真・恋姫†無双 外史 〜天の御遣い伝説(side呂布軍)〜 第二十五回 第二章:益州騒乱F・焔耶の答え
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張遼に続いて陽平関から出てきた呂布の持つ方天画戟の先には、

 

縄で縛られた、全身真っ白な印象を受ける小さな少女があたかもミノムシのように括り付けられていた。

 

 

 

北郷「その子が張魯なの?」

 

 

 

もはや、北郷は三国志上の有名人が女性であることにツッコみを入れることがなくなってしまうほど馴れてきていた。

 

 

 

張遼「は?何言ってんねん。大将がこんな前線に出張っとるわけないやろ?たぶん漢中の居城とかにおるんちゃうん?っちゅーか一刀

 

こそなんでこないなとこまで出張っとるんや?」

 

 

 

張魯出現の知らせを受けていない張遼にとって、まさか総大将である張魯が陽平関に出陣しているとは思いもよらないことであった。

 

当然、自軍の総大将たる北郷が陽平関に出てきていることに驚きを覚えると共に、半ばあきれ顔である。

 

 

 

張魯「そうだし!こんな前線に大将がいるわけないし!お前はアホだし!」

 

北郷「ははは・・・」

 

 

 

もちろん張魯は目の前にいる男が革命軍の総大将であることを知らないのだが、

 

そんな事情を知らない北郷は、敵にまで前線にでしゃばっている自分を責められているように聞こえ、力なく笑った。

 

 

 

魏延「いや、コイツが張魯で間違いない」

 

 

 

自身の顔が割れていないと悟った張魯は、当然のように苦し紛れのしらを切ろうとしていたが、

 

張魯と一度出会っていた魏延にあっさりと正体をばらされてしまった。

 

 

 

張魯「くっ、魏延め、我の術にはまりながら生きてるなんて大したものだし・・・!」

 

 

 

すると、張魯は方天画戟に括り付けられたまま暴れはじめた。

 

 

 

張魯「お前たち!こんなことして無事で済むと思うなだし!衛ちゃんが必ずお前たちに報復する―――!」

 

張衛「はぁ、それはもはや不可能なのだよ姉上」

 

 

 

しかし、そんな張魯の叫びもむなしく、高順に拿捕されていた、全身真っ黒な印象を受ける長身の男、張衛は、ため息交じりに答えた。

 

 

 

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【益州、陽平関山道左翼】

 

 

 

時は少し遡り、陽平関での戦いが始まった頃、張遼他劉璋軍の兵士数十名は陽平関左翼の山道を走っていた。

 

 

 

張遼「みんな油断しなや。山道が穴やっちゅーことは向こうさんもよう知っとるはずや。特に伏兵には細心の注意を払いや」

 

劉兵「はっ!」

 

 

 

そして、張遼の予想は見事に的中し、間もなく張魯軍の伏兵の奇襲を受けることになった。

 

 

 

 

 

―――しかし・・・

 

 

 

 

 

張魯兵「ば、ばかな・・・この険しい山道を騎馬で突っ切る・・・だと・・・!?」

 

 

 

つまり、張遼隊は山道を自身の足で走っていたのではなく、馬に乗って駆けていたのであった。

 

そのあまりにも強引で無茶苦茶な進軍に張魯軍の奇襲部隊は、

 

自分たちが奇襲をかけたにもかかわらず、逆に自分たちが虚を突かれてしまっていた。

 

 

 

張遼「ほれほれほれほれぇぇぇっっ!死にとーない奴はさっさとどかんかい!!」

 

 

 

そんな隙だらけの張魯兵たちを、隊の先頭を走る張遼は飛龍偃月刀で次々になぎ倒しては前へ前へと進んでいく。

 

 

 

張遼「みんな遅れんよーにしっかりついて来ーや!ウチが進みやすい道を先導したる!陽動部隊の負担をできるだけ減らすためにも、

 

さっさと陽平関落とすで!」

 

 

劉兵「応っ!!」

 

 

 

戦いが始まる前に、張遼から騎馬で山道を突っ切ると聞かされた時は、

 

