第十一話
[全3ページ]
-1ページ-

 ホーリーロード準決勝の相手は10年に1度の天才がいるという新雲学園。そこで待ち受けていたのは病院で知り合った少年、太陽だった。試合などできる体じゃない太陽に天馬は戸惑うが……。

 

『死闘、ホーリーロード!! ―譲れない勝負―』

 

太陽「てんんんまぁーーーー!」

 

天馬「たいよおぉーーーーー!」

 

 天馬と太陽はまるで疾風と灼熱の如く激しくぶつかり合う。その荒ぶる気迫は他の何人も近寄らせることも許さなかった。他のプレイヤー達は例え味方であろうとも、踏み入ることすら出来ず、行く末を見守るしかできない。

 

解説『凄い! 凄い戦いだ! 互いの全てをぶつけあう、ただそれだけなのに信じられないほどに熱い戦いだ!』

 

 彼らの足元ではボールが絶え間なく動き続ける。技術、パワー、それらを駆使した奪い合い。だが、その根底にあるのは激情。最後にボールを奪うのは最も強い思いを持った者であることがひしひしと伝わってくる。

 

佐田「太陽! こんな戦いを続けたら、お前の体は……!」

 

神童「くそっ、なんて戦いだ。まともに手がだせない!」

 

剣城「無理をしないでください、キャプテン。ここから先、あいつらの間合いに入れるのはあいつらと同じ強い思いを持ったものだけ。俺達は成り行きを見守るしかないんです」

 

信介「天馬……! なんで…… なんでこんな馬鹿な戦いをしてるんだよ……!」

 

 仲間を助けたいのに手を出すことも出来ず、見守ることしかできない。雷門、新雲のどちらの選手もただ悔しさに顔を歪ませる。

 

天馬「太陽、君は間違っている! いい加減にしろぉー!」

 

太陽「君に何が分かるというんだ! ただ一面だけしか知らない君が知ったような口を聞ぐはぁっ!!」

 

天馬「太陽?!」

 

 戦っている最中、太陽は急に吐血する。だが、その目に残るは光は決して失われることなく、天馬にわずかの隙すらみせようとしない。

 

太陽「僕の命はもうすぐ尽きるだろう……。だが、それでも構わない! この試合に、この勝負に、何より君に勝つことが出来るなら! 君にラブプラスの魅力を分からせることが出来るならね!」

 

天馬「認めない! 俺は絶対にそんなの認めたりはしない! 女の子は現実のほうがいいに決まってるじゃないか! ゲームじゃスカートをめくることも、こっそりと着替えを覗くことも、まして女子トイレに入ることも出来ないじゃないか!」

 

太陽「そんな汚れた心で彼女を卑下するなぁー!

 

天馬「汚れてなんかいない! これが健全な青少年の姿なんだぁー!」

 

剣城「いや、お前の場合は既に健全の域を通り越してるだろ! 心の底から汚れてるだろうが!」

 

佐田「……太陽、お前、入院してる間に何があったんだよ。いつからギャルゲーにどっぷりはまっちまってたんだよぉー!」

 

 呆れ果てる周囲のことなどまるで気にした様子も見せず、二人は魂と魂をぶつけあう。そんな彼らの元へゆっくりと白い影が近づく。

 

QB「……まったく、見てられないよ」

 

剣城「QB先輩? それ以上、近づいたら……!」

 

 剣城が止める声も聞かず、QBは荒れ狂う彼らのすぐ脇をてくてくと歩いてゆく。

 

解説『おぉっと、ここでQB選手が二人に近づいてゆくぞ! しかし、それ以上近づこうものなら、巻き添えでただでは済まない!』

 

QB「天馬、太陽……。君たちは何もわかってないね。二次元だって三次元だって、どっちが優れているかなんて問題ないよ」

 

天馬「え?」

 

太陽「な?」

 

 QBは必殺技ディメンションカットであっさりと二人からボールを奪ってしまう。

 

QB「てっとり早くおっぱいが見られるならどっちだって構わないじゃないか」

 

天馬「うわぁー!」

 

太陽「ぐはぁっ!」

 

解説『な、なんと! QB選手、あの二人からあっさりとボールを奪ったぁー!』

 

