リリカルなのは〜君と響きあう物語〜
[全1ページ]

リフィル・セイジ。

外側にはねたセミロングな銀髪と男物の衣装で身を包んだ麗しき女性。

彼女はイセリアでロイド、コレット、弟であるジーニアスを含めた子供達に勉学を教える心優しき教師である。

教え子達からは敬愛の念を込められた愛称「リフィル先生」と呼ばれ慕われている。

授業中居眠りをした生徒には高速のチョーク投げが眉間に放たれ、宿題を忘れた生徒にはビシバシと数日痛みの引かぬ恐怖の尻叩きを叩き込まれてしまうから絶対に先生を怒らせてはいけないというのが先生をよく知っている人共通の了解事である。

色んな分野について様々な知識を有しており世界再生の旅の時もその知識にとても救われたものである。

特に考古学の知識に関して言えば……ゲフンゲフン。

……そして沈着冷静なクールビューティー。

街ですれ違うだけで男性を虜にしてしまうその美貌。

大人な女性を感じさせる雰囲気。

シルヴァラントの街々に多くのファンクラブを持つ「魔性の女」である。

あのロイドも初恋はこの人であったという。

彼女に蹴られたいとかいう危ない人も偶にいるのでそういう人がいたら逃げましょう。

そして最寄りの交番に駆け込みましょう。

彼女は勉学だけでなく魔術にも精通しており特に回復魔術に関して言えばシルヴァラント・テセアラ合わせても屈指の使い手であると言える。

彼女の治癒術なくしては世界再生の旅もなせなかっただろう。

 

……と此処まで言うと正にパーフェクトビューティー。

理想の女性bPであるのだが……。

 

彼女にも欠点はある。

そう。

この話は彼女の欠点が巻き起こしてしまった、とある大参事な一幕である……。

 

◆◆◆◆◆

 

『リフィル先生の欠点その1』

〜究極的な料理下手〜

 

彼女の作り出す料理のすさまじさ。

伝説と崇め称されるほどレベルの七つ星料理人である。

勿論旨い意味で七つ星ではない。危険極まりない危険度七つ星である!!

 

世界再生の旅の途中に軽食を作った際……。

〜回想〜

 

「今日は私が料理当番ね。うふふ。さぁ張り切って腕を振るうわよ」

 

(○分クッキングのBGM♪)

今日のメニューは「みんな大好き?リフィル先生お手製のクリームシチュー」よ。

野菜は人参。ジャガイモ。玉葱……玉葱……あら、ないわね。

なら仕方ないわ。

キャベツで代用よ。あと健康にいいっていうしゴーヤも入れましょう。

隠し味にホンマグロを3匹ほどと。

魚には脳を活性化させる栄養素がたくさん詰まっていると言うしね。

あとお肉。あら嫌だわ。このお肉ちょっと傷んでいるわね。

ナース!!

ふぅ。これでOKね。でもちょっと量が心配ね。

あらあんなところに。

 

「ミュウですの」「クイッキー」「しかしコーダは腹が減ったぞ」「目覚めろ!俺の中の野生の魂!! うおぉぉ!!」

 

丁度いいわ。あそこにいる魔物(←!?)のお肉でカバーしましょう。

もう 抵抗しないの。

ドス!!(←リーガル顔負けのリフィル先生の蹴り)

 

フンフン〜〜♪ 

 

「僕は通りすがりの帝国騎士団隊長。

おや。なかなかいい匂いだね。

今日はシチューかい?」

 

あら通りすがりの某騎士隊長さん。

よかったら味見してくださる?

 

「う〜ん。実にコクがよく出て味わい深い。コレは美味しいな。

でももう少し……そうだな味噌味が出ていると良いかな?