コイツはいったい何を馬鹿なことを言っているんだ、と冷ややかな目で見たものだが、

 

実際張遼の巧みな馬術を目にして、今や劉璋軍の兵士に張遼の力を疑う者は一人もいなかった。

 

さらに特筆すべきところは、張遼は伏兵を見つけるや否や、自らその場に突っ込み、

 

伏兵を蹴散らして、できるだけ劉璋兵の負担を減らしているところである。

 

そのおかげもあり、未だ張遼隊の負傷者はゼロであった。

 

 

 

張遼「恋、見とれよ。ウチが一番乗りや!」

 

 

 

そう叫ぶと、張遼はいっそう馬の速度を上げ、劉璋兵たちをやや置いてけぼり気味に陽平関に向けて突き進んだ。

 

 

 

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【益州、陽平関山道右翼】

 

 

 

同時刻、陽平関山道右翼にもまた、呂布他劉璋軍の兵数十名が走っていた。

 

 

 

呂布「・・・もっと早く駆けろ」

 

劉兵「はっ!」

 

 

 

こちらも張遼同様騎馬での強引な進軍であった。

 

そして、当然右翼山道にも伏兵はいたのであるが、左翼同様、予想外の騎馬での進軍に張魯兵たちは動揺を隠せない。

 

そして、そこへ呂布の容赦ない一撃が次々と入っていく。

 

狭い山道のせいか、思う存分に方天画戟を振るうことができないにもかかわらず、呂布は器用に敵兵を退けていた。

 

さらに、呂布の場合張遼と大きく違うのはその用兵術であった。

 

 

 

呂布「・・・そこの木の影に10人潜んでいる。・・・たぶん火矢。・・・仕留めて来い」

 

劉兵「はっ!」

 

呂布「・・・向こうに、中央の戦場に向けて、岩を落とそうとしているのが、数人いる。・・・止めて来い」

 

劉兵「はっ!」

 

 

呂布「・・・前方に50人くらいの、伏兵がいる。・・・恋が囮になるから、隊を二分して、左にある枝が折れている木の方と、右にある

 

大きな花の咲いた木の方から回り込め。・・・三方から挟撃する」

 

 

劉兵「はっ!」

 

 

 

自ら敵兵を仕留めに走る張遼に対して、呂布は自隊の進軍速度と効率を優先させ、

 

兵士に的確な指示を与え、敵軍の策を次々に看破していった。

 

自ら一つ一つの策を潰すことで陽平関への最短ルートから逸れるのを避けるためである。

 

もちろん、進軍に支障をきたさない範囲にいる敵兵は、呂布自らが退けていく。

 

 

 

呂布「・・・早く、戦いを終わらせる」

 

 

 

そう静かに、かつ強い意志のこもった言葉をつぶやくと、呂布もまた、馬の速度を上げ、陽平関に向けて突き進んだ。

 

 

 

【益州、陽平関本陣】

 

 

 

張魯「ウシシ、まったくちょろすぎだし!」

 

 

 

張魯はウシシ、と八重歯のちょろっと出た歯を見せながら、してやったりと満足げにニマニマしていた。

 

張魯は霧を発生させたと見せかけた後、霧に紛れてすぐに本陣に戻り、のんびりしていたのだ。

 

 

 

張魯「華佗が援軍を呼んだにしても、あのアホガキの兵なんてたかが知れてるし!」

 

 

 

張魯は大あくびをしながら、椅子にもたれかかり、小さな足をパタパタしている。

 

 

 

張魯「あとは衛ちゃんが戦場をかき回してくれたら、敵は勝手に自滅するし!」

 

 

 

部屋には張魯以外誰もいない。

 

そのせいか、張魯の声だけが寂しく部屋中に響いており、なんだか少し寂しくなってきた張魯は、

 

気を紛らわすためか、暇なのか、急に両手に気のようなものをため始めた。

 

そして、ボウッという澄んだ音が響くと共に、次第に張魯の両手を、白々とした淡い光が包み込んだかと思うと、お米をとぎはじめた。

 

気をためた手でとがれていくお米は、次第に有り得ない程白々と輝き始めた。

 

