて」

 あんなにも早く食べたいと不満をこぼしていたのに、予想外の行動に目を見張る。

「あ、コウちゃん、みんなと食べたかった? ごめんねー」

 軽く腰を曲げ、顔の前で手を合わせて詫びてきた。 

「いや、僕は……いいんだ……」

 みんなで顔を合わせて食事をするのには、抵抗があった。だから、離れて座ることになって、正直なところほっとしている。

 でも、敦貴は違う。みんなと食べることを楽しみにしていたに違いない。

 そもそもの原因は、昼休みに皇祐が、敦貴に声をかけたことから始まっていた。そのせいで、今度は敦貴に声をかけられ、二人は関わることになってしまった。この場に皇祐がいなければ、敦貴はみんなと一緒に食べることができたはずだ。

 時おり、先に座った男子たちの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。そこに、敦貴はいない。心を引き裂くようなズキズキとした痛みに襲われた。

 席が空くのを待っている間、皇祐と敦貴に会話はなかった。つまらない思いをしているのではないかと気がかりだったが、話題が見つからない。ただ、黙っているしかなかった。

 それから少し経って、二人はやっとカウンターの席に案内される。

「なに食べようかな。迷うなー」

 メニューを見ている敦貴は、ご機嫌に鼻歌を歌いながら、口元をほころばせていた。その様子にほっと胸を撫で下ろし、同じくメニューを眺めた。

「コウちゃんは、何にする?」

 どれを選べばいいのかわからず、混乱した。不安そうに皇祐が敦貴の方に視線を向ける。

「……うん、どうすればいいだろう」

「迷ってるの? だったらさ、オススメの塩にしなよ。オレは味噌にするから、味見し合おうー」

 こちらに身体を寄せてきて、皇祐が持っていたメニューを覗き込むようにして笑顔を見せた。

「任せるよ……」

「わかった。おっちゃん、塩と味噌ねー」

 豪快に手をあげて、慣れた様子で敦貴は注文を頼んだ。

「ありがとう……」

「んー?」

 敦貴にお礼を言えば、小首を傾げ、不思議そうな表情を浮かべた。

 彼は何もしていないつもりなのかもしれないが、皇祐にとっては有難いことだった。店の中で大きな声を出して注文をするという行為が、皇祐にはハードルが高かったからだ。

 しばらく待って、皇祐と敦貴の前にラーメンが運ばれてくる。それと同時に、一緒に来た三人がちょうど食べ終わり、席を立ったところだった。

「アツキ、食ったから先帰ってるぞ」

「んーわかった。また明日ねー」

 片手を上げて、軽く挨拶をした後、敦貴はすぐにラーメンの方に飛びついた。

「すげー、おいしそうー。いただきまーす」

 割り箸を即座に割り、麺をすくって、ふうふうと冷ましながらすすった。幸せに満ち溢れた顔で、今度はスープを飲む。

 皇祐の方は、それどころではなかった。先に帰ってしまった敦貴の友だちのことが気になって、落ち着かない。

 一緒に店にやって来たのに、食べるのも、帰るのもバラバラだ。これではまるで意味がない。間違いなく自分のせいだと、思い悩んでいたのだ。

「ウマいよ、これー。コウちゃん、どうしたの? のびちゃうよ」

 何度も店の外の方を気にして振り返っていたから、さすがの敦貴も、眉を寄せて浮かない表情を見せた。

「うん……」

 ラーメンに夢中の敦貴は、友だちのことは全く気にしていない様子だ。本人がいいのなら、皇祐が心配しても仕方がないのだが。

 敦貴の食べ方を確認しながら、皇祐も割り箸を割った。そっと麺をすくいあげ、ふうふうと充分に冷ましてから口に入れた。深い味わいが口いっぱいに広がって、衝撃を受ける。麺の硬さもちょうど良かった。