剣城「いや、なんであいつらは吹き飛んでんだよ! つーか、QB先輩も説教してるようで単に欲望垂れ流してるだけだろ! そもそも誰だよ、QB先輩って!」

 

神童「剣城、あまり深いところは気にするな。今までもドナルドとか餓チャピンとか、ムックとか、あとついでに三国先輩とか、なんか変なのがいた気がするだろ」

 

三国「ちょっと待て、神童! なんで変なのの枠組みに俺が入ってるんだ?!」

 

剣城「確かにそうですね。まあ、三国先輩以外は特に問題はなかったから、今回もこのまま進めましょう」

 

三国「いや、剣城! なんでその枠組の中で俺だけ問題児扱いなんだ? むしろ、他のメンバーの方が問題あるだろう?!」

 

信介「す、凄い……。三国先輩って、きちんとツッコミも入れられるんだ……。僕もあんなキーパーに…… いや、やっぱりなりたくないや」

 

三国「ははっ、信介。ここは照れないで俺に憧れていいんだぞ?」

 

信介「いえ、いいです。それによく考えたら別にツッコミ入れられるのとキーパーって、別に関係ないですし。それより今はQB先輩が奪ったボールを剣城まで繋げないと!」

 

神童「よし、いくぞ! 神のタクト!」

 

太陽「させるか!」

 

 吐血していた太陽は起き上がるやいなやQBの前に立ちふさがり、パスコースを塞いでしまう。更に新雲の選手達も神童や剣城のマークへ入り、あっという間に雷門の攻撃の手を塞いでしまった。

 

QB「吐血して倒れていたのに、もう起き上がれるのかい? 病弱設定のくせしてこの回復力なんて、まったく訳がわからないよ」

 

太陽「ふっ……、それは君の攻撃では僕を倒せないということさ。分かるだろう?」

 

剣城「どういうことですか、QB先輩!」

 

QB「雨宮太陽……。まさか、君は……!」

 

太陽「そう、俺はおっぱいに興味はあるけどそれが全てじゃない……。簡単に見られるおっぱいなんて何の価値もない! むしろ、ヒロインがちょっと大胆な水着を着たり、そのくせ照れたり恥じらったりする姿にこそが魅力を感じるんだ! ぐはぁっ!」

 

QB「がはぁっ!」

 

 太陽は吐血しながらもスライディングを決め、QBからボールを奪う。

 

剣城「って、なんで二人して吐血してるんだよ?!」

 

天馬「そんなことも…… ぐふっ! わ、わからないのかい、剣城……」

 

剣城「て、天馬……。お前、無事だったのか……」

 

天馬「今の攻撃は俺には少し弱かったかな。俺はシチュエーションよりも、ただおっぱいが見られればいいんだから!」

 

剣城「いや、ちっとも説明になってねえよ! お前ら、本当に何がやりたいんだよ!」

 

太陽「サッカーに決まってるじゃないか」

 

QB「サッカー以外に何をしてるっていうんだい?」

 

天馬「剣城、俺達は本当のサッカーを取り戻すために戦ってるんだよ? 分かってるの? 別に本当のモミアゲを取り戻す戦いをしてるわけじゃないんだよ?」

 

剣城「なんで俺がおかしいみたいな扱いになってるんだよ! つーか、ここに来てまたモミアゲで責められるのかよ、俺は! ……がはぁっ!」

 

神童「つ、剣城?!」

 

 ツッコミを続けた剣城の体はここに来て遂に限界を迎えてしまったようだった。血を吐き、ぐったりと倒れてしまうのだった。

 

神童「つるぎぃー!」

-2ページ-

『死闘、ホーリーロード!! ―譲れない情熱―』

 

 天馬と太陽、そしてQBとの戦いはあまりにも苛烈を極めたものだった。誤ってツッコミを入れてしまった剣城はその力に翻弄され、ついには血を吐き倒れてしまう。

 

鬼道「剣城……! 天馬とQB、雨宮太陽との戦いに不用意に立ち入れば、こうなることは分かっていたはずだろう……!」

 

