真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 12
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〜休息:雪華の憧れ〜

 

「ん〜」

 

 とある昼下がり、俺は城内を歩き回っていた。

 

「雪華のやつ、どこ行ったんだ……?」

 

 そう、雪華を探しているのだ。昼ごろに目が覚めると一緒に寝ていたはずの雪華が見当たらず、てっきり関羽や劉備、張飛の内の誰かと遊んでいるんだろうと思ったのだが、関羽も劉備も北郷が見当たらないと言って街へ出て行ってしまったらしいし、張飛も張飛で街へ散策に行ってしまったらしい。こうなるとどこに行ったか分からなくなってしまう。

 

 で、仕方なく自分の足で場内を探している、というわけだ。

 

「街には出てないと思うが……」

 

 アイツが一人で行動すると言ったら、手洗いぐらいなもんだしなぁ〜。なんて考えていると、前方に蒼い髪が映りこむ。

 

「聞いてみるか」

 

 その方向へ小走りで移動すると、あちらも気が付いたのか、こちらへ顔を向けた。

 

「おや、御剣殿どうなされた」

「いや、ちょいと聞きたいことがあって……」

 

 と、そこまで言った時、右手にぶら下がっているものに気が付いた。

 

「お前、昼間から酒か……」

「昼まで寝ている貴殿には言われたくはないな」

「……まぁ、それもそうか」

 

 若干違う気がするが、それは今、どうでもいい。俺は本題を切り出した。

 

「なぁ、雪華見てないか? どこにも見当たらないんだが」

「雪華殿が?」

 

 少し驚いた顔をする趙雲。この様子からして、彼女も知らないようだ。

 

「あー、見てないならいい。すまんな」

「あいや待たれい」

「んがっ!?」

 

 立ち去ろうとしたらいきなり襟を掴まれて首ががくん、と急激に曲がる。

 

「な、何すんだよ……」

 

 軽くせき込みながら睨むと、彼女は右手をあごに当てて何かを思い出そうとしていた。

 

「いや、確かどこかで見たような気がしてな。勝手に決めつけて立ち去ろうとしたのを止めてやったのだ」

「だったら最初からそう言えよ……」

「聞かずに行こうとしたのは貴殿ではないか」

「ぬ……」

 

 ……確かにその通りだ。だが、腑に落ちないのは、やはりコイツの性格のせいだろうか? 

 

「……で、どこで見たんだ?」

 

 とはいっても、情報を持っているのは趙雲だ。彼女に聞いてみると、その姿勢のまま答えを返した。

 

「確か、伯珪殿の部屋へ向かう通路の途中だったか? 何やらこそこそと移動していたのでな、賊かと思ってしまった」

「公孫賛の所? なんでまた?」

「私が知るわけなかろう。まぁ、少なくともやましいことではないとは思うがな」

 

 うーむ……。

 

「それも、そうか。とりあえず行ってみるか」

「そうするがよかろう」

「すまんな。恩に着る」

「では、今度酒の一杯でもおごってもらうとしようか」

 

 なんてことをいつものように意地の悪そうな笑顔で言うが、こちらにも切り札がある。

 

「この前、街の警邏さぼってメンマを買い漁っていたことを黙っておいてやる。それで帳消しだ」

「ぬぅ……」

 

 まぁ、その時は俺も仕事を抜け出していたのだが、それは言わないのが駆け引きというモノだ。

 

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 で、公孫賛の部屋へ向かうと、すぐに茶色のてるてる坊主が見つかった。どうやら、窓から部屋をこっそりと覗いているようだ。

 

「雪華」

「ひゃ!?」

 

 突然、後ろから話しかけられて驚いた雪華は思わず足場にしていた木箱から落ちてしまうが、それを片手で受け止める。

 

「何やってんだこんなところで」

「げ、ゲンキ?」

「まったく。部屋にいないと思ったらこんなところで何してんだ?」

「うー……」

 

 彼女は顔を真っ赤にして頭巾を目深にかぶって顔を隠してしまう。と、今まで覗いていた窓が開いた。

 

「お前ら、何してんだ?」

「すまん、気を散らせてしまったか?」

「いや、誰かが覗いているなぁ、とは思っていたからそうでもないさ」

 

 まぁ、公孫賛も国の太守だ。この程度の気配に気が付かないわけないか。

 

「で、何で覗いていたんだ?」

「いや、覗いてたのは俺じゃない」

 

 そう言うと、公孫賛の視線が雪華に移る。

 

「なんだ、雪華だったのか」

 

 公孫賛の言葉に雪華は被ったまま小さく頷いた。

 

