遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第二章・二十三話
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「ケ艾殿っ」

 

 

深い森の中

進む一刀の背に、かけられる声

聞き覚えのあるその声に、一刀はゆっくりと振り返った

 

 

「趙雲・・・」

 

 

其処にいたのは、趙雲こと星だった

彼女は笑みを浮かべ、手を振りながら彼の傍まで馬を近付けた

 

 

「趙雲、第二軍に、したんだ」

 

 

と、一刀

その言葉に対し、彼女はフッと笑みを浮かべる

 

 

「ケ艾殿から受けし恩を返すべく、馳せ参じました」

 

 

星は、そう言って自身の胸を叩く

そんな彼女に、彼は僅かに表情を変え言った

 

 

「けど、怪我・・・」

 

 

“治ってない”と、彼の言葉

それを、彼女は“心配無用”という言葉で遮った

 

 

 

「この趙子龍の槍、この程度の怪我で鈍るほどヤワではありませぬ」

 

 

 

これには、一刀も笑うしかなかった

そして、彼女を見つめ呟いたのだ

 

 

「頼りに、してる」

 

「うむ、お任せくだされっ!」

 

 

言って、2人は笑う

そんな二人の側、呆れたように溜め息を吐き出す少女がいた

美羽である

 

 

「まったく、本当に大丈夫なのかえ?

相当深い傷であったと聞いたが・・・」

 

「む、それは心外ですな袁術殿

先ほども申したように、この趙子龍の槍は怪我程度では鈍りませぬ

なぁに、戦が始まり次第すぐにお見せしましょう」

 

 

星は、そう言って笑った

そんな彼女に対し、相変わらず疑ったような表情の美羽

しかし、そんな二人とはまた違った表情を浮かべ

一刀は、ゆっくりと口を開く

 

 

 

「趙雲、早速・・・きたよ」

 

「む?

ケ艾殿、いったい何が・・・っ!」

 

 

言葉の途中、星は慌てて槍を構えた

その隣では、美羽も短剣を握り険しい表情を浮かべている

 

そして、そんな二人の後ろ

彼は、一刀は弓を構え

 

静かに、言うのだった

 

 

 

 

 

「囲まれてる・・・それも、凄い数に」

 

 

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

第二章 二十三話【森羅にて、舞い踊れ】

 

 

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ーーー†ーーー

 

“それ”は、突如として現れた

 

その姿を見せることもなく

その脅威に気付かせる暇もなく

 

“それ”は、集まった多くの命を奪うべく動き出したのだ

 

 

 

「ぐ、ぐあぁぁぁあっ!?」

 

「え、ちょ、いったい何がっ・・・あぁぁぁああ!!?」

 

「ひ、ひぃいいい!!?」

 

 

響く、悲鳴

瞬く間に広がっていく、正体不明の“恐怖”

 

誰もいないハズなのに

姿は見えないハズなのに

 

それでも、確かに其処に“存在する”

 

多くの者が、ソレを確信するのは

その自身の体が、見えない刃に切り裂かれた時であった

 

 

 

「こ、これは・・・いったい!?」

 

 

理解不能な事態

彼女は、焔耶は武器を構え叫んでいた

 

 

「一体何が、何が起こっている!?」

 

 

瞬間、感じた殺気

彼女は咄嗟に、握りしめた武器を横に薙いだ

同時に、その手に伝わった“感触”

その数秒後、自身の眼の前に姿を見せた“敵”を睨み

彼女は、戸惑いを隠すことが出来ぬままに呟くのだった

 

 

 

「これが・・・これが、“森羅兵”っ!!」

 

 

 

見覚えのある甲冑を着た“敵”の亡骸から視線を逸らし

やがて彼女は、力強く拳を握り締めた

 

 

 

「焔耶、無事かっ!!?」

 

 

そんな彼女を呼ぶ人物がいた

桔梗である

彼女は自身の武器である巨大な弩砲を肩に担ぎ、焔耶の傍まで駆け寄った

 

 

「桔梗様・・・はい、なんとか」

 

「そうか・・・うむ、ならばよかった」

 

 

“しかし・・・”と、彼女は素早く武器を構え矢を放った

瞬間、何もないはずの空間に“矢が刺さる”

やがて、その場に現れたのは額に矢が刺さった兵であった

 

 

「これは、少々・・・いや、かなり厄介な敵だ」

 

「はい、まさかここまでとは」

 

 