じゃあ僕はTOVに帰ることにするよ」

 

あら。もう帰ってしまうの。また来てね。

 

あらやだ。クリームシチューのはずが紫色に……

でも騎士隊長さんが美味しいって言ってくれたし問題ないわよね。

皆― ご飯よ。

 

「え? 今日は姉さんが料理当番……」

 

そうよ。たくさんあるから遠慮なさらずにおかわりしても良いわよ。

さぁクラトス。召し上がれ。

 

「いただこうか……ぐっ!? 香ばしくて。

ゲッフ(吐血)。

は、歯ごたえが。あって……ッグッハーー(身体中の毛穴から血が噴き出る)

い、今までに食べたことのない味だ。

グフッ……こ、これはマーテルと同レベルか(←問題発言)」

 

クラトスったらそんなに美味しいのかしら。

目から血を出しているわ。

ガタガタブルブルと震えちゃって。ウフフ。

きっとアレね。「こんなにおいしい料理を食べて感動で震えが止まらない」って奴ね。

遠慮せずにもっと召し上がれ。

 

「ファーストエイド……ファーストエイド。ファーストエイド。ファーストエイド!!!!」

 

一心不乱にファーストエイドを唱えまくるクラトス。

しかしいくらファーストエイドをかけようがこの後暫くクラトスの体内の毒は彼を内側から貪り侵し全パラメーター半減。常時毒状態。体臭も親父臭くなるという恐ろしい目に遭ったと言う。

 

〜回想終了〜

 

そして旅を続けていくと彼女の料理に腕前はさらに悪化。

残飯を新たな世界樹の根元に埋めてみたら根が腐り、幹はしおれ、葉は枯れ落ち、世界樹の精霊は突如病気を発症させ床に伏せる始末。

世界は再びマナの枯渇する危機に陥ったとかなんなかったとか。

とまぁ彼女の料理の恐ろしさは解っていただけただろうか。

ところで今日のイセリアの学校はちょっとした手違いがあり給食が届かないとの事。

料理上手なロイドもコレットも今は不在。ジーニアスはトリエットまで出かけており帰ってくるのが今日の夕方になる予定。

目の前には腹を空かした可愛い教え子達。

 

「何、気にすることはない」

 

「クレァアアアアアアア!!!!」

 

「僕はダオスをだおす」

 

「た〜っぷり食べないとバリボーなボディーになれないよ〜」

 

「女は黙って焼き鳥丼!!」

 

「今だッ!俺は鳥になる!!紅蓮天翔ぉぉぉおおおお!」

 

あ〜……イセリア在住の可愛い教え子さん達。

何処かで見た誰かさん達?

違うよ。皆ソックリさんだよ。

幸い食材は村の人の好意から大量に差し入れされている。

調理実習のために使うつもりだったが此処はやはり教師である自分が目玉が飛び出る程美味しい料理を作ってあげるのが良いだろう。

そうと決まったら早速料理の下準備を……。

 

「ジャジャーン。なんとTOPから特別スペシャルゲスト。

奇跡の料理人。アーチェちゃんだよぉ」

 

「TOAからシリーズの垣根を越えてやってきました。ナタリア・L・K・ランバルディア。

可愛い愛弟子たちに料理を作るだなんて。さすがリフィル。素晴らしいですわ。

私達も是非協力させてくださいな」

 

「貴女達……ありがとう。じゃあ其処の大根の皮を剥いて下さる?」

 

あぁ……よりによって最悪の料理人が揃った。

祈ろう。

胃に入れても大丈夫な料理が完成することを。

 

 

腹も空きはじめる正午前。

各家庭の台所からは美味しそうな匂いが立ち込め始める。

グツグツ。コトコト。

此方の家からは魚の焼ける美味しそうな匂いが。

実にいい匂いだ。

…………あ、あわわわ

あわわわわ……

こ、これは危険。

あの学校からはボコボコ、ドロドロといかにも怪しい危険な音が。

うげっ!? ツーンとした恐ろしい匂い。

ゴゴゴと立ち込め始めた暗雲とした雲。ピシャァァっとインディグネイションを凌駕する激しい雷鳴。

空を飛ぶチュンチュンがバタバタと地に堕ちる。

バンエルティア号が転覆しそうな大きな津波。

こ、これは一体。

 

「「「さぁ。出来たわよ。リフィル・アーチェ・ナタリアお手製『満漢全席』

さっそく召し上がれ」」」

 

ひ、ヒィイイ!!?