張魯の気は、実は美味しい米を作るためにしか使えず、これが本来の使用方法なのである。

 

 

 

張魯「・・・それに、もし山道を抜けようとしても、伏兵が待ち構えてるし!!」

 

 

 

それでも独り言をやめることはなく、一層語気を強くしながら、鍋に磨いで白々と輝いた米を入れ、炊く準備をし始めた。

 

 

 

張魯「我はちゃんと歴史を学んでるし!!虎牢関みたいにいかないし!!」

 

 

 

そして、米が炊けるまでの間、再び椅子に座ってボーっとしていた張魯であったが、

 

 

 

 

 

しかし・・・

 

 

 

 

 

張魯兵「天師様!敵襲です!すぐにお逃げ―――ギャアアア!!」

 

 

 

バーーンという扉が開け放たれる音と共に、伝令に来た兵士が部屋の中に文字通り吹っ飛んできた。

 

そして、それと同時に二人の女性が部屋に突っ込んできた。

 

一人は深紅の髪を靡かせ、巨大な方天画戟を持った無表情の女性。

 

もう一人はさらしに羽織袴姿の出で立ちの女性である。

 

 

 

張魯「なななな、何事だし!?」

 

 

 

張魯は突然の事態に頭が追いつかず、椅子から立ち上がってあたふたしている。

 

 

 

張遼「よっしゃ、ウチが一番乗りや!」

 

呂布「・・・恋の方が、早かった」

 

 

 

どうやら、どちらが先に陽平関にたどり着けるかを競っていたらしく、

 

ほぼ同時に部屋の中に入ってきた呂布と張遼は、どちらが先だったかをもめていた。

 

 

 

張魯「だ、誰だし!?」

 

張遼「ウチの名は張遼!」

 

呂布「・・・恋の名は呂布」

 

張魯「りょ、呂布!?あのアホガキ、いつの間に名のある武将を引き込んだし・・・」

 

張遼「はぁ、やっぱウチに対しては反応なしかい・・・」

 

 

 

相変わらず張遼の名前に対して反応がないことに張遼はため息交じりにぼやいた。

 

しかし、その隙に張魯はすぐさまそばに立てかけてあった、その身丈に似合わない、張衛の使っているものと同じタイプの斬馬刀を取り、

 

不利な状況にもかかわらず、斬馬刀を支えきれずよろけながらも、白い八重歯を見せ、笑いながら自信たっぷりに言い放った。

 

 

 

張魯「ウシシ、けど残念だったし!我は妖術だけでなく武芸も衛ちゃんより秀でてるし!我が油断している内に攻撃しなかったのが運の

 

つき―――!」

 

 

 

張魯の言葉は最後まで続かなかった。張魯の首には張遼の飛龍偃月刀と呂布の方天画戟が突きつけられていたのだ。

 

 

 

張遼「やっぱわかりやすいように、コイツを討ち取った方が勝ちってことでどうや?」

 

呂布「・・・(コクッ)」

 

張魯「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ウシシ、我も舐められたものだし・・・!」

 

 

 

嫌な汗をかきながらも、八重歯のちょろっと出た白い歯を見せながら、不敵に、そして自信満々に嗤っていた張魯であったが、

 

身の危険を瞬時に感じ取り、あっさりと降伏してしまった。

 

鍋にはまだ炊けていない米が、むなしく水に浮いていた。

 

 

 

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時は現在に戻る。陽平関には、自軍の勝利を聞きつけた陳宮や華佗、厳顔らが到着していた。

 

 

 

魏延「桔梗様ぁぁぁ!!」

 

厳顔「焔耶よ!無事だったか!」

 

 

 

魏延は厳顔の姿を確認するなり、自身の傷など我関せずと言わんばかりの猛ダッシュで厳顔の元に駆け寄った。

 

 

 

張遼「せやけど、コイツが張魯やったんか。なんでこないな前線に出とんねん。アホちゃう?」

 

呂布「・・・無謀」

 

張魯「うるさいし!」

 

 

 

先ほどまで呂布の方天画戟に吊るされていた張魯であったが、

 

今は同じく縄で縛られている張衛と姉弟仲良く張魯がいた部屋に正座をさせられている。

 