「でも、なんでそんなところから覗いていたんだ? 用があれば侍女に言ってくれれば……」

 

 だが、雪華は首を振ってしまう。用があった訳ではないようだ。

 

「じゃあなんで覗いてたんだ?」

 

 俺が聞くと、雪華は小さな声で何かを言っているが、小さすぎて聞こえない。俺が耳を近づけてみると、もう一度雪華は同じ声量でこんなことを言っていた。

 

「どうしたら、白蓮さんみたいになれるかなって思って……」

「…………」

 

 なるほど、な。俺が公孫賛へ視線を向けると、彼女は少し動揺したようにたじろいだ。

 

「な、なんだ? 私の顔に何かついてるか?」

「いや、雪華がどうしたら公孫賛のような女性に為れるのかを知りたいらしい」

「へ!?」

 

 雪華と同じくらい顔を真っ赤にする公孫賛。どうやら、そういったことはあまり言われ慣れてないようだな。

 

「そ、そうか。そ、それなら部屋に入ればいい。うん」

 

 そんなことを言われた雪華は頭巾の下からでもわかるくらい目を輝かせていた。と、そんな時一陣の風が駆け抜けて、雪目の頭巾が外れてしまった。

 

「え?」

「……っ!」

 

 慌てて頭巾をかぶり直そうとするが、そういう時に限って時間が掛かるものだ。

 

 雪華の顔が、絶望に染まっていく。かく言う俺も焦っていた。いつかは言うつもりだったが、まさか、こんなことになるとは……!

 

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「か、かわいい……」

 

 ……マサカコンナコトニナルトハ。

 

「ふぇ?」

「はぅ!?」

 

半泣きで公孫賛の顔を見るその姿。どうやら、かなりの破壊力があったようだ。てか、心配する俺がバカみたいに思えてくるのは、気のせいなのか? 気のせいなのか!?

 

 で、雪華は公孫賛にガッツリ気に入られ、雪華も憧れの公孫賛の仕事をまじかに見れるというハッピーエンドになった、のだがなぁ……。

 

「なんだかぁ……」

 

 もういっそ、外套外しちゃっていいんじゃないかと本気で思う。てか、今度、関羽や劉備、北郷に相談しよう。割と本気で。

 

「おや、どうやら丸く収まったようですな」

「趙雲? いたのか?」

「ええ。何やら面白そうな気配がしたので」

 

 ……となると。

 

「お前も見たか?」

「雪華殿の角ですか?」

 

 やっぱり、か。

 

「まぁ、何ゆえあのような恰好をしているのかは分かりませんが、御剣殿が心配するほどあの姿を気にする者はこの陣営にはいませんよ」

「そう、か」

 

 ……俺が、やっぱり心配しすぎなんだな。

 

「だいたい、雪華殿の角の事は城内のほとんどの人間が知っていますぞ?」

 

 ……なんですと?

 

「いや、伯珪殿の後ろをついている時に何度か頭巾が外れていることが……」

「…………」

 

 前言撤回。

 

「はぁ〜……」

 

 どうやら、俺の心配はまだまだ続くようだ。

 

〜休息:終〜

 

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あとがき〜のようなもの〜

 

ハイどうもおはこんばんにゃにゃにゃちわ、風猫でございます。

 

と、言うわけで初めての休息編です。出来る限りキャラのイメージを損なわないように書いたつもりですが、いかがだったでしょうか?

 

そういえば、話は変わりますが、彗星が壊れてしまったようですね。近付いていたことを知らなかった自分としては「あれま」って感じなのですが、ニュースを見るとかなり大きな彗星だったみたいですね。そういった話を聞くと残念だったな、と思うんですよね〜。

 

え〜、では何かありましたらコメントの方よろしくお願いいたします。

 

また次回!

説明
白髪の鬼子と黒の御使いの、守るために戦い抜いたお話

真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。

大筋は同じですけど、オリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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コメント
アルヤさん:可愛いは正義、これ、真理なり。ちなみに、雪華は真名に相当するので、城内の方は雪華は基本的には天女様、玄輝の方は御剣様と呼んでいます。(風猫)
城の者の共通見解「伯珪さまの後ろを追いかける雪華様かわいいなぁ・・・・・・」(アルヤ)
ツナまんさん:あこがれた理由としては、快活さですね。まぁ、色々と彼女も悩みはしていますが、基本的には明るく、精神的には強いと思ったので、そこにあこがれた、と、いうことで書いてみました(風猫)
やっぱり周りと違うから『普通』に憧れるんですかねぇ。(ツナまん)
タグ
鬼子 オリジナルキャラクター 真・恋姫†無双 蜀√ 

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