森羅兵

その存在を話しでしか聞いていなかったからであろう

焔耶は素直に、そう思っていた

 

そんな彼女に対し、桔梗は険しい表情を浮かべたまま小さく呟いた

 

 

 

「森羅兵か・・・お主の正確に似て、随分と容赦のない奴らではないか」

 

 

 

やがて、見あげる空

見えていたはずの青空は、高く生い茂った木々に隠れ

もう、見えなくなっていた

 

 

 

 

「聞こえているのだろう・・・藜ぁぁああ!!!」

 

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「ふっ・・・!」

 

 

振るわれる、最強の武

瞬間、姿を見せるのは無残にも真っ二つにされた兵士だった

彼女は・・・恋はそれに驚く事もなく、淡々とその武を振るっていく

 

まさに、“三国最強”の名に恥じぬものである

 

 

 

「う、うわぁっ!?」

 

 

そんな彼女と対照的

実に表情豊かに、主に焦りながらも敵を倒すのは白蓮であった

彼女は姿の見えぬ敵の攻撃を、寸でのところで受け止め

そして、反撃することにより何とか自身の身を守っていた

 

 

「こ、これが森羅兵っ!?

ウソだろ、こんなんアリなのか!?」

 

 

叫ぶ白蓮

そんな彼女の言葉に、恋は戟を振るい呟く

 

 

「厄介」

 

「だな、これは厄介だ」

 

 

恋の言葉に頷く白蓮

それに、恋は“それだけじゃない”とまた戟を振るった

 

 

「気配が、味方に混じってる

これじゃ・・・全力が、出せない」

 

「なんだと?」

 

 

白蓮は、そう言ってゴクリと唾を呑み込んだ

 

森羅兵の気配が味方に混ざっているということは、敵は自分たちの懐深くまであえて潜り

そして時期を見計らって、攻撃を開始したのだろう

その攻撃により、混乱する戦線

それにより、さらに敵味方の兵はごちゃごちゃになっている

 

恋はそんな状況の中、苦虫を噛んだような表情を浮かべていた

本来ならば多人数を相手にするのも苦ではないが、しかし今は違う

下手をしたら味方を巻き込んでしまうこの状況の中、彼女は慎重に敵だけを屠っていかなければならないのだ

 

 

 

「まさか・・・」

 

 

その状況の中

白蓮は剣を握り、小さく呟く

 

 

 

「それも、敵の“策”なのか・・・!」

 

 

 

この軍の各部隊を纏める将軍の数は、第一軍に比べ少ない

というのも彼女、恋がいるからである

彼女の武が、足りない将の分も補えるであろう

そう思ってのことだった

 

しかしそんな彼女の武も、この戦場の中抑えられている

ともなれば、混乱する戦線を纏める者の少ないこの軍は・・・圧倒的に不利であった

 

 

 

「これが、これが・・・劉璋軍の将の、力っ!」

 

 

白蓮は、そう言って戦場を見渡した

 

 

「皆、混乱してる

無理もない・・・こんなの、驚くなってほうが無理だ」

 

 

この、森羅兵を前に

“恐くない”などと、そんな強がりを言い聞かせるほど

 

 

「くそ・・・っ!」

 

 

彼女は、強くない

 

 

 

 

「いや、大丈夫だ・・・まだ、まだ始まったばかりだ」

 

 

しかし、だからこそ

強くない彼女だからこそ、この混乱する戦場を

 

“誰よりも理解することが出来たのだ”

 

 

 

「恋っ!

このまま戦いながら、まずは他の将と合流しようっ!」

 

 

やがて、そんな彼女から放たれた言葉

この戦場において、最強の武を持つ少女は小さく頷き

 

 

 

 

「任せて・・・」

 

 

 

 

己が武を持って、応えるのだった・・・

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「こ、こんなのアリかえっ!?」

 

 

言って、美羽は咄嗟に殺気を感じた方向に短剣を振るった

瞬間、その手には確かに“感触”が伝わり

ゴトリと、彼女の前に一人の男が倒れた

 

 

「姿が視えぬが、確かに其処に在る!

