とある傭兵と戦闘機(SW番外編)”彼女”と鬼神” 中篇
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 「記念撮影?」

 

 「ええ、だって”アフリカの星”と”蒼の霞”が揃うなんて緊急事態なんて

 

  人生で一度かもしれないじゃない」

 

と、言いながらカメラをこちらに向ける彼女はどこか嬉しそうだった

 

まぁ、写真くらいはどうって事無いけど

 

 「ハンナは?」

 

 「オーケーだ」

 

おぉ、キッパリ即答

 

そうして、ハンナと並ぶ

 

 「えっと、なにかポーズあればやって」

 

 「ポーズって・・・」

 

と、横のハンナを見ると既に写真写りがいいような堂々たるポーズを取っている・・・早っ

 

 「えっと・・・じゃあこんな感じで」

 

白い帽子を両手で持ち、自然と楽な位置に持っていく

 

自然と、前の方で帽子を抱き抱えるような体勢になった私はもうこれでいいやとそのままカメラに向かう

 

 「はい、それじゃあ撮るわね〜」

 

カシャッと、シャッターが切られる音がその場に響いた

 

 

 

 

数日後、世界中の新聞のトップを飾った一枚の写真

 

それにはティーカップを片手に、横に居る誰かに微笑む夏を連想する白い服に身を包んだ蒼い髪を伸ばした

 

少女が写っていた

 

その記事の見出しは”「蒼の霞の姿を捉える、それはまさに”空の姫君”」”

 

言語は違えど、意味としてはほぼ同じ見出しで世界中にその記事は広まった

 

後に本人がこの新聞を見た際には顔を真っ赤にしてベットにダイブ。そのまま一日中出てこなかったとか

 

 

 

 

 

 「さて、君の名前を聞こうか」

 

少し席を外して一服ついていると先ほどの高官が俺の横に並んだ

 

 「ラリー・フォルク 元ウスティオ空軍の傭兵部隊だ」

 

 「・・・君もかね」

 

驚かないって?そりゃそうだ

 

この男が、イーグルアイの同期のパイロットでーーーサイファーの父親

 

明らかに向こう側の人間だ

 

 「フィリアとは?」

 

 「俺は・・・あいつの二番機でしたよ。リーディアス”ヴィリタニィ”リーファフロイス」

 

 「・・・・・」

 

 「偽者が本物になりたがるのは判る。だが本物から偽者に成る人間なんてそんなに居ねぇ。

 

  あんたは、責務を放棄して何の為にあの空に居た?」

 

俺は今までの不自然な点を結びつけて、そして辿り着いた真実に近しい結果

 

そして、ずっとアイツに確かめる為に持っている写真を見せる

 

それは、ベルカ戦争から三十年後の世界で”国家最重要極秘資料”という重々しい名目で保存されていた写真だ

 

 「・・・なぜそこに辿り着けたかは知らないが、もう手遅れでしかないのだよ」

 

そこのイスに腰を落として、一呼吸程置いた後に当事者の口から俺は真実を聞いた

 

 

 

 

 「今話した事が全てだ。後は私から語る事ではない」

 

話を聞き終え、そして俺は自分の中で沸き立つ静かな怒りに身を焦がしていた

 

 「ふざけるな・・・無責任にも程があるだろうが!!

 

  自分の身勝手で娘の人生を塗り潰し、それを運命って言葉に責任を擦り付けるのか?

 

  いい加減にしろ!!アンタがあの場所に残してしまったアイツは、もう二度と日向で生きる事ができない!!

 

  引き返す道を、戻る道を、逃げ道を・・・足元を照らす灯りすら投げ捨てて生きるしかないんだぞ!!」

 

目の前の男の胸ぐらを掴みあげ、ホルスターから拳銃を抜き放つ

 

 「なぜ・・・何故君はそこまで娘の肩を持つ?」

 

 「・・・俺は・・・俺はな」

 

俺はーーー

 

 「あいつの、”相棒”だからだ。同時にアイツは俺の”相棒”だ。俺が二番機だ、あいつが一番機だ

 

  俺が信頼する寮機だからだ!! あんたが守った、二番機と同じだ!!」

 

俺は、心に思った事を全て嘘偽り無く放った

 

アイツは俺が肩を並べて、本当に信頼できて・・・本当に理解してくれる一番機なんだ

 

一度敵対した時も・・・恐らくあの灰色の空での戦いも

 

