超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる女神 リーンボックス編
[全1ページ]

竜の如くうねった炎の渦が襲い掛かってきた。

触れずとも地面を溶解させるほどの熱量を持った竜巻を四つの翼があるバックプロセッサのブーストを吹かして、左に躱す。

避けた場所に狙った様に紅い炎弾が迫ってくる。シェアエナジーを圧縮して形成した幅の広い剣ーーーチンクエディアを振るってかき消し、上空から黒と白の大剣を振り下ろして奇襲してくる黒い半竜人、魔龍の一撃を体を逸らすことでギリギリで躱す。

 

「−−−っ、熱い、熱い」

 

体を焼く邪神の炎を『破壊』する。

全く、このプロセッサユニットの基本素材である超硬度オリハルコンですら溶ける一歩手前まで行った。

シェアエナジーを膜として、防御しながら戦わないと骨すら残らない。

 

邪神『クトゥグア』ーー炎属性の中でもトップクラスの実力者。あのナイアーラトホテップすら恐れる存在。

その力だけを召喚して、憑依させた魔龍の装甲は一片の隙間なく燃えるような真紅の色へと変わっている。

相変わらず見るだけで嘔吐感が溢れるほどの気味が悪い25個の翠色の瞳は健在だけだ。

 

何時もの僕なら、相手との距離を取り隙を伺うんだけど、まだ見える範囲でパープルハート達がいる。

少なくても、僕が見える範囲でこいつが暴れれば、あっという間に黒焦げ三つの屍の出来上がりだ。

マグマより圧倒的に熱い火炎を真面に受けて、原型を保っていられる生き物なんてそうはいないだろう。

 

「−−−!!」

 

「ァ…ア!ァザァァトォォォオス!!!」

 

ブーストを吹かしてこの場を離れる。

一瞬、パープルハートの方に視線が向けたが、僕の方が優先するターゲットだったのか背中から伸びている触手を翼として束ねて、空へ飛ぶ。

魔龍の体は紅い軌跡を残しながら、放たれた弾丸のように真っ直ぐ飛んできた。

これまた、呆れる程速い。直ぐに追いつかれて足を触手で縛られ、一気に地面に叩きつけられた。

意識が、刹那の時間奪われる。チンクエディアで足に巻きついた触手を切り落とそうとした手は、更に触手で拘束される。

 

「……僕に、Mな素質はないよ」

 

高熱の触手に束縛されているのに冷たい汗が頬を流れる。

 

「アアァァァ、ザァァトォォォス!!」

 

壁と連想させるほど詰まった紅い触手。

片手と片足を拘束されて、動きに最悪なレベルな制限が掛けられている。

抜け出す手段も間に合わず、体が蹂躙させる。刃を生やした触手が肉体を喰らう/抉る/捻じ込む。

口も/耳も/目も、入りきれなくて、引き千切れて無理やり場所を確保して容赦なく入ってくる。

 

「−−−−−」

 

超痛い。

拷問で熱した鉄棒を押し付けるとかあるけど、これはその比じゃない。

体の中で蠢く触手は、まるでレースゲームと言わんばかりに我先にと体の中を動き回る。

人間でも、女神でも、こんな状況になったら激痛と恐怖のあまり狂い死ぬか、体の中にある致命傷となりうる器官を焼かれて死ぬかだろうね。

でも、僕が普通じゃない。口から入った触手が胸から顔を出す。耳から入った触手が腕の関節から飛び出る。目から入った触手が太ももから内側から肌を焼いても這い出てきてもーーーまだ、拳が握れる。まだ、足に力が入る。まだ、戦う気力がある。

チンクエディアを霊的なシェアエナジーとして分散させる。剣が消滅したことに魔龍は調子に乗ったのか、触手の数を減らして、顔を近づけてくる。あの熱量を纏っているんだ目が見えなくても分かる。

 

 

ーーー『プロセッサユニット・アサルトモード』

 

