真・恋姫無双 〜虎と狐の三国演義 〜
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   弐之五 『賊、討伐戦 V 』

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雪蓮の号令に兵達は突撃を開始する。

 

「放てー!!」

 

その突撃を援護するように黄蓋の率いる弓兵部隊が矢を射掛ける。

だが、賊は矢の雨にさらされながらも、その身に矢を受けるのも構わずに突っ込んでくる。

そこには、何の意思も感じられず、ただ異様で不気味で恐怖すら感じさせるものがある。だが、雪蓮は臆することなく賊に近づき、目の前の賊の首を刎ねる。その姿に後へ続けとばかりに兵士達も賊へ襲い掛かる。

 

「やり辛いわね。」

 

前線で戦う雪蓮はそう感じていた。だがそれも仕方ないことで、普通は負傷すれば多少は怯むものだが、今相手にしている賊はそんな事などお構いなしに突っ込んで来るのだ。

唯一救いがあるとすれば『殺せる』ということだが、裏を返せば死ぬまで戦い続けるのだ。

そしてそのことが奮戦する兵達の体力と精神力を容赦なく奪っていく。

そんな時だった、

 

キイィィィィィン

 

そんな甲高い音が頭の中に響いたかと思うと、周りで戦っていたはずの兵士と賊の動きが止まっていた。そのことを理解するよりも早く雪蓮は直感的に後方へ跳ぶ。その直後、彼女のいたその場所に剣や槍が振り下ろされていた。振り下ろしていたのは賊とつい先程まで彼女と共に戦っていた兵の一部だった。

それが狐燐の言っていた術の仕業であることをようやく理解した雪蓮だったが、何も知らない兵士達は完全に動揺し浮き足立っている。

 

ジャーーーン!ジャーーーン!

 

「合図ね。私の声の聴こえる者は直ちに後退!本隊と合流し陣を立て直す!」

 

後方から響く銅鑼の合図に反応し、雪蓮はまだ術に掛かっていない兵士を纏め上げ後退を始める。

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

 

「雪蓮、無事か?」

 

合流してすぐに冥琳が駆け寄ってくる。

 

「ええ、でも百は持っていかれたみたい。」

「そうか、だがそれも策の内だ。お前が無事なら問題ない。」

 

そう言って安堵の表情を浮かべる。

 

「狐燐は?」

「…さっき飛んでいった。あれが特別なのか仙人全てがそうなのか知らないが、とにかく規格外だな。」

 

何を見たのかは分からないが、そう語る冥琳の顔は今でも信じられないといった感じである。

 

「まあいいわ。とりあえず私達は時間稼ぎね。」

「ああ。すぐに陣を立て直す。」

「ええ、まかせるわ。」

 

そう言って、雪蓮は返り血を拭い、剣を抜くと自分のすべきことを全うするために迫り来る賊を再び眼前に見据えた。

 

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

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〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

その頃、狐燐は上空を飛んでいた。目的は敵の術者を討つためである。

雪蓮が率いていた兵の一部が術に掛かったとき、実際は雪蓮もその術に晒されていた。だが、なぜ雪蓮に効果がなかったのか?

理由は二つある。一つは単純に雪蓮が術者の術に対抗できるだけの精神力を有していたこと。兵士の中に正気を保っていた者がいたのもこれが理由。

そしてもうひとつの理由が狐燐が雪蓮に渡した折り紙である。

狐燐が渡した折り紙には術の媒介として使えるように僅かに((仙力|せんりょく))が込めてあり人和が視た光もこれである。(*弐之二参照*)それを今回狐燐は『術を弾くための防壁』として使用したのである。

 

「さてと、多分この辺なんだけど。」

 

そう言って狐燐が降り立ったのは賊の後方に位置する山の中だった。

 

「? あいつか。」

 

狐燐が見つけたのは一人の中年くらいの男。その男は戦場に目をむけたままニヤニヤと笑っていて、明らかに怪しい。

 

「そんなところで何をしてるんですか?」

「―っ!誰だ!!」

 