 

 

北郷「ははは・・・耳が痛いよ・・・」

 

高順「え?お顔が痛むのではないのですか?」

 

北郷「いや、まぁもちろん顔も痛いけどね・・・」

 

 

 

北郷の顔には、靴型のあざがくっきりと浮かんでいた。

 

当然、言いつけを破って本陣から飛び出したことに対する陳宮の制裁、つまりちんきゅーキックを受けた跡であることは言うまでもない。

 

 

 

張衛「姉上!だからあれほど注意を怠らぬよう言っていたのだよ!いったい何をしていたのだよ!?」

 

張魯「・・・ちょっと暇だったし、小腹も空いてたし、お米を炊いてたし・・・」

 

張衛「あ〜ね〜う〜えぇえええええええええ!!!」

 

 

 

張魯が白眼を泳がせながら語った、あまりのぶっ飛んだ行動を聞いた張衛はブチギレて、

 

張衛は縛られて手が使えないため、張魯に噛みつこうとした。

 

 

 

張魯「だからごめんって言ってるしぃいいぃいいぃいい!!!」

 

 

 

そんな張衛に対して、張魯は縛られて動きづらいにもかかわらず、器用に張衛の噛みつきを避けていた。

 

 

 

北郷「とにかく華佗、あんたが始めた戦いだ。こいつらをどうしたいんだ?」

 

 

 

そんな二人のやる取りを見ながら、北郷は今回の革命の発案者である華佗に、二人の処遇を委ねた。

 

 

 

張衛「おい華佗!お前も姉上のアホさを知ってるだろう!国が乱れたのは姉上を正せなかった我のせいなのだよ!処断するなら我一人を

 

やるのだよ!」

 

 

張魯「なっ!我はアホじゃないし!おいヤブ医者!衛ちゃんを傷つけたら我が呪い殺してやるし!」

 

 

 

身の危険を感じた二人は、お互いの命をかばうようにぎゃあぎゃあ騒ぎ始めた。

 

普通に考えれば、二人とも処断されても文句は言えないようなことをしてきたのである。

 

北郷もそのような結果になる事をある程度は覚悟していた。

 

 

 

 

 

―――しかし・・・

 

 

 

 

 

華佗「別にオレはアンタらを殺して新たな領主になりたいわけじゃない。オレはあくまで医者だ。アンタが米を独占せず、昔みたいに

 

貧しい人々に米を分け与えるような、そういう弱きを助ける体制に戻してくれればそれでいい。みんなも同じ考えのはずだ」

 

 

 

華佗の答えは、二人を処断するのではなく、政治改革を求めるというものだった。

 

革命に参加した漢中の民衆も同様の意見の様である。

 

 

 

高順「いいのですか?この方たちは散々に人々を苦しめてきたのではないのですか?」

 

 

 

華佗「見ての通り、こいつらは少し抜けてるところがあるだけさ。そもそも人々が飢えに苦しんでいたのも、張魯が開発した漢中特産米

 

“五斗米” があまりにうまかったから、独占したっていうだけだからな。しっかりした奴が張魯を補佐してくれれば、問題ないだろう。

 

元々、張魯の民衆からの支持は圧倒的だったからな」

 

 

陳宮「つまり、政治能力の低い張魯を、劉璋軍側に支えてほしいという訳ですな?」

 

華佗「ああ、迷惑でなければ」

 

 

 

別に政治能力は低くないし!と張魯は無駄口をたたくが、張衛も含め、誰もが華麗にスルーした。

 

 

 

北郷「厳顔さん、ここはさすがにオレが返事するところじゃないですよね」

 

 

 

その言葉を聞き、厳顔はしばらく目を閉じて考えた後、

 

 

 

厳顔「ふむ、わかった。ワシが親方様を説得してみよう」

 

華佗「本当か!すまない!」

 

 

 

華佗は深々と頭を下げて礼を述べた。

 

 

 

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【益州、漢中市街地】

 

 

 

その後、劉璋軍はその日は漢中に滞在し、翌日成都に帰還することになった。

 

