真・恋姫無双 〜乱世に吹く疾風 平和の切り札〜 拠点フェイズ・鈴々その1
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「…んしょっと。なぁおっちゃん、荷物はこれで全部?」

「ああ、お前さんが運んだそれで最後だったよ。礼を言うぜ探偵さんや」

 

昼下がりの街道の中。

荷馬車に乗せられていた荷物を小さな建物の前に運搬する男――北郷一刀の姿がそこにあった。

普段のフランチェスカの制服は上着だけを外し、上半身はTシャツのみという動きやすい恰好となっている。

 

両手に持っていた木箱を建物の前にドサリと置いた一刀は、腰を軽く叩きつつ近くにいたガタイの良い中年の男性に声を掛ける。

 

男性は一刀の問いに是と答え、二カッと爽やかに笑って見せた。

どうやら愛想の良い人物のようだ。

 

すると男性は懐から小さな包を取出し、それを一刀に向かって投げ渡す。

 

「そんじゃこいつが礼金だ。にしてもあの野郎今日に限って体調崩しやがって……復帰したら今までの3倍働かせてやんよ」

「いや、病み上がりにはキツイでしょうよ。…まぁとにかく、報酬金はありがたくいただくよ」

「おう、また何かあったら頼りにさせてもらうぜ!」

 

営業者にとって嬉しい言葉を受け取られつつ、一刀は報酬金を懐に仕舞うとその場を歩き去っていった。

 

 

 

 

 

 

「さて、少し遅くなったけど昼飯食わないとな…今日はどこで食おうか………ん?」

 

仕事に一区切りつけられ、昼食を考えていた一刀であったが、前方に少し気になる光景をを見つけた。

どこの店なのかまでは分からないが、中々の人数が一つの建物の前で囲うように群れを作っており、様子も少し騒がしめである。

 

「なんだあれ……?ちょっと見てみるか」

 

周りを囲っている人たちの表情を見る限り、ただ驚嘆しているだけのようなので盗賊が暴れているといった状況でもなさそうである。

まるで、物珍しい物、珍妙な物を見るような……

 

好奇心に駆られた一刀は昼食の事も忘れ、その人の群れの方へ足を運んでいった。

 

 

 

一刀はその人だかりの方へと近づくと、その仲にいた一人に問いかけた。

 

「なぁ、ちょっといいかい?この人だかりは一体何なんだ?」

「お、その格好…あんたが噂の探偵さんかい?折角だ、あんたも見て行ったらどうだ。あんないい食いっぷり、余所じゃ中々見れねーぞ」

「食いっぷり?」

 

大食いタレントでもいるのか、とも思った一刀だったがこんなご時世にタレントが居るわけもないだろうと、その考えを一蹴。

一応アイドルはいるが……未来形で。

それはともかく、食べっぷりと言うワードに加えて店の方から漂う嗅ぎ馴染のある匂いがヒントとなり、店の正体がラーメン屋であることに気付いた一刀。

 

そして人混みの隙間を覗き込むと、この人だかりを集めた張本人の姿が確認できた。

 

「はむっ!はふはふはふ………!」

 

体格に比例していないサイズの巨大なドンブリを片手に持ち、その仲に盛られた大量の麺とスープその他薬味を勢いよく口の中へかっ込んでいる、赤い髪の小さな女の子が一人。

空腹の飼い犬が久々のエサにがっつくかのような食いっぷりは最早圧巻の一言。

ビデオの早送り映像のように消えてゆくラーメンを見て、周りの人たちのどよめきは今なお大きい。

 

そんな大注目を浴びている少女に見覚えがある一刀は、深く溜め息をつきながら

その少女の元へと歩み寄り、肩をポン、と叩く。

 

「一体何のショーが開催されてるかと思えば……意外な役者だな、鈴々」

「ひゃ?」

 

 

 

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肩を叩かれ、パンパンに頬を膨れ上げさせたまま一刀の方を振り向く少女――鈴々。

彼の姿を見た途端、元々大きかった彼女の目が更に開かれる。

 

「にゃ!おひいひゃんら!」

「食ってから言って!色々汁が飛んでる!」

 

鈴々の口の隙間から放たれる油込の汁を防ぎつつ、一刀は鈴々に口の中のものを失くすことを優先させる。

その言葉にコクリと頷いた鈴々は、言われた通り食べ物を飲み込もうと咀嚼の速度を上げ

口の中のものをすべて食道に通し終えた鈴々は、改めて一刀の方を向く。

 