狐燐が声を掛けると男はこちらを振り返る。その泡手振りからここに人がこる事などまったく予想していなかったようである。もっとも狐燐の場合は空から来たので文字通り予想の遥か上からきたわけだが…。

 

「孫策軍の蘇業です。あなたを退治に来ました。」

「けっ、たった一人で何ができるってんだ・・・よ!!」

 

狐燐の返答にそう叫ぶと男は狐燐に向かって腕を突き出す。と同時に男の掌が妖しい光を帯び空気が淀む。

 

「…はぁ。」

 

だが狐燐は呆れたような溜息をつくとパンッ、と手拍子を一つ打った。たったそれだけのことで淀んだ空気も男が掌に帯びていた光も霧散する。その事実に男の表情は凍りつく。

 

「なっ、何をしたんだ?何者なんだお前は!?」

「何者かはさっき名乗りました。何をしたかと問われれば、単純にあなたが掛けようとした術を打ち消しただけです。」

 

そう簡単に言ってのけるが、実際はそんなに簡単なことではない。今回はたまたま目の前の術者が狐燐より劣っていたから簡単にできただけで自分と対等かそれ以上の術者が相手ならこうは簡単にはいかない。が、そんなことなど露ほども知らない男にとっては脅威でしかなかった。それ故に男がとった次の行動は早かった。

 

「あっ!待て!!」

「誰が待つか!お前みたいな化け物の相手は御免だ。」

 

逃走―逃げの一手である。とはいえ勝てないことを察知し逃げ出すだけの判断力が残っていたのは褒めてもいいだろう。だが狐燐にはどうしても男に訊きたい事があった。そのためにも逃がすつもりは無かった。そのために狐燐は一対の投刃を取り出し、投げつける。

 

「((火竜?|かりゅうひょう))!!」

 

狐燐の投げた((宝貝|パオペエ))‐((火竜?|かりゅうひょう))は紅蓮に燃え上がると男を囲い込む様に飛来するとその軌跡に炎を生み出し男を包囲して再び狐燐の手元に戻ってくる。

 

「一つ訊きたいことがある。」

「ひいぃぃ。なっなんだよ?!」

「あんたに術を授けたのは誰だ?僕の見立てではあんたは本来、術を使えるようには見えない。誰かがあんたに術を授けたはずだ。」

「そっそれは…」

 

狐燐の問いに男は言い淀む。そもそも今回の賊の一件で狐燐が疑問に感じていたのはそこだった。なぜ賊の中に術者がいるのか?かと思えばその正体はただの賊でありにもかかわらず確かに術を使っている。分からない事だらけだった。だがもしこの男に術を授けた者がいるとすれば、その人物を捕らえれば今後、術による被害は出なくなる。そう狐燐は考えていた。

 

ザシュッ

 

だからか、一瞬何が起こったのか狐燐は解らなかった。

 

狐燐が追い詰めた男は自分の剣を胸に突き立てて・・・

 

絶命していた

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あとがき

 

どうもツナまんです。今回は本当に長めになりました。

まあいつもよりはですがね。それと今回は新しく火竜?を出しました。

けど、本文では投刃ってなってるけどどうかんがえてもブーメラn…とまぁ置いといて

狐燐のパオペエがめちゃくちゃ天花なんですよねえ。まあ天花のパオペエが一番チートじゃない感じがしたからなんですけどね(汗

 

そんなこんなでまた次回!!

説明
今回はいつもより長文に仕上がりました。


注:オリ主作品です。一部オマージュもあります
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コメント
ヒナたんさん>ありがとうございます。がんばります。(ツナまん)
続きを楽しみにしています(ヒナたん)
禁玉⇒金球さん>大丈夫です。自分なんか最初の頃、宝貝を宝具の書き間違いだと思ってましたから。(ツナまん)
今回は長文ですね、良いじゃない人間だもの。しかしパオペエなんですねパオベエだと思ってた、恥ずかしい。(禁玉⇒金球)
nakuさん>コメントありがとうございます。精一杯頑張らせていただきます(ツナまん)
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