 

静かなイセリアの村からこの世の物とも思えないような悲痛な叫び声が全世界に響く。

 

◆◆◆◆◆

 

リフィルの弟ジーニアス・セイジ。

ロイドの一番の親友であり弟分のちょっと生意気なところのあるやんちゃな12歳の少年。

彼は姉がまぁ。アレなせいで家事全般はパーティの中でもトップクラスの実力を持っている……持たなければならなかった可哀そうな奴だ。

ロイドやコレットの幼馴染をしているだけあってツッコミ属性も兼ね揃えた小さな苦労人。

彼は今、故郷イセリアに向かって全速力でレアバードを飛ばしている。

ハーフエルフだからだろうか彼はイセリアの方からタダならぬマナの乱れを感じ取れた。

このマナの異常はただ事ではない。

ドンヨリとした不吉をはらむ瘴気がイセリアに近づくほど強く、粘っこく彼の身を包んでいく。

ウルフもウサウサも魔物はブクブクと泡をふいて倒れ、川の魚は水面に大量に浮かんでいる。

草木は枯れ始め地は砂漠化しようとしている。

此処最近世界各地で異常な天変地異が起こりつつあると噂には聞いたが此処までの異常な事態が一気に起こるとは聞いていなかった。

自分が出かけた朝はいつも通りの日常であったと言うのに。

イセリアはとてもとても大事な場所だ。

ハーフエルフである自分達姉弟を受け入れてくれたかけがえのない故郷。

世界再生の旅も此処から始まり、そして旅が終り疲れた自分達を温かく受け入れてくれたこの村にかつてない危険が迫っているような気がするのだ。

ロイドもコレットも今何処で何をしているのか数日前から所在がつかめていない不安な状況。他の頼える仲間も今から呼んで集めるには時間が掛かる。

仲間を頼えない今、イセリアを守るには自分と姉しかいない。

きっと今姉さんはイセリアの村の人を避難させ怪我人を介護したりしているだろう。

ならば一刻も早く僕も駆けつけ村の皆を助けないと!!

右手を胸の前で強く握り「ロイド、ミトス。僕に力を貸して」

彼は愛する故郷の危機を救うために一心不乱で飛んでいく。

イセリアの上空にはどんよりとした髑髏のような黒い雲が浮かんでいる。

 

◆◆◆◆◆

 

ジーニアスは自分の目を疑った。

イセリアの村が……

自分の故郷が……

ジーニアスが帰ってきた時には時すでに遅し。

愛する故郷イセリアは……悲劇の街イセリアへと名を変えていた。

 

「え!? 何?この恐ろしい匂い?

ぐえぇ……クルシスの天使も泡を食って逃げ出しそう。

ひぃぃ……目に染みるよ。

な、なにコレ……」

 

うぉぉおぉぉぅぇぇぁああぉぇぎやぁぇがば……

ぬるぅうあぁぁわぁぁぃばんぬらべっちゃらばば……

しゃわににゅヴぁくくぁざざざぎごがぐここきく……

 

意味不明の事を呟きながら村を徘徊するゾンビ。

ってアレはちょっと!?

村の皆じゃないか!?

どうしたんだよ一体……

と、とりあえずバナシーアボトルを。あとライフボトルもありったけ。

皆!! 今、助けるから!!

あぁ!! イセリア学校のクラスメイトのアスベル君が「マモレナカッタ……」と呟きながら倒れている……。

君は十分やってくれた。後は僕がやるから君は休んでいてよ。

しかし改めて見ると。なにこれ。

嫌な空気が村中を覆っているよ。

気分が悪くなってきた。

この妖気にまみれた恐ろしい瘴気は……学校のほうから漂っているね。

口をハンカチで覆って。出来るだけ瘴気の漂っていない地面の方へ身を屈めて。

うぅ……行きたくないなぁ。

でも村を救えるのは僕だけなんだ!!