カチッ、とスイッチが入るような音がした。

ガントレットの一部が回転する。空中に浮かんだシェアエナジーが集まっていき、黄金の鉤爪を三つ造る。

それと同時にプロセッサユニット自体も変形を始めた。魔龍は異変に気づいて黙らせようと二つの大剣を振り下ろしてきたが既に遅い。

肩のスラスターがガントレットに接続された。ブーストを吹かして魔龍の腹部にお返しの一撃を叩き込む。

 

「!?」

 

魔龍が吹き飛ばされたと同時に体中から触手が抜ける。

既に体の再生は始りながら、((変形|・・))は完了した。

腰部のパーツが一部脚部に移動して開き、新たな噴射機構を見せる。四対の翼は合わさり上下に展開する大型のスラスターへと変化する。

この世界のプロセッサユニットは概念はシェアの実体化させ、それを纏うことにより女神化の元からの身体能力に加え更に飛翔能力+身体能力の倍増だ。

だが、僕のプロセッサユニットはその概念とは違う。ある日イストワールと相談して、女神の強化パーツとして作り出した別次元のプロセッサユニットだ。そして、試験段階に造った欠落品。《エリス》《アサルト》《ブラスター》の三つの変形機構があり、並の女神なら体が崩壊するほどの殺人的な性能、シェアエナジーも卒倒するぐらい消費する大飯喰らいで暴れ者。故に、今の所シェアクリスタルを一個消費して僕が扱うしか使う機会がない。

 

まだ視界は回復していない。けど、魔龍の場所くらいは分かる。

ブーストを全開に吹かして、吹き飛ばされている状態の魔龍の懐に潜り込む。

魔龍は前方に防御に触手を展開するか、クトゥグアの炎を噴きだすだろうが、関係ない。ガントレットのスラスターを点火、魔龍に更に一撃を加える。

 

 

「!?アァァ……!!」

 

 

視界が開く。思った通り触手と炎をガードしていたが、元から防御を砕く技『ガードストライク』を決めたんだ。魔龍は痛みを訴えるように25個の瞳が忙しく動く。元から硬い魔龍の装甲自体は貫けれないけど、衝撃は貫通できた。魔龍がどれほど凶悪で、極悪で、恐ろしい力があったとしても魔龍の中身は紅夜だ。今の紅夜でこの攻撃は、絶対に怯む。

 

「まだ、終わらないよ」

 

白を基本として、シェアエナジーを伝達する黄金のラインの流れが加速する。

脚部のスラスターと背中の大型のスラスターが一気に火を噴き、放たれた弾丸のように地面を滑り、そのままのスピードのまま跳び蹴り、魔龍が体制を崩した所で足を掬うように蹴りを放つ。

宙に浮かんだ魔龍は後ろに下がり、先端に刃を生やした触手が伸ばそうとするが、加速を維持しながら地面に手を置いて、魔龍の顔部目掛けて上から足を振り下ろして脳天に叩き込まれた魔龍は動きを止める。更に態勢を崩すため足を掬い、倒れ気味の魔龍に刈り取るような一撃を顔部に加え、顎目掛けてブーストを全開に吹かしながら、蹴り上げる。宙に浮かんだ魔龍に追撃、ブースト全開に三つの黄金色をした鉤爪が生えたガントレットの両方で腹部に内部を破壊させる『ガードストライク』を叩き込み、脚部のスラスターを吹かして体を回して、その脳天目掛けて跳び蹴りをして地面に叩きつける。

 

 

「カルネージ・ファング」

 

最低限の力、そして最速の速さで相手の体制を崩しながら的確に、性格に相手の急所に重い連撃を与えていく。まるで猫のよう、相手を徹底的に虐めて最後に鋭い爪で葬る様に。

魔龍は、地面に叩きつけられ動きが更に鈍くなる。抉り込む様な蹴りから、魔龍の背中を蹴って魔龍の正面に立つ。大きく腕を後ろに回して。

 

