生まれし者〜血の剣〜
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機械化が世界を回していると言っても過言ではない、この世の中。便利な機械が様々な形で人々の役にたち、人々の助けにもなっている。しかし、こうした面は俗に言う先進国にしか見られず、発展途上国などでは、人を殺めるものが目立つ。そんな先進国の1つ、日本国の関東地域に、青年、神木龍は住んでいた。

 

季節は秋から冬へと移り変わり、頬を刺すような冷たい風が龍の横を駆け抜ける。龍は、桜葉高校の野球部に所属しており、ピッチャーを務めていた。今年は、甲子園出場を惜しくも逃した桜葉高校野球部は、来年こそはと、体力作り為にランニングを行っていた。

 

「ん? 雨か?」

 

掛け声と共に、30人の部員を引っ張って先頭を走っていたキャプテンが、ふと濡れた頬を触ってペースを緩める。次第に、ぽつぽつと雨が降り始め、雨粒も大きくなってきた。最初は、さほど気にせず走り続けていた野球部だったが、雨脚は速くなるばかり。ちょうど、明日の土曜日に練習試合が入っていた為、早めに練習を切り上げる事となった。

 

「先輩、お先に失礼します」

 

高校2年生の龍は、部室にまだ残っていた3年生に挨拶すると部室を後にした。下駄箱で靴を履き替え、一段と暗くなった空を見上げる。一度鞄を開け、折りたたみ傘が入っていない事を確かめ、面倒臭がらずに持ってくれば良かったと、ため息を付いた。

 

「しゃぁない。バス停まで走るか」

 

今一度、変わることない鞄の中身を確認し、歩いて5分のバス停まで走り出す。バス停まで行けば、屋根が付いているので雨宿りにはなる。

 

幸運な事に、バス停に着くと同時にバスが来た。コートに付いた雨粒を掃って一番後ろの席に座る。バスが走り始めて暫くすると、ポケットに入れておいた携帯電話が鳴った。前に居た他の乗客がと龍を一瞥すると、龍は「すみません」と小声で謝ると携帯電話を開いた。

 

液晶画面には、新着メール有りの表示。マナーモードに設定していない龍が悪いのだが、龍はこんな時に誰だよ、と心の中で悪態を付く。メールを確認すると、父親からだった。

 

 出張が1ヶ月ほど伸びる事になっちまった。正月前には必ず帰る。ごめんな。 父

 

ハリウッド俳優の父親と、大人気アイドルグループの母親も持つ龍。しかし、中学2年生の時、不慮の事故で母親を亡くして以来、父は男手1つで龍を育てていた。高校に入学すると同時に、父親にハリウッドでの映画出演が決定し、2月前からハリウッドに海外出張している。

 

 了解。家の事は心配しないで、仕事頑張れよ。 龍

 

既にこの生活も今年で4年目。父とは違い、家事全般が得意の龍は使用人を雇わないで、生活する事など造作もない。気が付くと、バスは家に最も近いバス停まで残り1つとなっていた。龍はバス停で降り、再び家まで走る。

 

高級住宅街の一角に佇む龍の家は、門から玄関まで庭があり、耐熱防止の壁はレンガのデザインとなっている。龍が門を開け、庭の途中に差し掛かった瞬間、近くに立っているマンションの避雷針に雷が落ちた。反射的に身を屈めた龍は、

 

「きゃぁぁぁぁぁあ!!」

 

と言う声に思わず自分の口を押さえる。

 

「? 俺の声な訳ねぇのに・・・じゃあ、いったい」

 

「どいてどいてどいて〜〜〜〜ッ!!」

 

驚いて声のした方向、上を見上げた龍は言葉を失った。ブロンド髪の少女が、髪をうねらせながら、龍に向けて何やら向けている。その後の事は、一瞬だった。

 

急に風がうねりを挙げて龍を地面に押し付ける。

 

驚いて状況が理解できない龍の上で、空中に浮いていた謎の少女が龍以上に、驚いた顔をする。

 

まるで糸の切れた人形の様に、再び落下を開始した謎の少女が、龍のお腹の上に尻餅を付く。

 

きれいに鳩尾に入った龍が悶絶し、視界が深い闇に包まれる。

 

ここまで僅か4秒。

 

この謎の少女との衝突が、龍の人生を大きく変える事となるとは、龍自身思いもよらなかった。

 

 

 

 

龍はお腹に違和感を感じ、目が覚めた。ぼやけていた視界がハッキリとしてくるにつれて、他の感覚も働き始める。「ん・・・」と言う声と共に、お腹の上の何かがモゾモゾと動き、甘い香りが鼻をくすぐった。

 

「・・・え?」

 

その甘い香りで再び眠りそうになる自分に、1つの疑問が頭に浮かび、龍の視線がゆっくりとお腹に向かって動いて行く。

説明
突如、少年の前に舞い降りてきた、否、落ちてきた少女。少女は、自らを魔法使い(ウィザード)と名乗り・・・少年の新たな人生の歯車が回り始めた。
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