「お兄ちゃん!なんだか久しぶりに会ったような気がするのだ!」

「そうか?久しぶりと言ってもたった数日だったと思うが……」

「………そうだっけ?」

「確かそうだったぞ」

「そっかー……でも気にしたって大したことじゃないのだ!」

 

確かにそうではあるが。

 

「それで、お兄ちゃんもここでご飯食べに来たの?」

「いや、この人だかりが気になって来てみただけだ」

「人だかり?……あ、ホントだ!なんかいっぱい人が集まってるのだ!」

 

そして今頃になって周りにいる人たちの存在に気付いている。

余程食事に集中していたという事であろう。

 

「…ま、楽しく食えればそれでいいのかもな。おっちゃん、俺にもこの子と同じ奴くれ」

「へい!量も十人前で?」

「胃袋破けるわ。一人分でネギ多めによろしく」

「へい!とんこつネギ多め一丁!」

「HEY!」

「…ん?」

 

店主らしき人の注文に答える返事が奥の方から聞こえてきた。

が、発音に何か違和感を感じたような気がした一刀であった。

 

「……気のせいか。なんかアメリカンな返事が返ってきたような気がしたが……」

「?お兄ちゃん、どうかしたのだ?」

「いや、多分俺の気のせいだわ。ほら、鈴々も早く食べないとラーメンが冷めるぞ」

「…あっ!ホントなのだ!はふはふ……」

 

一刀からの催促もあり、鈴々の口と箸が活動再開し始めた。

鈴々の持つ器に入っている残りのラーメンの量を見る限り、この調子だと一刀のラーメンが届く前に食事を終えてしまう――

 

 

 

「おっちゃ〜ん!餃子5人前とチャーハン3人前も頼むのだ!」

 

と思いきや、ここでまさかの追加注文。

自分の体が入りそうな程巨大な器を使ったラーメンを完食したにも関わらず、まだまだ胃袋には余裕がありますよと言わんばかりの笑顔を振りまく。

これには周りの人たちも口元を引きつらざるを得ないほどである。

 

「質量保存の法則が逃げた……腹の中にブラックホールでも住んでるのか?そう言えば鈴々、そんなに食って金の方とかは大丈夫なのか?」

「ぷはぁー!……にゃ?」

「聞いてなかったのかよ…だから、代金はちゃんと持って来てるんだよな?お前も働き始めたばっかりで給与とかまだ貰ってないだろ」

「…それなら大丈夫なのだ!だってこの間、旅をしてた人を助けたらお金を貰ったのだ!」

「旅人から?」

 

 

 

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鈴々が言うには、内容はこうである。

 

ある日、城内での業務に飽きを感じ始めた鈴々が一人で街の外に散歩に出た時だった。

街から少し離れた所で、綺麗な身なりをした旅人の女性が数人のゴロツキに絡まれているのを発見した。

鈴々は即座にその場に駆けつけてそのゴロツキたちを撃退し、その旅人を助けたのである。

 

その旅人は裕福な家系に生まれ、成人して家業を継ぐ前に見聞を広めておきたいという事で、両親に内緒で自分のお金を持って旅をしていたのだという。

初めて命を狙われた旅人は鈴々に深く感謝し、旅の危険さを教えてくれたことと命を救ってくれたことの礼として、かなりの額を貰った。

最初はこんなにもらっても良いのだろうかと思った鈴々だったが、旅人がどうしても受け取って欲しいと頭を下げてまで頼んで来たので、有難く受け取る事となったのだ。

 

 

 

これが鈴々が大量の食事をとれるほどのお金を持っている理由である。

 

「それでその後、その旅人のお姉ちゃんと一緒にご飯を食べたのだ!」

「成程な……けど女性の一人旅とか危なすぎるだろ…もし鈴々が飽き性じゃなかったらホントにヤバかったな……単純な子で良かったよ、うん」

「…なんだか馬鹿にされてるような気がするのだ」

「マサカ、ソンナ。それはそうとその旅人の女性を助けたのはホントに偉いぞ、鈴々」

「…鈴々、偉いの?」

「おう、偉いぞ。鈴々は偉い」

 