「ウマい……」

 思わず、口から漏れていた。

「塩もウマい? 味見させてね」

 肩に敦貴の身体が触れた。狭い店だから、やむを得ないが、先ほどからすごく気になっていた。

 敦貴の方は、そんな様子を見せずに、レンゲを持って、皇祐のどんぶりからスープをすくって口に入れる。

「ほんとだー、塩もイケるね。味噌も食べてみる?」

 敦貴がどんぶりを皇祐の方にずらしたので、同じようにレンゲを使ってスープをすくった。冷ましながら、ゆっくり飲んでみる。味噌はコクがあって、病み付きになりそうな味わいだった。

「敦貴のもおいしいな」

「そうでしょー?」

 まるで自分が作ったような言い方だったから、何か可笑しくて、笑みが零れてしまう。それを誤魔化すように咳払いをして、ラーメンを食べることに専念した。

 

 

 

「はぁーウマかったー」

 店を出て、敦貴はご満悦な様子で腹を擦った。

 外にはまだ、ラーメンを食べるために待っている人たちが、たくさん並んでいる。待ってでも食べたい、そんな心境になったことがなかった皇祐だったが、今ならその気持ちが少しわかる。

「こんなおいしいものだって、知らなかった」

 食事をしたせいもあったが、感激して身体が熱くなっていた。

「そんなに気に入った?」

「気に入ったっていうか……」

 皇祐は、言いかけて口籠った。こんなことを口にすれば、白けてしまうんじゃないかと不安になる。

 だけど、それ以上に、今の気持ちをどうしても言葉にしたかった。

「……実は、ラーメンを食べたのは今日が初めてで」

「え!? コウちゃん、ラーメン食べたことなかったの?」

 敦貴は、驚いた様子でその場に立ち止まる。予想通りの反応だ。

「父親に、身体に良くないものだから食べるなって言われたから……」

「へー、そうなんだ。それなのに食べて良かったの?」

「うん、こんなにおいしいのに、ラーメンを食べないなんて損してるよ。今日は誘ってくれて、ありがとう」

「わーい、初めてのラーメン、コウちゃんが喜んでくれたー、やったー」

 敦貴は、皇祐の言ったことに対して引くどころか、反対に嬉しさを表した。

 スキップするように軽やかにくるくると走り回り、楽しそうに笑う。それにつられて、ふっと口元が緩んだ。

 ――また、敦貴と食べに行けるといいな。

 そんなことを思いながら、皇祐もからりと晴れるような気持ちになっていた。

 

 

 

*****

 

 

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 それからも敦貴は、皇祐に構っていた。

 休み時間には、真っ先に皇祐のところにやってくる。学校が終わると、一緒に帰るために皇祐の前に現われた。お互いの予定がなければ、二人でどこかに寄ってから家に帰る。そんな日常だ。

 嬉しくないわけではなかったが、他の人たちの目が気になった。

 彼には、たくさんの友達がいる。それなのに、皇祐が傍にいる時は、誰も敦貴に話しかけない。そうなるのは、自分のせいだということは重々承知していた。だから理由をつけて、なるべく距離を置こうと必死だった。

「コウちゃーん」

 昼休み、中庭のいつものベンチに座っていると、遠くから大きく手を振る敦貴の姿が見えた。

 手を振り返さなくても、彼は駆け寄ってくる。

「待っててって言ったのに、先に行くんだもん」

 そして、断りもなく、皇祐の隣に座るのだ。

「あれー? 今日、お弁当なんだねー」

「ああ、新しい使用人が決まったから……」

「しようにん?」

 通じなかったようで、首を傾げながら、敦貴はパンの袋を開け、ぱくりと食らいついた。

「お手伝いさんだよ。食事を作ったり、洗濯とか掃除したり、家のことをしてくれるんだ」

「すげー、そんな人いるのー? 母ちゃんも欲しいって言ってたよ。もう弁当作りたくないって、いっつもオレに怒るからさー」

「弁当? 今は持ってきてないの?」

「ああ、オレ、昼前に食べちゃうから、昼になったらもうないの。朝食べても、すぐお腹空くんだよねー」

 今も、片手におにぎりを持ちながら、三つ目の蒸しパンを食べ終えようとしている。食べる量もすごいが、スピードも早かった。

 敦貴は、学校に食事をしに来ているかのように、いつも何かを口にしていた。しかも、帰宅途中も買い食いをしたり、店に入って何かを食べたりする。一人で食べるのは嫌だからと、毎回付き合わされる皇祐は、大変な思いをしていた。彼の胃袋がどんな風になっているのか、想像がつかない。

