病みつきシュテル
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「……えっ?えっ!?」

 

久々に帰ってきたと思ったら、窓ガラスが割れていた。

 

空き巣か!?

管理局員の家に空き巣ですか!?

 

慌てて玄関を開け、家に入ると――――

 

「おかえりなさい」

 

淡々と、しかい何処か甘い声が聞こえた。

 

「ご飯にしますか? お風呂にしますか? 私にしますか?」

 

そう言うと、彼女――――シュテルは台所から出てきた。

 

……えっ?

 

「何でシュテルが居るの?」

 

「あなたが帰って来ると聞いたからです」

 

「いや、鍵は?」

 

「合鍵を貰い忘れてたため、窓ガラスから入りました」

 

空き巣だよ!?

それは犯罪だよ!!

 

シュテルは俺に手を差し出す。

 

「合鍵をください」

 

「あげないよ!?」

 

いきなり言いだすシュテルに応えると彼女は首を傾げる。

 

「何故ですか?

 私の言うことを聞けないんでしょうか。

 恋人同士である私があなたの自宅の合鍵を貰っても何一つ可笑しなことはないじゃないですか。

 むしろ、何故合鍵を渡してないんですか?

 合鍵を貰わないと同棲出来ないじゃないですか」

 

しなくていいよ!?

 

そう言ったらどうなるかわからないな。

 

「合鍵を渡すにも余ってないんだ。 ごめんね」

 

俺が言うとシュテルは一瞬だけ俯くと直ぐに目線を俺に戻す。

 

「でしたら、あなたが持っている鍵を私にください。

 私は何時もこの家に居るので大丈夫です。

 あなたが何時何時帰ってきても私はこの家にいるから、あなたは鍵を持たなくても大丈夫です」

 

いや、大丈夫じゃ――――

 

シュテルは戸惑う俺から鍵を奪う。

 

「ですが、買い物に行ってる時がありますから、帰ってくるときは連絡してくださいね、あなた」

 

「……誰があなただ」

 

俺は溜め息を吐くと玄関の戸棚からスペアの鍵を取り出す。

 

「これ渡すから、こんなことしないでくれ」

 

まぁ、シュテルになら渡してもいいだろ。

 

「ありがとうございます」

 

シュテルから鍵を返してもらいスペアの鍵を渡す。

 

「悪戯に使うなよ」

 

「使いませんよ。

 あなたの信頼を裏切るような真似はしません」

 

信頼……

まぁ、信頼してるよ。

 

「それでは」と話を戻すシュテル。

 

「ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも――――」

 

妖艶な笑みを浮かべ、人差し指を口元に持っていき、淡々と何処か甘い感じがする声で言う。

 

「私にしますか」

 

……何処でそんなの憶えたんだよ

 

「ご飯がいいな、シュテルの作った料理をたまには食べたいし」

 

 

「はい、わかりました」

 

 

嬉しそうな笑みを浮かべて応えるシュテル。

 

――――こういう所は素直に可愛いと思うんだけどな

 

行き過ぎた行動さえしなければ、最高なのにな

 

 

 

 

 

―――――

 

 

シュテルは料理が上手い。

 

何処で教えてもらったのかは知らないけど、様々な料理を作れるし、どれも美味しい。

 

「どうぞ、召し上がってください」

 

そう言って並べられたのはオムライスだ。

 

ご丁寧にケチャップでハートマークが書かれている。

 

「それでは、いただきましょうか」

 

「ちょっと待て」

 

俺は何事もなく食べ始めようとするシュテルを止める。

 

「どうかしましたか?

 もしかして、オムライスは嫌いでしたか?」

 

いや、そうじゃなくて……

 

「近すぎない……かな?」

 

シュテルは俺の隣に座っている。

それも、肩と肩が触れ合っているぐらいの近さだ。

 

「問題ありますか?」

 

「いや、問題つーか……」

 

気恥ずかしつーか

 

「そんなことより、冷めないうちに食べましょう」

 

そう言って食べ始めるシュテルに続いて俺も食べ始める。

 

俺がスプーンで一口分すくうと、シュテルはスプーンを俺に差し出す。

 

「あーん」

 

……えっ?

 

「口を開けてくれないと食べさせれませんよ」

 

シュテルは不満そうに言う。

いやいやいやいや!!

 

「自分で食べられるからね!」

 

「ですが、恋人として彼氏に食べさせてあけたいじゃないですか」

 

恋人じゃないからね!?

 

シュテルは俺の顔を見ると納得した表情を浮かべる。

 

「あなたの言いたいことがわかりました」

 

そう言うと俺に差し出していたスプーンを引っ込め、食べ始めるシュテル。

 

……簡単に引き下がった?

 

まぁ、いっか。

俺も冷めないうちに食べようかな。

 

「あなた」

 

「あなたって言う――――」

 

俺がシュテルの方を見ると同時に、彼女は俺にキスをした。

 

――――えっ

 

そのままシュテルは俺を押し倒すと口に何かを入れられる。

 

いわゆる、口移しという行為だ。

 

つうか、何で口移しなんて……!?