そう言って一刀は鈴々の頭をクシャクシャと髪をたてながら撫で始める。

 

「にゃ〜…お兄ちゃんくすぐったいのだ〜」

 

口ではそう言いつつも、まんざらではなさそうに表情を綻ばせている鈴々。

 

「(それにしても、この近くで盗賊が動いてるか……案外鈴々が報告してるかもしれないけど、一応公孫賛に対策を施してもらわないとな。あとは旅人には護衛を付ける様に呼びかけたりとかも必要だな)」

「うにゃにゃ〜」

「(俺の方も護衛の依頼とか受け付けておくかな…もう街のみんなは俺が仮面ライダーになれること知ってるし。けど護衛で街を空けてる最中にドーパントが出たらマズイしな……でもそれって他でも言えることだし)」

 

 

 

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「うにゃ〜…おにいちゃん、頭がフラフラするのだ〜…」

「ん?……あ、悪い」

 

いつの間にかワシャワシャと優し目に頭を撫ででいたのが、思考の海に浸かった所為でグリグリと頭を回すような撫で方になっていたらしい。

それに気づいた一刀は手を離して鈴々を解放するも、長時間頭を回された彼女は情けない声を出しつつ体をふらつかせていた。

 

「あう…気を付けて欲しいのだ〜」

「すまんすまん。ちょっと考え事しててな」

「仲がよろしい事で。兄妹ですかい?」

「まあ合ってるけど。お、ラーメン出来た?」

「兄弟の戯れ合いに水を差すのは野暮かと思いましてね。まだ熱いですから食べる際はお気を付けて」

「ありがとな。ほら鈴々、そっちも追加が出来上がってるぞ」

「にゃ?…おー、ホントなのだ!それじゃあいっただっきま〜す!」

 

大変お早い回復だことで、一刀の言葉と食べ物の匂いで料理の存在に気付いた鈴々は先ほどのフラフラを一瞬で決して食事を始めた。

また世話しなく、かっ込むようなスタイルで。

 

「やれやれ……」

 

その様子を見て、一刀は再びため息を吐いた。

 

だが、その表情の裏では鈴々の事を高く評価している。

鈴々はまだまだ精神的には子供だが、誰かの為に動こうとする心は強く成長している。

どこかの相棒の顔を思い出しつつ、一刀は鈴々の正義感溢れる精神に素直に感心していた。

 

「……俺も負けない様、頑張っていくとするかな」

 

鈴々の最新の武勇伝に心を動かされた一刀は、誰にも聞超えない声量でそう呟くと、程よい温かさになったラーメンを食べ始めたのであった。

 

 

 

 

 

「うん、やっぱり美味いな」

「ははは、そりゃあ美味くないとご時世に関係なくやってけませんからね。なあお前ら!」

「HEY!」

「HAI!」

「SO!」

「ここアメリカ人何人いるんだよ」

 

 

 

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【あとがき】

 

どうも皆さんこんばんは、kishiriです。

 

いやぁ……大変な執筆でしたよ。なんか昨日は一日中家にいた所為で土曜日の記憶がありませんし、今日は雨天でそれほど外に出られたわけでもありませんでしたし。

まぁこれでペース的には多少持ち直したし、良しとしておきましょうかね。

 

???「だがまた活動に支障が起こるような事態になれば、またノルマを課してやるからな」

 

次はもっと鬼畜なノルマ出しそうだから勘弁してください……orz

 

次回からは再びメインストーリーの方を動かしていきたいと思うます。

取り敢えず軍師お二人の登場ですが……加入の仕方とか変えていこうかな…

 

それでは、次回もよろしくお願いします!

 

 

 

 

 

説明
鈴々の拠点フェイズです。

投稿しようと思ったらエラーが出てきてビックリした…
もう一度投稿に必要な項目を入力する羽目にorz
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コメント
終の竜さんへ はい、登場させる予定です。あの2体の活躍はだいぶ限定的だったため、序盤から出しても出番は来ないんじゃないかなぁ…と思って後々の登場にすることにしています。(kishiri)
ふと思い出したんですが、カエルとカタツムリのメモリガジェット(本編ではシュラウドからメモリと設計図を送られて、フィリップが作ったもの)は登場させるんですか?(終の竜)
タグ
真・恋姫無双 仮面ライダーW 仮面ライダー 拠点フェイズ 北郷一刀 鈴々 

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