真・恋姫†無双 裏√ 第二話 黄巾編其一
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黄巾編其一

 

 

 

 

 

私の朝はいつも早い。必ず決まった時間に目覚める。

陽は今だその目を出さず、朝霧にも覆われていることから辺りは薄暗い。

人々はまだ寝ている時間帯だ。外には誰もおらず、静寂に包まれている。

私はこの静けさが好きだった。

 

咲夜「さて、始めるか」

 

私は日課である走り込み、精神統一、素振りをする。力を維持する為にも欠かせないことだ。

この時たまに、朝早くから零士が起きていれば組手もできるのだが、今回はハズレのようだ。

 

咲夜「まぁ、期待はしていなかったがな」

 

訓練を切り上げた私は、店に戻り開店の準備をする。一日の仕込み、掃除と念入りにしておく。

この時には既に零士も起きており、仕込みの準備をしている。

 

零士「おはよう、咲ちゃん。今日も早いね」

 

咲夜「おはよう。私はお前とは違うからな」

 

そこで途切れる。私と零士の間には、会話が多い訳ではない。

ただそれでも、お互いの考えている事はだいたいわかる。

仕込みの時でも、私が欲しいものがあればこいつは言わなくても持って来てくれる。

その逆もまた然りだ。あいつが必要になりそうな物はあらかじめ奴の近くにおいておく。

長年連れ添ったが故だな。

 

「おはようございまーす!」

 

仕込みをしていると、勢いよく扉が開かれる。

この店で唯一雇っている従業員の張?、真名は悠里〈ゆうり〉だ。

綺麗な長めの黒髪が印象的な明るい子だ。

 

咲夜「おはよう悠里」

 

零士「悠里ちゃんおはよう。今日もよろしくね」

 

悠里「咲夜姉さん、東おじさん。よろしくお願いします!」

 

こいつは私の事を咲夜姉さんと慕い、零士のことはおじさん呼ばわりだ。

初めておじさんと呼ばれた零士の顔は、微妙に物悲しいものだったのは今でも覚えている。

そういうのは気にしなさそうな奴に見えたから新鮮だったな

 

咲夜「じゃあ悠里、店内の掃除を頼めるか?」

 

悠里「かしこまりましたー!」

 

悠里は用具室から道具を取り出し掃除に取り掛かる。ちなみに、掃除に入る前に悠里は制服に着替えてきた。

この店には二種類の制服がある。零士作のバーテンダー服と呼ばれる物と、メイド服と呼ばれる物だ。

私と零士はバーテンダー、悠里はメイド服だ。なぜ私もバーテンダーなのかだって?

無理だろあんなフリフリ。なんの辱めだ。

 

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悠里「それでうちのお父さんが…」

 

悠里は仕事中でも構わず話し続ける。時々お客さんとも話しては友達になっている。

この子が加わるだけで店内が賑やかになった。元気で、お喋り好きで、憎めない。そんな子だ。

 

悠里「そう言えば知ってます?あの噂」

 

仕込みももうすぐ終わりと言うところで、悠里が話しかけてきた。

 

咲夜・零士「「噂?」」

 

悠里「おぉう息ピッタリ!結婚式には呼んでくださいね!」

 

咲夜「そ、そういうのはいい!それで!噂ってなんだ?」

 

零士は笑顔で軽く流したらしいが、私はなんとなく顔が赤くなっているのを自覚していた。

あまり突っ込まれたくないので、私はすぐにその噂について聞いてみる。

 

悠里「はい。なんと天の御遣いの噂です!」

 

天の御遣い。その名が出た途端、零士がピクリと反応したのを見逃さなかった。

 

悠里「黒い空を切り裂き、天から一筋の流星がやって来る!

その流星が天の御遣いを乗せて、この大陸を平和に導くだろう!

自称大陸一の占い師の管輅って人の占いです!なんかそういうの燃えてしまいますね!」

 

今日の悠里は絶好調みたいだな

 

咲夜「別に燃えはしないが。天の御遣いとは。大それた名だな」

 

悠里「ですねー。正直眉唾ですし。それでも、大陸全土でこの噂が広まりつつあります。

みんなそれくらい、希望や救済が欲しいほど、この大陸は荒れてるって事ですねー」

 

悠里の言うとおりだ。この大陸は、そんな不確定な物に縋らなきゃいけないほど追い込まれている。

飢餓、病、圧政・暴政、それに伴い生まれる賊。そして人々はさらに虐げられ、

虐げられた者もまた賊に堕ち、やがてさらに力無きものを虐げる。まさに負の循環だ。

 

悠里「いるのなら会ってみたいですねー。天の御遣いさんとやらに」

 

零士「あ、悠里ちゃん。ちょっと買い出しに行ってきてくれるかい?」

 

悠里「了解しましたー!」

 

悠里は零士から必要な物が書かれた紙とお金を貰い、勢いよく出かけて行った。

本当に元気な子だな。元孤児だったとは思えない

 

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零士「天の御遣いだってさ、咲ちゃん」

 

咲夜「よかったな零士。久しぶりに同郷の人間に会えるんじゃないか」

 

零士「はは、そうだね。一度は会ってみたいな。北郷一刀君に」

 

どんな子かな。なんて呟き、零士は再び仕事に戻って行った。

私も天の御遣い、北郷一刀とやらに会ってみたい。

そしてさっさと平和にしてくれと脅してやりたいところだ。

 

悠里「ただいま戻りましたー!」

 

それから程なくして、再び勢いよく扉が開かれる。悠里が帰って来たようだ

 

咲夜「おかえり。相変わらず速いな」

 

悠里「ふふん、足の速さだけなら、誰にも負けない自信があります!

あ、それと東おじさんにお客さんです」

 

零士「僕にかい?」

 

悠里「はい!」

 

そして入ってきたのは、赤色の短髪に、その髪色の如く燃えていそうな男。あいつは…

 

「久しぶりだな!零士、咲夜」

 

咲夜・零士「「華佗?」」

 

悠里「お?またまたぴったりですねー!」

 

 

説明
こんにちは。今回から黄巾編です。少しでも楽しんでくれたら幸いです
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