魔法戦記リリカルなのはmemories 最終章 新たなる聖王の歴史(メモリー) 本幕【終わり、そして始まりの日】 第百十六話
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「さて、ナノハのおかげで少し時間が稼げるけど……正直勝てるかどうかというのはね……」

 

 アリシア・テスタロッサはデュナ・シルフィアとリィナ・シルフィアの二人が居る所へと近づき、アマルナ・シルフィアをどうやって対処するかという事を話し合うことにした。

 あまりの速さにどうしても速さに追いつくことができず、一つ一つの威力が強いがためにどうやって倒せるのかがわからなかった。先ほど一人一人としか対戦できないという欠点があるという事は聞いたけども、三人だけではあっという間に倒されるだろう。だからこそ、アマルナが復活する前までに何とかして作戦を考える必要があった。

 

「……一つ聞いていいか?」

 

 三人がアマルナをどうしようかと話し合おうとしていたところに、突然シグナムがアリシア達に話しかけてきて、フェイトとヴィータもこちらへと視線を向けていた。先ほどまで静観していたが、やはりどうしても聞きたいことがあった。

 アリシア達もシグナムの声でフェイト達の方へと向け、一体何のことだろうと思ったが、敵同士ではあるため警戒は取らなかった。

 

「……なにかしら?」

「まず警戒を解いてと言いたいところが……まぁ、無理だな」

「当たり前でしょ、敵同士なんだから」

「今はそれでいいことにしよう。それで聞きたいことは、先ほどなのはが戦い、今地面で倒れている少女は何者かという事だ」

「……やはり、そのことね」

 

 何となくだが、アリシアはどのような質問をしてくるのかという事が理解できていた。

 正直答えずにアマルナに対する作戦を一秒でも多く使いたいところではあるのだが、ここで断ったとして余計時間がかかる可能性だって考えられる。神のみぞ知るようなことをアリシアがわかるわけがないと思うが、ほんの少し考えて本当の事を話すという決断に至った――

 

「……良いよ。話してあげる」

「アリシアさん!! 良いんですか!?」

「えぇ、別に問題ないから」

「では、教えてもらえるか?」

 

 シグナムの言葉にアリシアは頷き、シルフィア姉妹は教えていいものなのかという気持ちもありながらも、アリシアの言葉に従うことにした。

 そしてフェイト達はアリシアからアマルナ・ラスティルについてを聞くこととなった――

 

「時間がないから簡単に説明するけど、彼女の名前はアマルナ・ラスティル。私たちの仲間――エメリア・ラスティルの妹よ」

「その辺については、なのはが話していたから何となく察してる。操られているという事も――」

「そう――なら知らないことは多分あのナノハに追いついた力と、誰に操られているのかという事かな? 前者は私たちも解らないけども、操った本人は知っている」

「一体、誰がそんなことを?」

 

 ヴィータはアリシア達がアマルナをあのようにした人物を知っていると解ると、それが誰なのかという事を聞き出そうとする。多分アリシア達が狙っている人物の事だろうから管理局の人間だろうというの事は思っていたため、誰の名前だろうとも覚悟していた。

 アリシアはヴィータの言葉に対して、特に間を開けずに答えた――

 

「手操っている人物はヘレスナ・リュベル一等陸佐でしょうね。兄のエメリアは妹を人質にされて研究所に無理やり働かせていた張本人だし」

「そいつが……黒幕なの?」

「う〜ん……フェイトの答えはちょっと違うかな? 彼は私たちの黒幕である唯一の直属部下という感じだし……」

「じゃあ、その黒幕は誰なんだ?」

「なのはが管理局を抜ける以前――もう一人のエースと言われた人間よ」

「ミ、ミルティオル・ベスカ中将だとっ!?」

 

 驚かないつもりではいたけども、さすがになのはと同じようにエースと言われていた人物が黒幕だと言われ、フェイト達は驚いていた。

 まだまだ若いのにあっという間に中将へと昇格した人物であり、フェイト達とは良く噛み合わない人間ではあると正義感が強い人間だとは思っていた。そのため、彼が黒幕だという事は思いもよらなかったのだ。

 しかし、ミルティオル・ベスカが管理局の裏を操るとしてはあまりにも若すぎるのではないかと、思ったフェイトはそれについて聞こうとするが、フェイトが思っていたことをアリシアが先に答えた。

 

「ミルティオル・ベスカがどうやって管理局が密かに行っていた違法研究所を纏めていたのかと思うけども、理由は簡単。彼の一族をみればね」

「え? 彼の一族ってベスカ一族でしょ? 管理局が設立した時からある一族で、それよりも前はオリヴィエ・セーゲブレヒトに仕えて……ま、まさかっ!?」

「フェイトは分かったようだね」

 

 そう――彼が黒幕ならば、ベスカ一族が過去から違法研究を背後からバックアップしていた可能性があった。若いのに違法研究所を束ねているという可能性を考えるとしたら、ベスカ一族が昔から違法研究に関わっていたという事が一番強くなる。