相変わらず、やっかいな敵ですなっ!」

 

 

そのすぐ傍では、同じように星がその槍で姿の見えぬ敵を相手に戦っていた

 

 

「気配を読み、戦わなければならない

それ故、どうしても後手に回ってしまう」

 

「それに・・・気配が、味方に混じってる」

 

「うぅ・・・厄介じゃのう」

 

 

美羽の言葉

苦笑する、星と一刀

 

 

「かといって、黙っていても仕方ありませぬ

ひとまずはこのまま戦い、白蓮殿に合流しましょう」

 

 

言って、星はその槍で再び敵を貫く

そんな彼女の言葉、一刀は“ん”と頷いた

 

 

「しかし、この混戦の中・・・合流するのは、難しいですかな」

 

「うむ・・・あ、いや」

 

 

星の言葉

美羽は同意し、すぐに言葉を詰まらせる

 

やがて、彼女はある一点を見つめたまま言うのだった

 

 

 

 

「案外、簡単に合流できそうじゃぞ?」

 

 

 

彼女の視線の先

その方向では、何人もの敵兵たちが天高く舞っている

何とも信じられない光景が広がっているのだった

 

 

 

 

「恋だな、あれ・・・」

 

「すごい、わかりやすい」

 

「流石、三国一じゃな」

 

 

感心する三人

その視線の先では、相変わらず多くの兵が宙に舞っていた

 

 

「なんか、可哀そうに見えてきたのう」

 

「うむ・・・」

 

「行こう」

 

 

と、一刀は走り出す

それに続き、美羽と星も走り出した

 

向う先

さらなる激闘に、その身を引き締めながら・・・

 

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「皆さん、落ち着いてください!

無暗に攻めることなく、円陣を組みお互いの身を守ることに専念するんですっ!!」

 

 

燦然とする戦場の中

響く少女の声

 

鳳統こと、雛里

 

蜀を代表する軍師にして、この第二軍を指揮する軍師

そんな彼女の指示に対し、従う兵は驚くほどスムーズに動いていた

 

この混乱する戦場

その最中においても冷静に、かつ沈着に指揮をする彼女の姿を見たからだ

 

“流石は鳳統様”

 

“軍師様の指揮ならば、きっと大丈夫だ”

 

そう思う兵が、幾人もいたからだ

 

しかし・・・

 

 

 

「これが、森羅兵

初めてじゃないハズなのに、それでも・・・」

 

 

“厳しい”と、彼女はその言葉を呑み込んだ

 

幾ら“鳳雛”と呼ばれた彼女でも、やはりこの戦場は“異質”であった

最低限の指示は出せても、この状況を“打開”できる策が思いつかないのだ

 

 

「いったい、どうしたら・・・」

 

 

言いながらも、それを表情に出すことはない

“冷静であるフリ”だとしても

それにより、兵の士気は上がっているのだ

 

故に、彼女は一刻も早くこの状況を切り開く一手を見つけなければならない

 

 

 

「鳳統様!

あちらをご覧ください!!」

 

 

そんな中、かけられた声

彼女を守る、兵士の指が差す先

其処に見えたのは、真紅に染まった呂旗

 

 

「恋さん・・・!」

 

 

“よかった”と、彼女は安堵の息をつく

その意味は、二つある

 

まずは、彼女が無事だったということ

そして、“最強の武”が傍にいたということである

 

彼女と合流できれば、或いは・・・

 

 

 

 

「皆さん!

本隊が見えました!

まずは、本隊と合流しましょうっ!」

 

「「御意っ!」」

 

 

雛里の指示に、迅速に従う兵たち

その動きは、見事なものだった

彼女の隊は、あっという間に本隊との距離を縮めていく

 

 

「雛里っ!」

 

 

そんな彼女の姿を見つけ、声をあげたのは総大将である白蓮だ

彼女は剣を握ったまま、大きく手を振っている

 

 

「白蓮さん!

よかった、無事だったんでしゅね!」

 

「ああ、何とかな

殆ど、恋のおかげだけどさ」

 

 

と、苦笑する白蓮

この言葉に、恋は“違う”と呟く

 

 

「白蓮も、頑張ってた」

 

「はは、ありがと」

 

 

“それより”と、白蓮

見つめるのは、この軍の頭脳である雛里だ

 

 

「とりあえず、今のところは何とか持ち堪えてる

けど、ずっとこのままってわけにもいかない・・・よな?」

 

「はい

ですが、情報が少なすぎます

敵の数もわからず、森羅兵に対する正確な攻略法も見つかっていません」

 

「だな

アイツら、攻撃するギリギリまで気配を消してるから・・・どうしても、後手に回ってしまう

私だけならまだしも、恋でさえ気配を正確に探れないみたいだ」

 