俺はーーー止めて欲しかったんだと思う

 

俺はーーー殺して欲しかったんだと思う

 

そう思える程・・・俺にとってのアイツの存在は

 

こんな荒れ果てた道なき道を歩んできた人生で、本当に・・・唯一大切だと思える存在なんだ

 

 「そうか・・・それならいい」

 

 「・・・何がだ」

 

 「君になら、私は娘を安心して任せられる・・・もう私にはフィリアの傍に居る資格は無い

 

  君なら・・・誰よりも長く彼女の隣を飛べる・・・」

 

そうして、抵抗する素振りもなく俺の銃の銃口を自分の喉元にやる

 

 「だから頼む・・・暗い空を一人で飛ぶのは辛い。彼女が暗い空を一人で飛ぶ事が無いように

 

  一緒に居てやってくれないか?」

 

俺は・・・目の前の高官に・・・アイツの父親に

 

 「そんな当たり前の事なんて頼まれなくたってやってやる」

 

そう、決意の言葉を言い放った

 

 

 

 

 

 

   同時刻、基地の第三ハンガーでは

 

 

 

 

 「こうしてこうやって・・・・完成っと」

 

 「あ・・・ありがとう・・・」

 

そうやって、鈴音がラプちゃんに紙飛行機を折って渡す

 

航空少女の世話係に任命された鈴音はこの子達の整備・・・主に子守を担当していた

 

 「それっ・・・」

 

ヒュッとハンガーという区切られた狭い空を、小さい紙飛行機は小さい浮力で飛んでいた

 

しかし推進力を持たないその機体はすぐに勢いを失い、地面に落ちた

 

 「・・・ぐすっ・・・」

 

 「あっほら、泣かないで」

 

この子すっごくナイーヴだね・・・でもそんな所も可愛いのよ〜

 

すぐに紙飛行機を回収しに行って、そして戻ってくるとラプちゃんはダウェンポートさんに抱きついていた

 

 「ちょっ・・・作業ができねぇ・・・」

 

 「ダウェンポート、何を遊んでいるんだ」

 

 「いや・・・ハミ公、ちょっと休憩しねーか?」

 

 「・・・そうだな、一服するとしよう」

 

と、ハミルトンさんが言った矢先にダウェンポートさんはラプちゃんを肩車して

 

 「そ〜らフルスロットル!!アフターバーナー全開だぜッ!!」

 

全力疾走、格納庫の機体搬入口から外に消えてった

 

んーでも何だろ、ダウェンポートさんって子供に好かれるよね

 

そういう星の元に生まれたとしか思えない

 

サイファーの機体・・・フィアちゃんもおじちゃんって言って駆け寄るもん

 

 「うおおおおっ!?・・・危ねぇ、オーバーランする所だったぜ・・・」

 

 「・・・えへへっ」

 

あ、帰ってきた。ラプちゃんすごいご機嫌になってる

 

 「ん?どうしたんだ?」

 

 「・・・あれ・・・」

 

と、肩車されたラプちゃんが格納してあるイーグルに指を指す

 

 「何だ、別にさっき診たが異常なんて無ーーー」

 

ダウェンポートさんが目を細めた・・・私もよく見ると、そのF−15Cが薄っすら青い光を帯びている事に気がついた

 

そして一瞬、その光が大きく増幅されて格納庫全体を覆う

 

視界を失い、成す術もなくしゃがみ込んで視力が回復するのを待った

 

 「っ・・・何が起きた?」

 

 「状況が唐突過ぎて把握しきれてない。とりあえず動ける人間は集まろう」

 

そんな声が聞こえて、私は回復しきらない目蓋を上げた 

 

 「ちょっと待て、何でアイツの機体がこの姿になってるんだ?」

 

 「私にもわからん、一体どういう理屈なのか本当に解からなくなったな」

 

 「何事ですか〜?」

 

と、二人で何か話し合ってるロリポートさんとハミルトンさんの所に向かう

 

 「これを見ろよ」

 

ダウェンポートさんが鼻先でそれを示す

 

それは・・・

 

 「ストライカーユニット?」

 

この基地の・・・この世界の空を飛ぶ翼・・・魔法の箒

 

この時代からすれば未来で・・・最強と謳われる戦闘機を模したストライカーユニットが目の前にあった

 

それはサイファーの相棒さんの機体で、彼は今サイファーと共に軍司令部に向かってここにいない

 

でも、何でストライカーになったんだろう?

