真・恋姫†無双 〜胡蝶天正〜 第二部 第10話
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この作品は、北郷一刀の性能が上方修正されています。はっきり申しましてチートです。

 

また、オリジナルキャラクターやパロディなどが含まれております。

 

その様なものが嫌いな方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

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「一刀殿、何処に行っておられたのですか?」

離れから続く渡り廊下を抜け、大広間へ向かう途中で一刀は稟に声を掛けられてそちらを向く。

どうやら彼女は一刀を探していたと見え、何処に居たのかを問いただす。

「特別招待した客人の相手をしていてね、貴賓室へと足を運んでいたんだよ。それにしてもどうしたんだい?」

「先ほど、何進将軍の名代と言う方達がお越しになられ、今は大広間でお待ちしているのです。恐らく今回の黄巾党の一件に対する労いに来たのではないかと」

「間違いなくそうだろうね、華琳もこれが来るのを解っていたからこそ、俺に面倒なところを押し付けて適当に済ませようと考えていたみたいだし」

「それが解ってるのに、あえて曹操様を城へお招きする貴方も中々に変わり者ですよ」

頭の回転が早い稟もその事が解っていたらしく、一刀の性格も十分に理解している。

その上で禀は呆れた物言いを一刀に返していた。

「華琳には個人的に話もあったからね、それに稟も彼女と一緒に居れる時間が増えて嬉しいだろ?」

「わ、私は・・・・・・別に、そのような・・・・・・」

何進の名代から思わぬ方向に話が飛び火してしまい、稟は頬を赤らめて視線を逸らしてしまう。

一刀としてはもう少しそんな乙女チックな稟を見ていたい衝動に駆られるが、都からの客人が来ている以上いつまでも待たせるわけには行かない為、適当に話を切り上げる。

「まぁ、とにかく何進将軍の名代と言う事は呂奉先殿だろうし、早く大広間に向かうとしよう」

「はい」

今の言葉で互いに頭を切り替えた二人は、足早に大広間へと向かう。

程なくして目的地に到着し、扉を開けて中に入ると、そこには一刀と稟を除いたこの城の主だった者全員と華琳達、そして名代としてここに来たと言う呂布達が揃い踏みしていた。

「お待たせして申し訳ありません、この新平の太守を務めている司馬仲達と申す者です」

「・・・・・・・」

広間に入ると一刀はすぐ呂布に待たせたことに対する陳謝をするが、当の本人は特に気にする事無く眠そうに眼を擦り、無言で彼を見ている。

すると呂布の隣に付き添う官軍の軍師の一人、陳宮が彼女の代わりに言を発する。

「こちらも突然の来訪した為、気にする事は無い!と仰せなのです!さあ、司馬懿殿、曹操殿こちらへ」

目の前に居る名代の言葉を更にお付きの者が代行し、それに頭を垂れるという、嘗ての華琳となんら代わらない間の抜けた光景になるのを覚悟した一刀は、華琳と共に呂布の前で膝を着き軍礼をする。

それを確認した陳宮は、自分の言葉は呂布のものだと明言した上で、一刀達に言葉を掛けてきた。

「此度の黄巾の賊徒を討伐した働き、誠に大儀である!と仰せなのです!」

「・・・・勿体無きお言葉です」

「して、張角の頸は何処に?と仰せなのです」

「張角は討ち取られる事を恐れ、自ら天幕に火を放ち自害しました。火を消した後に頸を取ろうかとも考えたのですが、その様なお見苦しいものを此処へお持ちするのも憚られますので用意する事が出来ませんでした」

「うぇ・・・・く、頸が無いとは片手落ちだな。と仰せなのです」

「申し訳御座いません」

一刀の言葉で焼けて炭になった張角の頸を想像したのか、陳宮は嫌そうな顔をしつつも頸が無い事に対する叱責を彼に言い渡す。

一刀はそれに対する謝罪をしながら華琳の方へそれとなく視線を向けてみると、予想したとおり彼女は我関せずといった顔をしており、陳宮の言葉を完全に聞き流していた。

そんな彼女から陳宮の方へ視線を戻して話を聞くと、今回の功績に対する報酬の話に移っていた。

「此度の功績を称え、貴公達を西園八校尉が一人に任命すると共に、司馬懿殿が治める涼州東部を雍州とし、貴公をその州牧とするという陛下のお達しを伝えに来た。と仰せなのです!」