剣玉をギュッと握って僕は学校の方へ走った。

 

◆◆◆◆◆

 

僕は思わず顔を手で覆って泣きたくなってきた。

それもそうだろう。

だって。

この原因は。

 

「ち、違うのよ。ジーニアス。これは私のせいじゃなくて」

 

この事態を引き起こした最大の要因は一目瞭然。

ボコボコと汚い気泡を立てている、この大きな鍋。

リフィルのエプロン姿。

手に持っているお玉。

姉の料理のひどさは弟であるこの僕が誰よりもよく知っている。

だから常日頃あれだけ台所には立つな。包丁は持つな。料理に興味を持つな。

変な香辛料を通販で買うなって口を酸っぱくして言い聞かせていたと言うのに。

でも。でもさ。

こんなに村をヤバくするぐらい危険極まりない物を作り出しちゃうなんて。

僕はもう、なんて言っていいのか。

ゴメン。

ロイド。コレット

僕が目を離していたばっかりに……。

 

「よく聞いてジーニアス。だからコレは私のせいじゃ」

 

姉さんの傍らにある鍋からは妖気に満ち満ちた怪しい物が煮え滾っている。

この鍋から漂ってくる匂いを嗅ぐだけで気分が……。

あぁ、やっぱり姉さんのせいだよね。

 

「姉さん。僕も一緒に謝るから。……きっとみんな許してくれるって」

 

あぁ。とりあえず村長に土下座でもしておこうかな。

うちの姉が大変ご迷惑をおかけしましたって。

許してくれるかなぁ。

はぁ。気が重い。

 

「だから!! これは私のせいじゃないの。

いつの間にかアーチェもナタリアもいなくなっているし。

料理ができると同時に地震が起きて、この原因はこの学校の地下から妙な瘴気が出てきたのよ。

この原因はこの学校の地下にあった……この遺跡よ」

 

ビシッとリフィルが指を指し示した先には。

 

「い、遺跡!?」

 

学校の木の床が割れ地面がむき出しになった先に姿を現した謎の遺跡。

この正体は。

 

◆◆◆◆◆

 

『リフィル先生の欠点その2』

〜遺跡モード〜

 

「イセリア学校の下に隠された謎の遺跡。

イセリアの村の近くにはマーテル教会聖堂があることからもわかるがマーテル教を称える文明がこの周囲には昔からあったのだろう。

この遺跡はその聖堂ができたのと同時期……。もしくはもう少し前の時代。

おそらく1000年ほど前。

ふむ。

この石住の積み方。

これは旧古代パルマコスタ王朝の特徴とよく似ているが、この壁のレリーフはパルマコスタのソレとは全く異なるな。

ふはは〜〜。

やはりこの学校の下にはこんな素晴らしい遺跡が眠っていたのだな」

 

キャッッホーーっとハイテンションで遺跡を隅から隅までゴロンゴロンと芝生の上を寝っ転がるように転がりながら移動する23歳教師。

明らかにいつものリフィルとは違う。

大好きなおもちゃを貰った子供よりはしゃいでいる。

 

「姉さん 正気に戻って!!」

 

最愛の弟であるジーニアスの声も今の彼女の耳には入らない。

リフィルは重度の遺跡マニアである。

東に遺跡があると聞けば、行って高笑いをし、西に遺跡があると聞けば、行って頬ずりをする。

北に遺跡があると聞けば、行って万歳を三唱し、南に遺跡があると聞けば、行って瞳をギラつかせる。

遺跡を見ると普段の冷静な大人の女性からガラリと人格が変貌し、鼻息を立て涎をたらし「ふはははは!!!!」と下品極まりない笑い方をするもう一人のリフィルへと変貌してしまうのだ。

断っておくがリフィルは二重人格者ではない。

ただ、ちょっと。いや少し常人より遺跡を愛してしまっているだけの……そう。少し変わった物が大好きなだけだ。

 

「ふはははは!!!! 素晴らしい!!!! 

