第九話
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 円堂を失い鬼道を新監督に迎えた雷門。新体勢になり、様々な不和が見え隠れする中で強敵、木戸川清修との試合を迎えようとしていた。

 

『苦闘、ホーリーロード!! ―悪夢の予兆―』

 

雷門選手「これで決めるぜよ! 武神連斬!」

 

GK「させるか! ガーディアンシールド!」

 

 雷門選手の放った化身シュートに、木戸川清修のGKもまた化身で対抗する。だが、名前も思い出せないGKに雷門選手の化身シュートが止められるわけもなかった。

 

GK「ぐっ、うっ、うわぁー!」

 

 化身は瞬く間に粉砕され、ボールはゴールネットを揺らすのだった。

 

解説『ゴォール! そして、ここでホイッスル! 雷門、3−1で木戸川清修を打ち破ったー!』

 

 勝利した雷門イレブンは歓喜と共に最後の決勝点でもなんでもない、別に決める必要もなかったシュートを決めた雷門選手の元へと集まっていった。

 

天馬「やりましたね、留学から帰ってきた先輩! 最後のシュートは別にどうでも良かったですけど」

 

信介「天馬、留学から帰ってきた先輩に対して何、とんでもないこと言ってるのさ! 今はまだ日本語を思い出せてないみたいだからいいけど、いつ思い出すかもわからないんだから気をつけなよ!」

 

剣城「まったくだ。留学から帰ってきた先輩は、留学していただけで日本語を忘れてしまうくらい、その土地の空気に感化されやすいんだぞ」

 

雷門選手「俺の名前は錦リョーマぜよ。いい加減、名前を覚えてくれんか? あと日本語はわかってるから、あまり色々と言わんで欲しいぜよ」

 

天馬「大丈夫だよ、まだ何言ってるか分からないし。それはそうと、いつまでも留学から帰ってきた先輩じゃ呼びにくいし、そろそろ名前を思い出そうよ」

 

雷門選手「って、お前ら、わしの名前を覚えてすらイなかったのか?!」

 

信介「確か、神童キャプテンは歴史の登場人物と同じ名前って言ってたよね」

 

天馬「歴史の登場人物……。あ、そうか!」

 

剣城「思い出したのか?」

 

雷門選手「やっと名前を呼んでくれるのか?」

 

天馬「そうだよ、ムサシだよ! 戦国武神ムサシ先輩だよ!」

 

ムサシ先輩「違うぜよ! それ、わしの化身の名前ぜよ! わしはリョーマぜよ!」

 

天馬「ムサシ先輩も名前を呼んでもらって、なんか嬉しそうだよ」

 

信介「名前で呼び合うのは親しみの証だからね。言葉は通じなくても嬉しいんだね」

 

剣城「まあ、試合中に留学から帰ってきた先輩なんて呼ぶのも面倒だ。俺もムサシ先輩と呼ばせてもらうさ」

 

ムサシ先輩「お前ら、わざとやってるだろ? そもそも、なんでツッコミ役までボケ倒してるぜよ!」

 

 新たな仲間を迎えて勝利の喜びをわかちあう雷門選手たちをベンチ眺めながら、鬼道は小さくため息をつく。

 

 強敵、木戸川清修を打ち破ったとはいえど、円堂が作ったこのチームを監督として導いてゆくことに対する不安は未だに根強く残っていたからだ。

 

鬼道「円堂、俺はこのチームを導いて行けるのか……」

 

 今はもういない円堂の遺影に、鬼道はそっと話しかけるのだった。

 

三国「鬼道監督、チームが勝ったっていうのに、なに暗い顔してるんですか?」

 

鬼道「三国か。すまない、少し考え事をしていてな」

 

三国「そうですか。それより、これを見て下さいよ」

 

 そう言って三国はどこから持ちだしてきたのかダンボール箱を差し出す。

 

三国「いやあ、木戸川清修が試合している間にこっそりと奴らのベンチを探ったら、こんなにカップラーメンがでてきたんですよ。あっちの監督の私物らしかったのでこっそり頂いちゃいましたよ。はははっ」

 