吹雪「なんてことだ。この状況でまともにツッコミが出来るのはモミクル君だけだっていうのに……。これじゃあ、ひたすら天馬くん達がボケ通して収拾がつかなくなってしまうじゃないか!」

 

鬼道「いや、今はボケやツッコミの話じゃなくてだな。と、いうか、いつまで居座るつもりだ、吹雪……」

 

剣城「……だ、大丈夫ですよ。す、少しツッコミすぎて…… の、喉をやられただ……け…… がはぁっ!」

 

 剣城は瞳にギラついた光を保ちながら、ふらふらと起き上がる。だが、それは無理に残る力を振り絞るだけのようだった。少し喋るだけで血を吐いてしまった。

 

信介「ツッコミで血を吐くほど喉をやられるってどういうレベルなのさ?!」

 

神童「やめろ、剣城! これ以上続けたら、お前は…… お前は一生、ツッコミできない体になってしまうぞ!」

 

信介「そうだよ、剣城。こんな馬鹿な試合でツッコミできなくなってもいいの?」

 

剣城「いいわけないだろ! だけどな、これ以上、あいつらを放っておいたら、際限なくおっぱい連呼されるんだぞ! いいのか、それでも?!」

 

信介「そ、それは嫌だけど」

 

神童「仕方ない。ここは俺達で剣城をアシストして、少しでも負担を減らすんだ」

 

信介「わかりました。とにかく天馬の喉を狙います!」

 

剣城「いや、お前は何をしようとして……ごほぉっ!」

 

吹雪「ダメだ、モミクル君! 残り少ないツッコミを無駄使いするんじゃない! 今のでこの試合で使える残りツッコミ回数があと四回になってしまったじゃないか!」

 

神童「分かりませんよ! つーか、残りツッコミ回数ってなんですか! 尽きたらどうなるっていうんでごはぁっ!」

 

神童「やめろ、剣城! ツッコミしすぎて死ぬぞ!」

 

剣城「いや、むしろ、今のはあんたらがボケなければ済む話なんですけどね」

 

 敵も味方も関係なく潰し合いになってきた混沌とした状況の中で、剣城はひどく疲れた吐息を漏らす。だが、試合はそんな彼を休ませる時間など与えてくれるわけはなかった。

 

天馬「うおおおぉぉぉぉーーー! 魔神ペガサス!」

 

太陽「はああぁぁぁぁぁーーー! 太陽神アポロ!」

 

 天馬と太陽、二人は化身をもって新たなる戦いのステージへと進んでいたのだ。二人でたった一つのボールを蹴り合う。そのたびに空気は観客席までも震わせ、化身のぶつかり合う力は激しい光となって撒き散らされていった。

 

剣城「くっ、残りツッコミ回数が残ってないっていうのに化身まで使いやがって……」

 

信介「ここは僕に任せて」

 

 傷ついた剣城に代わり、信介が戦う二人の元へと駆ける。剣城ほどのツッコミは無理としても、天馬との付き合いが長いからこそ出来るツッコミがあると信じて。

 

天馬「太陽、君は間違っている!」

 

太陽「君に何が分かるというんだ!」

 

天馬「分かるわけないだろ! 揺れないおっぱいに何の価値があるっていうんだ!」

 

太陽「大きければいいってものじゃない! 形、サイズ、服の上から分かる膨らみ…… その全ての美しさが調和してこそのものだろう!」

 

天馬「それも一理あるかもね!」

 

信介「天馬、なんでそこで同調するのさ?! と、いうか、やっぱりおっぱいがどうとか話ながら戦うのやめてよ!」

 

QB「まったく、君たちは何もわかってないね」

 

信介「げっ、QB先輩……」

 

 QBは化身で凌ぎ合いを続ける天馬と太陽の中へと滑りこむ。そのしなやかな動きは力と力でぶつかりあう中に力で対抗しようとなどしていない。柔よく剛を制す戦い方を感じた信介は知らず知らずのうちにその動きの全てを見据えていた。

 

QB「君たちはその未熟さゆえに根本的な間違いをおかしていることに気づいていない」

 

天馬「根本的な……」

 

太陽「間違い……?」

 

QB「そう」

 

