プルラリズム
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 この物語をどこから語ればいいものか、あえて選ぶならば最初の2024年の8月10日となるだろう、その日は近江咲世にとって人生を賭けた一日だった。研究室では、夏季休暇に入る前にと納涼飲み会が行われていた。春から研究員として配属された咲世は研究室の先輩に好意を伝えるために一世一代の賭けにでる決意今朝行ってきたのだった。修士課程を修了するまで、小学校から女学校で男性経験というのが、この春先まで何一つ無かった。そんな彼女に指導してくれる優しい先輩、波多江衛。今までろくにおしゃれもしてこなかった咲世は、メガネをコンタクトにしたり、とにかく今日まで頑張ってきたのだった。実に、涙ぐましい努力ではあったけれど、世間では努力が確実に成功するものではないのだった。端的に、言えば撃沈も撃沈大撃沈、少なくとも咲世の主観ではそうだったのだ。一次会の後で、ここらで失礼しますと言って先輩に二人で歩きませんかと誘ったのだったその結果が撃沈で、とにかく泣いた。実に単純だった。咲世の本当の魅力はそこだった。底抜けに単純であか抜けないその魅力を惜しむらくも春先からの努力で台無しにしていたという大失態。しかしながら、非は先輩である波多江衛にも大いにあったのだ。こちらも理系の大学院卒であまり女性慣れしていない真面目系学生だった。咲世の婉曲的告白に対してCPUがポンコツとかしてしまったのだ。だから、まともな返答が出来なかったのだが、咲世は咲世でその場の雰囲気があまりにも辛くなって逃げ出した。そういった顛末があったのだった。帰り道、咲世はコンビニで酎ハイを数本買って帰った。いつもの帰り道は、今朝のニュースでやっていた陥没によって通行止めになっていたので回り道をする羽目になった。疲れ果てて帰宅した咲世は、ヤケ酒だと息を巻いて飲み始めたが、2本目の中ほどまで飲んでまたもや撃沈した。翌日研究室は、大騒動になった。

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一方

 咲世が起きる前には、滞りなく世界は始まっていた。布団から出る気分が大変に重い咲世であったが、昨日の飲み散らかしもあるし、しぶしぶ起きようと決心を決めようとしてなかなか決めれずにいた。とにかく、今日から夏季休暇でもあるし実家に帰るくらいだから急ぐ必要もないかと決めて布団の中で丸まっていた。そんな時に不意に電話がなる、同僚からだった。耳を疑う内容だった。遅刻・・・は?今日から夏季休暇・・・え?今夜が納涼飲み会?布団から飛び起きて、ニュースを付けた、今朝未明に道路が陥没したとニュースをやっていた。天気は、8月10日の天気を流していた。携帯電話の時計は8月10日9:30だった。テーブルには、昨日の酎ハイが残ってなかった。そして、その日の飲み会の二次会には咲世と衛は参加したのだった。それが、最初の切っ掛けだった。

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