鬼道「……さっきの試合、ゴールキーパーの姿が見えなかったのは気のせいじゃなかったのか……」

 

三国「おーい、みんな! 勝利のお祝いにカップラーメンで乾杯だ!」

 

天馬「ごちそうになります、三国先輩! それにしてもさっきの試合はナイスセーブでしたね!」

 

信介「本当にいつになく大活躍だったじゃないですか。よくあんな際どいコースを防げましたね」

 

狩屋「いやぁ、今日の三国先輩はまるでゴールと一体化してたみたいに見えましたよ」

 

三国「そうか? はっはっはっ、もっと誉めろ誉めろ」

 

鬼道「いや、お前、試合に出てないだろう……」

 

吹雪「よし、今日のMVPの三国君を胴上げだ!」

 

神童「どんなに役に立たない人でも、活躍したらきちんと誉めて成長させるか……。さすがです、新監督! 俺には出来ないことをこんなにも自然に行えるなんて尊敬します!」

 

鬼道「いや、新監督は俺なんだが……。あと吹雪、お前はいい加減、白恋に帰れ」

 

吹雪「いやあ、そんなことないよ。それにキャプテン君もキャプテンとして、充分、みんなを引っ張ってるじゃないか」

 

神童「そう言っていただけると有難いです。あと俺の名前は神童です。円堂監督は名前を覚えてくれなかっただけで、別にキャプテンが本名ってわけじゃありませんから」

 

吹雪「そうだったのかい。まあ、神童キャプテン君もそんなことは気にしないでカップラーメンを食べなよ。辛いだけで全然、旨みがないけど」

 

神童「いえ、俺は専任のシェフの用意したものしか食べない主義なので……。あと、俺は神童キャプテンという名前じゃないですから。キャプテン神童でもありませんからね」

 

天馬「それにしてもこのラーメン、辛いだけでおいしくないですね……」

 

信介「三国先輩の用意したものだもん、仕方ないよ」

 

 試合後のグラウンドでわいわいとやっている雷門学園。その片隅で輪から外れて腐っているメンバーもいた。天城と補欠二名、そしてそれに付き合わされる輝であった。

 

怒羅えもん「君は食べないのかい?」

 

天城「試合に出してもらえない俺達は腹も減ってないド。そもそも不味いものは食いたくないド。なあ、お前ら」

 

一乃「ひもじいよぉ……」

 

青山「出番が欲しいよぉ……」

 

輝「ははは……」

 

怒羅えもん「全然、そんな風には見えないんだけど」

 

天城「うるさいド! もう試合も終わったし、いくド、影山」

 

輝「えー?! なんで僕だけ」

 

 天城は輝を連れてグラウンドを後にするのだった。それを見送る怒羅えもん。その傍らに他のチームの選手が近寄る。

 

???「何をしてるんだ、怒羅えもん」

 

怒羅えもん「ちょっとね。それよりもう僕達の試合なんでしょ。行こうか、のび太君」

 

???「だから、俺の名前はのび太じゃなくて……。まあ、いいさ」

 

 名前を正そうとしたものの、途中で口をつぐむ。そして、彼は去りゆく天城に冷たい眼差しを送るのだった。

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『苦闘、ホーリーロード!! ―悪夢の再来―』

 

ヤムチャ「これでもくらいやがれ!」

 

 ヤムチャの繰り出した名も無き必殺シュートは、彼の意のままに軌道を変えてゴールへと迫る。その変幻自在の動きに幻影学園のDFは手出しすらせず、ただ見送るだけだ。

 

解説『ヤムチャ選手の必殺シュートに幻影学園、身動きできない!! このまま得点なるか−?!』

 

神童「これは…… 違う! 身動きできないんじゃない、わざと動いていないだけだ!」

 

輝「ど、どういうことですか?」

 

 神童のあまりにおかしな予想に、輝は驚きの声をあげる。だが、神童の予想は決して突飛なものではないことを知らしめられることとなる。

 

ヤムチャ「いけー!」

 

 ボールがゴール目前に迫ったところで、一人の選手があっさりと弾き返す。それは幻影学園のキャプテン、真帆路だった。

 

ヤムチャ「い、いつの間にあそこまで戻って……!」

 