「はっ!謹んで御請けいたします!」

陳宮の言葉に春蘭や季衣などは、何故一刀の方だけ恩賞が多いのかという視線を向けるが、要は黄巾の乱で官職が逃げ出した地域を統治している一刀に後任人事を含めた雑務を丸投げしただけに過ぎないのだ。

その事を理解した軍師達と政務に携わる秋蘭や星といった将は“うわぁ、無いわぁ・・・・”といった表情で一刀を見ていた。

「これからも陛下のために働くように。では、用件だけではあるが、これで失礼させてもらう。と仰せなのです!・・・・・・・ささ!恋殿!こちらへ!」

「形式ばった事につき合わせて、すまんかったな。後は宴会なり何なり好きにしてくれ・・・・ほなな」

陳宮はここへ来た用件を済ませると、眠たい子供の様な呂布を連れてそそくさとこの場を後にし、傍でじっと黙っていた霞も申し訳なさそうに一刀に詫びて広間から出て行く。

残されたのはこの大広間を占める何とも言えない微妙な空気と、些かご機嫌斜めな華琳の姿だった。

応対を全て一刀がやった分、以前のように噴火を目前にした火山の様にはなっていない。

それでもあんな扱いを受けた事に対する怒りは多少なりともあると見え、春蘭達もそんな華琳に声を掛けられずに微妙な表情で一刀の方を見ている。

そんな彼女達の視線を感じた一刀は、深くため息を吐いて観念したかのように華琳に話しかける事に・・・。

「気にするな。今回の事でも解るように、時を待たずして漢朝は滅びる。その時にでもこの借りを返せばいいさ」

その言葉を聞いた華琳は一刀の方を一睨みしたかと思うと、ため息を吐きながら重い口を開けた。

「・・・・・・・解ったわよ、今日はあなたの顔に免じて機嫌を直してあげるわ」

「ああ、華琳にはそんな剥れている様な顔は似合わないよ。それじゃあ張遼殿の言葉じゃないけど、戦の勝利を祝って宴会でも始めよう。鄒、もう準備は出来ているんだよね?」

「はい、全て滞り無く」

「それじゃあ会場に向かおうか。鄒、皆を案内してくれ」

「畏まりました。それでは、ご案内致しますのでどうぞこちらへ」

大広間に居る面々は鄒に連れられて宴会の会場へと向かう。

その途中で、華琳は誰にも聞かれないよう小さな声で、一刀に対する小言を呟いた。

「全く、一番誹りを受けたあなたから諭されちゃ怒るに怒れないじゃない。少しは悔しがりなさいよ・・・・・・・バカ」

 

 

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日もとっくに落ち、空に満天の星が輝く新平の夜。

その城で宴会が開かれる中、主催者で在る一刀は城壁の上で一人夜風に当たっていた。

城の主でもある彼が何故宴会の席から抜け出しこんな所に居るのか、その経緯を説明するには先ず宴会での事から説明しなければならない。

それは一刀がここへ来る一刻程前の事である。

「か〜じゅと〜!ほ〜ら!にょめにょめ〜!」

「に〜ちゃんもこっちへ来て、一緒に飲も〜よ〜!」

「わ、解ったから、春蘭少し離れて。季衣も酒樽ごと勧められたって飲みきれないよ」

「にゃんだ〜!わたしにしゃくをされても、うれしくにゃいというのか〜!?」

「大丈夫だよ〜、に〜ちゃんならこれ位飲めるよ〜」

夕方ごろから開かれている、二人の昇格祝いも兼ねた戦の祝勝会。

その宴会も最高潮に達した頃、主催者の一刀はすっかり出来上がった酒癖の悪い春蘭と季衣の二人に絡まれていた。

当初は華琳や星、風といった面々も一緒に酒を酌み交わしていたのだが、春蘭たちが酔い始めると状況は一変、一刀を人身御供にしてそそくさと撤退してしまった。

そして絡む相手が一刀一人になってからというもの、二人は彼の両脇に移動して逃げられないようにすると、二人で連携して酌をし始めたのだ。

(流石にそろそろきつくなって来たな。誰かに助けを求めたいんだけど・・・・・あ!)