この手触り。この寝心地。

この埃っぽさ!!!!

もう、萌え萌え!!!!

いやぁあん たまんなぁぁい!!!!」

 

……此処にリフィル先生を敬愛する学校の生徒や彼女のファンクラブの人がいなかったことは不幸中の幸いであった。

もしこの彼女のアレっぷりを見たら1000年の恋も冷めるというか。

幻滅するというか。

まぁ好感度の大暴落は免れなかっただろう。

ジーニアスはさらに頭を抱えて泣きたくなってきた。

これこそジーニアスが周囲に隠しておきたかった姉の最大の欠点『遺跡モード』

『遺跡モード』発動中のリフィルはロイド、コレットはおろか何事にも揺るがないクラトス、リーガルをも完全に翻弄し、ミトスですらドン引きする恐ろしいテンションへと化ける。

『遺跡モード』は彼女の本性そのもの。

遺跡に恋し遺跡を愛す。

まさに遺跡マニアの中のマニア。

世界中を旅してきたが世界で一番おかしい人が自分の身内だなんて。

うぅぅうっ(涙)

 

「まぁ、そんなことより。

姉さん。

はやくいつも通り“アレ”やるよ」

 

「“アレ”? “アレ”とは何だ?」

 

ピタッと動きを止めジーニアスを見るリフィル。

ジーニアスはそんなこともわからないのと言わんばかりに右手を上げ左手を腰に首を左右に振る。

 

「決まっているでしょ。“爆破”だよ」

 

「ば、ばばば、ば……ばく、爆破ァァアアア!!?」

 

思わず仰け反ってしまうリフィル。

ソレはそうだろう。

何故爆破なんて話が出てくるのだろう。

それも何を爆破するというのだ?

 

「何言ってんの。

この遺跡を爆破するに決まっているでしょ?

姉さんの言うとおりこの遺跡から発する妙なマナが村の皆を苦しめているみたいだ。

ならこの事態を手っ取り早く解決するにはこの遺跡をさっさと壊しちゃうのが一番でしょ?

爆破なら姉さん慣れているじゃん。

数々の人間牧場を爆破してきたんだから」

 

ジーニアスの両手には何処から出したのかダイナマイトの束。

それを

遺跡に配置していく。

 

エクスフィアを量産するために人間を生贄にし数々の悲劇を作り出してきた忌むべき施設「人間牧場」

この人間牧場を二度と使用不可にするためにリフィルは各地の牧場の主要な頭脳部分を徹底的に破壊してきた。

簡単に言えば爆破してきた。

人間牧場の跡地が何か大きな大爆発で木端微塵になったように見えるのはこのリフィルのせいでもある。

各地の牧場を爆破して回り、そしてついた名前が「フエル爆弾」

その私にまた爆破活動に手を染めろと弟は言う。

今回はあの忌むべき人間牧場ではなく、よりによって私が愛してやまない遺跡を破壊しろと?

この私の手で!?

遺跡を……爆破!!?

できない。世界が例え滅んでしまったとしても私には。

 

「何を言っているのだ!? そんなことできるわけないだろ!!」

 

「姉さん。

この遺跡がある限り皆苦しむんだよ。

見なよ」

 

ジーニアスが右手の親指を後ろにクイっと向ける。

そこには。

 

 

 

ステラ……俺達の声、聞こえるか? ステラ!!

 

シャ…………リ……

アナタの力はみんなを幸せにするためのモノよ

どうかゆっくり……育んで……

 

お姉ちゃん……!!

 

セネル……

 

え……? 「ごめんね」?

おい、ごめんねってなんだよ

いくな!! おいステラ……

俺が水舞の儀式を申し込むのを楽しみに待ってんじゃなかったのかよ!?