 

「ん、美味しいですか?」

 

俺から離れるとシュテルは無表情に聞いてくる。

 

「何で……こんなこと」

 

「あなたがあーんを拒んだからですよ。

 ですから、口移しをしました」

 

無表情に頬を赤らめながら言う。

 

「やはり気持ちを伝え会うより行動で示した方が幸せな気持ちになりますね。

 あなたとキスをしたら、私が愛されてるんだと再確認しました。

 私もあなたを愛してますよ」

 

淡々としかし、何処か甘い声でシュテルは言った。

 

……シュテル?

 

「あなたも私を愛してますよね。

 私のことを愛してくれていますよね。

 あなたが機動六課に入隊してからは私と会う時間も少なくなりましたね。

 そんなにも彼女達が大切ですか?

 それとも、私と居たくないだけですか」

 

居たくないなんて思ったことはない。

 

「私よりも彼女達を優先するのは何故でしょうか」

 

シュテルはスプーンを手に取るとオムライスを一口分すくい、口に入れる。

そして、また俺にキスをして口移しをする。

 

「……もっと

 もっと私にあなたの愛を感じさせてください。

 あなたが私を愛してくれていると実感させてください」

 

また、オムライスをすくうシュテル。

 

「シュテル」

 

――――なぁ、シュテル

 

「何でしょうか」

 

――――何でお前は

 

「あーん」

 

俺が口を開けるとシュテルは首をかしげながら、オムライスを俺に食べさせる。

 

――――そして

 

「ッ!?」

 

シュテルに顔を近づかせ俺は彼女にキスをする。

 

「ん……ん!?」

 

そのまま口に含んでいたオムライスを彼女に口移しする。

 

全て移したら、俺は顔を離す。

 

「なぁ、シュテル」

 

顔を真っ赤にしながら、俺を見るシュテル。

 

「なんでそんなに悲しそうな顔をしてるんだ」

 

常に無表情な彼女

でも、なんとなくだけど

 

彼女が悲しそうな顔をしてた気がした。

いや、してたんだ

 

「……当たり前じゃないですか」

 

シュテルは俯きながら言う。

 

「あなたが私から離れていくのを嬉しく思えません」

 

彼女は立ち上がる。

 

「ですから、決めたんです」

 

……決めた?

 

「あなたを六課から――――いえ、管理局から救うと」

 

真っ赤な顔をして、無表情で淡々としながら、何処か甘い声で

 

「私が――――

 私だけがあなたを救える。

 あなたの傍にいられる。

 あなたの隣にいられる。

 あなたの優しさに触れることができる。

 私とあなた以外は邪魔です。

 ですから、あなたを私以外の人から救います。

 だって私は――――」

 

シュテルはデバイスを展開する。

 

――――何を

 

「私はあなたを愛してますから」

 

シュテルは言う。

 

デバイスである杖を此方に向けながら

 

――――最終通告のように

 

――――冷たい声で

 

 

 

次の瞬間、俺は意識を手放した

 

 

 

 

 

―――――

 

後日談というか、その後の生活

 

俺は六課を

……いや、管理局を辞めた

 

理由は簡単

“動けないから”

 

あの夜の日以来、俺はベッドの上で寝たきりの生活を過ごしている。

 

はじめは病院だったが、直ぐに彼女が俺を引き取った。

 

病院から退院した日以来、俺は彼女以外の他人を目にしてない。

 

俺の世話は彼女がしてくれている。

 

まるで当然のように――――

それが自分の義務のように――――

 

家のドアが開いた音がした。

 

あの日渡したスペアキーを使って開けたのだろう。

 

鼻歌が聞こえる。

 

淡々としながらも何処か甘い声で

 

――――助けて

 

そう叫ぶのはもう止めた。

 

――――無意味だから

 

俺の世界は彼女と俺だけ

 

俺の声を聞くのも彼女だけ

 

――――無意味なんだ

 

だから声に出すのはもう止めた

 

――――助けて

 

誰でもいいから

 

――――扉が開く

 

もう彼女しか利用しない扉を彼女が開ける。

 

――――助けて

説明
病みつきシリーズ第13弾!!

六課での仕事が終わり家に帰った矢先に起きた出来事。
それは、唐突な出来事
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コメント
スバルのヤンデレもお願いします(仮面ライダー)
匿名希望さん Iの方も短編で書いてみたいですね(rikub)
ジム3さん リィン編の話はもう少ししたら書きたいと思います。リクエストありがとうございます(rikub)
匿名希望さん そういえば、シャマルさんは出ていない気が……ギンガは六課の方でもう少ししたら出てきます(rikub)
ohatiyoさん 私もシュテルはヤンデレが似合っていると思います(rikub)
皆様コメントありがとうございます 匿名希望さん 貴方のコメントのおかげでレヴィの短編を投稿していないことに気がつきました。ありがとうございます (rikub)
Uはもうええで?Tの方な(匿名希望)
病みつき六課でのリィン編みたいです(ジム3)
ギンガプリーズ!!!後はやてもプリーズ!!!そういやシャマル出てなくね?(匿名希望)
シュテル………………だと。何て言うか、個人的にはシュテルが一番ヤンデレ似合ってる気がします(ohatiyo)
…レヴィのアホの子+ヤンデレ見てみたいです… 更新頑張ってください!(匿名希望)
タグ
リリカルなのは ヤンデレ シュテル×オリ主 オリ主 シュテル 病みつき 

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