天城「ま、真帆路!」

 

解説『おぉっと、FWの真帆路選手、ゴール前まで下がっていた! そして、カットしたボールをキープしたまま、再びゴールを目指す!』

 

ヤムチャ「と、止めろー!」

 

怒羅えもん「無駄だよ」

 

解説『真帆路選手、単身、敵陣営を突破してゆく! しかし、他の幻影学園の選手はまるで手助けに動かない! これは真帆路選手一人で充分だという余裕からか?!』

 

 そう、幻影学園の選手たちはまるで動こうとはしていなかった。真帆路の実力なら、これで充分だと言わんばかりに……。

 

解説『これに対して、守り側もヤムチャ以外の選手もまたハンデキャップだとでもいわんばかりに手助けなどしようもせず、見ているだけだ。しかし、これは単にヤムチャの言うことを聞くのが癪に触るので動いていないだけだ!』

 

ヤムチャ「嫌なことをバラすんじゃねぇ!」

 

 いとも容易くゴール前の絶好のポジションまで来た真帆路はそのままシュート体勢へと入る。

 

三国「来るか!」

 

真帆路「くらえ…… マボロシショット!」

 

 真帆路の放った必殺シュートはゆらりとした影を見せたかと思えば、あっさりとゴールネットに突き刺さる。キーパーの抵抗など意味を持たせなかった。

 

解説『ゴォール! 幻影学園、これで100点目だ! 試合はもはや一方的にゴールを決めるだけの展開になってきたぞ!』

 

三国「これが、幻影学園の力……なのか」

 

神童「まさか…… まさか、三国先輩並にザルのゴールキーパーがいたなんて……」

 

 雷門の面々はそのあまりに一方的な試合展開に恐怖すら覚え始めていた。だが、なによりも不気味なのは、笑わないストライカーと呼ばれる真帆路の存在だ。その二つ名の通りに、彼はこれだけの試合展開をこなしながらまるで笑わない。一切の油断もなく、ただ淡々とゴールを決めているのだ。

 

天城「真帆路……」

 

鬼道「……これ以上は見ていても時間の無駄だろう」

 

 そう言って、鬼道はビデオを切る。画面を食い入るようにみていた選手たちは、緊張感から開放されたようで、がくりと座り込んでしまう。

 

輝「で、でも、これもフィフスセクターが指示した試合なんですよね? だったら、この試合展開もフィフスセクターの……」

 

鬼道「いや、それはない。フィフスセクターは雷門を潰すのに、より優れたチームを選出しようとしている。そのため、この幻影学園の勝利は実力によるものだ」

 

輝「そんな……」

 

 輝の見出した逃げ道も、鬼道はあっさりと塞いでしまう。残るはこの圧倒的な実力を持つチームと戦わなくてはならないという現実だけだ。

 

神童「くそ! こんなチームに本当に勝てるのか?」

 

鬼道「神童、キャプテンのお前がそんなことでどうする? こんなときこそ、メンバーを鼓舞するべきだろう」

 

神童「それは…… わかってます。でも、こんな相手にどうしろっていうんですか? このメンバーで!」

 

 神童はそういってメンバー達へ振り返る。そこにいるのは天城や輝、QBと二軍メンバーだけだった。天馬や剣城はもちろん、ストーカーの霧野の姿までない。

 

QB「僕たち以外のメンバーは全員、三国が持ってきた辛いだけでまるで美味くないラーメンに含まれていた寄生虫にやられ緊急入院してしまったからね。フルメンバーで出られないのは仕方ないよ」

 

三国「まさか、あのラーメンにあんな罠が潜んでいたとはな。俺もあのとき五杯目をおかわりしていたら、危なかっただろうな」

 

神童「よりにもよって、なんで三国先輩だけが無事なんだ……」

 

QB「彼は本能的に誰も手を付けなかった韓国ノリも一緒に食べていたからね。あの養殖ノリには毒性の強い塩酸と硫酸が栄養剤として使われているから、寄生虫もひとたまりもなかったんだろうね」

 

三国「まあ、食い合せが良かったってことだな」

 