畜生!!!! あの遺跡が……あの遺跡のせいで……

 

 

 

「ぐぅっ……」

遺跡のせいで愛する男女、姉妹を永遠に裂いてしまう。

さすがにリフィルもこれを見ると遺跡を庇うわけにもいかない。

というかなんだ?あの3人は?

こんなところで涙なしでは見られない名場面を再現しないでくれ。

確かにジーニアスの言うとおりこの遺跡が出てきたとたん魔力の抵抗力が薄い村人達を始め多くの異常事態が生じてきている。

コレを抑えるためにはこの遺跡を壊してしまうのが一番かもしれない。

だが果たしてそうか?

もしかしたらこの遺跡を壊したら更なる異常事態を引き起こすことになるかもしれない。

そうだ。

もっと詳しい調査を行ってからこの問題を解決する策を探すというのが今行える最大の最良手ではないだろうか。

この遺跡はもしかしたら人類の歴史を塗り替えるようなものかもしれないのだぞ。

 

「ジーニアス……やはりもう暫く調査を行うべきだと」

 

「ハイハイ。じゃあ姉さん。コレ押して」

 

「え?」

 

ジーニアスから渡された謎のスイッチをポチッと押したら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺跡が木端微塵に爆破した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁああああああああ!!!! 遺跡が……私の遺跡がァァァアアア!!!!!!」

 

黙々と黒い煙を上げている遺跡へと必死に走ろうとするリフィル。

遺跡が爆破したと同時に辺りの異変は綺麗さっぱり収まった。

やはり全ての元凶はあの遺跡だったらしい。

これできっとイセリアの村に平穏が戻るだろう。

 

「姉さん!! 危ないよォ!!」

 

だがそんなことはどうでもいい。

リフィルは腰に縋り付いて止めようとするジーニアスを引きずりながら遺跡へと足を進める。

前人の文明の衆智の結晶が。

古代から受け継がれ続けなければいけない人類の宝が。

目の前で灰燼と成り果てていく。

 

「うわぁぁああああああああ!!!!」

 

リフィルはジーニアスと共に煙の中に奇声を上げて入って行った。

モクモクと立ち込める煙の中に入っていく2人はもう外から姿が見えない。

リフィルとジーニアスがあの煙に入っていくのを見ていて慌てて2人を追いかけようとする子供がいた。

 

「ダメだぞ!! 行っちゃあぶねぇ」

 

偶々、村に来ていたロイドの養父 ダイクは子供の手を掴む。

子供は「だけど 先生が ジーニアスが」

とまだ2人の安否を心配して不安げに煙を見つめている。

ダイクも当然2人を心配している。

あの2人はロイドと共に世界再生を果たした英雄だと知っているとしても自分にとってはロイドと同じく可愛い子供のようなものだ。

煙の中から2人が出てきたら怒鳴ってやりたい。

「心配させるな」と。

ガツンと拳骨をブチかますために右のこぶしを強く握りしめる。

 

煙は5分から10分ほどしたら薄く収まってきた

煙が晴れた後にはあの中から2人が煙にいぶされた形で真っ黒になって出てくる……筈だった。

 

「ば、馬鹿な」

 

煙の後に出てきたのはどういうわけかイセリアの学校が出てきただけだった。

それも綺麗な形。

コレットのブチ開けた人型の大穴以外何の傷もないいつもの学校。

床の下にあっただろう遺跡も何もない。

そしてリフィルもジーニアスも学校のどの教室にもいない。

まるで神隠しのように消えている。

 

その後村の中、外の森を含め2人を探す捜索隊が組まれ2人を探したが何処にも彼らの行方を掴むための手掛かりすら見つけられなかった。

 

「……これはまた何か起こっているかもしれねぇな……

またアイツラは厄介な事に巻きこまれちまうのか。

……ロイド」

 

ダイクは天を仰ぎ愛する息子の名を呟く。

きっと世界を巻き込むような大きな事件がすぐそばに迫っているだろうことを感じ取って。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