「それは・・・」

 

 

“マズイですね”と、雛里

恋ほどの武人が、相手の正確な気配を読み切れないとなると

もはや、お手上げである

 

しかし彼女は、そんなことは絶対に言わない

 

 

 

「とにかく、何とかしないと・・・」

 

 

ギュッと、拳を握り締め

彼女が見つめる先

 

彼女を信じ、見えない脅威と戦う兵たちの姿があった

 

 

 

 

「白蓮殿っ!」

 

「っ・・・」

 

 

思考の途中

聞こえてきた声

 

振り向いた先、其処にいたのは星であった

彼女は握った槍を肩に担ぎ、“おぉ、雛里もいたか”と笑う

 

 

「星!

無事だったんだな!」

 

「はっは、当たり前です

私だけではありません、桔梗や焔耶・・・ケ艾殿に袁術殿も一緒です」

 

「おぉ!

第二軍の将が揃ったか!」

 

 

“これなら”と、白蓮は笑う

 

 

「まだ、何とかなるか?」

 

「しかし、根本的な解決にはなりません」

 

「ふむ・・・森羅兵の攻略、ですな?」

 

 

“はい”と、雛里は頭を抱える

 

 

「火は・・・ダメか

我々まで、巻き込まれてしまう」

 

「そうですね

この森の中で火を放とうものなら、間違いなく私たちが巻き込まれてしまいます」

 

「それも計算してるんだろうなぁ、奴ら」

 

 

“参ったな”と、白蓮は拳を握り締めた

星は、“ですな”と険しい表情を見せる

 

そして・・・

 

 

 

 

「このままだと・・・私たちは・・・・・・」

 

 

 

雛里は・・・唇を噛み、震えていた

 

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「ふっ・・・!」

 

 

放たれた矢は、敵の眉間を見事に射抜いていた

しかし、彼は表情を変えることなく

次の敵を見つけ、また同じように射かけていった

 

 

「ほぅ・・・中々、やるな」

 

 

そう言ったのは、桔梗だった

その隣、焔耶は悔しそうに“そうですね”と呟く

 

 

「はっはっは!

そうじゃろう、そうじゃろう♪」

 

「なんでお前が、そんな威張ってるんだよ」

 

「一刀は、妾の家族じゃからな!」

 

「さいですか・・・」

 

 

美羽の言葉

呆れたよう、焔耶は武器を振るった

その一振りは、見えない敵を吹き飛ばしていく

 

 

「しかし、やはり厄介だ

このような敵がいようとは、思いもしなかった」

 

「うむ、確かに厄介じゃのう

気配も読み切れんで、中々こっちから攻められないのじゃ」

 

 

と、美羽

この言葉に、桔梗は唇を噛み締める

 

 

「森羅兵・・・か

ふざけおって!」

 

 

桔梗が、そう言った直後だった

彼女の傍に、一人の兵が駆け寄ってきたのだ

 

 

「厳顔将軍!

軍師様がお呼びです!

他の将軍の皆さまも、一緒に来るようにと!」

 

「なんじゃと?

しかし、いま此処を離れるわけには・・・」

 

 

そう言って、桔梗は戦場を見つめる

そんな中、桔梗の傍にいた兵は言った

 

 

「将軍、ご安心ください!

我々なら、何とか持ち堪えてみせます!」

 

「その通りです!

我々は厳顔将軍をはじめ、蜀が誇る将軍達に鍛えられてきたのですよ?

簡単にやられたりなど、いたしませぬ!!」

 

「お前ら・・・うむ、わかった!」

 

 

“すぐに、戻る”と、桔梗は力強く言った

それから、彼女は焔耶に声をかけた

その焔耶が、一刀と美羽に伝え

 

 

そして四人は、足早に雛里のもとへと向かったのだった

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「おぉ、皆よく来てくれたっ!」

 

 

集まった四人を、白蓮はそう言って出迎える

その顔には、若干の疲れが見えた

 

そんな彼女の言葉もそこそこに、話を切り出したのは桔梗であった

 

 

「あまり、長居は出来ん

急がねば、此方の被害は増えるばかりだ」

 

「ああ、勿論わかってる」

 

 

頷き、白蓮は言う

 

 

「森羅兵の攻略、その方法がわからない

これがわからなければ、この状況を変えることは出来ないだろう」

 

 

白蓮の言葉

皆は、その一言で表情を歪めた

 