「コウちゃん、それ、おいしそうだね……」

 皇祐が弁当の蓋を開けると、敦貴のじとっとした視線を激しく感じた。思わず苦笑してしまう。

「何か食べたいものある?」

 弁当の箱を差し出せば、敦貴の顔一面に、嬉しそうな笑みが浮かんだ。

「いいの? 玉子焼きが食べたーい」

「どうぞ」

 指で卵焼きをつまみ、一口で食べた。口いっぱい、頬をふくらませて、満足そうな表情をする。

「コウちゃんのウチ、甘い玉子焼きだー、ウマい」

 そんな満たされた様子を眺めながら、皇祐もウインナーを箸でつまんで口の中に入れた。

 使用人が変わるたびに、ほんの少しだが、料理の味が変わる。どの使用人が作っても、決して不味いということはなかった。代わりに、家庭の味がどんなものなのか、皇祐にはわからないのだ。

 このお弁当もそうだった。何の変哲もないごく普通のもの。使用人に好みを聞かれたが、言ったところで大した代わり映えしないだろうから、任せると伝えた。

 お弁当があるだけでも有難いことなのだから、贅沢は言っていられない。なければ、購買部で大変な目に合うのだから。それはわかっていたが、お弁当を口に入れても、全く味がしないような感覚に、いつも陥る。

 もくもくと食べていれば、なぜか敦貴は、頬を人差し指で軽く押してきた。

「……な、に?」

 皇祐は思わず、敦貴を凝視した。

「ごめん、コウちゃんのほっぺたって、白くて柔らかさそうだから、ずっと気になってたの。本当に柔らかいね」

「は……?」

 すぐ理解することができず、固まってしまった。その間もずっと、優しくつつくように頬を押してくる。

「小さくてマシュマロみたいなんだもん。コウちゃん見てると、お腹空くー」

「……僕は食べ物じゃない。それに、僕が小さいんじゃなくて、君が大きいだけだろ」

 彼の言葉が癇に障り、手を払いのけ、少し嫌な言い方をしていた。口にしてから気づいたが、後の祭りだ。誤魔化すように、ふいっと顔を伏せた。

 すぐに敦貴も、様子がおかしいことがわかったようで、顔を覗き込んでくる。

「小さいの、気にしてたの?」

「気にしてない……」

「だから、いつも牛乳飲んでるの?」

「どうでもいいだろ」

 これ以上、深く追求されたくなかったから、敦貴に背を向けた。だけど、お構いなしに声をかけてくる。

「ねー、コウちゃーん」

 肩をぽんぽんと軽く叩いてきた。反応しないでいると、今度は敦貴の大きな手が肩を掴み、軽く揺らしてくる。

 全てなかったことにしたかった。消えてなくなりたい。

「僕のことは、ほっといてくれ」

「玉子焼き、もう一個食べたーい」

 後ろからお弁当を指差して、催促をしてきた。

 皇祐だけが気にしていただけで、小さいという話題は、彼の中では既に終わっていたらしい。

 敦貴は、どんな時も食べ物のことが一番のようだ。そのおかげで、この難を逃れることができたのだから、良しとしよう。 

「……好きなもの食べていいよ」

 敦貴の方を向き直り、再び弁当箱を差し出した。

「ありがとー」

 美味しい物を食べていられるなら、敦貴は誰と一緒に居ようとも気にしないのかもしれない。だからって、どうして皇祐なのだろうか。

 最初は、お金をあてにしているのかと思っていた。過去にも、そのために近づいてきた人がいたから、彼もそうなのかと考えた。自分には、それぐらいの価値しかないことはわかっていたから。

