Over there
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 俺は、今まで生きてきた中で、「自分だけが特別」なんて思ったことは無い。そしてこれからも思うことは無いだろう。今まで、まったく持ってフツーの人生を歩んできた俺が言うんだから間違いはないだろう。だから俺は胸を張って言える。

 

 

1・多分フツーの高校生

 

 

 まったくもって初夏の太陽ってのは人を眠気に誘う効果しかないんじゃないかと思うね。太陽ってのは、そんなに俺達に幸せを分け与えないと気がすまないのかね。太陽も少しぐらい休憩したっていいんだぞ。逆にこっちがありがた迷惑だからな。

 

 蒼島高校2年4組「古倉詩」(こくらうた)得意な事は寝ること、不得意な事はおきること。学力は中の下。運動は、割と好きな方。みんなからの呼び名は呼び捨てで「うた」。

 自己紹介はこんなところ。ちなみにさっきまでの天の声的なもんは全部俺。現在、2年4組の左端後ろから二番目の席で熟睡中。

 

「古倉ぁ!」

俺の菜を呼ぶ声がするような気がするが、これは気のせいだろう。

「起きろ古倉ぁ!」

二度目で、やっと夢からの帰還。同時に怒りの鉄槌が俺を襲う。頭が陥没するかと思った。というか多分した。一瞬だけチラッと先生と目をあわせて、まるで当然かのように俺は言う。

「寝てませんよ?」

教師は皮肉たっぷりに、

「ほう、そうか。今さっきまで、気持ちよさそうに寝息を立てていたやつの言う事じゃないな。」

ここであまり粘っても、この状況は打開できないだろう。だか、ここは黙秘権を行使させてもらう。

「・・・・・・・・」

すると教師は突然にやけやがった。

「図星だな。反省文よろしく。原稿用紙五枚分な。」

「!?」

あまりの展開についていけねぇ。

「今週中に提出だぞ!」

「・・・・・・・・マジか。」

俺の睡眠時間が大幅に削られた。ついでに大恥も掻かされた。

 

 

 

授業に戻ってすぐに後ろのやつが突っついてくる。俺は、振り向きながら少し不機嫌そうな声で言った。

「なんだ。」

「ほっぺ。」

「それがどうした?」

「ヨダレついてるよ?」

「なに!?」

あわてて自分の頬を触る。ヨダレと思しき液体がついている。

「うわ!もっと早く言えよ。」

あわてて、頬についたよだれを拭く。

「充分早く言ったと思うけど?」

そういいながら、ノートを取り始めたそいつを見て、俺も少し恥ずかしい思いをしながらまた、物思いにふけた。

 え?今のは誰だって?仕方がないから説明してやろう。

 

 蒼島高校2年4組「岩崎空」(いわさきそら)。得意な事は小さい頃から習っているピアノ。不得意な事は運動。みんなからの呼び名は、「空ちゃん」俺からは「空」。見た目的特長は長い髪に真っ黒な目。ちなみに俺の幼馴染。

 空とは、小学校の頃から一緒だったりする。俺ん家のすぐ隣に住んでいて、俺の親と空んちの親が仲が良くて、親が出かけるたびにいつもあそんでいたっけな。

 はい、回想ここまで。これ以上言うと、全部語るのには最低一時間いるからな。そりゃもう色んな思い出があっもんだ。

 

 チャイムが鳴り響き、俺の枕代わりになっていた教科書をかばんにしまう。本日の授業終了。疲れた。

「帰ろ?」

空が俺にそういてきたので、俺もかばんを持って自分の席から腰を上げた。今日はいい天気だったからよく寝れたよ。つっても俺はほとんどの時間を寝て過ごしているんだけどな。

「詩っていつも授業中って寝てるけど、家では寝てないの?」

「ん?まあそこは聞くな」

正直言って家でも寝るか風呂はいるか飯食うかテレビを見るか、の四つしか基本的にしないんだが、なぜか学校でも十二分に寝ているはずなのに、家でも急に睡魔が襲ってくる。俺の中の睡眠欲を、勉強のパワーに変換する事が出来たら、おそらく今からでも東大は遅くないんじゃないかってくらい寝てるね。一応言っておくが、家で勉強はしないぞ。

「そういう反応をしてるってコトは、家でもまだ寝てるってコトだね。そんなに寝てもまだ寝れるんだから、凄いよね。」

見抜かれた。こいつとは長い付き合いだから、全部見抜かれていても当然と言えば当然か。

「よく分かってるじゃないか。さすがは俺の幼馴染をやってるだけはあるな。」

そう言ったとき、空は一瞬悲しそうな顔をした。ような気がした。 

「当たり前だよ。この間遊びに行った時も寝てたよね。」

多分さっきの顔は放蕩に勘違いだったのだろう。そう思えてしまうほどに、笑った。

「そうだったか?俺にはその時の記憶は無いな。」

そういえば、こいつは暇な時にも俺の家に今でも遊びに来る。休みの日なのに、よほどやる事が無いのだろうか。

「そりゃあそうだよ。詩、寝てたんだし。」

その後に、寝顔可愛かったよ?って言われた俺の顔は、多分真っ赤だったと思う。

 

 

 

 校門を出て、少し歩いたところで、俺達は立ち止まった。

「晴はそろそろかな?」

「どうだろうな」

俺は一応返事して、いつもの自販機の前で、いつものコーラを買ってキャップを開けた。

 晴とは空の妹だ。小さい頃から空と一緒に俺のうちに遊びに来ていた。晴も今は中学生なのだが、登下校の道がほぼ同じなので、俺と空がいつも晴と途中で合流して帰っているのだ。

 

 咲明中学1年3組「岩崎晴」(いわさきはる)得意な事は運動全般。苦手な事は勉強類。外見的特長はツインテールに空と同じ真っ黒な目。トレードマークであるツインテールをほどけば、空の小さい頃のようにそっくりで、寝起きが悪い。

 まあ、姉妹なのだから似ているのは当然なのだが、本当にそっくりすぎてたまに小さい頃の空と見間違えてしまう事があったりする。

 

 そんな時、

「おにーちゃーん、おねーちゃーん!」

振り返ると、晴が、こちらに向かって走ってきた。いつも通りの光景だ。相変わらず元気なやつだ。

「ただいま!」

「「おかえり」」

ダッシュで近づいてきた晴に、俺と空はいつも通りの返事を返す。いつも通りの景色。いつも通りの町並み。全てがいつもと変わらず回っていた。とか何とか詩人くさい事を考えていたら、いつの間にか晴は俺達の目の前まで来ていた。

 

晴は中学生にもなるのに、いつまでたっても幼い性格のままというのは、どういうことなのだろうか。言い忘れたが、お兄ちゃんとは俺の事だぞ。血は繋がってないけど。こいつとは、兄と呼べるだけの時間をともに過ごしてきたわけだから、晴がそう呼ぶのにも不思議はない。

 

「かえろっか」

「おう」

 

三人で並んで家路に就く。さっきも言ったけど、本当にいつもと何にも変わらない。

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