そして、夜は華佗ほか、漢中の民衆の歓迎を受け、張魯がため込んでいた食糧を使い、

 

みんなで一日限りの革命成功を祝う宴を催すことになった。

 

当然、北郷らは漢中の人達は飢餓で苦しんでいるのにと気が引けたのだが、

 

その苦しんでいる人々が、どうしても何かお礼をしないと気が済まないというので、結局宴に参加することになった。

 

 

 

 

 

宴もたけなわな頃、北郷は酔いを醒ますために(酒豪である張遼と厳顔の近くにいたのが運のつきだったが)

 

夜風に当たりに行くために席を外していた。

 

すると、宴の場から少し離れたところに生えている木の根元に、誰かが座り込んでいるのが見えた。

 

誰かと思って近づいてみると、それは魏延であった。

 

魏延は華佗の手当てを受け、体のあちこちを包帯でぐるぐる巻きにされていたが、それほど重傷でもなく、大事には至っていなかった。

 

今はボーっと夜空を眺めている。

 

 

 

北郷「よっ!魏延も酔い醒ましか?」

 

魏延「・・・御遣いか」

 

 

 

しかし、魏延の様子を見るに、どうやらただ酔いを醒ましている雰囲気でもないらしかった。

 

ならいったいどうしたんだろうと北郷は考えていたが、その刹那、北郷に電流走る。

 

 

 

北郷「もしかして、張衛の術中にハマってしまったことを・・・」

 

魏延「そうではない。あの失態は、ワタシの武人としての一生の汚点となるが、もう過ぎたことだ。そのことに囚われても仕方がない」

 

北郷「なら―――」

 

魏延「ワタシだって一人になりたい時もある!」

 

北郷「あぁ、す、すまん・・・」

 

 

 

北郷はオレってデリカシーないなぁなどと思いながらその場を立ち去ろうとした。しかし、

 

 

 

魏延「・・・御遣い」

 

北郷「ん?」

 

魏延「さっきは・・・その・・・ワタシが張衛の術中にはまって自ら命を絶とうとしていた時、止めてくれて助かった。礼を言う」

 

 

 

魏延は非常に言いづらそうにモゴモゴしながらぶっきらぼうに礼を述べた。

 

 

 

北郷「ははは、あの時は必死だったからな。とにかく、魏延が死なずに済んで良かったよ」

 

 

 

そんな北郷の頼りない笑い声を聞きながら、魏延はあの時のことをぼんやりと思い出していた。

 

よくよく考えてみれば、あのような前線に総大将がいること自体あり得ない話なのだが、

 

聞いたところによると、霧が発生し、部隊が混乱していると聞くや否や、助けに飛び出していたという。

 

そして、自ら命を絶とうとして北郷に抱きしめられたとき、確実に混乱していた自分が、少しではあるが落ち着きを取り戻していた。

 

これも天の力と言うものなのか、或いは北郷自身が備え持っている何かなのか。

 

それは魏延にはよくわからなかったが、少なくとも、北郷のようなタイプの人間を見たのは、魏延は初めてであった。

 

 

 

魏延「一つ聞いていいか?」

 

北郷「ん?どうしたんだ、急に改まって」

 

 

 

魏延は言うか言うまいか迷っていたようだが、意を決して話を続けた。

 

 

 

魏延「これはワタシの知り合いから相談された話なんだが、ワタシではいい答えが出なくてな」

 

北郷(これは自身の悩みを打ち明けるパターン?)

 

 

 

魏延は何ともベタベタな誤魔化し方で自身の悩みを北郷に打ち明け始めた。

 

 

 

魏延「ソイツは、自分が仕えている主がどうしようもないクズで、愛想を尽かして出て行こうと思ったのだが、恩義のある主を捨てる

 

のは自分の持つ忠義心に反するらしい。この場合、どうすればいいのか、ということだそうだ」

 

 

北郷「なるほど。うーん・・・確かに、過去に恩を受けている人を簡単に見限るのは忠義に反することだな」

 

 

 

けど、と一呼吸おいて、北郷は自身の見解を述べ始めた。

 

 

 

北郷「それって忠義って言葉に縛られすぎなんじゃないのか?」

 