この場を納められるような人物は居ないかと周囲を見回していると、華琳たちが逃げた方向から一人、自分達の方へ歩いてくる者が目に入る。

それは魏で一番の苦労人にして、春蘭のフォロー役でも在る夏侯妙才こと秋蘭その人だった。

「秋蘭なら・・・秋蘭ならきっと何とかしてくれる!!おーい秋蘭!こっちだ!」

一刀は救いの手が差し伸べられたのだと確信し、宴会場に響き渡るような大きな声で彼女に声を掛けた。

だが・・・・。

「おぉ・・・・ここに居たのか一刀・・・・。姉者と二人で楽しく飲んでいるとは・・・ヒック・・・つれないではないか・・・・」

「\(^o^)/」

天の助けだと思って呼んだ秋蘭もまたすっかりへべれけになっていた。

恐らく華琳が酔って絡まれる前に一刀の所へ行くように仕向けたらしく、一刀にとっては海を漂流している時に通りかかった船が実は奴隷船だったのと同じ心境であった。

「こうなれば仕方ない・・・・。鄒!こっちに来てくれ、鄒!」

「如何なさいました?一刀様」

一刀が声を張り上げて鄒を呼ぶと、まるで初めからそこに居たかと錯覚するほどの速さで一刀の後ろから返事が返ってくる。

その状況に驚く一刀であったが今はそんな事を気にしている余裕は彼には無い。

「鄒、この前五十樽ほど造った例のアレを取っ手付きの杯に入れて持ってきてもらえるか?折角だから三人に振舞いたいんだよ」

「・・・・・・畏まりました」

鄒は一刀が何の事を言っているのかすぐに察したらしく、指示されたものを用意するためにその場を後にした。

「に〜ちゃん、侍女のね〜ちゃんに何を頼んだの〜?」

「ああ、俺が造ってる“特別な酒”があってね。普通に飲む他にも傷に掛ければ治りが良くなるという優れものなんだけど、良かったら皆にも飲んでもらおうと思ってね」

「にゃにぃ〜?そんにゃしゅごいしゃけがあるのか〜?けしからん!わたしがにょんでききめをたしかめてくれよ〜!」

そうこうしていると鄒が特別な酒を注いだ大きめの杯を人数分、盆に入れて戻ってくる。

「一刀様、ご注文の品をお持ちいたしました」

「ありがとう。皆に手渡してもらえる?」

「畏まりました」

一刀の言葉を聞いた鄒は盆に入れた杯を一人一人に手渡していき、最後の杯を一刀に渡すと一礼してその場を後にした。

「ヒック・・・これが一刀の造った酒かぁ・・・・・。では早速一口・・・」

「ちょっと待ってくれ秋蘭、この酒は遠い西の地にある物を真似て作ったんだけど、飲み方に作法があってね。口をつけたら杯を空にするまで飲むのをやめてはいけないと言うものなんだ」

「おお!にゃんとごうかいにゃしゃほうだ〜!しゅうりゃん!われわれもしょにょしゃほうににゃらうとしよぉ〜!きいもいいにゃ!?」

「ああ・・・・ヒック・・・・そうだな姉者」

「もちろんです!春蘭さま〜!」

「じゃあ、三人ともいいね。それじゃあ、カンパーイ!」

一同は一刀の取った音頭を合図に杯に口をつけて一気に流し込む。

口にした瞬間、焼けた針で喉を隈なく刺されたようなアルコールによる強烈な痛みが春蘭たちを襲い、三人もこれが普通の酒ではない事が理解できたがとき既に遅し、険しい顔でグイグイと飲んでいく一刀を見て負けじと杯をあおる。

やっとの思いで飲み干した三人だったが、春蘭と秋蘭は飲みきった勢いで倒れてそのまま酔い潰れてしまい、何とか意識を保っている季衣でさえ・・・。

「わぁ〜・・・・大きな星が点いたり消えたりしてるぅ〜。あははぁ〜・・・・大きぃ〜・・・・彗星かなぁ〜・・・・・いや違う、違うなぁ〜。彗星はもっとバァ〜って動くもんねぇ〜」