こんにちは。

僕の名前はユーノ・スクライア。

今は時空管理局の無限書庫の司書長を務めているんだ。

無限書庫っていうのは簡単にいえば色んな次元から送られてくる様々な知識や情報が集められるデータベースの事なんだ。

この無限書庫はなんと管理局ができる以前から存在しているんだ。

だから当然古い遺物とかアンティークとかも保管されている大事な場所なんだ。

この無限書庫は広くてまだ管理ができていない場所もとっても多い。

だから無限書庫には色んな怪談話とかも存在するんだ。

開いたら人を丸呑みにしちゃうような恐ろしい魔本があるとか。

世界を自分の思い通りに塗り替えちゃう禁断の魔法を記された禁書が存在するとか。

まぁどれも唯の噂。勿論そんな現物なんてないよ。

でも僕も此処の司書になってから随分長い事此処に居るけどそんな本を見たことは無い。

だから迷信。そう。

迷信だって思っていた。

 

「ふ、ふはははははははっはははっは!!!!」

 

この書庫の奥から不気味に聞こえる恐ろしい笑い声。

98管理外世界にいたときに見たホラー映画だと狼男、フランケイシュタイン、ドラキュラ……あのどの映画よりも心の底から根源的な恐怖をあおる。

まるでこの世を手中に入れた魔界の大魔王を髣髴とさせるのでとても怖い。

司書の皆は武装隊とは違うから当然攻撃系の魔法なんて使えない人が多い。

だからもし危険な存在がこの書庫に入り込んでいるとしたら司書達の身が危ない。

万が一のことを考え声の聞こえる辺りの司書達を避難させ僕は様子を見に奥へと入っていく。

これでもなのはに魔法を教えたのは他の誰でもない。

この僕だ。

捕縛魔法に関して言えばまだまだなのはに負けていないと自負している。

そう。大丈夫。

大丈夫。

ビビってなんかいない。

フェレットに化けているのも敵に気付かれず接近するための秘策。

決して隙間を抜けて逃げるためなんて事ではない。

それにしても

ヒィッ!!

なんて恐ろしい笑い声だよ。

そしてなんだ?

この気持ち悪い匂いは?

この世の全ての不吉な物を地獄の業火で三日三晩煮込んだような。

魔王は魔界からなにか邪悪な兵器を持ち込んだのか?

 

「姉さん!! 正気に……お願いだから正気に戻って!!!!」

 

「素晴らしい!! 正に尊き理想郷……こんな場所があったなんて

テセアラの王立図書館なんて足元にも及ばないぞ」

 

なんだろう。

子供の声? 姉さん?

本棚の上から下を覗きこむと銀髪の髪をした2人が見えた。

一般人?

此処は一般人は立ち入り禁止の筈なんだけど何処から入ってきたのだろう?

取りあえず話を訊いて……。

 

「あっ」

 

ズルっとつい僕は足を踏み外してしまった。

踏み外してしまったんだ。

 

まさかこの下にあんな恐ろしい魔女の鍋が置いてあるなんて……。

うげぇぇえ!!!! 

身体が……身体がぁあ

 

「あっ、姉さんの殺人料理の鍋にフェレットが入っちゃった」

 

「フェレット?」

 

きょとんとした顔をしている2人。

うん。できれば僕を早く助けてほしい。

身体が、……溶けてしまうその前に。

 

助けて。なのは。

 

 

 

 

説明
お久しぶりです。
ずいぶん長い間空けてしまってスイマセン。
また付き合っていただけると幸いです。
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コメント
先生お帰りなさい!これからも更新楽しみにしてます!来週はいよいよシンフォニアの発売日ですね!(you)
ヤバイ人(リフィル)がいってはいけないヤバイ場所(無限書庫)に来てしまったぁぁぁぁぁぁっ!!!(ウィングゼロ)
待ってました!続きを待っていました!!そしてリフィルさんぇ〜・・・もう突っ込みどこありまくりっすね!!!(biohaza-d)
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