魏延「どういうことだ?」

 

 

北郷「オレは武人じゃないから、恩義とか忠義とか、そういう感覚は良くわからない。だけど、これだけは言える。忠義という言葉に

 

縛られて、仕えたくもない人に嫌々使えるのなんて間違ってる。自身にとっても良くないし、仕えられる側にとっても嫌々仕えられて

 

いるなんて信用できないしな。一番大切なのは、忠義なんて言葉で縛られる必要のない人、理屈抜きで心から仕えたい人、その人の志

 

を共に遂げたい人、そんな人を見つけることだとオレは思う」

 

 

魏延「心から仕えたい、共に志を遂げたい人物・・・」

 

 

 

魏延はその言葉を何度も心の中で反芻させた。

 

 

 

北郷「まあ、理想を言えば、ダメ主人が、そう思えるような立派な人になってくれたらいいんだけど。そう導くのもまた、仕える者の

 

大事な役目だしな」

 

 

魏延「(心から仕えたい、共に志を遂げたい人物・・・)」

 

 

 

その刹那、魏延の脳裏に、自身が劉璋に対して怒りを覚えた時に度々よぎっていた、幼き頃の厳顔との会話が浮かんでいた。

 

 

 

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<どういう意味ですか、ききょーさま?>

 

 

<うむ、つまり、仕えるべき主は己自身で見定めよということだ。ただし、見定めるといっても目先の建前で判断するのではない、心で

 

感じよということだ>

 

 

<うーん、ワタシはおやかたさまに仕えれば良いのではないのですか?>

 

 

<もちろんそうなるだろうし、焔那の場合は、昨年お生まれになった若君にお仕えすることになるかも知れぬし、もしかしたら全く別の

 

誰かかもしれぬ。そればかりはワシにも分からぬ>

 

 

<うーーーん、むずかしくてよくわかりません>

 

 

<はっはっは。焔耶にはまだ少し難しかったか。だが、いずれわかる時が来る。お主はまだまだこれからだ。早く良い答えを見つけるの

 

だぞ>

 

 

 

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魏延「(桔梗様、ワタシもようやく見つけられたようです・・・)」

 

 

 

北郷に悩みを打ち明けることで、魏延はついに、長年分からなかった答えを見出すことができたのだった。

 

 

 

【第二十五回 第二章:益州騒乱F・焔耶の答え】

 

 

 

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あとがき

 

第二十五回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

恋と霞は、お互い攻め方が違うという印象を持たせたかったため、こんな感じになりました。

 

勝敗の行方は、速さだけだと、効率が悪いにもかかわらず恋と同時だった霞、

 

総合力は恋、といったところでしょうか。

 

霞はこれでまだまだ伸び代たっぷりな子なので、神速の名を冠するまで、今しばらくお待ちください。

 

そして、焔耶はようやく答えが見つかったということで、今後に期待です。

 

別に贔屓ではないで、ないはずです 汗

 

では、陽平関の戦いが終了したので、張魯側限定で恒例のオリキャラ紹介をば、、、

 

 

 

張魯(チョウロ)

字は公祺(コウキ)。女性。一人称は我。語尾は 〜し!。ウシシという独特な笑い方をする。

年齢不詳(外見は十歳前後)。白い肌、白銀髪、白眼、白装束と、全体的に白のイメージ。八重歯。

戦闘時には羽衣を羽織り、神々しさをアピール。小柄な体格で、髪は地面すれすれまで垂らしている。

政治力、戦闘力は無に等しいが、カリスマ性はピカイチ。つまりは基本馬鹿。

張家伝来の蜘蛛の糸を利用した空中浮遊 “大師降臨” ・

((音響閃光手榴弾|スタングレネード))、漢中特有の濃霧、鈴を利用した張衛とのコンボ技 ”霧幻地獄” を得意とする。

米をこよなく愛し、暇さえあれば、自ら開発した漢中ブランド米 “五斗米” を炊き、自身で食したり、振る舞ったりする。

大盛りの米をぺろりと平らげることからも、意外と大食漢?と思われがちだが、五斗米でないと無理。でもお米は基本何でも好き。

両手に気をためて磨いだ米はあり得ない程白々と輝き、極上の米を炊くことができる。つまり美味い米を作る程度の能力。

重度のブラコン。

 