とても正気を保っているとは言えない状態だった。

そんな三人の姿を目で確認すると、一刀は手に持った空の杯を卓に置いて一息吐いた。

「ふぅ、やっと解放された。流石の春蘭達でもあんな物を一気飲みすればこうなるか」

彼が鄒に持って来させたのは、医療所で消毒や抗生物質の結晶化に使っているアルコールである。

そんな物を取っ手の付いた酒用の杯、平たく言えばジョッキでがぶ飲みしたのだから、意識を保てなくなっても不思議ではない。

一刀だけが潰れていないのは、鄒が指示通り三人の分だけを用意し、彼には普通の酒を手渡したおかげだった。

その後一刀は酔い潰れた春蘭達と、泥酔して訳が分からなくなっている季衣の介抱を鄒に任せ、酔いを醒ます為に宴会を後にしで現在に至る。

 

 

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「俺・・・・・酒弱いのかな・・・・」

「・・・・・・あの娘達を潰して良くそんな言葉が出てくるわね」

夜空を見上げている一刀が口にした何気無いぼやきに、呆れた物言いが返ってくる。

その言葉に反応した一刀は、声の下方向へ目を向けてみるとそこには月の光に照らされてた華琳の姿があった。

「あれ?桂花や星達と一緒に飲んでたんじゃないのかい?どうしてこんなところに?」

「あなたが居なくなってるから探してたのよ。少しは主賓である事を自覚なさい」

「飲み過ぎたからここで少し酔いを醒まして居たんだよ。第一、飲みすぎた原因は華琳が春蘭達を俺に押し付けて逃げたせいだろ?」

「あら、そうだったかしら?仮にそうだったとしても、機を見るに敏なりと言うでしょう。動きの遅いあなたが悪いのよ」

「・・・はいはい」

口では勝てないと悟った一刀は華琳の言葉に生返事をして適当に話を切り上げ、再び視線を夜空に戻す。

夜風に頬を撫でられながら星空を眺めていると華琳が一言、一刀が見ているのとは反対の夜空を眺めながら彼に呟く。

「綺麗な月ね・・・・・」

一刀は今宵の月をあまり見たくはなく、あえて視界から外していたのだが、華琳に話を振られては眺めないわけにもいかず、渋々そちらへ目を向ける。

そこには、周りで煌めく星々も霞むほどの眩いながらも淡く青い光を放つ満月が浮かび上がっていた。

「・・・・・・そうだな。こんなに大きくて綺麗な月は一度しか見た事が無いな・・・・」

「・・・・・・・・・・・うかない顔ね。何か嫌な事でもあったのかしら?」

「いや、何も・・・・・・・・ただ、満月にはあまり良い思い出が無いだけさ」

三日月や半月ならば一刀も気にせず眺める事が出来たが、満月は彼にとって特別な意味があるため昔から意図的に目にするのを避けていた。

特に今は華琳が傍に居る為、眺めると嫌でも思い出してしまうのだ。

華琳との一生の別れになったあの夜を・・・。

「そういえば気になったんだけど、何で華琳は鄒の料理下手を知っていたんだい?」

満月の事をあまり触れられたくない一刀は話題を強引に切り替え、城へ戻ってきたときに聞いた何気無い一言について華琳に尋ねる。

彼女も一刀の態度から彼にとってのタブーだと悟り、あえて詮索せずに変えられた話題に乗る事にした。

「春蘭達に聞いたのよ・・・・・」

「春蘭達に・・・・・?鄒があの二人に料理を振舞ったなんて話聞いたこと無いんだけどなぁ」

華琳達の中で鄒と昔から面識があるのは華琳と秋蘭達の三人だけだが、一刀の知る限りでは鄒が彼女たちに料理を振舞った事など一度も無い。

てっきり当時の侍女か誰かから聞いたのかと思っていただけに、彼にとって華琳の答えは意外なものだった。

「まだ私達が幼かった頃、あなた達が試合をした後に春蘭が突然倒れて韓鄒に連れて行かれたときがあったでしょう?」

「ああ、そんな事もあったなぁ・・・・」

「あの娘達もあの後何があったのかはあまり話さないのだけれど、部屋を出る前にお菓子を進められたそうよ」

「お菓子?」

「ええ、揚げ菓子の様な物だったらしいけれど、それを食べた途端意識を失ったそうよ。そのとき春蘭が“鎌を持った川の船頭が怠けていなければ向こう岸に渡っていた”と言っていたわ」