「!?」

 

起き上がる隙も与えない。ブースト全開に振り上げた一撃。再度、宙に浮かび上がる魔龍と砕けた漆黒の鎧、砕けた黄金色の鉤爪は花が散る様に落ちていく。

この((程度|・・))では、終わらない。浮かび上がる様に魔龍の体は宙に飛んでいく、ブーストを吹かして舞い上がって魔龍の頭上で止まる。

魔龍の目が大きく開いた瞬間、バックプロセッサと脚部にシェアエネジ―を回して、獣が獲物を喰らう様な強烈な一撃が魔龍の鎧をバラバラに砕きながら貫通する。

あまりの速さに、地面に着地した時、轟音と共に僕を中心にしてクレーターが出来る。

最後の抵抗とばかりに全ての触手を総動員して防御されたが、紅夜には大ダメージだ。25個の瞳は白目を向き更に砕けた鎧と共に魔龍は地に落ちた。

 

 

「ー−−−完了」

 

さて、これで終わってくれるかな?

 

 

 

 

 

 

「やった…の?」

 

離れた所、気絶したアイエフとコンパを降ろした変身時のネプテューヌは魔龍へとなった紅夜と白金の鎧を纏った空の二人の争いが静まったことに目を向けた。

空と魔龍の想像を絶する破壊力がある攻撃に一時的にその場所の存在は虚無になった。

今は世界の修正力により、巨大なクレーターだけが残るのみ。空が魔龍を引き離したのが原因で、はっきりと見えなかったが、かなり激しい戦いだったと言うのは、溶けた地面と幾つも地面に残っているクレーターが物語っていた。

 

「……紅夜…!」

 

立っているのは空。

倒れているのは紅夜。

お互いにボロボロであったが、空が勝ったのだと理解するのは十分すぎた。迷わずバックプロセッサに力を入れるが((目が合った|・・・・・))。

 

「−−−−−」

 

後ろを向いた空は、顔を少し横にしている。

女神化した影響か、銀眼から赤味を帯びたガーネットのような色をした瞳が射抜く様にネプテューヌを睨んでいた。それは、動くなと語っているようだった。

 

「……ネ、ネプ子…?」

 

「あいちゃん、大丈夫!?」

 

「ッ、頭が痛いけど大丈夫よ……」

 

ネプテューヌの足元で、痛みを堪えるように手で抑えながらアイエフは体を起こした。

周囲を見渡し、何が合ったのか状況を確認しようとしたとき、空と魔龍の衝突によって森が消えている残痕に信じられないように瞳を空けて、横にいるネプテューヌに声を掛ける。

 

「な、なにが合ったの…?」

 

「私も……うまく説明できない」

 

思わず、頭を抱えたくなった。

紅夜を傷つけた魔女が憎くて怒りのまま戦っていた。そしたら、突如として莫大な力と共に吹き飛ばされた。

次に意識が戻った時には、足を触手で縛られ全身に生々しい目がある小さなドラゴンがネプテューヌを苦しめそれを見て愉しそうに笑っていた。

絶体絶命の時、夜天 空が駆けつけネプテューヌを達を助けて、理解出来る領域から超越した二人の攻撃は、一部とはいえ世界から存在を無に還した。

空の言った言葉に、納得はしているが、理解はできない情報はネプテューヌを苦しめる。

 

「コンパ…は?」

 

「分からない。でも擦り傷がある程度だから、目を覚ますと思うわ」

 

ネプテューヌに出来るのは、ただ二人を安全な場所へと運ぶこと。

今まで、たくさんのモンスターと戦ってきた。時に簡単に、時に苦戦しながらモンスターを倒してきたが、今まで戦ってきたどんな存在より、次元が違うと認めざる負えない二人にネプテューヌは無力を感じた。