 二人の蹴りがボールを拮抗した力で押し合った瞬間を見計らい、QBは真下からボールを蹴り上げる。その一蹴はエネルギーの逃げ場として作用し、ボールは空高くに飛び上がる。

 

 空高く飛び上がったボールが届くところまで落ちてくるタイムラグに合わせ、QBは自らの化身を出す。

 

QB「魔女キャンデロロ!」

 

 QBの生み出した化身はリボン状の両手で太陽神アポロの両腕を捕らえる。そして、そのまま化身を通じて太陽の動きまでも支配する。

 

太陽「か、体が……!」

 

QB「いくよ……」

 

 QBの動きに合わせて、太陽もまた同じシュート体勢を取る。新雲学園へのゴールへ向けて。

 

太陽「な、なんだ、これは?! まるでおっぱいの大きな女の子が背後に密着して手取り足取り教えてもらっているような……」

 

佐田「た、太陽! 気をしっかり持つんだ、太陽!」

 

QB「無駄だよ。太陽は今、おっぱいの真髄に触れているんだからね」

 

佐田「お、おっぱ…… いやいや! なんだ、その真髄っていうのは!」

 

QB「おっぱいの真髄……。それは女の子が無意識に密着してきて、おっぱいが体に当たっちゃう……。女の子が意識して当ててるのかどうなのかに悶々したり、ムラムラしたりするシチュエーションのことだよ。さあ、いくよ、太陽」

 

太陽「う、うわあぁー! 止めてくれ、佐田ー!」

 

佐田「太陽!」

 

QB・太陽「ティロ・フィナーレ!」

 

 QBに操られた太陽は、まるで弾丸のようなシュートを自陣ゴールへと放つ。二つの化身を合わせたシュートの威力は言うまでもない。

 

佐田「スターリフレク…… うわぁぁぁーーー!」

 

 止めようとした佐田ごとゴールへと突き刺さる。

 

太陽「がはぁ……! こ、これが…… おっぱいの……」

 

天馬「しん…… ずい…… うぅっ……!」

 

 天馬と太陽はあまりのダメージにそのまま芝生へと倒れこんでしまう。

 

信介「わけがわからないよ! と、いうか、なんで天馬までダメージ受けてるのさ!」

 

QB「おっぱいより、パンツを覗くのが趣味の君には分からないよ。残念だけどね」

 

信介「勝手にそんな趣味作らないでよ! 僕、そんな趣味して…… ごふっ!」

 

 ツッコミ途中で信介は血を吐き、倒れてしまう。彼もまたツッコミを捌ききれずに限界が来てしまったようだった。

 

神童「信介!」

 

 神童はすぐに介抱するが、信介はの傷は深すぎた。これ以上のツッコミはまず無理だろう。

 

剣城「くっ…… すまない。俺がツッコミを入れられないばかりに……」

 

天馬「し…… 信介……ごめん……」

 

 かなりのダメージを受け、弱々しく顔を上げ天馬は信介へと語りかける。

 

信介「て……んま……。気にしなくて……いいよ。僕がもっとしっかりしてたら……」

 

天馬「いや、そうじゃなくて……。信介はおっぱい派だと思ってたけど、やっぱりパンツ派だったんだね……。ずっと誤解しててごめん……! 今度、一緒にスカート捲りしようよ……」

 

信介「違うよ! 誤解でもなんでもないし、そもそもどっち派でもないよ! あとスカート捲りなんかしないから! セクハラの仲間にしないでよ! がはぁっ!」

 

神童「信介!」

 

 怒涛のツッコミをした信介であったが、言いたいことを言ったところで血を吐き、動きが止まる。神童が声をかけても反応はなかった。近くで信介の状態を確認した剣城は何かに驚いた表情を見せてから、首を振る。

 

剣城「……ダメです、キャプテン」

 

神童「どういうことだ?」

 

剣城「信介は…… 信介はツッコミをしたまま、意識を失ってます……!」

 

神童「し、信介……! あとは俺達に任せろ!」

 

 次々と負傷者を出し、それでも僅かの油断も許されない。最強の敵、新雲学園との戦いはまだ終わりを見せない……。

-3ページ-

『死闘、ホーリーロード!! ―譲れないツッコミ―』

 