 

何でか考えていると、ハンガーに何か鳥の泣き声が響いた

 

そして、姿を現した鷲はストライカーユニットに留まった

 

まるで、ユニットを護るように

 

鋭い視線は他者を寄せ付けないような獰猛さを思わせる

 

 「・・・とりあえず現状留置しかないな」

 

そうして、私は感じた

 

”似ている”

 

私がそうあったように、この機体も・・・この鷲も・・・

 

ちなみに、ダウェンポートさんはラプちゃんを肩車したままだったり

 

・・・もうこの人がお世話すればいいんじゃないかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室に、お茶をすする坂本とミーナの膝上に座って文字の練習をしているイーグルのフィアは居た

 

ちなみになぜフィアがここに居るのかというと・・・廊下を歩いていた際に妙な寒気を感じたそうな

 

身の危険を感じたフィアはフィリアの指示通りに執務室へ・・・そして今に至る

 

 「どうした?ミーナ」

 

少し深刻そうな顔をしていたミーナに、坂本は話しかけた

 

 「美緒・・・現在の連合軍欧州総司令の名前ってわかる?」

 

 「確か・・・リーディアス・フェイリールド総大将だな。

 

  一年前のマロニー大将の後継として選ばれた、ウィッチ部隊支持派のエリート将校

 

  確か二ヶ月程物資支援の調整会議に渡米していたらしいが?」

 

淡々と、詳細を述べる坂本はまだ気がついていない様子

 

 「そうね、マルタ島の作戦の承諾時に彼はあの場には居なかったわ。それと、名前をもう一度」

 

 「ん? リーディアス・”フェイリールド”総大将だ」

 

 「・・・フィアちゃんの名前は?」

 

膝元に居るフィアに話しかけるミーナ

 

 「フィア・フェイリールドですっ」

 

嬉しそうに、自らの名を名乗るフィア

 

 「「・・・・・」」

 

衝撃的な、予想外の可能性に二人は顔を見合わせる

 

 「・・・おかあさんの名前は?」

 

 「えっと・・・フィリア・フェイリールドですっ」

 

 「「・・・・・」」

 

またしても、顔を見合わせる二人

 

 「?」

 

首を傾げる真実を知る由もないフィアは、その事を理解するにはまだ幼かった

 

 

 

 

 

 

 「さて、そろそろ君達も仕事にもどらなくてはならないだろう」

 

と、席を外していたお父さんが戻ってきてお茶会の閉幕を伝える

 

 「そうね。そろそろ戻らないと輸送機パイロットに申し訳ないし、おいとまさせてもらおうかしらね」

 

こんな感じで、お茶会は普通に終わって普通に解散した

 

ハンナと加東さんはアフリカに戻り、この執務室には私とラリーが残るのみとなった

 

最初にラリーがため息を付いて私に背を向け、同時にお父さんが話を始める

 

その話を聞いた私は・・・私の頭は一瞬にして、混ざり迷いの渦になった

 

 

 

 

 

 

 「で、ダウェンポートは片羽から何を相談されてたんだ?」

 

 「うちのエースの嬢ちゃんの事だよ。お前に話していいかどうかは知らんが・・・

 

  一言で言うならば、嬢ちゃんの”正体”だな」

 

 「鬼神のか?ベルカ戦争時に活躍した傭兵パイロットだろう?BBCのドキュメンタリーでやってた事が

 

  事実ならな」

 

 「いや、それ以前の・・・彼女自身の生い立ちだ」

 

 「それがどうしたんだ?まさか絵本の物語のように、”何処かの大国のお姫様”

 

  なんて冗談言わないよな?」

 

 「・・・・・・・」

 

 「・・・・おい、何とか言えダウェンポート」 

 

 「スズネ!!ちょっとこっちに来い!!」

 

と、そこを通りかかった嬢ちゃんの元寮機を呼びつける

 

 「ほいほ〜い、何用かな保育士さん」

 

 「癇に障る名前で呼んだのは今回は見逃してやる。お前、嬢ちゃんの出生については知ってるか?」

 

 「サイファーの?知らないよ。聞いても覚えてないの一点張りだったし・・・ヘイトさんは?」

 

 「私は知り合って間もないので・・・ラプア、おいで」

 

トテトテと、ダウェンポートの足元からヘイトのもとに戻る

 

そしてそのまま彼女の後ろに、こちらの様子を窺うように隠れる・・・

 