神童「むしろ寄生虫すらも殺すものを食べて平然としてるほうがおかしいでしょう?! そもそも本能的に誰も手を付けないものまで食べないでください! あとQBも知ってるなら止めろよ!」

 

QB「聞かれなかったからさ。そもそもあの辛いだけでまるでおいしくないものを食べる君たちのほうが訳がわからないよ」

 

鬼道「まあ三国が残ったことに愚痴をこぼしても仕方あるまい。次の試合は、残ったお前たちを中心にゲームを回してもらうことになるだろう」

 

一乃「ま、まさか、俺達にも出番が?!」

 

青山「や、やった! もうどっちが一乃でどっちが青山なんだ?とか、もう補欠二人でいいやなんて言わせないぞ!」

 

天城「お、俺も出られるのかド?」

 

三国「よし、やってやるぜ!」

 

神童「くっ……。せめて、新監督が無事でいてくれたなら、まだ救いはあったのに……」

 

鬼道「俺がその新監督なんだが……」

 

 ぬぐい去れない不安を残したまま、決戦の日は迫るのだった。

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『苦闘、ホーリーロード!! ―悪夢の再会―』

 

 ある晴れた日の、ある病室。そこからは空の清々しさとは正反対の苦悶に満ちた叫びが延々と繰り返されていた……。

 

天馬「うわぁー! は、腹がー! ぐぅあー! せ、せめて綺麗な看護婦さんに会うまでは…… ぐぅっ!」

 

信介「最後の最後までそれなの?!」

 

吹雪「ごめんよ、僕はもうダメだ……。今まで色んな選手と戦って勝ってきたけど、やっぱりエキノコックスには勝てないみたいだね……」

 

剣城「いや、違いますから! 俺達がやられたのはそれじゃないですから! あなただけ何か違うものに寄生されてますから!」

 

下痢野「ふ、ふふふ……。まさか、またあのラーメンにやられるとはな。だが、みんな同じ病室だったのは幸いだったな。神童はともかく、狩屋をストーキングする手間は省けたわけだからな」

 

狩屋「浜野先輩! 車田先輩! もう、誰でもいいから病室を変わってください!」

 

 天馬達の運び込まれた大部屋は病院とは思えないほどの騒ぎを起こしているのだった。そんな状況ゆえ、看護師達も彼らの存在をスルーしていたものだ。

 

 そんな中で、ついに事件が起きてしまう。

 

天馬「ふ、はは……! なんだかわからないけど、急に痛みが治まったぞ! 今なら…… 今なら看護婦さんを探しに行ける!」

 

剣城「やめろ、天馬! それは一時的に波が去っただけだ! またすぐ痛みがぶり返し…… ぐぅっ!」

 

信介「剣城! そんな大声出したらお腹に響くよ!」

 

天馬「なあに、大丈夫さ。ちょっと剣城のお兄さんにオススメの看護婦さんを教えに行くだけだから」

 

剣城「余計やめろ! うちの兄さんをお前と一緒にするな! ぐぅおぉぉ!」

 

信介「だから、激しいツッコミはしちゃだめだって!」

 

天馬「剣城のお兄さんは入院生活が長いんでしょ? なら、看護婦さんのことも既に網羅してるはずだよ。その情報さえ手に入れれば、あとは婦長さんのマークを振りきって、ゴールを目指すだけだ!」

 

剣城「そんなのに兄さんを巻き込せるか! くらえ、デスソード!」

 

 よろよろと外を目指そうとする天馬を阻止するために、剣城は最後の力を振り絞り、有事の際にために用意しておいたボールでデスソードを叩きこむ。歩きまわる程度の力を取り戻したとはいえど、剣城の死力を尽くした一撃を止められるほどの回復をしていない天馬は、当然のごとく、デスソードを止められるわけもない。

 

天馬「ぐはぁっ!」

 

信介「天馬! やりすぎだよ、剣城!」

 

 天馬は部屋の外まで吹き飛ばされてしまう。

 

ヤムチャ「くそ、幻影学園の奴らにやられた傷が疼くぜ。こんなときは窓を開けて外の空気でも……」

 

 吹き飛ばされた先では、入院患者が丁度、窓を開けたところだった。吹き飛ばされた天馬の体はそのまま開け放たれた窓へと突き進んでゆき……

 