解説『激しい戦いを続けてきた雷門中対新雲学園戦も3−3と珍しく常識的な点数で拮抗したままロスタイムに突入だ! 両チームともにこれ以上、戦う力はない以上、ここで最後の一点を決めたいところだ!』

 

 フィールドには敵に敗れ、更に己にも敗れて力尽きた選手たちが何人も横たわる。戦う力がないことを言い訳に戦うことを諦めた者たち。そんな中にありながらもフィールドに立ち、最後の力で最後のチャンスを狙う選手達もいた。

 

神童「あと少し…… 行けるか?」

 

剣城「もちろん……といいたいところですが、正直、俺一人でシュートを決める自信はありません」

 

神童「珍しく弱気だな、剣城。だが、それも仕方ないか」

 

 神童はそう言って周囲に倒れる選手達を眺めて自嘲的な笑みをこぼす。

 

 ある者はツッコミ過ぎて立ったまま意識を失い、またある者は観客席からの銃撃で蜂の巣にされ、別のものは今頃になって寄生虫の影響で違う限界を迎えていた。

 

 この試合でまともに立っているものなどは皆無に近い状態だ。心が折れそうになろうとも仕方ないのだ。

 

天馬「うおおおおおぉぉぉ! たぁいよぉぉぉぉぅーーー!」

 

太陽「はあああああぁぁぁ! てぇんまあぁぁぁぁーーー!」

 

 ただ二人を除いては……。

 

天馬「真っ当な青少年ならグラビアを見て、ムラムラするのが本質なんだ! 二次元にムラムラするなんて間違いだって気づくんだ、太陽!」

 

太陽「天馬、君こそ間違っている! 彼女にムラムラなんて汚れた言葉を吐きかけるな! 二次元に対する愛と欲情を履き違えるなー!」

 

 限界なんてものはとうの昔に過ぎ去ったのに、本来ならありえるはずのない力を出しているというのに、ただひたすらに二人は戦いを続けていた。

 

神童「このままじゃ埒があかない! 残った俺達の力を一つに合わせるんだ!」

 

剣城「はい!」

 

天馬「わかりました、キャプテン!」

 

 天馬、神童、剣城は電車ごっこの体勢をとり、残った全エネルギーを一つに注ぐ。その力は新たな化身となって姿を現した。

 

天馬・神童・剣城「魔帝グリフォン!」

 

 天馬たちは合体化身によるシュートで最後の勝負にでる。無論、それを新雲学園が黙って受け入れるはずもない。

 

佐田「俺達の力を太陽に! 化身ドローイング!」

 

太陽「みんなの力が溢れてくる……! これならいける! サンシャインフォース!」

 

 太陽と新雲学園の選手たち、彼らの力が集まった太陽神アポロは魔帝グリフォンと互角の戦いを繰り広げる。

 

解説『雷門と新雲、ここにきて、まだ拮抗した戦いを繰り広げる! だが、僅かに押しているのは新雲だ!』

 

太陽「もっと……! もっとみんなの力を! みんなの二次元を愛する力を俺に!」

 

佐田「……いや、二次元はちょっと……」

 

 太陽の呼びかけに応えられる新雲学園の生徒は居らず、太陽神アポロの力が弱まる。

 

太陽「ぐっ! し、しまった!」

 

天馬「太陽、これが現実だ! 俺達、三次元を愛する力に二次元を愛する力は勝てないんだ!」

 

神童「……え? い、いや、待て! 俺は別にそういう戦いをしてるわけじゃ……!」

 

剣城「お前の妄想を俺達にまで押し付けんじゃねぇ!」

 

 勝利を確信し天馬は叫ぶも、それが三人の結束に亀裂を生んでしまった。結束を失った魔帝グリフォンは一気に弱体化してしまう。

 

天馬「うわっ! ふ、二人とも力を弱めないで!」

 

剣城「お前が余計なことをいうからだろ!」

 

解説『強烈な押し合いを繰り広げるも、両者ともに既に残された力はもうほとんどないのか?! 力がどんどんと弱まっているぞ! このままじゃ、押し合いを制したとしてもゴールまで届かないぞ!』