どんなことでも、どうにかなる。何故なら自分は強いそして心強い仲間がいるのだから、絶対なる自身に対する自信。そして、忘却していたとしても女神である力に、不可能なんでなかった。……今までは。

 

「…………」

 

「……ネプ子…」

 

「私、何も…出来なかったわ…」

 

苦し紛れに声が零れる。

二人の戦いを見てていて、嫌でも思い知らされた。

もし、空が駆けつけてくれなかったら間違いなく殺されていた。何も出来ず紅夜に何の言葉も届かないまま、あの紅夜じゃない笑みの元で、無残に死んでいた。

拳に力が入る。どうして、どうして、自分は見ていることしか出来ないだろうと……。

 

「あんたにシリアスは似合わないわよ」

 

「……あいちゃん…」

 

「終わりよければ全て良し……ふふ、あんたが言いそうな言葉よ」

 

頬を撫でるような風に導かれるようにもう一度、空と紅夜を見る。

空が立って、紅夜はーーー((立っていた|・・・・・))その手に真っ黒な剣を持って。

次の瞬間、空気が振動した。空はガントレットでガードしたが、車にでも撥ねられたように姿を消えて地面に土煙が上がる。

 

「ネプ子!」

 

「ーーーー」

 

バックプロセッサに力が入る。

今すぐに駆けつけないと、そんな使命感に動いたが握っていたはずの長太刀が手から滑り落ちた。

空は言った邪悪なる者に憑かれていると。

それが、優しい紅夜を変えてしまったんだ。

地面に落ちた長太刀を拾うとしたーーー手が震えて、うまく取れなかった。

こわい、怖い、恐い。ネプテューヌの脳裏にあの禍々しい25個の瞳が、全てこちらを向いて舞台上で踊る人形の演劇を見て楽しむような目が過るとまた手の震えが激しくなった。その掌に一滴の血が落ちた。

 

「……えっ」

 

思わず長太刀を取ろうとした手を止めて、自分の頬を触る。

まるで刃物で切られたように薄く、顔に傷が出来ていた。

 

『名状しがたい邪悪なる皇太子』

 

また、耳に届いたのは無機質な紅夜の声が届く。

真紅の鎧をまた紙ページが覆うように隠していく。

 

「……風…が」

 

アイエフが異変に気付いて空を見上げる。

あまりに、雲の流れが速すぎる。そして、雲は風に流れは、紅夜を中心に集まっている様に見えた。

異常気象、正にその言葉ぴったりだった、ネプテューヌの顔が蒼白くなっていく。

 

「…また、来るの……!?」

 

大災害によるタイプチェンジが始まっている。

急いで空たちの方に視線を戻すと、空は風の層に吹き飛ばされ、体制を整え大急ぎでこちらに向かってきている。緊迫した声が、ネプテューヌとアイエフに届く。

 

「身を屈めろ!バラバラになるぞ!!」

 

『砂塵と鮮血と共に狂い踊り、惨劇の宴はここに開く』

 

ネプテューヌは、意味も分からず立ち尽くしているアイエフと未だ目覚めないコンパを両手で自分を纏うように抱き締める。

先ほどは空が前に立ち守ってくれたが、今度は間に合うか分からない。あれを防ぐ手などネプテューヌにはない。

 

「ーーー間に合え!!」

 

『((霊刃天成|アームズコネクト))』

 

魔龍を覆う紙ページに書かれた文字が、見る者の恐怖を誘う悍ましい黄色へと変わった。

ネプテューヌは強く瞳を閉じて叫ぶ、自分たちを助けてくれた人の名を、空は必死で手を伸ばした『約束』を守るために。

 

 

 

『((禍風|ハスター))』

 

風を超圧縮した光すら屈曲させる超高密度の層。

それは莫大な魔力に押され、地面を容易く粉砕するほどの死の空間となる。

『黄衣の王』の命令を受けた疾風は、万物を破砕するためにまずは空たちを飲み込んだ。

 

 

 

説明
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