 だけど、二人で店に寄っても、敦貴は自分の分は自分で払う。食べたいものがたくさんで、お小遣いをやりくりするのが大変だと嘆いていることもあった。だから、代わりに払おうとしたら、ひどく怒られた。

 それなら、どんな理由があって傍にいるのか。

 皇祐は、敦貴を満足させるような特別な美味しい物を持っているわけでもない。面白いことを言って笑わせることだって難しいことだ。

 自分の前で、幸せそうに物を食べている敦貴の姿を見るたび、なぜ彼がここにいるのか全くわからなくて、締め付けるように胸が苦しくなった。

「敦貴……」

「んー?」

「いつも僕のところに来るけど、友だちと食べた方がいいんじゃないか? 最近、一緒にいないだろ。僕のことは気にしなくていいから」

「なんでー?」

 敦貴が小首を傾げながら、複雑そうな顔をした。

「僕は、つまらない人間だよ……」

「つまんなくないし……」

 むっとしたようで、目を細めて、不機嫌そうに口を曲げた。

 彼が黙ってしまったので、会話は続かなくなる。周りの楽しそうな笑い声や話し声が、やけに響いて聞こえた。二人の間に沈黙が流れ、息をするのも苦しく感じる。

 こういう時、気の利いたことが言えたら、雰囲気も変わるのに、それができない自分が悔しかった。いっそのこと、自ら一緒にいたくないと拒絶する方が、楽になれるんじゃないかと考える。