 

佐田「みんな、太陽にもっと力を! 好きなものに対する情熱を思い描け! もっと、もっと! うおぉぉー、太陽!」

 

太陽「ちょ、ちょっと待て、佐田! 最後に俺の名前を呼ばないでくれ! まるで好きなものが俺みたいに言わないでくれ!」

 

佐田「……あ」

 

 佐田はそう吐息とも言葉ともわからないものを漏らすと、頬を赤く染めて視線を外すのだった。

 

太陽「だから、やめろ! 俺には既にラブプラスという愛する存在がいるんだ!」

 

 なんだかんだとやりながらも佐田の情熱は太陽へ注ぎ込まれ、太陽神アポロは最大の力を発揮する。

 

 その力は絶望的な力となって魔帝グリフォンを蹂躙する。

 

神童「このままじゃ…… 勝てない!」

 

剣城「ここまで来て……!」

 

天馬「キャプテン、剣城! こうなったら二人もグラビアでなくてもいいから、好きなものへのムラムラを注ぎ込んでください!」

 

神童「急にそんなこと言われてもだな……。なあ、剣城」

 

剣城「うおぉぉぉー! 兄さぁーーーん!」

 

 剣城の兄への想いが魔帝グリフォンの力となり、太陽神アポロンを押しとどめる。

 

神童「って、剣城! お前、そんな趣味が……」

 

剣城「ち、違いますよ! 俺のはムラムラとかじゃなくて、憧れであって……。とにかく天馬と一緒にしないでください!」

 

天馬「そうですよ。剣城がムラムラするのはモミアゲなんですから」

 

剣城「それも違…… ごほっ! くっ、余計なツッコミをする力も残ってないか……」

 

天馬「さあ、キャプテンも早く!」

 

神童「早くと言われてもだな!」

 

天馬「じゃあ、ワカメでいいですよ! 俺、前からキャプテンの髪ってなんかワカメみたいだと思ってたし」

 

神童「じゃあでワカメってなんだ! あとお前、俺の髪がワカメみたいだとずっと思ってたのか! これは剣城のモミアゲと同じでオシャレなんだ!」

 

剣城「俺のモミアゲは別にオシャレじゃねぇ!」

 

解説『審判が時計の確認を始めた! もうロスタイム終了か?!』

 

天馬「もうなんだっていい! 全ての力を込めるんだ!」

 

剣城「兄さぁーーーん!」

 

神童「ワカメェーーー!」

 

太陽「二次元ーーー!」

 

佐田「太陽ーーー!」

 

天馬「うおぉぉぉーーー! おっぱぁーーーい!」

 

 未成熟な青少年の全ての感情がぶつかり合い、そして、それは光となってはじけ飛ぶ。

 

 目も眩む力の果てに垣間見えたのは、揺れるゴールネット……。そして、鳴り響く試合終了のホイッスル。

 

解説『ゴ…… ゴ…… ゴォーーーーーーーール! そして試合終了のホイッスル! 熾烈な戦いを最後に制したのは……』

 

 太陽は雷門のゴールを見て、静かに微笑む。

 

太陽「僕達の……」

 

解説『最後の一点を入れたのは雷門だぁーーー!』

 

太陽「負けだよ、天…… ごはぁっ!」

 

 自分たちの負けを認め、それでも微笑む太陽。そして、限界を遙かに越えた肉体は人生の終了までも合図する。

 

 太陽は血を吐き、糸の切れた操り人形のようにグラウンドへ沈むのであった。

 

天馬「た、太陽ーーー!」

 

 無論、限界を越えたのは太陽だけではなかった。同じように限界を越えて戦い続けていた彼もまた勝利と引き換えに倒れてしまうのだった……。

 

三国「やっと…… トイレに…… ぐほっ!」

 

神童「って、なんで対して活躍もしてない人が倒れて…… がはぁっ……!」

 

剣城「キャ、キャプテン!」

 

天馬「しっかりしてください、キャプテン! キャプテェーン!」

説明
イナズマイレブンGO 二次創作。作者HPより転載
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
979 979 0
タグ
イナズマイレブンGO

資源三世さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com