そんな皆の表情に気付き、白蓮は苦笑する

 

 

「その様子だと、やっぱ皆同じ意見だったんだよな

おまけに・・・」

 

「皆、未だにその攻略法を見つけられずにいる・・・ということか」

 

 

焔耶の言葉

沈黙は、“肯定”を意味していた

 

 

 

 

「すいま、せん・・・」

 

 

そんな中

呟いたのは、雛里だった

 

 

「私が、もっと・・・もっと、しっかりしてれば」

 

「雛里・・・?」

 

 

雛里は、泣いていた

小さなその体を、小さく震わせながら

 

 

「私は、この軍の軍師なのに

何も、この状況を打開する為の策を、一つも、思いつけません」

 

「そんなの・・・」

 

「私はやっぱり・・・何も、できない!」

 

 

 

“気にするな”と、そう言おうとした白蓮の言葉を

雛里は、自身の言葉で止めた

 

 

「私は、皆さんのように戦えない

だからその分、軍師として頑張んなくちゃ、いけないのに

それなのに、私は・・・こんな時にも、何も出来ない」

 

「雛里・・・」

 

 

静寂

冷めていく空気

 

その空間

重くなった空気もそのままに

 

 

 

「違う」

 

 

 

彼は、言葉を吐きだした

 

 

 

 

「ケ艾、さん・・・」

 

 

雛里の見つめる先

彼は、一刀は僅かに笑みを浮かべ

彼女のことを、真っ直ぐに見つめていた

 

 

「鳳統なら、きっと、大丈夫」

 

 

“大丈夫”

彼は、そう言って笑う

 

 

「そ、そんなの・・・」

 

 

“貴方に、わかるはずない”と

雛里の言葉を止めたのは、やはり彼の言葉である

 

 

「確かに、鳳統には、“俺達のような武”は、ない

けど、“俺達にはない知”がある」

 

 

と、一刀

その言葉に、雛里は苦しげな表情を浮かべた

 

 

「けど、今言った筈です

その知でも、皆さんの役には立てなかったと」

 

「だから、それは、違う」

 

 

言って、彼は自身の胸に触れた

 

 

「俺の、大切な人が、言ってた

“武には、無限の可能性がある”」

 

 

“そして・・・”

言いながら、彼は自身の額を指さし

 

笑う

 

 

 

 

「それに負けないくらい

“知”にも、無限の可能性があるんだって」

 

「・・・っ」

 

 

 

一刀の言葉

彼女は、自身の額に軽く触れ

ゆっくりと呟く

 

 

「無限の・・・可能性?」

 

「ん・・・だから、鳳統なら、大丈夫」

 

 

“無限の可能性”

その一言に、雛里は妙な温かさを感じていた

 

 

「武にも、知にも

きっと、終わりなんかない

だから、俺は・・・鳳統を、信じる」

 

「ケ艾、さん」

 

 

終わりはない

武にも、知にも

終わりなどない

在るのは・・・“無限の可能性”

 

そして、それを手にするのは・・・

 

 

 

 

「自分の限界が、“限界じゃなかったと気付いた人”だけ・・・」

 

 

言って、雛里は自身の頭を思い切り叩いた

周りから驚きの声があがるが

彼女は気にすることなく、その場で深く息を吸い

 

そして、吐き出した

 

 

 

「そっか

私は、“もう限界”だって、決めつけてたんだ」

 

 

ギュッと、また握った拳

しかし、その体はもう震えていなかった

 

 

「皆さん、私に、もう少し時間を下さい」

 

 

やがて、彼女の口から出た言葉

その言葉に、笑みを見せたのは白蓮だった

 

 

「当たり前だ

頼りにしてるぞ、雛里っ!」

 

「はいっ!!」

 

 

そして、彼女は深く思考する

 

黄権

森羅兵

その、攻略法

 

様々な事柄を、その小さな少女は一瞬にして整理していく

 

 

(森羅兵

姿の見えない、恐ろしい兵士

その気配は、攻撃の間際まで恋さんでさえ読めない

ならば、どうすれば?

この戦場を、どう攻略すればいいのか・・・)

 

 

「やはり、雛里でも苦戦するか

あの森羅兵は」

 

 

そんな彼女の様子を見つめ、焔耶はそう漏らした

 

 

「誰だって、苦戦するのじゃ

あんな敵、反則なのじゃ」

 

 

と、続いたのは美羽であった

 

 

「第一、ややこし過ぎるのじゃ

其処にいないのに、其処にいるなどと・・・」

 

 

と、美羽

その一言に、雛里は眉を顰める

 

 

(待って

今、美羽さんはなんて言ったの?)

