ゼロの使い魔 〜魔法世界を駆ける疾風〜 第二十八話
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アンリエッタは口をあんぐりと空け呆然としていた

それもそうだろう

 

王女たるが故に彼女は今までの人生で、明確な拒絶の意思をぶつけられたことは無かった

せいぜいが枢機卿であるマザリーニの苦言や小言くらいの物である

だからこそ今、目の前にいる青年に言われた言葉が理解できなかった

 

「…申し訳ございません、少々良く聞こえませんでしたわ。もう一度お願いできますか?」

「ふざけるな、と申したんですよ。幼い頃からの友人を殺そうとしている姫殿下」

 

その言葉にアンリエッタの顔が瞬く間に真っ赤に染まる

 

「わたくしはルイズを殺そうとなんて、思った事もありませんわ!」

「思っていなくとも貴女が我が主にした『お願い』の結果、主が死に見舞われる可能性は高い」

 

此処までハヤテが言っても気が付く様子の無いアンリエッタ

そこでハヤテが限りなく正解に近いヒントを出す

 

「革命中の国に、軍属でもないメイジの少女と使い魔を放り込む。しかもその理由は他国との同盟を妨げる手紙の奪取。殿下、貴女が革命軍側であるとして、その少女をどうしますか?」

 

そこまで言って、彼女はやっとハッとしたような顔をする

アンリエッタの顔色はまるで色が抜け落ちて行くかのように蒼白へと変じていった

 

「取引材料…人質として生かしておく。という考えもあるでしょうが、十中八九殺されるでしょうね。そしてその死の原因は革命中のアルビオンに行かせた他でもない貴女ですよ。殿下」

「し、しかし!ルイズには魔法衛士隊の護衛をお付けしますわ!!それも、このわたくしが直々に選んだ猛者中の猛者を!!」

 

ハヤテの言葉にアンリエッタは息を荒げて抗弁する

 

「ほう?ではその護衛の者の名前をお聞かせ願えませんか?アンリエッタ王女殿下」

 

ハヤテは挑発するように言葉を紡ぐ

アンリエッタは見事に釣られ、良くぞ聞いてくれましたとばかりに自信満々の表情で自身の人選を高らかに告げる

 

「ええ、勿論ですわ!彼の名は『ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド』ですわ。爵位は子爵。スクウェアの風メイジで、実力に関してはわたくしの折り紙付きですわ!!」

 

アンリエッタの口から名前が出た途端、部屋の空気が張り詰める

ハヤテとマチルダは殺気を放ちエレンとカトレア、それにテファは真剣な表情で話を聞いている

ただ一人、ルイズだけは青い顔をして何かを決めかねている様な顔をしていた

 

 

 

部屋の空気が読めないアンリエッタは今だ何事かを捲し立てていた

やれ彼に護衛を任せたのは人柄が信用でき、スクウェアメイジとして実力面も心配が無いからだの

やれ彼は強いから万が一にもルイズが危機に晒されることは無いだの

ハヤテたちからしてみれば一笑に付すような事柄を熱弁していた

 

ちなみにテファにはワルドが要注意人物であることは、ハヤテが学院に向かう馬車の中で話していた

マチルダは言わずもがな。そもそも売国奴を調査していたのは彼女なのだから、ワルドの事を知っていて当然なのだ

 

 

 

アンリエッタが熱弁するのを冷たい雰囲気でハヤテたちは聞き流している

しかしルイズの発言でその雰囲気は霧散した

 

「…わかりました姫様。その依頼を承ります」

 

その言葉をエレンとカトレア、テファとマチルダが慌てて止めようとする

 

((エレンとカトレア|ヴァリエール姉妹))は可愛い妹が戦場にいくと聞かされて、ただでさえ気が気ではなかったのだ

その戦場に妹自身が行こうとしているのだ

しかもハヤテの言葉どおりならただ行くだけで殺されるかもしれないのに、護衛に付くのが敵側の組織に与している実力者となれば焦るのも当たり前だ

 

テファにとってルイズは生まれて始めての同年代の友達だ

村の外を一切知らなかった自分に、呆れながらも世界を教えてくれた大事な友達

しかも村の子供達をヴァリエールで引き取って保護するという案を出してくれたのも、又ルイズだ

そのルイズが死ぬかもしれないというのは、テファにとって決して無視は出来なかった

 

前述のメンバーの中でマチルダはルイズと特に仲が良いというわけではないが、悪いわけでもない

二人きりで部屋で談笑するくらいの仲のよさだ

だが妹の親友である上に婚約者の主人ともなれば、自殺志願ともいえる言葉は口を塞いででも止めたかった

 

 

しかし時は既に遅し

アンリエッタは目が笑っていない満面の笑みでハヤテを見据えていた

 

「あなたの主人のルイズはこう言っておりますわ。あなたはどうかしら?もっとも、使い魔が何を言おうと主人の意向には逆らえませんが?」

 

目を細めて見下すように言うアンリエッタに、ハヤテは左額に青筋を浮かべる

しかしハヤテは効果的な嫌がらせを思いついたのか、青筋はそのままに口の端を釣りあがらせる

 

「かしこまりました。確かに主人の意向には使い魔は逆らえませんね」

 

アンリエッタは勝ち誇ったかのような笑みを浮かべる

…次の瞬間に、その笑顔は凍りつくとも知らずに

 

「逆らえないので、使い魔として主人に提案いたします。アルビオンに行かれるのなら、まずサンドリヨン様とカリーヌ様に了承を得てからの方がよろしいかと」

 

アンリエッタの表情が笑顔のまま凍りつき、部屋にいた全員がその身を恐怖に竦ませた

 

 

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第二十八話でした

さて八月ももう終わってしまいます

皆様は今年の夏をいかがお過ごしでしたか?

 

自分はバイトしたり海に行ったりバイトしたり甥っ子を抱っこしたり

結構有名なプールで10mの跳び込み台から跳び込んだりバイトしたりで

割と充実した夏を過ごせたんじゃないかな?と思っています

夏休みの宿題にまだ手をつけてませんが

 

 

 

さて次回の投稿をお待ちください

 

説明
第二十八話です。お楽しみいただければ幸いです
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コメント
アンリエッタざまぁwww(アジ=ダハーカ)
>ヒマジソさま ありがとうございます。アンリエッタは周りが甘やかして育てたからああなったと思っています。周りの人間が変われば彼女も変われると思いますよ。変えるどうかはともかくとしてw(ディアーリーズ)
変わらず楽しく拝読しております。アンリエッタは確かにアレなのですが、環境が変わればきっとできる子になると信じたいですね。まあ、そのままならそのままでも別に構わないですがw(ヒマジソ)
>FALKENさま 今の所、自分の脳内では三つの選択肢がありますね。 1.アンリエッタになる 2.愛すべきアホリエッタになる 3.アホリエッタのまま(ディアーリーズ)
やっぱりアホリエッタだったよ…。で、この後アホリエッタはどうなるのだろう、アンリエッタになるか、アホリエッタのままか。(ガルム)
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ゼロの使い魔 オリ主 アンリエッタ 

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