 その間に、予鈴が鳴ってしまった。

「あっ、敦貴、もう行かないと」

 いつもなら、予鈴が鳴る前には戻っていたから、皇祐は慌てた。急いで弁当を片づけて、教室に戻ろうとした。すると、立ち上がった敦貴に腕を掴まれ、強く引っ張られる。

「待ってよ……」

 敦貴は、感情を抑えるような低い声を出した。

「遅れるって」

 様子がおかしいことは感じていたが、授業に遅れることの方が気がかりで、頭が回らなかった。

 低い声のまま、敦貴が言葉を続ける。

「コウちゃんは、オレのこと友だちだと思ってないってこと?」

「え?」

「オレは……、コウちゃんと一緒だと楽しいから、ここに来てるんだよ。大好きな友だちだから、コウちゃんと居るのに……」

 想像していなかったことを彼の口から聞かされ、息が詰まったように立ち尽くしていた。

「コウちゃんは……違うの?」

 敦貴が震えたような声を出した。泣いているのかと思って、心臓が激しく波打つ。

 彼の様子を確認したかったが、それすらも怖くて、顔を上げられない。

「ごめん、そうじゃない。僕も敦貴と一緒に居たいけど、敦貴は僕と居ない方がいいと思って……」

「一緒に居たいのに、なんでそうなるの? オレ、よくわかんないんだけど」

「敦貴は、他に友だちがいるから」

「他に友だちがいたら、コウちゃんと友だちになれないの? それなら、他の友だちはいらないよ!」

 思いきって彼の顔を見れば、表情が曇っていて、彼の苛立ちが伝わってきた。

 敦貴を独り占めしたいわけじゃなかった。自分と一緒にいることで、彼に嫌な思いをしてほしくないだけなのだ。そして、自分自信も傷つきたくなかった。

「……よく、わからないんだ」

 自分でも何を言いたいのか、整理がつかなくて混乱していた。どれが正解なのか、何が正しいのか、答えが見つからない。

「頭の良いコウちゃんでもわかんないなら、オレなんか、わかるわけないよ」

 敦貴のためを思って言っているつもりだったけど、本当は自分のことしか考えていないのかもしれない。

 傷つくのが怖いから。人と関わらなければ、最初から一人でいれば、苦しまなくて済むのだ。

 本鈴が鳴っていたが、敦貴は掴んでいた腕を離そうとしなかった。振り解くこともできたはずなのに、それをしないのは離れたくないからだ。

「授業、始まるよ……」

「いいよ、授業なんて。こっちの方が大事だもん。はっきりさせないとヤダ!」

 言い出したら聞かないのは、食べることに関してだけかと思っていた。彼の性格自体が、頑固なのだろう。

 皇祐の腕を掴む指に力が入っていて、ズキズキと痛み始めていた。

「腕、痛いよ。ここに居るから離して……」

「あ、ごめん……」

 はっとしたように手を離し、悲しそうな目をした。

 静かにベンチに座ったら、敦貴も隣に座って身を乗り出してくる。

「コウちゃん、オレのこと嫌い?」

「嫌いじゃないよ」

 慌てて首を横に振った。唐突すぎて、思考回路がついていかなくなる。

「オレもコウちゃんが大好き。じゃあ、これからも友だちでいいよね」

 安心したように眉を下げて笑った。はっきりと言い切られて困り果てる。

「僕は、敦貴に何もしてあげられない。それでもいいの?」

「いつもオレに付き合ってくれるじゃん。一緒にラーメン食べたり、ゲーセン行ってお菓子取ったり、アイス食べたり。今日はお弁当もくれたしー」

「そんなこと……」

 わかりきっていることだったが、誰にでもできるようなことを並べられ、ショックを受ける。皇祐は顔を俯かせた。

「オレは、これからもコウちゃんと友だちでいたい。一緒にいたいもん。いいでしょ?」

 皇祐じゃなくてもいいのではないか。懐かれる理由が、いまいち納得できなかった。だが、ここまで断言されたら頷くしかない。

「わかった……」

「やったー」

 両手を上げて喜びを表したと思ったら、急にぎゅっと抱きしめられた。敦貴の広くて厚い胸板に顔を押し付けるような格好になって、思うように息ができない。腕の中でしばらくもがいた後、やっと顔を上げることができた。

「苦しい、敦貴……」

「コウちゃん、オレ、ファミレスしゃぼん玉のパフェ半額券持ってるの」

 また急に話題が移った。しかも、敦貴の大好きな食べ物のことだ。今の話は、もういいのだろうか。若干呆れそうになったが、相槌を打つ。

「それは、すごいね」

「うん、半額って魅力的だよね。だけど、これ見て、今日の午後三時までなの。これから行けば間に合うけど」

 ひらひらと半額券を二枚、皇祐の前に見せつけた。

「え? 授業はどうするんだよ」

「それなんだけどー、もう授業始まっちゃってるしさ、このままサボっちゃおうよ」

「はぁ?」

「ねえ、ダメー? 今月ピンチだから、半額でパフェ食べたいのー」

 期待するような、キラキラとした純粋な眼差しをこちらに向けてきた。

「敦貴……」

 この時、皇祐は気づいたのだ。彼に頼まれると、自分は断れないということに。敦貴もそのことをわかっていて、わざとやっているのではないかと思えてくる。

 だけど、例えそうだとしても、皇祐は腹が立たなかった。

 敦貴が喜んでくれるのなら、それだけで良かったのだ。

 

 

 

 

 

 授業をさぼって、パフェを食べに行った皇祐と敦貴は、翌日、担任に呼び出しを食らったのは言うまでもない。

 敦貴はよくあることなのか、叱られても平然としていたが、皇祐にとっては初めての体験で、こっぴどく怒られて、かなり堪えたのだ。

 それでも、敦貴が一緒だったから、嫌な気持ちも半分で済んだような気がしていた。

 友だちなんていらない。支え合って生きていくなんて嘘っぱちで、人は一人で生きていくものだ。今までは、そう納得していた。

 だけど今は、誰かと一緒にいるのも悪くないと思い始めている。心が温かい気持ちで満たされていた。

 敦貴となら、これからもずっと友だちでいられる――。

 皇祐は、そう信じて疑わなかった。

 

 

 

 

 

END

 

説明
同人誌「好き、はじめての気持ち」、「好き、想いは同じだから」の敦貴と皇祐の高校時代のお話。こちらだけ読んでも大丈夫だと思います。(サイト再録)
サイト:http://xxx.grats.jp/sc/
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