天馬「うわあぁぁぁー!」

 

ヤムチャ「のわぁー!」

 

 その場にいた入院患者もろとも外へと落ちていったのだった……。

 

信介「天馬! 本当にやりすぎだよ、剣城!」

 

剣城「いや、今のは俺のせいじゃ……。まあ、いい。とどめだ、デスドロップ!」

 

 信介の批難もなんのその。剣城は落ちてゆく天馬達に更に追い打ちを加えるのだった。

 

信介「天馬ー! もう僕にはツッコめないくらいにやりすぎだよ、剣城!」

 

剣城「ふっ…… 兄さんのもとへは行かせるかよ」

 

信介「いや、笑ってごまかさないでよ!」

 

 天馬達の落ちていった中庭では……

 

天馬「うわぁー!」

 

ヤムチャ「ぶふぉぉー!」

 

 自由落下をする天馬とデスドロップを受けて急速に落下するヤムチャの姿があった。

 

太陽「あ、あぶない!」

 

 それをみていた一人の少年は必死に助けに入ろうとするも、三階の高さから落ちる人間の体は人の手で止められるものではないことは明らかだ。助けに入ったほうが押しつぶされてしまうだろう。

 

太陽「このままじゃ……! そうだ!」

 

 何を思ったか少年は近くの子供達からボールを奪い、落ちてくる入院患者にぶち当てたのだった。

 

ヤムチャ「がはぁっ!」

 

 落ちてくる入院患者の体は下からのシュートをもろに食らったことで、落下スピードが緩まる。だが、そこへ天馬が覆いかぶさってしまい、二人分の体重となってしまった。当然、さきほどのシュートだけでは止めきれない。

 

ヤムチャ「んおわぁー!」

 

天馬「うわぁー!」

 

太陽「ダメだ! 二人共助からない!」

 

 誰もが諦めたそのときだ。

 

???「ファイヤートルネード!」

 

 炎をまとった豪球が落ちてくるヤムチャの体を下から突き上げる。その威力は重力によって加速した二人分の体重を支えるのに充分なもので、落下の衝撃を充分和らげた。ただし、直撃を受けたヤムチャの体は無事では済まなかったが。

 

太陽「大丈夫かい?」

 

天馬「あ、あぁ。ありがとう、助かったよ」

 

ヤムチャ「…………」

 

 下敷きにされていたヤムチャはともかく、天馬は無傷で降りることができた。

 

天馬「いいシュートを撃つね。驚いたよ」

 

太陽「二つ目は僕じゃないけどね……」

 

天馬「え?」

 

太陽「なんでもないよ。それより……」

 

天馬「うっ……!」

 

 そのときだ。天馬の腹が地の底から呻く亡者のような悍ましい音を発した。

 

天馬「ぐぅあぁぁぁ! ら、落下の衝撃で収まっていた痛みがあぁぁぁ!」

 

太陽「ちょ、ちょっと、天馬?」

 

天馬「ご、ごめん! また今度!」

 

 まだ名乗ってもいない名を呼ばれたことに気付くこともなく、天馬はトイレへと駆けていってしまったのだった。あまりに唐突な出来事に、太陽はぽつんと去ってゆく天馬を見送るしかできなかった。

 

太陽「あーあ、いっちゃった……」

 

???「太陽……」

 

 名を呼ばれて振り返れば、そこには二人を助けたシュートを放った男の姿があった。

 

???「まったく、お前は無茶ばかりをするな。あのままほっておけば、勝負をするつもりだったろう?」

 

太陽「あ、あはは……。すみません。病院って暇だし、やっぱりサッカーやりたいし」

 

???「そう思って、その情熱を向けるものをもってきたぞ」

 

太陽「ゲームですか? ラブプラス? サッカーゲームでもないんですか?」

 

???「お前はこっち方面の才能がありそうだからな」

 

太陽「そうなのかな? まあ、入院中は暇だしやってみますよ、イシドさん」

 

 太陽はフィフスセクターの聖帝の名を呼んだのだった。

説明
イナズマイレブンGO 二次創作。作者HPより転載
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