 そしてそれが事実となると、オリヴィエの時もなにか暗躍していたという可能性が浮かび、ナノハがベスカ一族に敵対している理由というのも考えられた。

 

「過去に何があったのか――それについてはオリヴィエの記憶を持つナノハしか知らないと思うけど、ナノハが言うにはオリヴィエに仕えていたベスカ・アンデュリッヘが大規模次元震を起こさせた張本人らしいけど」

「大規模次元震を起こしたのがベスカ一族……」

「過去も現在も、彼らは自分の思いどりになるようにしてきたのよ。そしてアマルナも、そこにいるリィナと同じように人体実験の被害者の一人ということよ」

「通りで彼女が強かったのですね……」

 

 突然この場に居ないはずの声が聞こえ、全員がそちらの方向へと振り向いた。そこに居たのはスバルとティアナの二人でどうやら途中から話を聞いていたようだ。

 スバルとティアナはリィナと戦っていたため、彼女のあまりの強さの原因を今知って納得していた。それにティアナの場合、なのは並みの魔力を持っている人がこれ以上増えるとさすがに感覚が崩れそうだったという事もあったのだが。

 スバルとティアナの姿を見て、リィナはほんの少し驚いていたが、顔に出さずに二人に対してつい口に出していた。

 

「なんだ、二人とも生きていたんだ」

「まぁね。それで、これはどういう状況なの?」

「さっきまで、そいつらにそこの地面で倒れている彼女について話していたところだ。洗脳されているらしいという事は分かったが、そろそろ目覚めそうだな」

「ヴィータの言うとおりだね。そろそろあの子の洗脳を解く作戦を考えないと……」

「え、フェイト達もアマルナと戦うのっ!?」

 

 それは、アリシア達にとって驚きだった。フェイト達は管理局の人間だろうと思ったし、アマルナを倒す理由すらない。それなのにも関わらず、アマルナと戦うと言い出したのだ。

 フェイトは一度ヴィータとシグナムにそれぞれ視線を向け、二人はフェイトの視線を見て頷き、そしてアリシアの方へと向けた。

 

「私たちは管理局であるけど、あの子をそのままにしておけるほど冷酷じゃない。たとえ命令違反だとしても、私たちはアマルナ・ラスティルを救いたい」

「そういうことだ。まぁ、利害の一致と考えてくれていい」

「その後、テメェらと戦うことになるかもしれねぇーが、今は協力しようぜ!!」

「…………」

 

 フェイト、シグナム、ヴィータの順に言いアリシア達は協力してアマルナを倒すか悩んだ。

 しかし、アマルナを倒すには大人数で挑まないと勝てないため、どうしても人手が欲しいという事は思っていた。悩みはしたけども、アリシアは何かを決意して一度頷き、フェイト達に向けて言った――

 

「……分かった。一緒に戦おう」

「……まぁ、利害の一致してるからね。リィナもいいでしょ?」

「私は、アマルナを何としてでも救いたい。管理局員と協力するのは嫌だけど、アマルナを救えるなら協力してあげるよ」

「はぁ……まったく、素直じゃないんだから」

 

 そんなシルフィア姉妹の会話を見て、アリシアは微笑んでいた。

 そして、丁度アマルナがようやく立ち上がる姿が見え、すぐに気付いたフェイト達とアリシア達はそちらに視線を向け、それぞれデバイスを構えた。

 

「行くよフェイト。初めての姉妹での協力がこんな形になるとは思っていなかったけどね!!」

「そうだね。それじゃあ始めようか!!」

「私は、みんなに比べて魔力が少ない、指揮命令は私が出すから私にすべてを任せなさい!!」

「バックアップはデュナ・シルフィアと私が行うから、みんなはそれに動いて!!」

「さっき戦った子に従うのはちょっと癪だけど、了解だよ!!」

「こちらも了解した」

「あたし達をうまく使ってくれよ!!」

「みんなで、あの子を救ってあげよう!!」

 

 それぞれが決意を決め、アマルナが動き出すのを待っていた。

 そして――アマルナがこちらに視線をむけ、一瞬にしてアマルナが姿を消したときに、フェイトとアリシアが叫んだ――

 

『みんな、いくよ――っ!!』

 

 それぞれがバラバラに動きだし、アマルナの洗脳を解くために動き出すのだった――

説明
J・S事件から八年後、高町なのははある青年に会った。

その青年はなのはに関わりがある人物だった。

だがなのはにはその記憶が消されていた。

消されていた記憶とは、なのはと青年の思い出であった。

二人が会ったことにより物語は始まり、そしてその二人によって管理局の歴史を大きく変える事件が起こる事になる。

それは、管理局の実態を知ったなのはと、親の復讐のために動いていた青年の二人が望んだことであった。



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