 

 

 

「“其処にいないのに、其処にいる”・・・?」

 

 

 

瞬間

彼女の瞳が、大きく揺れた

 

 

「そう、か・・・」

 

 

やがて、零れ出た言葉

皆の視線が、すぐに集まった

 

 

「まさか、雛里・・・」

 

 

白蓮の言葉

雛里は、“はい”と頷いて見せた

 

 

 

 

 

「森羅兵を倒す“策”が・・・見つかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・続く

 

 

-8ページ-

★あとがき★

 

どうも、遥かなでは一か月以上ぶりです

 

月千一夜と申します

 

いや、本当にお待たせしました

こんな長い間待たせてしまって、すいません

 

今回は、森羅兵との戦いです

じかいは、森羅兵攻略編

 

ではでは、またお会いしましょう

説明
どうも、今作ではお久しぶりです

月千一夜と申します

連載、復活
久し振りなんで、ちょいおかしいかも?
とりま、生暖かい目で見てやってください

では、お楽しみに
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コメント
よぉ、おかえり。(蒼華)
遥かな来たぁぁぁぁぁ!更新ずっと楽しみにしてました!続きも頑張ってください!(レヴィアタン)
どんな策を思いついたのか楽しみにしています。しかし、さすが一刀さんは主人公って感じですね!(summon)
いい司令官してますね、白蓮姐さんと呼ぼう。(禁玉⇒金球)
森羅攻略、どうやって切り抜けるか雛リンprpr。 一夜さんの復活じゃぁあああ!ぶるわぁあああああああああああ!!ぶるわぁああああああああああああ!!ぶるわぁああああ・・・ゲホッゴホッグホッ (mighty)
遥かなふっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーつ!!!!!!!!!いよいよ本格化した蜀最終決戦!!森羅兵をどう攻略していくのか、軍師の智の見せ所だね!(悠なるかな)
おー再開を待ってました。これからも楽しく読んでいきます。(Fols)
相変わらずシリアスと尻asのギャップがスゴイぜ 続きも読みたいですが白旅もお願いします〜m(_ _)m(牛乳魔人)
再開待ってました!(テンチヂ)
ここから逆転の秘策が炸裂するのを大いに楽しみに待っています。(mokiti1976-2010)
再開した!待ってました!!相変わらず面白いです!雛里がんばれ!!(nao)
nakuさん<なんか、凄くヤヴァイ展開に聴こえるwww (月千一夜)
一丸さん<ありがとうございますw (月千一夜)
地球ジェット… さん<恋さんは流石ですw(月千一夜)
デーモン赤ペンさん<光の巨人と聞くと、何故かゼルダの伝説しか出てこない不思議 (月千一夜)
更新お疲れ様です。再開しても、ブランクを感じさせない面白さ、脱m・・・脱帽物です!!(かっ髪はあるんだからね!!)無限の可能性と聞いて某ライトノベルの作者紹介にかかれてたある体の部位を思い出してしまった私は悪い子・・・ではでは、続き楽しみに待ってます。(一丸)
連載再開おめ(* ̄∇ ̄)ノ雛ちゃんの活躍に期待!!恋は流石だと思った♪(地球ジェット…)
わーい、再開だー。今日の今日まで・・・どれほど待っていたことか。無限の可能性。「限界を超えた時、初めて見えるものがある」っていう某光の巨人の言葉を思い出しました。 気長に更新、待ってます。(デーモン赤ペン)
観珪さん<星はホント無茶ばかりしますよね。見てて、ホントはらはらします (月千一夜)
わく惑星さん<あれも、現在ゆっくり執筆中ですwまだしばらくかかりますが・・・ (月千一夜)
星ちゃんは、またケガを圧して出てきて…… いつものことですけども、もうちょっと自分をいたわりましょうよww いや、戦いたいと思ってるのは分かってるんですけどねww(神余 雛)
個人的なものですが、白き旅人の続きが見たいです(わく惑星)
芋名月さん<ありがとうございます。これからも待たせちゃうと思いますが、気長に待っていただけると嬉しいです(月千一夜)
さすが月千一夜さん、安定の面白さです。これからも御自身のペースで頑張って下さい、応援してます♪(芋名月)
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