張衛(チョウエイ)

字は公則(コウソク)。男性。一人称は我。語尾は 〜のだ(よ)。よくふん、と鼻で笑う。

黒髪、黒装束と、全体的に黒のイメージ。細身で長身(約2メートル強)。全体的に冷たい印象を与える面構え。

武器は巨大な斬馬刀。政治力、戦闘力共に並み以上、事実上漢中を支えてきた苦労人。

戦時は陽平関に駐在し、張魯がいなくても、漢中特有の濃霧と鈴を利用して侵入者を弓隊により排除し、漢中を守ってきた。

また、声帯模写を得意とし、それによって「霧幻地獄」の効果をより高めている。

張魯に負けず劣らず “五斗米” に誇りを持っている。

実はシスコン。

 

 

 

二人ともstsのお気に入りでして、今後も登場機会があれば是非是非登場させたいと思っております。

 

それでは、次回で第二章も終了です!ですが、このまますんなり終了とはいかないんですけども、、、

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

第二章は「陽平関の戦い」ではなく、「益州騒乱」なのです、、、

 

 

説明
どうもみなさん、お久しぶりです!または初めまして!

今回は焔耶の答え。果して焔耶が見出した答えとは、、、!

あと、予告通り恋と霞が陽平関を落とす様子をダイジェストな感じでお届けします。


それでは我が拙稿の極み、とくと御覧あれ・・・


※第十九回 第二章:益州騒乱@・劉璋からの試練 <http://www.tinami.com/view/613232>
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コメント
>五斗米道ってあれか?まさか地域おこしの先駆けだったのか?  少なくとも漢中民の行動力はハンパないみたいですからね(sts)
>↓↓張魯の炊いたご飯でメンマ丼。新たな漢中名物が出来る予感!  実際米+メンマって美味しいんでしょうか(勿論一般人の味覚基準で)気になるところですね(sts)
>↓お願いやめて!!ご飯のライフはもうゼロよ!!もしくはご飯への冒涜よ!!ww  ずっとメンマさんのターンになってしまうじゃないですかwww(sts)
>ふと思った・・・張魯が炊いた米でメンマ丼作ったら・・・・・  ヤツを召喚できるかもしれません、というか呼ばなくてもやってきますね絶対w(sts)
>序盤では「陳宮が嫁だヒャッホー!」といういい夢を見させて頂きありがとうございました。(涙)  まだstsもその夢を諦めてませんよ!ですが恋姫が増えると一刀君の性質上どうしても…ぐぬぬ(sts)
>一刀達と劉璋の話し合いとやり合いにもすごく期待している今日この頃。  く、雲行きの怪しい期待のされ方かもですね…今後もどうぞよろしくお願いします 汗(sts)
>ハイ!一刀のハーレムへ一名様ご案内〜〜  羨ましい限りです(sts)
>前線に出る大将・・士気は上がりますね  同じく前線にでる大将の代表たる孫家の方々(というか雪蓮さん)ほどの実力があれば申し分なかったのでしょうが…無理ですね(sts)
↓↓張魯の炊いたご飯でメンマ丼。新たな漢中名物が出来る予感!(いた)
ふと思った・・・張魯が炊いた米でメンマ丼作ったら・・・・・(2828)
序盤では「陳宮が嫁だヒャッホー!」といういい夢を見させて頂きありがとうございました。(涙) 今回は武将たちの才覚が光りましたね。魏延ほか恋姫たちの成長が実に楽しみです。(wakuwaku)
中々に良い纏め方ですね、焔耶の答えが気になる処ですが忘れるな劉璋は決して馬鹿じゃないし彼も恐らく厳しい経緯を経ている事を、一刀達と劉璋の話し合いとやり合いにもすごく期待している今日この頃。応援してます作者殿。(禁玉⇒金球)
ハイ!一刀のハーレムへ一名様ご案内〜〜(一火)
これからの行く末が楽しみな外史ね。前線に出る大将・・士気は上がりますね(雪風)
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