彼女をそのまま小さくしたみたいな少女

 

彼女の落ち着いた、そして可愛らしい顔立ちも瓜二つ

 

おっとりしてる彼女は、銀髪のショートでサイファーと見た感じは対照的に見える

 

でも、彼女達はフィアちゃんとサイファーの関係と同じ、”戦闘機とそれを操るパイロット”

 

その関係を超えた・・・本当のエースという存在

 

操るもの次第では、単機で世界と正面衝突ができる存在が

 

この基地には、三人存在する

 

”悪魔”・・・”死神”・・・そしてーーー”鬼神”

 

それからラリーとの会話を話し合い、考え・・・この501.5航空隊に早くも曇りが出始めた

 

 

 

 

 

 「それじゃあ・・・さようなら、お父さん」

 

 「ああ。元気でな」

 

そう言われて、私はお父さんに抱きしめられた

 

もしかしたら、これが最後かもしれないから・・・

 

そうして、私達は互いに別れた

 

己の役目に、戻る為に

 

 「よし、帰還するぞサイファー」

 

ラリーが呼んでる・・・皆にどう話そうかな

 

私の正体・・・信じられない、やっぱり信じられないよ

 

何で?どうして?

 

どうして”私”なの?

 

”私”じゃなきゃいけないの?

 

 「どうしたんだ?早く戻らねーと中佐がうるさいぞ?」

 

 「うん・・・そうだけど・・・」

 

そうして、無理矢理輸送機に詰められて私達は帰りの空に上がった

 

 

 

 

 「・・・ラリー・・・」

 

 「喋るな。喋ると本当に自分を見失うぞ」

 

そう言って、ラリーが私の席の隣に座った

 

でも言葉が・・・出ない

 

出せない・・・頭がおかしくなりそうになる

 

考えたくない・・・消えてよ・・・消えて・・・

 

 「もう・・・何もかもがわからないよ・・・」

 

頭を押さえ、下を向いた

 

何も考えたくない

 

現実を、理解したくないよ・・・

 

うずくまる私の気持ちは、ただただ落ちていくだけだった

 

 「ほらよ、お前の持ち物だ」

 

そうして、ラリーは私に写真を渡してくる

 

そこに写るのは、遥か昔の私と私の家族

 

写真を見ていて、そこが今の”居場所”からいかに遠い所にあるのかが痛いほど分かる

 

もし・・・

 

もしーーー戻れるとすれば?

 

私は戻ることができるの?

 

引き返す事が許されるの?

 

何機も、何人も・・・喰らい殺して

 

この一つの命を守る為に、多数の同じ命を奪ってきた私が

 

堂々と、真っ当な生活を?

 

ーーー無理だ

 

私には、それが許されない

 

戦う事、生き残る事

 

ーーー守る事

 

これ以外に、私が許される事なんてない

 

だから・・・だからーーー

 

 「私は・・・”鬼神”」

 

その言葉を呟いた瞬間、私の中で何かが囁きかけてきた

 

 ・・・壊セ・・・

 

 ・・・跡形モ残ラヌヨウニ・・・

 

 ・・・・完膚ナキマデニ・・・

 

それが、やがて私の頭を塗りつぶしていく

 

 ーーー逃ガスナーーーヒトツタリトモーーー

 

 ーーー全テーーー

 

  ”喰ライ尽クセ”

 

 

その言葉を聞いた時には、頭の中全てが”赤黒”に染まっていた

 

 

 

 

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 ・・・皆まで言わないで下さい

 

 さて、更新不定期はまぁ・・・デフォルトで申し訳ない

 

 意見感想募集中

 

 次回、久しぶりの・・・何だっけ?

 

 まあ駄文よろしくお願いします

 

 ・・・・・・・・作者は馬鹿です(確定)

 

 

 

 

 

 

説明
二つの部隊を守る為、彼女は上層部に赴いた
”人”との戦いを熟知する彼女は覚悟を決めていた
しかし上層部で彼女を待っていたのは予想外の人物と
ーーーー真実だった

彼女はーーー鬼神
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コメント
あーあ、敵さん終了のお知らせ〜w(ガルム)
心の中にある『鬼神(フィリア・フェイフィールド)』が目を覚ましやがった!?(デルタ)
お、おぅ・・・ずいぶん重い話があったらしい。そしてストライカーユニットになったライリーのイーグル・・・どうなるの!?(銀ユリヤ)
ダウェンポートせんせー(音狐)
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