「・・・・・・」

一刀は昔同じような体験をしているだけに、華琳の話から当時の春蘭の様子が用意に想像することが出来た。

並みの料理下手ならば見た目などから回避することが出来るだろうが、ここからがオチ、鄒の料理の真骨頂。

部屋の装飾品の飾りつけや裁縫などのデザインに抜群のセンスを持つ鄒は、料理の見た目を完璧に仕上げてくる為、一見しただけでは一流の料理人が作ったものと何ら変わらないのだ。

そのため食べてみるまではそれが彼女が作った物か解らず、口にしてしまったが最後、春蘭達の様な末路を辿ることになる。

一刀は幼い春蘭達が鄒の料理を食べて意識を持っていかれている姿を想像しつつも、華琳達と四人で過ごした北家での日々を思い出す。

「それにしても春蘭とよく試合をしていた頃か、懐かしいなぁ・・・・・。今じゃ華琳は州牧で秋蘭達は君を支える一角の武将だもんな」

「それを言ったらあなただって同じでしょう。尤も、私と同じ州牧になったのはつい先刻だけれど」

「ハハッ、違いない」

昔を懐かしみながら他愛の無い話をして笑みを浮かべていた一刀だったが、それまでとは打って変わって真剣な面持ちになり華琳に話しかける。

「華琳、俺達の間で結ばれている同盟の事なんだけれど、期間延長は出来ないかな?」

その言葉を聞いて華琳も談笑をしていた時とは違う覇王の顔になり、幼馴染の一刀としてではなく雍州の州牧である司馬仲達として彼を見据える。

「期間延長ねぇ・・・・。無期限延長で無ければ考えてあげても良いわ。言ってごらんなさい」

「期限は・・・・・」

一刀は顔を華琳の耳元まで近づけ、彼女にしか聞こえない程の小さな声で同盟の期間を提示する。

彼が顔を近づけてきたことで赤面しながら一瞬身を引きそうになる華琳だったが、彼が耳元で囁いた言葉を聞き終えると・・・。

「ぷっ・・・・くくく、うふふふふ、あははははっ!」

笑いのツボに入ったのか、最後には腹を抱えて呵々大笑し始めた。

「・・・・一応、了承と判断してもいいのかな?」

「はぁはぁ・・・・。ええ、そう考えてもらって構わないわ。そこまでの大言壮語を言うのならやって御覧なさい、それまでは同盟を組んであげる。ただし、もし半ばで挫けたときにはすぐにでも同盟を破棄してあなたの領地に攻め込む。そしてあなたを私の前に跪かせて我がものとして見せるわ。そのこと、努々忘れないことね」

華琳は盛大に笑った後、自信に満ち溢れた顔で一刀にそう宣告する。

そんな華琳の表情を見て一刀は口元に笑みを浮かべて言葉を返す。

「これはうかうかしていると後ろからバッサリやられるな・・・・」

「当たり前よ。この私を誰だと思っているの?」

「覇王の道を行く誇り高き典軍校尉、曹孟徳だろ?」

一刀の返答に“そうよ、分かっているならそれで良いわ”と華琳は返そうとしたが、突然強い頭痛と目眩に襲われ、咄嗟に頭を押さえてしまう。

そして彼女の脳裏に見たことも無い情景が浮かび上がってきた。

 

 

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そこは緩やかに水が流れる何処かの小川の畔、先ほど一刀と共に眺めた物と同じ美しい満月が浮かぶ夜。

その川辺に佇むのは・・・・。

(一刀と・・・・・私?)

川面を眺めて穏やかな表情をする華琳と、その後姿に見蕩れる白い衣を身に纏った一刀だった。

月光に照らされた二人の姿はとても幻想的では在ったが、一刀の体に異変が起きている事に今の華琳は気が付く。

水面に映る月の様に、彼の体は徐々に透け始めていた。

「どうしても・・・・・・・・逝くの?」

「ああ・・・・・・もう終わりみたいだからね・・・・・」

「そう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・恨んでやるから」

「ははっ、それは怖いな・・・・・・。けど、少し嬉しいって思える・・・・・」

「・・・・・・逝かないで」

「ごめんよ・・・・・・華琳」

「一刀・・・・・・」

「さよなら・・・・・・誇り高き王・・・・・・」

「一刀・・・・・・」

「さよなら・・・・・・寂しがり屋の女の子」

「一刀・・・・・・!」

「さよなら・・・・・・愛していたよ、華琳──────」

その言葉を最後に、一刀の姿は完全に消えてなくなり、只一人その場に残る華琳の周りを一陣の風が吹き抜ける。

「・・・・・・・・・・・・一刀?」

──────────────────。

「一刀・・・・・・?一刀・・・・・・・・・!」

彼が消え去った事を感じ取り、周囲に彼の存在を求めて狼狽する華琳。

そして、もはや何処にも一刀が居ない事を感情が受け入れたとき、その場に崩れ落ちて子供のように泣きじゃくる事しか出来ない彼女の姿を天に浮ぶ満月の淡い光だけが照らしていた。

そんな何処か寂しさを感じる情景を最後に、華琳は現実へと引き戻され、城壁の風景と心配そうに覗う一刀の姿が目に映った。

「華琳?どうしたんだ急に黙り込んで・・・。気分が悪いのなら直ぐに医療所へ連れて行くけど」

頭の中に流れ込んできた風景に困惑する華琳だったが、自分を心配する一刀の声で漸く我に返る。

「・・・・・・ええ、大丈夫よ。どうやら私も少し飲みすぎたみたいね。今日はもう部屋で休むことにするわ」

「そうか、部屋まで送ろうか?」

「あなたほど飲んではいないから大丈夫よ」

華琳はそう一刀に言い残すと一人城壁を後にする。

その途中、脳裏に浮かんだ情景を想い出しながら・・・それとはなしに空を見上げる華琳。

そこには変わらず美しい満月が輝いていたが、先ほど城壁で眺めたものとは違い、どこか寂しい印象を彼女は受けるのだった。

 

 

 

説明
投稿が遅くなって大変申し訳ありません。
先月交通事故に遭ってドタバタしていたので投稿することができませんでした。
これからも頑張っていきますので、どうか宜しくお願い致します。
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コメント
これはw面白くなってきましたね、まさか華琳さまがねw(サイト)
酒っていうからスピリタスかと思えばアルコールそのものかよwwwよく急性中毒にならなかったな(アルヤ)
持ってきた酒というので、てっきり『ブランデー』とかの蒸留酒かと思いましたら、医療用アルコール? あれは人に飲ますには危険だと思いますが。断言もしてないですから分からないですけどね。でも、話は面白いので次回作も楽しみにしてます。(いた)
カミー〇がいた(笑)(サレナ)
記憶が甦ると何が何でも華琳は、一刀を手に入れようと動くな・・・w てか・・・ヨ〇パチ【〇帝】のセリフと思われる文が・・・w(howaito)
華琳の記憶が戻ったらおもしろい!(あいりっしゅ)
一刀と華琳、二人にはつらい別れを経験した分幸せになってほしい!!・・・・・・・・続き楽しみにしてます。(タカキ)
確かに、あの二人の絡み酒は面倒だww ねねちゃん初登場回! あぁ、ねねちゃんはまたしばらく出て来ない……(神余 雛)
想いと記憶の残滓がどのような影響を及ぼすかが、今後の影響になりそうですね・・・(本郷 刃)
記憶が蘇ったことで今後の華琳にどう影響するか気になりますね。 あと期間延長はいつまでなんでしょうね。気になることがたくさんあって実に読み応えがあります♪(芋名月)
記憶の奥底にはあの時の思いが残ってる感じですね〜一刀をより自分の物にしたい気持ちが強くなりそうだw(nao)
雛は料理が下手なのか・・・・見えないな・・・・・www。ま、華琳の記憶が蘇りつつあるのかな。ふむ。そうきましたか。予想外ですな。(Kyogo2012)
あの時の光景ですか・・・・・・・・この外史の二人に幸あれ(アサシン)
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